間話
この魔法が全く使えない島にセリカと跳ばされてから、5年が経った。
跳ばされた矢先に、師匠であるガリアーノ様に会え、その後に、師匠の奥さんであり、セリカの魔法の師匠でもある、アイリーン様にも会えたの喜ばしかった。
二人共、ケガなども無く、元気にこの島で暮らしていた。
だけど、実際にこの島で暮らしていたのは、師匠とアイリーン様だけで無く、二人の間に生まれた双子の姉弟とドワーフの子供が一人。
そして、驚きなのが魔族が1人居る事だ。
魔族。 種族により色んな形をした角を生やし、背中に羽や翼、腰辺りに尻尾を生やし、魔力を糧に生きているので魔力が人族より多く、人族と同じ背格好の者も多い種族。
そんな魔族がこの島の事を知っていた。
この島の名前は、魔封磁島。 その名の通り、魔力を封じ込める特殊な鉱石が放つ磁力で成り立っている島。
この島は魔族領に近く、罪を犯した魔族はこの島に魔法で跳ばされ、強力な魔獣も居る中で、魔力を封じられた状態でジワジワと殺す為に、魔族の間で使われている、処刑島との話。
そんな魔族の処刑島に、師匠達が跳ばされて着て、島の周囲は激しい雷雨や渦潮になって、船を造っても壊れ、魔獣を使役して空を飛んでも、防御結界を張れないので、帰る手段が見つからずに住み着いた。
そして、この島で生活している時に、魔族が跳ばされて着て、師匠達と出会い、アイリーン様の料理を食べさせて貰った魔族は、そのお陰で生きられる様になった。と、言っていた。
師匠達は師匠達で、跳ばされて着た直後はどうにか帰る試みをしたそうなのだが、『どうせジェイドとセリカが居るし、何とかなるだろ』と、この島で暮らすことを、あっさり決めたそうだ。
そんな俺達もこの島に跳ばされて、事情を説明したら『あっ! じゃあ、そのカイトって子が居るなら、問題ないな』と、あっさりとした返答であった。
師匠達が、少々軽い性格なのを忘れていた。けど、変わらずにいたのは嬉しかった。
そしてこの島で俺達も暮らすことで、家庭を持つ事になった。
「あなた、いってらっしゃい」
「ああ、行ってくるよ、セリカ」「ぱぱー!!」
と、自宅である木造平屋の玄関の外で、セリカに挨拶をしていたら、足元に小さな衝撃を感じて視線を落とすと、長い薄水色髪をポニーテールにして、ピンク色を基調としたワンピースとエプロンドレス姿の、俺とセリカの娘、4歳のアイカが愛くるしい笑顔を向けて、抱き付いてきた。
「ぱぱー! あそぼー!」
俺〔白色のツナギ服〕はアイカを抱き上げ、抱っこをしてあげた。
「ははは、アイカは今日も元気だな」
「うん! アイカ、げんきー! あそぼー、ままもー!」
抱っこしたアイカは、腰まである水色髪をふんわり三つ編みにし前の方に寄越して、白を基調としたワンピースとエプロンドレス姿のセリカに小さな手を出して、手を繋ごう、とした仕草をしていた。
「もう。アイカったら、昨日も遊んだじゃない」
そう言いながらも、セリカは微笑みながら、アイカと手を繋いだ。
師匠達の下で、セリカとこの島で簡易だが結婚式を挙げて、アイリーン様から家事全般を教わり出した頃から、のんびりとした口調を辞めて、アイカが生まれてからは、母親としてきっちりとした行動を仕始めた。
「でも、アイカ。 今日はパパは遊べないんだ。ごめんな」
「なんでー?」
「お仕事をする日だからだよ」
そう言って、抱っこしているアイカをセリカに預けた。
愛くるしい笑顔を見せていたアイカから笑顔が消え、指をくわえセリカの服をぎゅっと握って、悲しそうな表情を仕始めた。
「そんな悲しい顔をしないでおくれ」
「やーだー!」
「まあまあ。アイカはパパの事が好きなんですものね?」
「うん、すきー! ままもすきー!」
さっきまで悲しそうな表情が消え、また愛くるしい笑顔を見せてきた。
自分の子供というのは、何でこんなにも可愛いモノなんだろう。
親になって初めて、伯爵様の気持ちが分かってしまったのだから。
「パパもアイカの事は好きだよ。 だから、アイカの為にお仕事をしてくるんだ」
「あらあら。 アイカだけですか、あなた?」
「もちろん、セリカもだよ」
「んふー! ぱぱとまま、なかよしー!」
「あぁ、そうだよ」
俺は優しくアイカの頭を撫でてあげた。 そうすると、愛くるしい笑顔を見せてきた。
「それにそろそろ、ナツメ達が来る頃──」「アーーイちゃーーん!」
と、噂をしようとした矢先に、女の子の声が聞こえた。
その声がした方向には、ふんわりとした薄緑色のショートカット、可愛らしく整った顔立ち、水色を基調とした服装の少女と、同じ薄緑色のショートカット、整った顔立ち、青色を基調とした服装の少年が走って来ていた。
もちろん顔馴染みで、その二人は師匠とアイリーン様の子供達だ。 両者共に活発な性格をしている。
「おねえたん! おにいたん!」
アイカは二人の姿を確認すると、手を振って応えていた。
「おはよう、二人共。 朝の日課はお終いかな?」
「おはようございます、ジェイ兄!リカ姉」「おはようございます、兄ちゃん!姉ちゃん!」
「おはよう、ナツメちゃん、ソウジ君」
走ってきた二人は、息を切らす事もなく、平然としていた。
二人の朝の日課。
それは、この島の外周部を走る事。 岩や樹木、崖といった歩くだけでも非常に歩きにくい、でこぼこした道40㎞を、1時間で走りきって来る事。
その上、殆どが体長3m以上の魔獣が居るのに、そんなモノを気にすることもなく、走って来るのだから、恐れいる子達だ。
「おねえたん! おにいたん!」
セリカから静かに地面に降ろされ、アイカはそんな体力の持ち主の二人に駆け寄った。
「アーイちゃーん! うーん!今日もかわいいね! おはよう」
「およう、おねえたん!」
ナツメはアイカを優しく抱き上げ、ぎゅっとしていた。
「姉ちゃん、オレもオレも!」
「もう少し待ってなさい。今は、姉ちゃんが堪能しているんだから」
手を差し出して、アイカを渡す仕草をしていたソウジは、『えーー!』といった表情を浮かべていた。
そんなソウジを余所にナツメは、アイカとほっぺたをくっつけあったり、スリスリしたりしていた。
「ははは。まあ、いつもの事だろ、ソウジ?」
俺はソウジの頭を優しく撫でてあげた。
「そうなんだけど…………兄ちゃん、今日は父ちゃんと姉ちゃんと一緒?」
「ああ、そうだよ」
「じゃあさじゃあさ、鍛冶の仕事が終わったら、稽古付けてくれよ!」
「ああ、分かったよ」
「そしたらボクにも稽古してよ、ジェイ兄」
どうやら、アイカを充分に堪能していたナツメが、ソウジに代わってあげると言わんばかりに、アイカをソウジに預けだしていた。
「アイちゃん! うーん、今日もかわいい! おはよう」
「およう、おにいたん!」
ソウジもナツメと変わらぬ行動をしていた。似た者姉弟だな。
「ナツメもか。……………ほどほどにしてくれよ?」
「それはジェイ兄次第かな?」
ナツメはイタズラな笑みを浮かべていた。
弟のソウジは素直なのだが、姉のナツメは負けず嫌いだから、自分が勝つまで勝負をしてくるのだ。 だから俺は、適当なところで負けて、納得してもらっていた。
「それじゃあ、俺は行くよ」
「いってらっしゃい、あなた」
「また、後でジェイ兄」「また、後で兄ちゃん」
「ぱぱー!」
ソウジに抱っこされたままのアイカは、愛くるしい笑顔を見せて、両手を全力で振ってくれた。
その所為で、ソウジの顔にぶつかっていたが………………ご愁傷様だ、ソウジ。
※※※
俺達が住んでる場所、師匠達の家、俺達の家、魔族達の家が建ててある集落から、5分程の場所に洞窟があり、そこが作業場になっている。
中には、鍛冶に必要な道具があり、その中でも1番大事な炉に、師匠が火を入れていた。
「おはようございます、師匠、姉弟子」
「おはようさん、ジェイド」
「おはようございます、お兄さん。それと、姉弟子ではなく、ここでもクララと名前で呼んでと、何度も言っているじゃないですか」
「いえいえ。流石にこういう仕事に関しては、先に教えてもらった方を敬わないと」
「クララ、この堅物に何度も言うだけ無駄だから、お前が諦めるしかないんだよ。 それより、作業を始めるぞ」
「「はいっ!」」
師匠ことガリアーノ様は、青白色の短髪、厳つい顔立ちに整えた髭、無駄の無い筋肉質の長身の体型に、青色のツナギ服を着た人物。
そして姉弟子ことクララは、背中まで伸びてる赤茶色の髪を一房の三つ編みに、可愛らしい幼い顔立ち、低身長のメリハリとした体型に、赤色のツナギ服を着た16歳のドワーフの女の子。
ドワーフの女性はガタイがいい体型か、細身の体型に分かれており、クララは細身の体型で、顔立ちは共通で成人しても幼く見え、勘違いを起こす人も居る。
なぜ、ドワーフである彼女がここに居るのかと言うと、ガリアーノ様に鍛冶の技術を師事した、ドワーフの鍛冶師であり、クララの本当の親から託されたと言っていた。
そんなこともあり、ドワーフ顔負けの鍛冶技術〔師匠自ら言っていた〕を修めた師匠は、鍛冶の技術を姉弟子に継承するために、鍛えている。 そこに俺も参加させられた。 師匠命令で。
俺達は、師匠の指導の下、鍛冶の技術を学んでいる。
※※※
「どう、お父さん?」
姉弟子が金剛石で打った刀を、師匠は真剣な眼差しで見ていた。
「───まだ、焼きが甘い上に、叩きも弱い。だが、この前よりは良くなった」
「………そう………」
姉弟子は少しだけ、口元が綻んでいた。
師匠に褒めてもらえて、うれしかったようだ。
包丁や鍋といった、生活に必要なモノはあらかた造ったので、武具製作をしている。
俺も師匠から、一通りの基礎を叩き込まれたので、武具を造る許可をもらって造っていた。
「ジェイドは、まだまだだな」
次に俺が黒曜石で打った刀を見て、そんな評価を下した。
5年ほどで姉弟子みたいな出来は、出来ないですよ。 なんせ姉弟子は、10年もやっているって言っていたから。
「よーし、それじゃあ、一旦メシ食いに戻るぞ!」
「「はいっ!」」
そう返事をして、汗だくになり疲れた身体で、作業場である洞窟から出て、集落に戻った。
「アイリ、ただいまー!」
「ただいま帰りました、お母さん」
「ただいまです、アイリ様」
師匠の自宅は二階建てで、もう一家族が住める程の大きさに造られている。
そして師匠が先に入りながら、そう挨拶をした。
「おかえりなさい」
そう返事をして奥から来たのは、黄緑色の腰まであるキレイなロングヘアー、美人顔、標準な背丈でメリハリの付いた細身の体型、青を基調としたワンピースとエプロンドレス姿の女性。 アイリーン様だ。
「さあ、まずはお風呂で汗を流してきなさい」
「おお」「はーい」「はい」
いつもの事で、師匠の自宅のお風呂場に、師匠と向かった。
師匠の自宅のお風呂は、男女別で入れる様に造ってあるので、問題なくクララもお風呂場に向かう事が出来るのだ。
そして、大人が5人も入れる程の湯舟で、気持ち良く師匠と入っていた。
「──ジェイドよ。考えを聞かせてくれ」
湯舟に浸かって少ししてから、師匠が口を開いた。
「やっぱり俺には、クララを嫁には出来ません。 セリカにもそう話しました」
「そうか……………お前が無理だとすると、後は…………………」
「ソウジでは、ダメなのですか? 家族とはいえ、血は繋がっていませんよね?」
「アイツか? アイツが成人する頃には、クララの方で受け付けないだろう。本当の弟の様に思っているしな」
師匠は湯舟で伸び伸びと寛いだ状態で、浴場の天井を見始めていた。
師匠には悪いけど、俺は最初にセリカと遭った時から、他の女性を嫁にするつもりはなかったのだから。
「どうするかな…………………いっそ、島を出るか?……………………」
「…………ん? 師匠、今、島を出るかと言いました? 出られるんですか?」
「んああ。たぶん、可能だろ」
「えっ!?」
あっさり言ったよ、この人は!?
「えっ!?えっ!? ちょっ、ちょっと待って下さい! この島から出られるんなら、どうしてもっと早く教えてくれなかったんですか!?」
「いや、最近はそんなこと聞かれなかったからな。 それに気付いたのは、ついこの間だからな…………だから、裸の状態で迫ってくるなよ、ジェイド。 俺にそっちの気はないぞ?」
「……………あぁ、すみません」
ついつい取り乱してしまった。それにしてもまたですか、師匠。
「どうして、さっさと島から出ようとしないんですか!」
「そんなの決まっているだろう。環境が良いからだ」
「環境が良いって、結構強い魔獣が居ますよね? それのどこが良いんです?」
「そんなことねぇぞ?図体がデカくやや強い魔獣が居るだけだろ?それがアイツらの修業にはもってこいだ。 鉱石にしても、カイト達が居る大陸では希少な黒曜石や白曜石、しまいには最高の強度を誇る金剛石が、ザックザック採れるんだ。 コレに関してはクララの鍛冶技術を格段に高めることが出来るんだからな」
確かに師匠の言うことはもっともだけど……………
「────それにしたって、どうしてそこまで、焦らずにいられるんです?」
「ん?……………そんなの決まっている。お前達を信頼しているからだ。 前に言ったろ? お前が言っていたカイトが、俺の知っている奴なら、責任をとれる真面目な奴だって。 それにアイツの師匠であるお前が、誰よりも信じてやらなくてどうするだ?」
「──────そうですね。 アイツなら何とかしてくれますね………………」
そう………………師匠から聞かされた師匠とアイリ様が“転生者”といった秘密と、カイト、ノエル、エルス様とリーナ様が、師匠達と転生者であることを───
「さぁ、風呂から出てメシにするぞ」
「はい」
そして俺達は浴室から出て、着替えをする時には、薄汚れた新しいツナギ服に替わっていた。 いつもアイリ様が気を利かせて用意してくれていた。
師匠と共に、ツナギ服の上半身の部分を、腰辺りで結んで、Tシャツが見える格好をして居間に戻ると、俺達と同じ格好をしたクララが先に居て、セリカ達も来ており、テーブルに向かって座っていた。
そして、立派な角や尻尾を生やし、青紫色の肩まで伸びた髪、整った顔立ち、褐色肌で長身痩躯でメリハリとした身体付き、ロングスカート型のメイド服を着た女性型の魔族、ミランダさんがアイリ様の傍らに立っている。
彼女は、魔王側近の給仕を任されていたらしく、ある日、魔王のお気に入りの器を割ってしまい、それが魔王の逆鱗に触れ、この島に跳ばされてしまい、そこでアイリ様と出会い、命を助けてもらってから、アイリ様に付き従っている。
そしてテーブルには、カレーライスとサラダが並べられていた。
このカレーの話をアイリ様に言ったら、『そしたらその子は、私の娘ね。どうしてコッチの世界に来たかは知らないけど』と、アイリ様もあっさりと、重大な事をサラッと言い放っていたなぁ。
「じーじ!」
「お! アイは相変わらず元気いっぱいだな!」
「あい!」
師匠は、椅子に座って手を振ってきたアイカの頭を優しく撫でてあげていた。
師匠が『オジサン、オバサンって言われるより、じーじ、ばーばって言われた方がましだ』と言って、アイリ様も同意して、アイカが生まれた時に、そう呼ばせることが決まっていたのだ。
「さぁ、みんな集まった所で、食べましょうか。ほら、ミランダも座って」
「──はい」
アイリ様からそう言われて、傍らに立っていたミランダさんは椅子に座り、この島に居る人全員が席に着いたのだ。
「よし、それじゃあ─」
「「「「「「「いただきます」」」」」」」「いたたちましゅ!」
師匠の掛け声で、全員で食べる前の挨拶をした。 アイカはまだ満足に言えないけど。
※※※
「そう言えばナツメ、ソウジ」
「なに、パパ?」「なに、父ちゃん?」
食事が終わり、アイリ様、クララ、セリカ、ミランダさんが片付けをして、その他のメンバーで寛ぎ始めた時に、師匠が抱っこしている時にアイカはおねむになり、アイカを抱っこしている師匠が思い出したように2人に訊ねた。
「後はなにが残っているんだ?」
「「ん?」」
2人は、師匠が言った意味が分からずに、首をかしげていた。
「俺が言った課題だよ」
「「あぁ~」」
師匠がこの2人に出した課題、それは、この島に居る大型魔獣を1人で対処出来ること。
「それで、どうなんだ?」
「それなら、後はジェイ兄だけだよ」
「オレも同じ。兄ちゃんだけ」
「そうか。大分早かったな」
そしてその課題に、俺から稽古や試合と言った正式な形で、一本取ること。 刀、しかも本当の刃“真剣”を使っての稽古を。
「そうなの? まぁ、ジェイ兄と稽古しだして暫くしてから、なんか拍子抜けするくらい、ブレードウルフ達が弱く感じちゃって」
「オレもオレも! 何でか分かんないんだけど、クリスタルゴーレムも易々と斬りやすいんだよね」
「そうか…………………なら、ジェイド」
「何でしょう?」
「鍛冶はやらなくて良いから、暫くコイツらの相手に専念しろ。─── 鑑定も7まで身に付いたしな」
師匠が俺をしばし視ていたと思ったら、スキル【鑑定】のレベルを視ていたみたいだ。
師匠に強制的にやらされた鍛冶で、鑑定スキルを習得出来てしまったのだから、ナツメ達の事も事情があるのだろうな。
だから、師匠達のステータスに“転生者”があって、それを聞いたときに、カイト達の異常なまでの成長速度に納得がいったんだ。
「分かりました」
「やったー! それじゃあ早速、稽古しようぜ兄ちゃん!!」
「あっ!ズルいぞソウジ! ボクもジェイ兄と稽古する!」
ソウジとナツメは左右で、俺の両腕を引っ張り、急かしてきた。
「はーい、おまたせーって、ナツメ、ソウジ。 お兄さんの腕を引っ張ってどうしたの?」
「これから兄ちゃんに稽古付けてもらうんだよ、姉ちゃん!」
「そうそう! って、ララ姉がその手に持っているのって──」
「クリームプリンよ?」
クララは、トレイに人数分の器を持っていた。
「「やったー!!」」
ナツメとソウジは、俺の腕を引っ張るのを辞めて、再度席に着いた。
師匠とアイリ様の躾で、食事をする時は基本、座って食べるよう言われていたから。
アイカは、ナツメとソウジの声にビックリして起きて泣きだしてしまったのだが、師匠が咄嗟にプリンを食べさせたら泣き止み、嬉しそうに食べていた。
カレーと言い、プリンと言い、アイリ様が作る料理の殆どが、アイリ様達が居た世界の料理だったのを知ったときは、羨ましいと思った限りだ。 どれも美味しいから。
それから、プリンをじっくりと堪能したナツメとソウジに、引っ張られながら、2人に稽古を付けてあげた。
お読み頂きありがとう御座います。