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家族で異世界転生~そして、少年は~  作者: 長谷川
第3章 動き出す者達、そして~
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12話

「…………………………はて、貴殿は何を言っている?」


 あくまでしらを切るつもりか………………。


「俺は、アンタがおかしくなってしまったと言われる洞窟に向かった。 その最奥にあったのは、召喚魔法陣。 その魔法陣を詳しく視たら、アンタがおかしくなった理由が分かったんだよ」

「………………それで。その理由は何かね?」

「宿主のちょっとしたよこしまな欲望を何倍にも増してかどわかし、満たす様に誘導する。 だから本来、エドワード皇帝陛下の信頼が厚かったランス・チャールズは、こんな事をするはずではなかったんだよ」


 でも、ランスは少しでも皇帝に成りたかったと思ってはいたんだろう。


「だから、突如現れた洞窟に、調査に向かったランス騎士団長達は、その最奥で何かしらと遭遇して、その身にお前を宿す事になったんだろうよ」

「………………ふむ。 素晴らしい妄想の推理だな」

「妄想でも結構。 まぁ、最奥で何かしらと遭遇したってのには、心当たりがあるけどな」

「ほう、それならその心当たりも教えてもらえないだろうか?」

「魔神信仰教団。 ソイツらが今回の事態を起こしたんだろ?」


 抱きしめていたアンナは驚いた表情を浮かべ、こちらを見てくる。


「まあ、ソイツらがどうなったかは知らないけどな」


「────オレ様が食ってやったわ、魂ごとな」


 突如、見知らぬ声が響き渡った。その声の主は玉座に座る者から発せられた。


「フハハハハッ!! 確かにお主の言った通り、オレ様はそんな事を言っていた輩共に喚ばれたわ!」

「それで食ったって言うのか」

「ああそうだ。このオレ様に訳の分からぬ事を抜かし、身の程を知らず命令してきて、ちょうど腹も減っていたしな。そしてオレ様がソイツらを食い終わった時に、この男達が来たのだよ」


 そう言いながら、玉座に座る男の姿は段々と変貌していく。


「オレ様が本来の姿でこの世界に顕現するには、大量の生き餌が必要になるから、この男が現れたのは好都合だったのだよ」


 生き餌───魂の事か。 悪魔の中でも王に位置する存在だからか……………。


「なので、この男の野心を刺激して、契約をしたのだよ」

「契約?」


 変貌し続けた男の身体は、人の形から逸脱していた。


皇帝と皇后(ソイツら)皇族の身の安全の保障だ」


 鋭く尖った爪の指で、自身の前に移動させた二人を指差した。


「なら、その契約がある限り、その二人に手を出したらマズいんじゃ無いのか?」

「それは()()()()()()()()だろ? それにオレ様は悪魔の王、サタンだぞ?」


 約束を破り、宿主を呑み込んだってか…………。


「……………安心したよ」

「………………安心だと?」

「あぁ。 お前の様なヤツ相手だと、手加減はいらないだろうからな」

「っ!?」


 頭に2本のツノを生やし、耳は尖り、口元には収まりきらない牙を生やし、背中には翼、肌は青黒く変貌した元ランス・チャールズの身体、精神はサタン、それとその両脇に控える騎士達に向けて殺気を放った。


「フ、フフ、フハハハハッ!! キサマ! これ程の殺気を放つのに()()()()()()()()()()()()


 サタンは玉座から立ち上がり、歓喜に満ちていた。


 確かにサタンの言った通りだ。


 この殺気は5年前、ナリアから指摘を受け、そこで始めて自覚した俺の中の殺害衝動。 それを()()()()()()()()()()()事により可能にした殺気。


 俺は殺気を収め、右手を何もない場所に差し伸べて空間を歪ませ、異空間収納から黒刀【晦冥かいめい】と対を成す白刀【白雪】を出した。


 柄から刀身、鞘まで黒色の黒刀【晦冥】に対して、こちらは完全な白色。


 この白刀【白雪】には強力な破邪の力があり、俺の中の殺しの衝動を抑え込む力がある。


 そしてもう一つ。エルスの提案で俺が付与した力。まさにこの状況で効力を存分に発揮する力。


「さぁ、サタン。 お前を叩っ切る準備が出来た」

「ほざけ、()()()()()()()


 サタンが指先を振り上げると、俺とアンナの足下に魔法陣が現れた。


「アンナ! しっかり掴まっていろよ!」

「ん!」


 俺はアンナを、左腕で苦しくない位の力で腰辺りをガッシリと抱きしめ、アンナは俺の首に手を回して抱き返してきた。


 そして俺は()()()()()()()()()退()()()()


 俺達が居た場所はの魔法陣から、蒼い炎の柱が立ち上がった。


 サタンは続け様に指先を振り上げ、俺達の足下に魔法陣を展開しては蒼い炎を立ち上らせてきた。


 俺は未だに動かない死霊の兵士達を避けながら、サタンの魔法を躱し続けた。


「威勢が良いのは口だけか? 避けてばかりではないか!」


 チッ! いい気になりやがって! でも実際ヤツの言った通りだ。 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 だが最初、避ける前に魔法を()()()()()()()()、使う事が出来なかった。


「そらそら、どうした英雄よ! 所詮は人間共が祭り上げた愚かな称号か!」


 サタンは休む暇を与えず魔法攻撃を繰り出し続けてきた。


 やれやれ。 調子に乗っているアイツの鼻っ柱を叩っ切るか。


 【白雪】の強化と身体強化、俺が直接触れているアンナに防護魔法を使うことは出来ている。 それら数少ない情報から考えるに、俺から離れると魔法が発動しないと思われる。


 先程から身体強化をしながら、幾度となく試して発動しないから。


「これなら!!」


 【白雪】に魔力を乗せた斬撃を飛ばした。


 だいぶヤツから離れた位置からの斬撃は、周囲で突っ立ている死霊の兵士達数人と催眠に掛かり突っ立っている皇帝と皇妃を()()()()、ヤツに届くかと思われたが、両脇に控えていた騎士二人に剣で阻まれた。


 俺の斬撃がすり抜けた後、数人の兵士と皇帝と皇后はその場に崩れ落ちた。


「ご主人様!?」

「心配するな、ちゃんと生きてるから」


「はははははは! どうしたのだ! やっと反撃してきたと思ったら、オレ様に届かぬし、キサマ自身で皇帝達を()()ては世話がないではないか!」


 大丈夫。俺が【白雪】で放った斬撃には、新たに付与した白雪の力が()()()()()から、死霊になった兵士達は動くこともないし、皇帝達の催眠も解けている。


 それより問題なのは、本来なら騎士達に止められる威力ではないのに止められたことだ。これだけ言っても反応がないとこを見るに、予めサタンの事知っていたのか…………。


「拍子抜けだよ。これならオレ様が直々に相手をするまでもない」


 と、ヤツは玉座に座り込み、指先だけで自分達の前に気を失って倒れている皇帝と皇后を浮かせ、端っこに飛ばした。


 ヤツは皇帝達が死んだと思ってくれたらしく、俺としてはある程度やりやすくなった。


「お前達でも十分勝てるようだ。その力、存分に奮ってみろ」

「「はっ!」」


 で、玉座に座ったサタンの代わりに、男女の若い騎士が抜剣したままの状態で前に出てきた。


 この騎士達、俺の弱体化した斬撃を防いだんだ、弱く見てもSランクの実力は持っていると見るべきだな…………。


「アンナ、これから先激しくなる、しっかり掴まっていろよ」

「ん!」


 と、男騎士が先に前に出てきて、だいぶ離れていた距離を一気に詰め、斬りかかって来て、【白雪】で受け止め、弾き返し、続け様に女騎士が斬りかかって来た。


 またも受け止め、女騎士に蹴りを入れて吹き飛ばし、突っ立っていた死霊の兵士達にぶつかった。


 と、その隙に、男騎士が再び斬りかかって来ていて、【白雪】で受け止めた。


「なあ、アンタ。どうしてアイツに付き従う?」

「知れたこと。()()()が決めたからだ!」

「この帝国が滅んでもいいのかよ!」

「それが必要ならば!」

「っ!? チッ!!」


 男騎士が抱き抱えているアンナを殴ろうとしてくるのを、蹴りを入れて吹き飛ばし距離を取らせた。


「やれやれ、魔法も満足に使えないはずだから余裕で勝てると思っていたのに」


 女騎士が起き上がっており、男騎士を死霊の兵士達を使い受け止めさせ、傍に寄っていた。


「そうだね。伊達に聖王国と騎士王国で英雄と呼ばれていないって事だろうよ」

「それじゃあ様子見はこれぐらいで、本気で殺ろうか」

「あぁ、そうだね」


 そして、両騎士は禍々しい魔力を吹き出し始めた。 


 やれやれ。城を壊さずにはいかないな。


※※※

※カイトが皇城に着いた頃、ギルドでは──


「ただいまー………………って、あら、カイは?」

「リーナちゃん!」「リーナ様!」「リーナお姉ちゃん、紅鬼ちゃんおかえりなさい」「「「「お、おかえり、なさい」」」」


 挨拶を交わしたリーナは、両腕で抱えていた紅鬼【小型】を、同じく織姫【小型】を両腕で抱えていたカルトに手渡した。


 紅鬼【小型】を受け取ったカルトは織姫【小型】と隣り合わせに抱きしめ、紅鬼【小型】はイヤな表情を浮かべながらも、織姫が【小型】手を握っているのを離すようなことはしなかった。


「カイ君は今、アンナちゃんと一緒に皇城に向かったの」

「皇城に? 何か起こったのね。話を聞かせて頂戴」

「うん」


 そしてリーナはノエルから話を聞き、ティアがカイトが洞窟で視た召喚魔法陣の事も話し、気になったリーナはティアの【ゲート】で見に行った召喚魔法陣を視て納得して、ギルドに戻ってき、何故か手紙を書き始めた。


「リーナちゃん、何書いてるの?」

「カイ宛とエルス宛よ」

「エルスちゃんにも?」

「そうよ。それにさっさと外に居る者達を片付けて、帝都に結界を張っておかないとカイが存分に戦えないわ」


 リーナは洞窟で視た事をノエル達にも話した。


「そ、それじゃあボク達のて、帝国はその悪魔に……………」

「そう言うことね。そしてその所為で厄介なことにもなってしまったから、早々に向かいたいのよ」


 そしてリーナは手紙を封筒に入れ、一通をギルマスのシュミットに、二通をノエルに渡した。


「ノエル。申し訳ないけど、結界を張った後、カルトちゃんとレイ君と共に皇城に向かって、カイとのちに喚ぶことになるエルスに手紙を届けて欲しいの」

「エルスちゃんを喚ぶことになるの?」

「この帝都を建て直すには、エルスの力が必ず必要になるから」

「分かったよ」

「ティアは私と合流よ。ユノ姉様とミカは此処に残って、後から来るエルスの手伝いをお願いします」

「分かったわ」「分かりました」

「それじゃあ、ちゃっちゃと外の死霊達と騎士を黙らせましょうか」


 リーナはその場で両手を左右に伸ばし、リーナを中心に魔法陣が展開し、浄化の光【セイクリッドウォール】をほとばらせ、周囲に拡大、その光が建物の外にまで広がっていく。


 少しして、バタバタ、ガシャンガシャンと倒れる音が聞こえ、その音が鳴り止む。


 そのままリーナは魔力感知で周囲を調べた。


「───もう大丈夫よ。そしたらティナ」

「──どうしたの?」

「あの力を使わないといけないから、よろしくね?」

「分かったわ」


「そしたら、ノエル、ティア、カルトちゃん、そして私で皇城を中心に、帝都の四方に配置に着いて結界を張るわよ。もちろん()()の結界を、ね」

「分かった」「分かりました」「はい」

「紅鬼と織姫はレイ君を守って頂戴」

「任せろ」「承りました、リーナ様」

「それではシュミット様、マリーさん。急ですけど私はこれで失礼しますわ。あとその手紙はエルスが来るまで、決して開けないで下さいね。でないと、大変な事になりますから」

「わ、分かりました。では、皆さんご武運を」


 シュミットの言葉に頷き返して、リーナ達は空を飛んで四方に散らばり、念話で確認しあった。


『みんな、所定の位置に着いたわね?』

『うん、着いたよ』

『はい、着きました』

『私も着いたよ、お姉ちゃん』

『それじゃあ、カイが存分に戦える様に、最硬の結界を張ります。みんな、()()を存分に使いましょうか』

『『『はい!』』』


 それぞれが目を閉じ、自身の魔力の中にある最も輝く聖なる光に触れ、その力を解き放った。


 神の力──カイトしか使うことが出来なかったその力を、リーナ達は使う事が可能になっていた。


 リーナは紫色を、ノエルは藍色を、ティアは銀色を、カルトは赤茶色の煌めく魔力を纏っている。


『みんな!』


 リーナの掛け声に合わせ、自身の周囲に纏わせていた魔力を柱の様に迸らせ、一斉に【ホーリーシャインロウ・ゴッド】を展開させた。


 リーナ達それぞれを中心に、その光は()()()()の帝都全体を温かく、安らぐ光が包み込んだ。

お読みいただきありがとう御座います。

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