8話
一旦ギルドに戻った俺はリーナ達に事情を話、ユノさんとミカ、それと新皇帝と奴隷に関する情報を話した。
ただ、シュミットさんとマリーさんは深い眠りに付いているらしい。リーナが物凄い勢いで書類を片付け、シュミットさん達に【スリープ】と【リフレッシュ】の魔法をかけてあげたそうだから。
「そう、事情は分かったわ。そしたら私達も歓迎の準備をしましょうか」
「怒らないのか? 勝手にそんな事をしてって?」
「それこそまさかよ。っていうかむしろ増やして下さいってのが本音よ」
「どう言う意味だ?」
カルトちゃん以外の3人で頷き合っているけど、本当にどう言う意味?
「カイ君、正直に応えて。あの日満足いく位出来た? ほんの少しでも、満足じゃなかったって思ったら、カイ君を満足させるにはちょっと私達だけじゃ足りないの。カルトちゃんはまだ幼いから無理だし」
カルトちゃんは何の事か分からず首をかしげている。
俺もそこまで言われてやっと理解したよ。確かに転生前の頃より、まだまだする事が出来たから…………
「理由は分かったよ」
「それじゃあカイが分かった事で、ユノさん達を迎える準備をしましょう。もちろんカイも正装をして迎えに行くのよ?」
「あぁ、分かったよ」
俺達はユノさん達を迎える準備を仕始めた。
そしてユノさん達を迎えに行く時間、夜になった。
俺はリーナの提案で、正装した馬車で迎えに行く事になり、娼館前に馬車を停めて、中に入った。
「待ってたよ」
俺の姿を見た受付の人がそう声をかけてきた。
「それにしても、ちゃんと正装して来るなんて、アンタ貴族様だったのかい?」
「貴族ではないですよ。ただそれに近い感じの者です」
「そうかい。まあ、アタシとしては、あの子達をないがしろにしてくれなければ、誰でもいいさ」
受付の人はどこか遠くを見て、悲しげな眼差しをしていた。
「そんなことより、今あの子達を呼ぶから待ってな」
「はい」
そう言って、受付の人はカウンターから出て来て、1階の一番奥の部屋に向かった。
そして部屋から受付の人が出て来た。
「待たせたね」
そう言っても、貴女1人しか見えないのですけど?と思ったら、その人の後ろから、赤のドレスを着て髪も結ったミカと、白のドレスを着てこちらも髪を結ったユノさんが姿を現した。
「キレイだよ、2人とも」
「カイト君!」
ミカは目から涙を流しながら、抱きついてきて、俺はちゃんと受け止めた。
「やれやれ、どうやらとんでもない男の様だったようだね」
受付の人は呆れ気味に笑っていた。
「ユノさん」
俺は右腕をユノさんに向けて来るように、向けた。
ミカはまだ嬉し泣きだろう、胸元で泣いていた。
だけど、一向にユノさんはコッチに来ない。
「ほれユノ。アンタの男が呼んでいるんだ、行ったらどうだ?」
「…………オーナー…………」
どうやら受付の人はオーナーだったのか…………
「大丈夫。あの男は絶対にアンタをないがしろにしない。アタシはもう2度と、そうする輩にアタシの娘をあげたりしないと、あの子に誓ったんだ。だから、心配する事なく行ってきな。そしてアンタの子供でも見せに来ておくれ、ユノ」
ユノさんはオーナーの言葉を聞いて、泣き出してしまった。
「はい…………はい! 今まで………ありがとう…………御座いました…………」
「ほら、泣きつく相手が違うだろ? それにせっかくの化粧が台無しじゃないか」
オーナーはそう言いながらも、優しくユノさんの背中をトントンとしていた。やはり、この人なりの愛情を与えていたんだな……………
「ほら、お行き」
オーナーはユノさんを離し、ユノさんはまだ泣きながらもコッチに来て、俺はユノさんも抱きしめた。
「アンタ、名前は何て言うんだい?」
俺はユノさんとミカを抱きしめながら、オーナーをしっかりと見た。
「カイト。カイト・クサナギです。冒険者をしています」
「………約束をしておくれ。絶対その子達をないがしろにしないって。じゃないとアタシは、死んだってアンタの事を許しはしないよ カイト・クサナギ!」
「この名に誓って!」
そしてオーナーは、涙を流し出してしまった。
俺は軽く会釈して、2人を抱きしめながら娼館を出た。
「さあ、2人とも馬車に乗って」
「うん、うん!」「ええ」
2人はまだ泣いてはいたが、すんなりと馬車に向かい中にはいった。
流石にいきなり家の中って事はなく、馬車の中はシンプルな内装の状態にしていた。
流石にここまで盛大な挨拶をしていきなり、予想外の事をするほど、俺もリーナも常識を無視したくは無いから。けどギルドに着いて直ぐに説明をする事に変わりはないけど…………
そして俺は御者台に乗り、馬車を走らせた。
※※※
しばらくしてギルドに付き、2人を降ろした後は、カルトちゃんにシュナイダー達の事を任せて、建物に入った。
俺が先頭で入り、ユノさん、ミカと続いて入ったタイミングで、クラッカーが鳴り響いた。
「ようこそ、ユノさん、ミカさん。貴女方お二方を歓迎しますわ!」
「「えっ!? えっ!?」」
リーナの声にもビックリしている2人。先ほどまでの泣き顔が一転して、驚きに変わってしまった。
「さあさあ、立ち話も何ですから座って下さいな」
リーナの言葉に従うように、ノエルとティアがユノさんとミカの手を掴み、引っ張って行きイスに座らせた。
テーブルにはノエルが頑張りすぎて作った、王城顔負けの豪勢な料理が並べられている。
カルトちゃんも戻って来て、シュミットさんとマリーさんも含めた全員で、ユノさん、ミカの歓迎会を始めた。
ユノさんとミカは最初はスッゴく戸惑っていたが、リーナ達が積極的に話しかけて、次第に打ち解けていき、俺とシュミットさんだけを残して、家の部屋に引っ込んでいった。
リーナが『これから女性だけでの話をしないといけないから』と言っていたから、たぶん有無を言わさず、婚約者にするとか何とかの話だろう。
残った俺達は、『女性は大変だ』と酒に酔っているシュミットさんの愚痴を聞きながら、シュミットさんの身の回りを聞いた。
シュミットさんはバツイチであり、結婚はもうたくさんだと言っていた。で、マリーさんはどうなのと聞いたら、『あの子は良い子だよ。愚痴のひとつも言わず、私の仕事に付き合ってくれて』と言っていた。
更にマリーさんの好きな人って知っていますか?と聞くと『いや、分からないな。どんな感じの人が良いのだろうか?』と、マリーさんの好意に気付いていないご様子。この事をリーナが知ったら、エルスの代わりに二人をくっつけるだろう。
と、そんな他愛も無い話をして、マリーさんだけ戻って来て、代わりに俺がリーナ達の下に向かった。
そして家の部屋に入ると、リビングには居らず、寝室に向かうと、案の定リーナ達がベッドの上に居た。しかも寝間着であるネグリジェ姿で。
「カ、カイト君。リーナちゃん達から聞いた、と言うより聞かされた話は本当なのかい?」
「わ、私とユノ姉様も、カ、カイト君のお、お嫁さんになるって!」
あぁ、その事か。
「ええ、そうなりますね。ただここに居ない方も居ますから、結構な人数になりますけど」
俺の身の回りの事を話していなかったから、驚くのは仕方ないけど。
「ほ、本当に良いのかな? こんなにいきなり嬉しい事が起きちゃって………」
「………ホントよね…………ほんの些細なきっかけしかなかったのに…………」
ミカとユノさんは、驚きつつも口元が綻んでいる。
「良いのですよ、ユノ姉様、ミカ。苦労した後は、幸せが舞い込むモノですから。ね?」
………………リーナさんや、何故にユノさんを姉様って呼ぶ? いくら何でも、その呼び方はおかしくないか?って言っても、はぐらかされるのがオチか……………
「まぁ、そう言うことでこれからよろしくお願いします、ユノさん、ミカ」
ユノさんとミカは互いに見て、そしてこちらを向き
「「こちらこそ、末永くよろしくお願いしますカイト君」」
2人して声を合わせてきた。
そして俺達はそのまま、全員でベッドで寝ることに。
それにしても、2人も加わったのにベッドのスペースがまだまだ余裕がある。それまでは、更に人が増えたらスペースは無いな、と思っていたのに、おかしいな? またリーナがやらかしたか?
そんな事を思いつつ、意識を手放した。
翌日はロイさんに、新皇帝の身の回りの調査をして欲しいと頼み、こちらも情報集めをしながら、奴隷扱いとなった人達のオークションが開催される日となった。
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