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家族で異世界転生~そして、少年は~  作者: 長谷川
第3章 動き出す者達、そして~
76/111

9話

 闘技場。

 腕に覚えのある強者達が、1対1で試合をする事などに使われる場所。また、その他のイベントに使われる事がある場所。


 そこに俺とリーナ、カルトちゃんと小型状態の紅鬼と織姫が、カルトちゃんにぎゅっと抱っこされながら居る。


 織姫が隣に居るから、紅鬼はムスッとした表情で人形に徹している。ノエル達曰く、織姫が居るから、紅鬼は照れてその様な態度を取るって話。


 で、俺達が今居る場所は闘技場の中。中央に舞台があり、その舞台の下の一部に、イスとテーブルを用意された場所。入場時に人、1人金貨1枚(3人分で金貨3枚)を取られ、代わりに番号札を渡されて、その指定の場所に参加者達は座っている。で、俺達は舞台から離れた一番後ろの場所。


 俺達が渡された番号は1000。ギリギリのタイミングで入ったせいもあるが、参加者がそんなに居る事に驚いた。


 そして少しして、身だしなみが整った壮年の男性と、鎧を着た兵士30人。そして兵士達に囲まれて、首輪と手枷を付けられ、その二つを鎖で繋がれている人達。見た所、子供から老人までの老若男女200名が舞台上に上がって来た。


 首輪を付けられた人達の身だしなみはキレイだが、その表情は絶望と言う一言が的確。ただ1人を除いては。


「さあ、本日お集まりの皆様! 本日は記念すべき最初の日で御座います!」


 舞台上に上がった壮年の男性が、魔法で声を響かせて話していた。


「それは、新皇帝に成られました、ランス・チャールズ皇帝陛下様の最初の行政であるからです! その内容は奴隷制度! その素晴らしき制度の為に本日、チャールズ皇帝陛下様自らその様子をご拝観する為に、お越しになられております!」


 男性は右手を自身の後ろ側に向けて、その方向を見るとそこは貴賓室らしく、兵士2人を傍らに、気品漂う服装をした茶髪の壮年の男性が座って居た。


 アイツがこのくだらない制度を作った張本人か……………。


「さあ、それでは始めましょう! それでは記念すべき第1の奴隷はこの者です!」


 1人の兵士が鎖を引っ張りながら前の方に連れて来たのは、とても真っ白でキレイな長髪、キレイ過ぎる顔立ち、純白のドレス姿でも分かるほどのメリハリの付いた身体付きをした女性。


 その女性は他の人達とは違い、絶望の表情をしてるわけでも無く、希望に満ちてる訳でも無い。ただただ何も感じていない。いや、何も思っていないと言った方が的確かな? そんな印象を受けた。


「それではご紹介しましょう! このモノを知っている方が殆どでしょう! ですが改めて紹介します! この者は前皇帝エドワード・ナルニア・ドライアのご息女であります、マリアンナ・ナルニア・ドライアであります!」


 この国の姫か……………。


「その見目麗しの容姿は、帝国の至宝と呼ぶに相応しいほどであります! ですが、その至宝も今から、どなたかの永遠の至宝になるのです!」


 ……………あくまでも物扱いか…………………。


「さあ、至宝は誰の手に渡るか! 最初の金額は王金貨10枚から始めます!」


 って、結構高いな! 1人で1億の価値か。ミカとユノ(本人の希望により)2人合わせて王金貨10枚を払ったけど、今からこれがどこまで跳ね上がるか………………


「ちょっ、ちょっと待ってくれ!」


 っと、舞台に近い前の方で1人の男性が手を挙げて、勢い良く立ち上がった。


「はい、何でしょう?」

「い、いきなりその値段は高くないか!? も、もう少し低くても………………」

「何を仰いますか、これでも低いのですよ! このモノは処女でまだ15歳! この意味はお分かりでしょう! 落札した方の好き放題に出来るのですよ、奴隷ですから! さあ、分かりましたらイスに座り、番号札を掲げて落札金額を仰って下さい!」


 そう言われて、立ち上がった男性は着席した。


「さあ、気を取り直して参りましょう! 王金貨10枚から始めます!」


 再度進行役からその言葉が発せられて、最初に札を挙げたのは先ほど立ち上がった男性。


「15枚!」

「さあ、一気に5枚も上がりました! さあ、他にはいませんか!」


 の、呼び掛けに次々と値段が上がっていった。



「さあさあ、王金貨100枚まで上がりました! さあ、他にはいませんか! 居ませんと、100枚で1番の方が落札しますよ!」


 しばらく静観していたら、そこまで跳ね上がった。


「カイ、そろそろ良いんじゃないかしら?」

「そうだな、決めるか」


 待ってましたとばかりに俺は番号札を掲げ


「150!」


 と、叫んだ。


「おーっと、ここで一気に50も跳ね上がったぞ! さあさあ、他に居なければ1000番の方に決まります!」


 だが、進行役の呼び掛けに誰も反応を示さなかった。


「決まりです! 王金貨150枚で、1000番の方が落札となります!」


 その宣言に、拍手やら歓声が聞こえてきた。


 終始無表情で、どこかを見つめていた少女と始めて目が合った。俺は笑みを浮かべて応えると、少女の瞳が潤んだように見えた。遠いからそう思っただけかも知れないが……………。


「それでは次に参りましょう! 次の商品は──」


 その後は、絶望の表情を浮かべている帝国の住民が出されてきた。

 その後も俺とリーナで全ての人達を落札していった。


 お金は、ノエルも自分のとこの弟子たちの店の売上金を渡され、使わずに貯めていた事もあり、今回役に立てて欲しいと言われ渡されていた。


 リーナは実質、クサナギ商会のトップだから、お金を無駄遣いせず貯めていたものだから、国を造れる位の金額を持っている。とはリーナ本人の話。


 お金の支払いは、自分達で支払いの場所に行き、落札した人と交換するか、身なりの良い服装をした人がその人の元まで取りに来るかのどちらか。


 俺達は支払いには行かず、取りに来てもらう方を選び、受け取りに来た人に理由を話、落札した人達には他の部屋で待っててもらっている。


 安い人(老人)でも金貨1枚から始まり、上がりに上がった値段から1.5倍から2倍の値段まで上げて落札している。


「さあ、それでは最後の商品はこちらです!」


 そんなことをしている内に、最後に出て来たのは、真っ白な髪に、幼く可愛らしい顔立ち、身なりの良い服装を着た、カルトちゃん位の歳と思われる少年。


「最後に紹介しますのは! 記念すべき第1号になりました、マリアンナ・ナルニア・ドライアの弟君レイシャード・ナルニア・ドライアであります! 歳はまだ10歳! 無垢な子供にどう調教を施すかは、お任せします!」


 今度は皇子か………………そうすると皇后はまだ、ヤツの元に……………?


「それでは、王金貨10枚から始めます!」


 と、またしてもその値段から始まった。始まったが誰1人、金額を上げる者が居なかった。


「さあ、居ませんか!」


 再度進行役が呼び掛けても、誰も応えなかった。


 誰も居ないなら好都合。


「100!」


 念の為、ガッツリ値段を上げておいた。


「さあ、出ました! 王金貨100枚! 100枚です! 他には居ませんか! 居なければまたしても、1000番の方が落札します!」


 だけど、誰1人告げる者は居なかった。


「それでは決まりです! 王金貨100枚で、1000番の方が落札です!」


 これで、全て人達の所有権が俺達になった。


 奴隷扱いになった人達を救う為に支払った金額、王金貨で300枚程。


 俺はノエルから渡されたお金を殆ど使い果たして、金貨数十枚程しか残っていない。リーナはまだまだ余裕と言っていた。具体的な金額は教えられなかったけど、一体幾ら持っていることやら………………頼もしい限りだよ。


 そして俺達はその足で支払い場に向かった。


 支払いを済ませ、代わりに今まで別室で待機させていた199人と、先程まで舞台に居た皇子が、俺達の元に。手枷は無くなっていたが、首輪は付いたままだ。


「それでは皆さん、俺に付いてきて下さい!」


 そう呼び掛けても殆どの人が不安な表情を浮かべ、その場から動かなかった。


 ただ1人の少女と、少女と手を繋いでいる少年以外は…………。


 その少女は、1番最初に奴隷とされた帝国の姫君、マリアンナで、少年はマリアンナの弟のレイシャード。


「………………………」


 マリアンナは何も言わず、ただ黙って俺を見つめていた。俺は目を背けることなく見つめ返した。


「……………姉上…………?」


「………………ん……………この人は、信じられる」


 マリアンナは何かを感じとったのか、そんな事を言っていた。


「ほ、本当ですか、姫様!?」


 同じ境遇の人がその真意を確かめる様に尋ねていた。


「………ん。この人は、私達を無下に扱わない。そしてその証拠に、私達は全員この人に買われたから」

「た、確かに、姫様の言うとおりだ!」

「そう言えば私達全員揃っているわ!」

「そ、そうじゃ! 普通ならこんな年寄り、誰も欲しがるヤツは居らんて!」


 マリアンナの言葉をきっかけに、不安な表情を浮かべていた人達は、次々に自分達が置かれている状況を理解していった。


「そう言うわけです──」「ちょっと待て、キサマ!」


 と、奴隷にされた人達じゃないどこかのバカが遮った。


 その声がした方に視線を向けると、身なりの良い服装の男性数人が居た。


「何か御用ですか?」

「キサマ! 1人でそんなに奴隷共を買って良いと思っているのか!」


 いや、良いも悪いも、進行役の人は何も言わなかったし、お金もちゃんと払っていたけど?


「そうだ! キサマが倍近くの値段まで一気に上げるから、我々は誰1人奴隷を買えなかったんだぞ!」


 あぁ。つまり難癖を付けに来たのか。


「キサマ1人では荷が重いだろう! 我々がもらってやってもいいぞ! どうだ、ん!」


 身なりからして貴族だろうけど、ここまで頭の悪い奴らが居るのか。全く以て嘆かわしいな、この国は……………。


「それでは皆さん、俺に付いてきて下さいね!」


 バカの相手は疲れるから無視に限るな。


「おい待てキサマ! 我々を無視するとは何事だ!」

「そうだ! 何処の輩かは知らないが、礼儀がなっていないんじゃ無いか!」


 礼儀がなっていないってアンタ等が言うのかよ!


「そう言うならお前らが、礼儀とやらを教えてくれるのか?」

「何だキサマ! その態度は!」


 どうやら話が通じないらしい……………。


「礼儀がない相手に、こちらがへりくだると思っていたのか?」

「こちらが大人しくしていれば、いい気になりおって!」


 いやいや、大人しく無かったじゃん。ダメだ、コイツら。


「それで、どうするんだ?」

「こうするのさ!」


 難癖を付けてきた男の1人が手を挙げると、柱の影や通路の脇から続々と腕の立ちそうな者達が姿を現した。その数20人程。もちろん武器は持っていない。入場時に武器の持ち込みは出来ないと言われていたからな。


 まぁ、魔力感知で居るのは知っていたけどな。


「それで。ソイツらで何をするんだ?」

「決まっている! その数の奴隷共を1人で守り切るのは出来まい! やれ!!」


 手を掲げていた男が手を振り落とすと、腕が立ちそうな者達が襲い掛かってきた。俺の後ろに居る人達の何人かは悲鳴を挙げていた。


 こんな奴ら、問題ないんだけど?


 俺は腕を挙げず、人差し指だけをアイツらに向けて、視えない光の壁を作った。


「ぐはぁ!」「い゛でぇ!?」「ぐげぇ!?」


 と、光の壁に激突して悲鳴を上げている。


「な、なんだ!? 一体何が起こっている!?」


 そう騒ぎ出すのは仕方ないけどな。


 そして俺は親指を立てて、バカなヤツらを閉じ込める様に結界を作った。


「ええーい、正面が無理なら回り込め!」


 そう言ったけど、遅かったな。


 回り込もうとしたヤツらはまたしても、視えない壁に激突して悲鳴を上げていた。


「な、何なんだ!? どうしてアイツらに近付けない!?」


 そりゃあそうだ。お前らに近付いて欲しくないからな。


「なあ、一体何をしているんだ? 自分達だけで?」

「キ、キサマ!! キサマが何かしたんだろう!!」

「おいおい、変な言い掛かりは辞めてくれよ。俺はただここに立っているだけだが?」


 俺は身振り手振りで違うと否定した。それでも結界の中のヤツらは騒ぎまくっていた。煩いから遮音でも付け加えるかな?


 でも面倒だから【スリープ】をかけて結界のヤツらを眠らせた。


 よし、これで()()()()()()()()()()


「よし、では改めて皆さんこの中に入って下さい!」


 俺は指だけを立ててその場に【ゲート】を開いた。


「………………これは…………?」


 マリアンナが代表して聞いてきた。


「これは別の場所に瞬時に移動出来る魔法です。行き先は聖王国にある俺の屋敷です。この帝国に居るよりは安全ですから」

「……………ん、分かった」


 マリアンナは返事をして【ゲート】に向かった。


「あっ、ちょっと待って欲しい。マリアンナとレイシャードは俺の傍に居てくれないか?」

「………………何で…………?」「姉上?」

「ちょっと話を聞きたくて」

「………………ん、分かった」


 どうやらマリアンナは返事は遅いが、しっかりと聞いてくれるな。


「他の皆さんはこの子、カルトちゃんに付いていって下さい!」

「皆さん、私に付いてきて下さいね」


 で、カルトちゃんは紅鬼をリーナに渡して【ゲート】に入っていき、その後を残りの人達が付いて行った。その際に俺は指を鳴らして、1()9()8()()の首輪を外してあげて、首輪が外れたのを喜んでいた。


 マリアンナとレイシャードのは外さずにおいた。


 2人は何で?の表情を浮かべてこちらを見てきて、俺は後で外すからと言って納得してもらい、2人は頷いて返事をしていた。


「それじゃカイ、私は()()()

「あぁ、分かった」


 リーナは紅鬼を抱きかかえたまま、その場を後にした。


 これからリーナは進行役と接触して、他に奴隷になった人や、される人の情報を聞き出すために別行動をする。リーナだけでも問題ないが、念の為に紅鬼を連れて行く様に言ったから、リーナの方は大丈夫だろう。


「さて、俺達も行こうか」


 198人全員がすんなり【ゲート】に入ったのを見届けて、俺は2人を連れて、ギルドに戻る予定だ。首輪を付けた2人を大っぴらに見せつけて……………。


「………………ん」

「(コクコク)」


 マリアンナと頷き返事をしたレイシャードを連れて、俺は闘技場を後にした。


 さて後は………………壁際に隠れて、俺達の事を見ていた者達がどう動くかだな。


※※※※※※

※おまけ※


カルト「ねぇ、リーナお姉ちゃん」


リーナ「なぁに、カルトちゃん?」


カルト「気のせいなら良いんだけど、リーナお姉ちゃんが用意した、異空間の部屋のスペースって、何だが広くなっている様な気がするの? ユノお姉ちゃんとミカお姉ちゃんも一緒に寝る事になったのに、ベッドも窮屈じゃないような……………?」


リーナ「ああ、その事。カルトちゃんの気のせいじゃ無いわよ」


カルト「え?」


リーナ「この異空間の部屋には、人数が増えれば広くなるように付与してあるから」


カルト「リーナお姉ちゃん、スゴい! お兄ちゃんみたい!」


リーナ「ありがとう、カルトちゃん。でも、確かにこんな事が出来るのは私とカイ、それにカルトちゃんくらいね」


カルト「え? 私も?」


リーナ「神の力に目覚めた……………最高神であるカイはもちろん、私も神の力を使える様になった影響でこんな事が出来るの。だから、私の神の力の加護を純粋に受け入れているカルトちゃんも出来るのよ。ノエルとエルスには出来ないのだけどね」


カルト「そうなの?」


リーナ「ええ。試しに2人にもしてもらったら出来なかったから。多分だけど、私達がなった名前の神の影響ね」


カルト「そうなんだ。そしたらジアンお兄ちゃん達も出来るんじゃないの?」


リーナ「もちろん、試しにルセ達にもやってもらったけど、出来なかったわね。あの子達はそこまで魔道具には執着していないからだと思うの」


カルト「そうなんだ」


リーナ「だから、人数が増えればそれだけ広くなって、窮屈な思いをせずに過ごせるのよ」

お読みいただきありがとう御座います。

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