2話
「ギルドカードと金色のタグ?」
「えぇ。 前々から、エルスちゃん達に言われていたのよ。 一応ステータスの中身は、他人には見せてはいけない事になっているじゃない」
あぁー。 確か、村長に貰った時、そんなことを言っていたはず。
「それでエルスちゃん達が、ギルド専用のカードを作ったらどう?って、話になって、リーナちゃんのおかげで、やっと完成したのよ」
「えっ。 リーナのおかげ? どういうことですか?」
「専用の機械を作って貰ったからよ」
まさか!?
そう思ってリーナを見ると
「神ですから」
だけじゃないだろ!?
「って、言うのは冗談で、アイテム創作のスキルで作ったのよ」
「えっ!? アイテム創作でそんなこと出来たか?」
と、言うより、リーナも使えたのか、アイテム創作。
「なに、簡単なことよ。 武器や防具は作れないけど、機械の類いはアイテムと割り切るだけの話よ」
「だからって」
「それに、神になったのだから、その力も使った強引なやり方だけどね」
あぁ、なるほど。 俺が【神格化】した状態で放つ、【ゴッドブレス】と同じ理屈か。
「それで必要な項目をその機械に入力すると、その全ランク共通のカードが発効されるのよ。 このカードに自分の血を一滴付けると、その人の名前とランク、それと魔物を討伐したかどうかの判断も出来るようになるのよ」
「魔物を討伐したか分かる? どういう事だ?と、言うよりどういう仕組みになっているんだ?」
「それがコッチのタグにも関係しているのよ。 ロールさんお願いします」
おっと、ロールも知っているのか。
「はい、ここからは私が。 カイト君、魔物を討伐した証で、その魔物の討伐部位が、討伐した証ってのは知っているよね?」
「えぇ、何度もしていましたから。 素材になるモノもありますし」
「そうなの。 で、ごく偶にだけど、討伐をせずに、その部位だけを持ってくる冒険者が居るの」
それっておかし…………い…………
「もしかして、何処からか入手しているとでも?」
「えぇ、そう言う事です。 確実な証拠も無いものですから、その冒険者を処罰する事も出来ません。 なので、カサドラ様が持っているタグの出番なのです」
ほう、スゴいな。 けど、どういう理屈でそんなの分かるんだ?
「それでカサドラ様。 試験はどうでした?」
「えぇ。 リーナちゃん、エルスちゃん、ノエルちゃんに共通して作って貰った機械で作った、ギルドカードとタグを何人かの冒険者で試したところ、リーナちゃんの作った機械のモノが、ちゃんと作動したの」
って、さり気なくカサドラさんは言っていたけど、エルスとノエルもアイテム創作使えたのかよ!
「そしたら、私が大地と商業の女神になったから、そう言う現象が起こせたって事ですね」
「そう言う事でしょうね」
リーナとカサドラさんだけ、分かるような話をしているよ。
「で、結局、タグって、どんな役割をするのさ?」
「あぁ、御免なさいね。 つまり、このタグを肌身離さず付けて魔物討伐をすると、コッチのギルドカードに情報が転送されて、報告をしに来る。 そしてその時、ギルドカードを預かった時に分かる様になるって事が、分かったのよ」
なるほど。 カサドラさんが言った通りだと、何処からか討伐部位だけを持ってくる冒険者が、討伐依頼をしていないって事が分かるのか。
「えっと、それでそのタグが金色なのはどうしてなんです?」
「現在最高ランクであるSSランクの証として作ったのだけど……………」
ん? カサドラさん、少し歯切れが悪いな。
「先程の戦闘を観て、ジアン君達をSSランクにしようかと思ったの」
「………えっ!? それって可能なんですか? 他の支部のギルマスの推薦状も無いといけないんじゃ?」
「本当はそうなのだけど、他のギルドマスターの方達に貴方達の強さを説明したら、私に一存すると言っていたから、問題は無いのだけど……………」
またしても歯切れが悪いな。
「むしろカイト君、神である貴方の実力がジアン君達よりも上なのは確実でしょ。 SSランクで良いのかって思ったのよ」
「えっ。悩む事無いです──」「それでしたらカサドラ様!」
そのまんまって言おうとしたら、エルスが割り込んできたよ。
「更にSを増やして、SSSランクにしてしまいましょう! カイトただ唯一の称号! そして、ギルドマスターと同様の権限も使える様にするのですよ!」
「………………………確かに。 エルスちゃんの言うとおりにした方が無難かも知れないわね」
「ちょっと待った! それでしたら、神になったエルス達も同様に、しないといけないんじゃないですか!」
「…………それもそうね………」
よし! 俺だけ特別扱いされなくて済むぞ!
「カサドラ様。 私達は現状のランクで構いませんわ。 でも、カイトはランクを上げた方が良いですわ。 何てったって、英雄ですから」
エルスめ! ワザと英雄の部分だけ、強調しやがった!
「うーん? カイゼル君とオルドネス君はどう思うかしら?」
「エルスたんの言うとおりで、ワシは構いません、カサドラ様」
「ええ。私もカイゼルと同じ意見です」
王様2人してあっさり承諾したよ。
「じゃあ! そう言うわけで、カイト君には、最初で唯一のSSSランクにアップと言うことで!」
カサドラさんが宣言した瞬間に、拍手喝采が起こった。皆も同意した瞬間であった。
「それとお父様、オルドネス様。 カイトに一国の王の権限を与えてみてはどうです?」
「私は構わないが…………」
「………………エルスたん。 そうする必要があるのだな?」
「はい。 近い将来必要になります」
義父さんとエルスが、真剣な顔付きでいた所をみると、エルスの未来予知が関係しているのか?
「それではカイトよ」
「は、はい」
義父さんはそのまま真剣な顔付きでこちらを見てきた。
「お主のSSSランクの称号と共に、一国の王の権限を授ける」
「────はい。…………………で、王の権限って、実際はどんな権限なのです?」
「ん? うーん? 簡単に言うとじゃな、お主の発言で国が無くなる程じゃな」
「またまた~義父さんもこんな時に冗談は辞めて下さいよ」
「お父様の言った事は本当よ、カイト」
「えっ!?」
そう発言したエルスの方を見ると、にこやかにしていた。
「貴方が気に入らない国や街、村があれば、私はためらいも無く滅するつもりよ。 リーナも同じでしょ?」
「まぁ、そうかな」
「私はちょっと、そんなことしたくは無いかな」
ノエルはやらないだろうけど、リーナは本当にやりそう。
「そういう訳で、お主と同じ神になったエルスたん達の攻撃を防ぐすべは無いから、あっという間にこの世界の地形が変わるじゃろうて」
「イヤイヤイヤ、そしたら王の権限はいらないでしょうよ!?」
「そうは言ってもの~………………」
義父さんはエルスの方を見ていたけど…………
「心配し無くてもいいわ、カイト。 本当にやるつもりは無いですから。 王の権限を説明する上で、そう言う事が出来るって言ったつもりなのだから」
「そ、それなら良いけど…………」
実際、本当に滅ぼしけねないよな、エルス達なら。
「それで、諸々の事を決めないといけないのだけど、それが終わったら、私はギルドマスターを退任しようと思うの」
おっと! いきなりカサドラさんがそんなことを言ってきたぞ。 もしかして最後って言ったのはそう言う事だったのか?
「でも、その後釜は誰に任せるつもりなのですか?」
「それは、バーン君に任せるつもりなの。 で、決心は付いたかしら、バーン君?」
カサドラさんはバーンさんを見ていた。
「…………………………それなのですが、私は辞退しようかと。 その代わりにナリアを、カサドラ様の後任に指名したいと思います」
「なっ!?私ですか!?」
バーンさんの発言に、ナリアは本当にビックリしている。
そりゃあそうだよ。 この人達っていきなり、予想外の事を言ってくるから。
「バ、バーンさん!? ど、どうして私なんです!?」
「そうね。 バーン君、理由を聞かせてもらえないかしら?」
カサドラさんもまさか、断られるとは思っても見なかったようだった。
「理由は簡単ですよ。 カイト達に次ぐ実力を有しているのですから。 それに、支部に居る冒険者の世間話を小耳にはさんだのです。 本人が自覚しているか分かりませんが、ナリアは人気があるのですよ」
「に、人気ですか?」
はて? 確かに婚約者の中で、身長も高くてモデル並に美人なのは確かだが、それだけじゃないのか?
「それもこれも、姫様が仕組んだのでは?」
一同の視線ががエルスに集まった。
「まぁ、私が仕組んだのはあくまでも、バーンさんの後任の支部に、ナリア先生を据える様にしただけですわ。 私がしたのは、それだけですわ」
何だかんだで、エルスが絡んでいるのかよ。
「まあ、そういう訳で、ナリアをカサドラ様の後任にしても問題は無いと思います。 ロール君も居ますから、充分にサポートもしてくれるでしょうから」
「と、言うことだけど、ナリアちゃん。 バーン君の推薦もあった事だし、どうかしら?」
「どうと言われましても…………………」
ナリアは困った表情を浮かべていた。
「ゴ、ゴルテアさんでは、ダメなのですか!?」
ナリアは苦肉の策で、騎士王国支部のギルマスの名前を上げた。
「ワシはやらんぞ! ワシは書類仕事は苦手でな、支部の事だけでもいっぱいいっばいだからな!」
と、ゴルテアさんはその後は、笑い声を挙げていた。
「ナリアちゃん、やってみたら。 私もしっかりサポートするから」
「し、しかしだな…………」
ロールの手助けの言葉を聞いても、中々決断できずにいた。
「ねぇ、カイト。 ちょっと、耳をかして」
「なんだよ、エルス。いきなり」
「良いから、はやく」
エルスに急かされて、エルスに耳を傾けた。
「─────えっ!? ホントにソレを言えって!?」
「えぇ、1発で先生は直ぐに良い返事をするわ」
い、いや~、そうだろうけど~。 マジか。
エルスは『さぁ早く』の眼差しを向けていた。 やるしかないのか。
「ナリア」
「な、なんだカイト」
未だに、迷っているナリアに近付き、ナリアの耳元に顔を近付けた。 みんなに聞かれるのが恥ずかしいから。
「俺のナリアなら、カサドラさんの後任を充分果たせる。 だから、自信を持て」
それだけ言って、ナリアの耳元から離れると、顔を真っ赤にして、動かなくなった。
ナリアだけでなく、改めて言った俺も恥ずかしくて、赤面しているに違いない。
「先生!」
「──────は、はいっ!!」
エルスが硬直状態のナリアを呼んでやっと、動き出した。
「それで先生、カサドラ様の後任は引き受けますの?」
「え、えぇ。 わ、私で良ければ、引き受けます!」
「だ、そうですわ、カサドラ様」
「え、えぇ。 カイト君に何を言われたのか分からないけど、私の後任にはナリアちゃんと言うことで。 バーン君もそれで構わないのでしょう?」
「はい」
ナリアはナリアでまた、先程の事を思い出して、動かなくなっていた。
「それで、カサドラさんは退任した後は、何をなさるんです?」
「退任した後は、孤児院の先生をするつもりよ」
「孤児院ですか?」
「えぇ。 ここグラティウルの孤児院で働く大人の人が少ないですからね。 エルスちゃんの勧めもあり、そうしようかなと思ってね」
「エルスの?」
やれやれ、色々と根回しをしているようで。
「カサドラ様には、私の後釜で聖王国の宰相にでも、と、思っていたのだけれど、カサドラ様が出来れば、楽しい仕事の方が良いとのご希望があったから、それで」
「孤児院と」
「えぇ。 聖王国の孤児院は私が管理、ここグラティウルはリーナが、騎士王国はセシリアさんが管理をしているわ。 もちろん孤児院の維持費は国と商会から賄っているわ」
ほう、スゴいな。 と、言うより、俺に何の情報も寄越さないよ、この人達は。 情報を集めようとしなかった俺が悪いんだけどさ。
「なるほど。 それと、何故に俺に教えてくれないの、貴女達は?」
「あら、カイトはカイトで忙しかったでしょう? ジアン君達と、聖王国、騎士王国の兵士達の指導で。 それに私達も付きっ切りで、してないわよ。 私はリーナやノエルに任せているし」
「私は、オネェサマやお店の子達ね」
「私も、弟子達や親衛隊の人達だね」
そうだったのか。 それならそれで仕方ないか。
「────カイト様。 ご昼食の用意が出来ました」
一通り話終えたタイミングで、この屋敷の執事長をしている、カルトちゃんのお父さんのミゲルさんが呼びに来た。
「と、そう言う事で、話は昼食を食べながらでもしましょうか」
俺の発言にみんなはそれぞれ返事をして、屋敷の中に入って行った。
※※※
「えっ!? パーティーですか!?」
肉や野菜、バランスの取れた料理を食べている最中、義父さんがそんなことを言ってきた。
「英雄であるお主と顔合わせをしたいと、貴族達が五月蠅くてのぉ。 すまんが1度だけ、出席してくれんか?」
そう言えば、英雄となってから、1度もパーティーをしたことも無いし、出席した事もないな。
「お父様。 根負けしたのですね?」
「す、すまんエルスたん! 流石に5年も、英雄をパーティーに参加させないのは、色々とマズいからのぉ」
「それはそうでしょうけど。 だからと言って、カイトにあの連中と顔合わせをさせることはありませんのに! お父様ったら、まったく」
エルスさんよ、あの連中ってもしかして、貴族達の事を言っているのか?
「え~。 そんなにマズいんですか?」
「う、う~ん、まぁの。 エルスたんが粛清したから、昔よりは大人しいのじゃが、結構ねちっこくてな。 出来れば、パーティーの間はエルスたんから離れない様にして欲しいのじゃ」
「それは構いませんが、どうしてです?」
「皆、エルスたんを恐れて、早々に顔合わせを済ませるからじゃよ」
あぁ~納得。
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※おまけ〔TAKE2〕※
ティア「あの~エルス様とリーナ様は、ケンカってした事あります?」
エルス「いきなりどうしたの?」
ティア「いえ。 先程、ノエル様からお二人のお話を伺ったものですから。 お二人はケンカをした事がない、と」
リーナ「まあ、確かにエルスとケンカは今までないわね」
エルス「リーナとケンカする理由がないわね」
ティア「それ程、仲良しだからです?」
リーナ「どっちかって言うと、自分とケンカしたって意味ないでしょ?」
エルス「そうね。 私とリーナはだいたいの思考が同じ感じだからね。 そんなに、私達のケンカが見たいの?」
ティア「そ、そう言うわけじゃ~」
エルス「仕方ないわね。 リーナ」
リーナ「分かったわ」
エルス&リーナ「ケンカケンカ~(棒読み)」
ティナ「って、それはただ口で遊んでいるだけでしょう!?」
お読みいただきありがとう御座います。