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家族で異世界転生~そして、少年は~  作者: 長谷川
第3章 動き出す者達、そして~
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7話

 翌日、ロイさんから新たな情報を聞かされた時は、途轍もなく胸クソが悪くなる話だった。


 その情報は、新皇帝が新たに定めた制度で近い内に、その制度に関係するオークションをすると言う話。しかも、その制度は奴隷制度。


 その人の人権を無くす行為。まだある程度の自由が聞く娼婦の人達よりも、酷い扱いになる話。


 詳しい内容は分からないから、引き続きロイさんは情報を集めると言って別れた。


 そして俺は、再び娼館を訪れた。


 直ぐには進展は無いと思いつつも、少しでも何かしらの情報を集めないと…………


「いらっしゃい」


 そう言ってきたのは、昨日と同じ恰幅のいい人。


 チラッと受付の小さな掲示板を見ると、昨日ミカが言っていた女性の名前があった。先客が居た様だ。 


 ユノさんしか名前があがっていないから、ユノさんに続いて人気の人を指名出来るのだが…………


「アンタ、今日もあの子とするのかい?」


 ふと、昨日より険しい表情をしている受付の人が、声をかけてきた。


「……………は、はい」


 昨日既に代金を支払っているのもあるから、咄嗟にそう返事を返していた。


「さっさと昨日と同じ部屋に行きな」

「は、はい」

「それと、ひとつ警告だ。余計な事をすれば、後で痛い目をみることになるよ」


 険しい表情のままの受付の人は、それだけ言って席を立った。


 一体何があったんだろう? 俺、昨日何かやらかしたっけ?


 心当たりが無い事を疑問に思いつつ、昨日の部屋に向かった。


 部屋に入ると、昨日と変わらない内装だから、そのままベッドに腰掛けて、寛いで待つことにした。


 しばらくして、ドアをノックしてくる人が居て、返事を返すと、ドアを開けたのは、白のネグリジェと下着を着たミカだった。


 昨日と違ってミカは俯いておらず、ちゃんと顔をあげていた。


「本日もお越しいただきありがとう御座います、カイト君」

「約束したからね。また明日って」

「はい」


 そして俺の隣に腰掛ける様に軽く手を叩いて、ミカは遠慮する事なく座った。


「それでカイト君、今日はするの?」

「残念ながらするつもりはないよ。だから今日も話をしてあげるよ」

「そ、そうなんだ………」


 ミカはどこか焦った様に応えてきた。


「話をするのはイヤか?」

「ううん、違うの! カイト君と話をするのはとっても楽しいし、面白いから!」

「それなら良いが…………それならどんな話をしようか?」

「それならカイト君が冒険者になって、大変だった話が聞きたいな」

「分かった。それは俺が冒険者に成り立ての頃──」


 そしてミカは笑顔を見せたりして、俺の話を楽しく聞いてくれた。


※※※


 また、ドアをノックして立ち去る気配を感じた。終了の時間だ。


「今日はこの辺で。またねミカ」

「まっ、待って」


 俺はベッドから立ち上がろうとしたら、ミカが俺の腕をぎゅっと掴み、自身の胸の谷間に挟んだ。見た目通り、結構デカく、柔らかい。


 俺は立ち上がるのを辞めて、ミカが俺の腕を掴んだままの体勢で居た。


「……………一体どうしたんだ?」

「ご、ごめんね! じ、実はカイト君にお願いがあるの!」

「お願い?」

「うん。実は今日、私がカイト君とする事がなかったら、カイト君に会いたいって言っていたの」

「……………一体誰が?」

「ユノ姉様が…………」


 まさか、目的の人にこんなに早く会えることになるなんてな。しかも、あちらから言ってくるなんて…………


「分かった、会わせてくれ」

「うん」


 そして俺はミカに案内されながら、2階の一番奥の部屋に着いた。途中、ミカと同じ格好の女性の人達と遭遇したりもして、その人達はもれなく誘惑をして来た。


 まぁ、エルス達と寝ていたお陰で免疫が付いているから、それ程欲情もしなかったけど。


 ミカはドアをノックをしてから中に入り、俺も後に続いた。


「ユノ姉様、連れて来ました」


 そしてミカは、ソファーに横たわって寛いで、キセルをくわえている、ネグリジェ姿の水色の髪の妖艶な女性の傍に近づき、傍らに立った。


「ここに来たって事は、今日もしなかったんだね」

「はい」


 その女性の問いにミカが応えていた。


「初めまして。私はカイトと言い、冒険者をしています」


 その後に軽く会釈も混ぜて挨拶をした。


「ご丁寧にありがとう、カイト様。だけど私達、娼婦にそこまで上品な挨拶をしてくれなくて結構だよ」

「いえ、そうはいきませんよ。ミカはまだこれからでしょうけど、ユノさん位の方達は誇りを持ってしているのですから」

「…………………………これはこれは驚いたよ。まさか私達の事をその若さで理解しているなんてね、2()()()()()()()


 ………………こちらも驚いた。まさか、そこまで他国の事の事情を知っているなんて。


 ミカは驚きながら、俺とユノさんを交互に見ている。


「ユノさんはどこまで、私のことを?」

「別に情報屋をしているわけでも無いんだけどね。ただここに来て、私としに来るお偉い様方が勝手に愚痴っていくのさ。そしてその中で、とある冒険者様の話を思い出したのさ。若くして、英雄になった冒険者が居るってね。まぁ、私が聞いたその人の容姿とはだいぶ違うみたいだけどね」


 この人なら、やっぱり何か知っているかも知れないな。


「そこまでご存知とは、お見逸れしました。それで早速で申し訳ありませんが──」「新皇帝に関係する情報、だろ?」

「…………ええ。話が早くて助かります」

「まぁ、確かに、私から聞いたわけでもないのに、相手が勝手に話して言ったから、ある程度の情報を知っている。もちろん、英雄様が既に知っている内容かも知れない。それでも?」

「はい、それでも」


 ユノさんはキセルをくわえながらも、真剣な眼差しでこちらを見つめてきた。俺は目をそらすことなく、ユノさんを見返した。


「───ひとつ条件がある」

「私に出来ることなら」

「この子の初めての相手をしてあげてくれないか?」

「えっ!? ユノ姉様!?」「…………………」


 まさかの条件がそれか。


「そしたら、私が知っている内容をすべて話そう。どうだい英雄様?」


 ユノさんは薄ら笑いを浮かべている。ミカはミカで驚き戸惑っているけど。


「分かりました。その条件をのみます」

「それじゃあ決まりだ。ここでして良いから。さあ、ミカ、張り切って頑張んな」

「えっ、えっ、ちょっ、ちょっとユノ姉様!?」

「大丈夫。アンタなら出来るさ」


 未だに戸惑っているミカに近づき、ミカの腕を掴み、自分の方に抱き寄せ、お姫様抱っこをしてベッドに寝せた。


「わぁお。流石英雄様、やることが様になっているじゃないか」

「茶化さないで下さいよ」


 そして俺は、赤面して震えているミカに優しく手を添えてあげると、ミカの震えが止まった。


「カ、カイト君………」

「よろしくなミカ」

「はい」


 そして俺はミカと──


※※※


「ありがとね、カイト君」

「いえ」


 俺はミカとして、しばらくの時間が経ち一通りの事が終わり、ユノさんがベッドに座り、眠っているミカの頭を優しく撫でながら言ってきた。 俺は少し離れた位置でベッドに座っている。


「ミカの最初の相手が貴方で良かった…………」


 彼女は優しげな眼差しをして、ミカを撫でていた。彼女はミカの母親であり、姉であり、家族であると言ってもいい、そんな眼差しで………


「この子はね、小さい時に、親に売られてここに来たんだよ」


 彼女はポツリポツリと語り出した。


「そんな事はこの館に居る者の殆どが、そんな境遇な奴らばかりさ。私もその1人なんだけどさ。だからかな、この子の事を本当の妹の様に接してあげていたから、出来ればこの子の初めての相手は、優しい人であって欲しいと思ってね」


 彼女は撫でるのを辞め、こちらを見据えてきた。


「だから、本当にありがとう」


 そして彼女は頭を深く下げてきた。


「気にしないで下さい。取引をしたとはいえ、女性を無下にするなと、身内に散々教えられましたので」

「カイト君みたいな人達だと、私達ももっと気が楽なんだけどね」


 お互いに苦笑いをしていた。


「それでカイト君。私が知っている内容を話そう」

「はい、お願いします。知りたいのは、新皇帝になったランス・チャールズが変貌した時季と何があったか、それと新たに定めた制度、奴隷制度に関する情報です」

「分かった。まずは新皇帝陛下の話から。あの方が今の状態になったきっかけは、どうやら半年前の調査に行った時かららしんだ」

「調査? 何のです?」

「この都市の近くに突如、洞窟が現れたそうだ」


 洞窟? しかも突然に?


「その洞窟が現れた場所には何が?」

「森があり、その森の中に今まで無かった洞窟があったそうだよ」


 俺の町……もとい、村に居た頃に起きた事と似ている。


「で、騎士団長自ら調査したと?」

「ああ。前皇帝陛下の命令で騎士団長率いる精鋭部隊で調査したらしいんだ」

「それで結果は?」

「何も無かったらしいよ」

「何も無かった?」


 洞窟の中は何も無かった? 突然現れたのに? 


「それからなのか、あの方の変わりようは、日に日におかしくなっていったのは。そして一緒に行った精鋭部隊もおかしくなっていったって話だ」


 うーん。突然現れた洞窟だと、今まで大人しかった魔神信仰教団の仕業か?


「私が知っているのはこんなものだよ。次に奴隷制度だが」


 ユノさんは突如表情が険しくなり始めた。


「近い内にオークションをするのは知っているだろう?」

「………はい」

「そこに奴隷として出される人達は、皇族と暴動を起こし捕まった人達って話だよ」

「皇族が!? 一体皇族のどの人が出されるのです!」

「そこまでは分からない。だけど皇族は亡くなった前皇帝陛下と今も生きている皇后様。そして皇女様と皇子様の4人」


 その中で、何人の皇族が奴隷として出てくるか。って事か。


「それで、そのオークションをする場所と日時って分かりますか?」

「場所は王宮に次いで大きい建物………その建物は闘技場。日時は三日後に開始するらしいよ」

「分かりました。ありがとう御座いますユノさん」

「……………………」


 ユノさんは返事を返してこないで、またミカの方を見ていた。


「それじゃあ、俺はこれで」「──ねぇ、カイト君」


 と、失礼をしようかと思ったら、ユノさんがミカを見つめたまま、話かけてきた。


「ミカの事、どう思う?」

「どう、とは?」

「この子の事、好きかい?」

「…………そうですね。好き、ではありますね」

「それならキミに、ミカを()()()欲しいなぁ」

「買う?」


 どう言う意味だ? ここでする行為も、買うって言うし…………


「そのままの意味だよ。この子の所有権をカイト君が買って欲しいのさ」

「…………………俺がミカを買わなかったら、どうなるんだ?」

「…………私がこの館で一番の稼ぎ頭の傍仕えをしていた頃、その人は大貴族様に買われた。もちろん()()()目的でね。しばらくして知った事だが、その人は貴族様の子を身籠もり、その事を知った貴族様に捨てられて、その身籠もったまま野垂れ死んだらしいんだ」


 つまり、その末路を辿る可能性があるって事か……………


「ユノさん自身はどうなんだ? 自分も買って欲しいとは言わないのか?」

「私はダメだね。もう色んな男に抱かれて、汚れてしまっている。こんな女を買う人は、その貴族様と同じ様な末路を辿らせるんだろうさ」


 ユノさんはミカを撫でるのを辞め、悲しげな眼差しでこちらを見つめてきた。


「だけどこの子はそうなる前に、キミみたいな人に買われた方が良いと思ったのさ」

「……………………」

「っと、ごめんね。キミにこんな話をしても仕方ないのに。さぁ、カイト君。私から聞きたい情報はもうないだろ。お終いだよ」


 俺は立ち上がり、部屋のドアの前に移動した。


「なぁ、ユノさん。もし、もしだが、自由になったら何がしたい?」

「…………………………自分の子供を身籠もり、楽しく育ててみたいな……………」


 そして部屋を出た。


 2階から下にくだり、受付に向かった。


「アンタ、ユノを抱いたりはしてないだろね?」


 高圧的にその人は言ってきた。余計な事をするなと言ったのは、この事か。


「抱いてはいませんけど、これを」


 飾りのバッグに手を入れて、金貨200枚が入った袋をカウンターに乗せた。そして、その中身を見た受付の人は目を見開き驚いていた。


「ア、アンタこれは!?」

「長居してしまった迷惑料と思って下さい。それと聞きたいことが」

「なんだい?」


 金貨の入った袋をそそくさと仕舞いながら、先ほどまでの高圧的な言動では無くなっていた。


「ユノさんとミカの所有権を買うには、いくらするんだ?」

「アンタ、そんな事を聞いて買うってのかい? しかも2人も?」

「いいから教えてくれ」


 そして受付の人は、紙に何かを書き始めた。


 少しして、受付の人は紙をカウンターに乗せた。


「これがあの子達の値段だよ」


 その紙を取り、見ると、そこに書かれていたのは、ユノさんが大金貨1000枚。ミカが大金貨5000枚。


「なんでこんなに差があるんだ?」

「そんなの決まっている。ユノはもう少し歳もいけば値打ちが下がる。その代わり、ミカはこの先があるからね、これでも安く見積もったつもりだよ。さあさあ、気が済んだだろう。あの子達を買うなんて、若造のアンタなんかに出来やしないんだから、用が済んだのならとっとと帰んな」


 受付の人は、シッシッとした仕草をしてきた。


「もし、買うって言ったら?」

「はっ! 出来もしないことを口走るんじゃないよ! アンタ、これ以上戯れ言を抜かすなら、出入り禁止にするよ!」


 いや、実際余裕で買えるんだよな。ギルドの依頼や国からの仕事、そして英雄になった時のお金をまともに使わずにいたから。そしてリーナから、商会設立の時から名前を使ったからと言う名目で、毎月お小遣いとして寄越してくるから。


 で、俺はまた飾りのバッグに手を突っ込んだ。


 そして俺が出したのは王金貨10枚。金貨と同じ大きさで城の絵柄が描かれているのが、王金貨。


「これで、どうだ?」

「…………こ…………これは……………まさか……………」


 受付の人は、王金貨を見た途端、ワナワナと震えながら、カウンターの王金貨を凝視していた。


「これで文句ないだろ? それにお釣りはいらないから、そっちはかなり得なはずだろ?」

「あ、ああ、確かにそうだね……………」


 未だに受付の人は、凝視をしていた。


「で、どうするんだ? あの2人を買うことはして良いのか?」

「……………………分かった。あの2人はアンタのモノだ。ちょっと待ってな」


 そう言って、王金貨10枚をちゃっかり持っていって、奥に引っ込んでいった。


 少しして、受付の人が戻って来て、紙を二枚カウンターに置いた。


「これがあの2人の所有権だよ」

「分かった」


 その紙を受け取り、そのまま飾りのバッグに仕舞った。


「そしたらアンタ、少し時間を…………夜になってから来な」

「どうしてだ?」

「あの子達をしっかりと洗い、正装させる為だ。身だしなみを整えて送り出すのが私の流儀だからさ」

「貴女はいい人だったんだな」

「ふん。曲がりなりにもあの子達の母親を務めているつもりだからね。どんな相手にさえ、私の大事な娘も同然の子達をあげるんだ、最後まできっちりしたいだけさ」


 この人は口は悪いながらも、ここの人達を大事にしているんだな。


「分かった。それじゃあ、夜迎えにくるよ」

「ああ、楽しみにしていな」


 そして娼館を後にして、一旦ギルドに戻った。

お読みいただきありがとう御座います。

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