表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
家族で異世界転生~そして、少年は~  作者: 長谷川
第3章 動き出す者達、そして~
81/111

13話

 コイツら、アンナの方ばかり狙いやがって!


 男女の騎士は、禍々しい魔力を纏い出してから、執拗にアンナを狙って来ている。


「お前ら、アンナを狙わないと戦えないのか」

「生死を賭けた戦いに、弱点を突くのは当たり前だ!」

「英雄と呼ばれてる割に、()()一人も守れないのですか!」


 至極当然の事を言ってくる。それにこの二人、全力で向かって来るのに、どこかおかしい?


 死霊の兵士達は早々に斬撃を飛ばして、浄化したから使い物にならなくなり、騎士二人だけで向かって来ていた。


 高速戦闘をしている傍ら、こんな事に慣れてないアンナが気を失って、だらんとならないように、【リフレッシュ】や【キュア】を掛けてあげながら、二人の対処をしている。


 謁見の間で戦闘をしているので、所々陥没したり、柱や壁に斬りキズが出来ている。それも、()()()()()()()()()()()


 コイツら、玉座に座り俺達の戦いをニヤけながら観ているサタンの()()()()()()()なら分かる。だけど違う。()()()()()()()()を守っているのだ。


 後ろに飛ばされた皇帝達の安全を確保出来ているから、俺としてはありがたい。


 騎士のどちらかが魔法を使い、それを俺が弾き飛ばした方角が、未だに気絶して横たわっている皇帝達に向かった時、女騎士が浄化の力が宿った斬撃で行動不能にした、死霊の兵士を動かして盾にしていたから。


「やれやれ、魔法を封じただけで、騎士二人だけで足止め出来るとはな………………………やはり拍子抜けだ」


 玉座で観戦していたサタンが、不意に声をかけてきた。


「おい、お前ら。いい加減遊んでないで、目障りな人間共の希望を────片付けろ」


 その言葉を聞き、騎士二人は更に禍々しい魔力を吹き出し始めた。


 参ったな。魔法封じをされているのは力業で何とか出来るが、その被害は皇城だけでなく、都市にまで影響が出てしまう──



「──な、なんだこの光はっ!?」

「「クッ!」」


 突如、外の景色が眩い光に包まれた。


 俺も目を開けられない程のその眩い光に、リーナ達の魔力の波動を感じた。しかも、神聖の力を。


 と言うことは、この眩い光を作り出したのはリーナ達で、異変に気付いて何かしらの対応をしてくれたのか。


『───イ─────カイ────』


 ん、この声は──


『リーナ』

『───っと、繋がっ─────結界────張ったから────』


 上手く聞き取れない。まだ魔法を封じられている影響か?


『────やっていいわよ』


 だけど断片的に聞こえた。それなら後は──


「アンナ。この戦いを終わらせる為に、この城を壊してしまうが構わないか? 責任はちゃんと取る」

「ん、なら構わない」

「ありがとう」


 そして俺は、殺気を強く放った。


 最初に放った殺気より強く放ったおかげで、騎士二人は俺から大きく飛び退いてくれた。


「もう、終わりにする」


 言葉にも殺気を混ぜ、騎士二人を牽制させた。


「先より強く放ったらしいが、魔法も満足に使えぬ人間風情が、何を言う」


 サタンは未だに笑みを浮かべている。


「今からその笑みを────後悔に変える」


 アンナを抱きしめたまま、謁見の間全体を覆う程、魔力を盛大に溢れさせ、その影響で天井や壁だけを吹き飛ばしてしまう。


 その際中に【白雪】を握ったまま指だけを向けて、皇帝と皇后、死霊となっていた兵士達に、球状の結界を張った。


「フフ……………フハハハ……………ハハハハハハッ! なんだこの魔力の量は!? 劣等種である人一人が保有する魔力量ではないぞ!? 人の皮を被ったバケモノだったか!」


 サタンは玉座から立ち上がり、嬉々の笑みを浮かべている。


「………………半分当たりで、半分ハズレだ。人の皮を被ったってのは間違っちゃいない。けどなバケモノではないのさ」

「……………だとしたら何者だ、キサマ?」

「───神」

「神だと……………………クク…………………クククッ!……………………アハハハハハッ! 笑わせてくれるな! 神がこんな所に顕現する訳がないだろ? 仮にしたとしても、どうしてキサマが神の力を保っている?」


 人のサイズで居たサタンの身体が、段々と大きく膨れ上がっている。


「俺が望んで欲しかった力では無い、とだけ言っておくよ。 それで。滅ぼされる覚悟はもう少し掛かりそうだな」


 俺はアンナを離し、目配りで離れている様に促し、皇帝達同様に、アンナに結界を張った。


「キサマラ、アシドメでもしてイロ」


 硬直していた騎士二人は、サタンから禍々しい魔力を注ぎ込まれ、肉体が目に見えて一廻り大きくなっていた。


 そして肌は褐色になり、瞳は紅く、口元には牙が生えていた。


「イケ」


 サタンの掛け声と共に騎士二人は駆け出してきた。


 そのスピードは速く、瞬く間に距離が無くなり、禍々しい魔力を帯びた剣を振りかざして来るのが視えた。


 俺もサタンの掛け声と共に【雷装化】になっていたから、二人のスピードに余裕で追い付いていた。


 二人の剣を躱したら、俺が居た場所が大きく陥没してしまった。


 どうやらパワーも大きく跳ね上がった様だ。


 だがそんなの関係無く、避けて陥没させて止まった隙を狙い、女騎士目掛けて斬りに駆け出した。


 しかし、騎士二人の攻撃はそれだけでなく、剣に纏わせていた魔力がこちらに小さなつぶてとなって飛んできた。


 咄嗟に【白雪】を横薙ぎに振るい、雷を帯びた斬撃を数撃飛ばしてぶつけた。


 ぶつかり合った衝撃で戦塵が舞ってしまったが、俺の斬撃は騎士達の礫を切り落とし、そのまま騎士達に向かって行った。


 だがほんの少しの時間で体勢を整えた騎士達はその場から離れていた。


 それにしても騎士達は変貌してから声すら発せず、無言になってしまっていた。

 

 完全に自我を無くされたのだろうか?


 俺がそんな事を思っている間、騎士達は抜群のコンビネーションを発揮して来た。


 女騎士が魔法や魔力を飛ばしてくると、男騎士が斬りかかりに来る。 で、男騎士を斬り捨て様と一瞬の隙を狙うと、女騎士が魔法や魔力を帯びた剣で防御をしてくる。


 その逆も然り。女騎士を斬り捨て様とすると、男騎士が防御をしてくる。


 中々、手こずる相手だ。


 だがそれも永くは続かなかった。


 騎士二人の身体のあちこちから、赤黒い血が吹き出し始めたから。そんなことになれば多少なりとも苦痛に表情が歪むはずが、全くの無表情。


 この二人、どんな思惑が有ったが知らないが、流石にこれ以上長引かせるのはマズい。コイツらにとっても、この後に控えた変貌を遂げ終わって、ムカつく笑みを浮かべ観戦しているあの悪魔にも。


 俺は今までと変わらず、騎士二人の攻撃の一瞬の隙を付く戦法で、次の攻撃のほんの僅か一瞬に【雷光化】になり、騎士二人の間に入り、刀の峰で騎士二人の腹に【白雪】の強烈な一撃を叩き込み、血反吐を吐き皇帝達の方へ飛ばした。


 盛大に皇帝達に張った結界にぶつかって止まり、直ぐさま指だけを向けて騎士二人に結界を張った。


 どこか違和感を感じたあの二人には、話を聞きたかったから。


 時間制限無しで完全制御が出来る様になった【雷光化】のまま、体長3mにまで大きく変貌を遂げたサタンに向き直った。


「それが、本来の姿か?」

「ソウダ。コレコソ、オレサマホンライノスガタ」

「それじゃあ、滅ぼされる覚悟は出来たな?」

「ホザケニンゲン。コンドハキサマノカラダヲ、ヨリシロ二シテクレルワ!!」


 サタンは羽をはばたかせ空を飛び、右腕を振り上げ、禍々しい魔力を集め出したと思ったら、黒い球状を創り出した。その大きさ20m程。


「コノバショヲ、マモリキレルカナ、ニンゲン」


 右腕を振り落とし、一緒に黒の球状も落ちて来た。


 【雷光化】になったその速度は、余裕で雷光の属性を帯びた鋭い刃の斬撃を無数に創り出すことが出来、ヤツの黒い球状を斬り裂いた。


 爆発し粉塵が舞う中、サタンはそうなる事を予測していたらしく、同様の黒い球体を次々に放って来た。


 こちらも負けじと、次々に無数の斬撃を放つ。


 これじゃ、埒が空かないな。


 サタンは大きな球体だけで無く、40㎝程の大きさの球体も混ぜて攻撃を繰り出して来る。


「ドウシタニンゲン? コノテイドノコウゲキデ、テイッパイカ? マダハンブンノチカラシカダシテナイゾ!」


 やれやれ。調子に乗っているアイツをさっさと滅ぼす。


 そして俺は左手を空に向けてかざした。


※※※

※結界を張り、カイトに念話で連絡をしたリーナは──


「盛大にやっているわね、カイは」


 帝都全体に結界を張ったリーナは神格化を解き、何故か結界が阻まれ、建物の上半分が無くなった皇城を視ていた。


「リーナ様」


 その声のする方に視線を向けると、ゲートでリーナの下に来たティアが居た。


「ティナは?」

「眠っています。私にも掛かる負荷を受けていますから」

「そう。やっぱり以前のカイみたいに、貴女達には代償が伴うのね」

「はい」


 リーナが言った貴女達の人物は、現在ギルドマスターをしているナリア・ヤハウェ。


 彼女もまた神格化に成ることが出来るのだが、その代償に7日間の強制睡眠。


 強制的に神の力を使う事の出来る荒業で有るため、神格化に成れるのはティアとナリアのみ。


 ただ一人、代償を払わずにリーナ達と同様に神格化に成れるのがカルトだけ。無垢な時からカルトは、リーナとエルスから魔法などの事を教えられていた為。


「それでリーナ様。私達はあと、何をするのです?」

「これからエルフの森に向かいます」

「エルフの森、ですか?」


 リーナは空を飛び始め、その後をティアも空を飛びながら付いていった。


「新皇帝が奴隷制度を導入した所為で、今回私達が奴隷になった人達を救いに向かったじゃない?」

「はい。リーナ様達はお優しいですから」

「…………ありがとう。でね、その時進行役をしていた男を拷問(と楽しくお話し)をしたのよ」


 リーナはティアに本音を言わなかった。むしろ言う必要がなかったから。ティアには拷問など(そういった事)を知らずに居て欲しいと願っているから。


「そして話を聞いたら、どうやら新たに奴隷とする人達──エルフの人達を捕まえに向かったって言うのよ」

「でも確かエルフの人達って…………?」

「ええ。滅多に多種族と交流をもたないと言われている種族ね。そしてそれを可能にしているのは、エルフの許可無き者は迷い、追い出される森──通称精霊の森」


 リーナも商人の端くれであるため、そう言った噂話などの情報を集める事をしている。そして、今回リーナが始めて拷問をした際に入手した情報をもとに、その者達を捕らえに向かっている次第である。


お読みいただきありがとう御座います。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ