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家族で異世界転生~そして、少年は~  作者: 長谷川
第3章 動き出す者達、そして~
79/111

11話

「アンナ達が言っていた洞窟はここか」


 マリアンナ達を救った翌日。


 俺は朝早くから、新皇帝になったランス・チャールズが変貌した原因の洞窟に、ティアと共に足を運んでいた。


「俺が住んでいた村(町)の近くの森に出現した洞窟みたいだな」

「そうなのですか?」

「あぁ。 シュミットさんから聞いた話だと、この森は魔物達もあまり居なくて、新米冒険者の薬草採取などで足を運んでいる程、穏やからしいんだ」

「その割には結構居ましたね、魔物」

「あぁ、そうなんだよ」


 ティアが疑問に思うのは仕方ない。 なんせ遭遇して退治した魔物は、ワイルドウルフやナイトコボルト、ゴブリンナイトなど、A級冒険者だと二人、三人、B級冒険者が四、五人で相手をしないといけない程の数の魔物達が居たのだから。


 まぁ、そのほとんどはティアが張り切って退治したのだけど。


「それじゃあ中に入るか」

「はい」


 ティアの使い魔のカルマは今、自分が住んでいた世界に戻っているから、俺がティアをしっかり守らないとな。


 洞窟は大人の体格になった俺達が悠々と入れる程広かった。


 中は薄暗く、光魔法【ライト】を使って灯りを確保して、慎重に警戒しながら進んで行った。


 たが、拍子抜けする位、洞窟内は魔物も居らず、10分程でアッという間に最奥に辿り着いてしまった。


「何もありませんでしたね、カイト様」

「ああ」


 ティアに返事をしつつ、だだっ広い空間を見渡し、中心部辺りに歩を進め、何の気なしに地面を見ると、


「カイト様、コレって…………?」

「召喚術式だ」


 しかも、紅鬼やバロン達とは違う、()()()()()()()()()()()程の術式。


「一体何を召喚したのでしょうね?」


 それが問題だ。 だからこの召喚術式を鑑定してみることに。


 …………。


 …………………………。



「………コレは!?」

「カイト様?」

「分かったぞ、ティア! この術式は──」『カイ君!』


 と、そこで、ノエルから念話が届いた。


『どうした、ノエル!』

『今ギルドを囲むように、帝国の兵士が配置されているの!』


 チッ! 早々に仕掛けてきたか! 近い内に接触があると思っていたが、随分と早い!


『分かった、直ぐ戻る! 俺が張った結界があるから大丈夫だと思うけど、油断はするなよ!』

『了解!』


「カイト様?」


 ティアはどうしたんです?の表情を浮かべていた。


「今ノエルから連絡があって、ギルドが帝国の兵士達に取り囲まれている!」

「それじゃあ、直ぐに戻りませんと!」

「ああ!」


 手をかざし【ゲート】を発動させて、ティアを先に行かせて、俺はこの洞窟に()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()を張って、【ゲート】に入った。


 俺が鑑定で視た召喚術式。 新皇帝ランス・チャールズが変貌したと言われる理由が分かった…………………分かってしまった…………。


※※※


「ノエル!」

「カイ君!」

「状況は?」


 ギルドに戻って早々に、1階のホールに集まっていたノエル達を確認した。 まだリーナと紅鬼は戻って来ていない。


「ギルドを取り囲んでいるだけで、何も言ってもきてないの」

「ん? 何も言ってこない?」

「うん」


 それはそれで不気味だな。


 俺は窓に近寄り、白のカーテンを少しだけずらして、外を確認した。


 外に居る兵士達は等間隔に隙間無く配置されて、剣や盾など武具を身構える様な事もせず、ただただ直立不動で立っていた。 顔を見るにしても、フルフェイスの兜を被っているため、見ることが出来ない。


 窓から離れ、俺はその場から兵士の数を確認するため、魔力を薄く広範囲に流して探知をした。


 ……………………感知出来たのは2人だけだった…………………


 そして再度兵士を見て、鑑定をすると、ステータスの種族欄には死霊の文字があった。


 チッ! やはりか!


「みんな聞いてくれ。 今、あそこに並んでいる兵士達のステータスを確認したら、もう死人になっている」

「ど、どういう事だい!? カイト君!?」


 シュミットさんは驚きながらも、取り乱すことはしなかった。


「人や動物、魔物に至るまで少なからず魔力を持っているのは分かりますよね?」

「あ、あぁ。 魔法を使えない赤ちゃんでも、魔力は成長と共に少しは増えるからね」

「そうです。 そして俺は、その魔力を宿した者達の数を調べるために、自身の魔力を周囲に流して調べたのです。 俺はこのやり方を魔力探知や感知と呼んでいます。 ですが、この魔力探知に引っ掛かるのは生者だけです」

「どうして生者だけなんだい?」

「生者は自身の体内に魔力を保つ事が出来ますが、死人は違います。 死人は魔力を保つ事が出来ないのですよ」

「そうなのかい?」


 あぁ。 シュミットさん達この世界の人達には分からないことだったな。 直ぐに火葬したり、アンデッドになるかのどちらかだから。


「そ、それじゃあ、兵士達はどうして動けるのです?」


 マリーさんが恐る恐る訊ねてくる。


「それは、術士に魔力で操られているからですよ」

「術士、ですか?」

「はい。 ネクロマンサーと呼ばれる、死者を弄ぶ事に長けた術士」


 まさか、実際にこんな事をするヤツが居るとは…………。


 念の為にギルドに張った結界も、対アンデッド用の浄化の力を付与した状態にしたんだけどな。


「このギルドに居る者達よ!!」


 と、シュミットさん達に説明していたら、外から大声が聞こえてきた。 

  

「先日、奴隷であるマリアンナ・ナルニア・ドライアと、レイシャード・ナルニア・ドライア、それと元帝国民共、奴隷を買い占めた者よ! 話がある! 大人しく出て来い!」


 窓のカーテンを少しずらして、ギルドの入り口近くに、他の兵士達より立派な鎧を着た赤髪の青年騎士が、声をあげていたのを確認した。


「どうするのカイ君?」

「……………もう少しだけ、様子を見る」


 そうして俺達はそのまま静かに、騎士の呼び掛けを無視した。


「最後の通告だ! 大人しく出て来いならば、ある者達を殺すことになる! その者達はマリアンナとレイシャードに関係する者達だ!」


 もしや、皇帝と皇后の事か…………?


「……………ご主人様…………」「兄上……………」


 アンナとレイが心配な声をあげ、服を掴んできた。


「心配するな2人共。 俺達が何とかするから」


 そして俺は外に出た。


「キサマが奴隷共を買った者だな?」

「…………………あぁ」


 あくまでも奴隷と言うのかコイツは……………。


「ランス皇帝陛下がキサマと話しをしたいと申した。 無駄な抵抗はせずに来てもらおうか!」

「………………抵抗したらどうなる?」

「先程述べた通り、奴隷2人と関係する者達が死ぬことになるだけだ!」


 俺1人なら何とかなるにしても、アンナとレイの親を人質に取られている以上、大人しくしておくか。 それに、新皇帝に会えるチャンスか……………。


「分かった、大人しく付いて行く。 ただ数人一緒に連れて行きたいが構わないか?」

「ああ、良いだろう! 但し、1人だけだ!」

「分かった」


 そう返事をしてギルドの建物に入った。


「カイ君どうなったの?」

「新皇帝が俺に会いたいそうなんだ。 それで1人だけ、俺と一緒に連れて行けることになった。 それで何だが、アンナかレイのどちらかに来てもらいたいんだが?」

「…………………それなら私が行く」

「姉上が行くならボクも──」


 レイはアンナの服を掴んで、不安な表情を浮かべていた。


「…………………レイはここに残っていた方が良い」

「どうしてですか、姉上?」

「…………………念の為に」

「念の為?」


 アンナも最悪の状況を想像しているか…………。


「…………………そう、念の為。 だから、ここに居ないとダメ。 ここに居れば安全だから。 そうだよね、ご主人様?」

「あぁ。 俺が張った結界に万が一があっても、ノエル達が居れば対応してくれる」


 そう言ってノエル達を見ると、頷いて返事をしてくる。 しかも、自信満々の笑み付きで。


「……………わかり……………ました……………」

「……………ん。 レイは良い子」


 アンナはそう言いつつ、レイの頭を優しく撫でてあげていた。


「大丈夫だよ、レイ君。 お兄ちゃんに任せればレイ君達のパパ、ママ、それにこの国も救ってくれるから」

「……………カルトちゃん…………」


 歳も近いからか、昨日の内に大分仲良くなったからな。


「そう言うわけだから、大人しく待っててくれるか?」

「………………分かりました兄上。 どうか姉上と父、母をお願いします」

「ああ、任せろ」


 そして俺はアンナを連れて、騎士達が乗ってきた馬車に乗り、皇城に向かった。


 皇城に向かう騎士は、俺と話していたヤツの他に死霊となっている兵士数人が同行しただけで、残りの兵士達はギルドを囲った状態を維持している。


※※※


「出ろ」


 しばらくして、皇城に着いた俺達を馬車から降りる様に、騎士が馬車の扉を外から開けた。


「付いてこい」


 馬車から降りた俺達を、皇城に居た死霊の兵士達が取り囲んできた中で、騎士の後を付いて行く。


──ガクン──


 ん? 何だが身体に変な違和感を感じるぞ?


 皇城に足を踏み入れた途端に、そんな感じを受けた。


 それでも、対して問題ないと思いつつ気にしないで、先を進む騎士に付いて行く。


 で、しばらく歩いて俺達が着いた場所は、豪華な造りの扉の前。その両脇に、微動だにしない槍を持った死霊の兵士二人。


「ここは謁見の間だ。 ここでキサマ等とお会いになる」


 そして、騎士は豪華な造りの扉を押して中に入った。

 

 中は広く、中央に絨毯が敷かれて、その長さは扉から最奥の玉座にまで敷かれている。


 で、その中央の絨毯の直ぐ両脇に、槍を携えた死霊の兵士達が等間隔に並んでいる。


 俺達を連れて来た騎士はそのまま先を進み、俺とアンナは後を追い掛けた。


「皇帝陛下。 奴隷共を買い占めた者を連れて参りました」


 玉座に座る豪華な服装に身を包んだ男。 そしてその皇帝の両脇には騎士が男女2名居り、蔑んだ眼差しでこちらを見ていた。


 闘技場で見掛けたその者──皇帝は、頷き、手を薙ぎ払う仕草をして、騎士を下がらせた。


「まずは知っているだろうが、名乗らせてもらう。 私が皇帝ランス・チャールズだ。 二国の英雄カイト・クサナギ殿」


 コッチの事は知っていますってか。


 俺は片膝を付けて挨拶を返す。隣に居るアンナも同じ体勢を取った。


「ご存じでしたか。 それでは改めまして、お初にお目にかかります。 わたくしはカイト・クサナギと申します。 この度、皇帝陛下がわたくしにお話しがあると伺い、参りました」

「ああ、そうだ。 奴隷にした者どもを買った貴殿と話がしたかったのだ。 だが、どう言う訳か、貴殿の隣に居る者は、首輪をして奴隷扱いにしたはず。 だか、その首輪が無いのは如何なものか?」

「……………首輪はわたくしが外しました。 邪魔だったもので。 ですが首輪など無くてもこの子この通り、逃げることもせず、わたくしの傍に居ります。 それに──」


 俺はアンナに視線を送り、


「……………ご主人様が、私の居場所」

「と、こう申すのです」


 まさか、こんな所でアンナのご主人様呼びが、役立つなんてな。


 だが、皇帝はいぶかしめながらこちらを見ていた。


「───まぁ、良いだろう。 あの首輪を外す事が出来た貴殿の力が知れたのだからな」


 俺の力…………だと?


「それはどう言う意味でしょうか?」


 待ってましたとばかりに、皇帝は口角を片方つり上げた。


「貴殿が途轍もない力を有していると言う話は聞いておる。 だが、実際、どの程度の力を有しているのかを、この眼で確かめようと思ったまでよ」

「………………それで、結果は?」

「合格だよ! 貴殿の隣に居る者達に付けた首輪は、ちょっとやそっとでは取れないほどに、強力な防護魔法を施していたのだから。 貴殿がドラゴンを単独で屠れる程の、S()S()()()()と呼ばれる実力者だとは聞いていたからね。 だから、それ程の防護魔法を施したのだよ。 じゃ無いと、意味がないからね」

「意味……………?」


 そんな事を確かめてどうしようってんだ?


「貴殿を誘う意味だよ。率直に言おう。私と手を組まないか?」


 そう言った皇帝は玉座に座りながら、俺に手を差し伸べてきた。


「……………………それはどう言う意味です?」

「なぁに。 私と貴殿が手を組めば、この世界の王に成れるぞ?」


 ……………この世界の王か……………………正直興味ないな。 それに望んだ訳でも無いのに神になってしまったから、ホントにこの世界の王ってのに、なる必要もないんだよな。


「……………………それは、他の国々と戦争をって意味ですよね?」

「まあ、そうなるな。 素直に降伏するなら戦争などはしないがな」

「…………まぁ、それは無理でしょうね。 で、もし私が皇帝陛下の手を拒めば?」

「この者達がどうなるかは、保障しないな」


 と、皇帝は指をパチンと鳴らし、それが合図とばかりに、脇の柱の陰から、白髪の少し小太りの壮年の男性と、キレイな灰色の髪をした若く美しい女性が、首輪を付けられその首輪から鎖が伸び、兵士に引っ張られて出て来た。 


「お父様、お母様!!」


 隣に居るアンナが駆け寄ろうとしている所を、俺は手を掴みストップをさせた。 なんせ、皇帝の隣に居る騎士と周辺に居る兵士達が腰に帯剣している柄に手をかけたから。


「…………………その二人に何かしたのか?」


 俺は駆け出しそうなアンナを抱きしめ、ヤツに聞いた。 普通はアンナの呼び掛けに応えても良いはずなのに、全く反応がないから。


「少々、催眠をかけさせてもらっただけだ。 ()()()()()()()()ぞ?」

「………………」

「で、どうするのだ、英雄殿?」

「そんなの決まっている。 断る!」

「この二人がどうなっても良いのか?」


 その言葉に、アンナは俺を見上げてくる。


「俺が救い出すから問題ない。 それより、いい加減正体を現したらどうだ?────────()()()()()()()様よ!」


お読みいただきありがとう御座います。

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