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家族で異世界転生~そして、少年は~  作者: 長谷川
第2.5章 閑話と間話
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2.5章 間話 その後4 後編

※時はさかのぼり、バロン達と二手に別れたジアン達は──


 後衛に居るルセの魔法で注意を引き、ジアンが身体強化と蒼剣ブルーセイバーに()()()()()()()()()()した状態で、タイミングを計り斬り込んで行った。


「硬ぇー!」


 斬り込みに行ったジアンが、思った以上の鎧の硬さに悪態を付きながら、巨人兵の身体を蹴り、離れた。


 巨人兵はジアンに狙いを定めて、大剣を振るい、ジアンはその攻撃を大きく回避した。


 巨人兵から大分離れている位置に居るルセは、手元の杖クロージスワンドに魔力を()()()()()()()


 この杖は、カイトが偶然に発見した()()()()()から貰い、そして()()()()()()()してくれて、ルセの()()()()()()()()()()()()()()特性を持っていた。


 そんな杖に魔力を流したルセが具現化したのは【弓】であった。


 ルセはその弓の()()()()()()()()()()()()()()()()()


 その直後、弓弦と弦の間に氷の矢を生成して、巨人兵目掛けて射った。


 巨人兵は、ルセが射ってきた氷の矢に気付き、大剣で防いだ。そして、氷の矢は大剣にぶつかり、粉々に砕けたが、そのまま防いだ箇所を凍り付かせてしまった。


 ルセは、効き目があると判断して、続けて二本目、三本目と次々に氷の矢を射った。


 更にクロージスワンドには、精霊の力を強く使えるため、通常魔法で放つより、効果があった。


 そして、ルセの氷の矢で身体が凍てついた巨人兵は、()()()()()()()()


「ジアン!」

「おう!」


 ルセの合図でジアンが再度、雷を纏わせた状態の強化した蒼剣で、凍り付いた巨人兵に斬りかかっていった。


 ジアンは武器破壊をするべく、狙ったのは大剣であった。


 巨人兵は、凍り付いてしまって身動きが取れない身体を、動かそうとしていた。 その甲斐あって、パラパラと氷の結晶が崩れ始めていた。


 大剣を狙いに行ったジアンは、凍り付いてしまった大剣の中心目掛けて、蒼剣を振るった。


 そして見事に、大剣は中心から二つに折れてしまった。


 ジアンは、巨人兵がもがいて氷から抜け始めていたのに気付いて、巨人兵から大きく離れた。  


 ジアンが安全な距離を取った瞬間に、巨人兵を凍らせていた氷が砕け散ってしまった。


 巨人兵は折れてしまった大剣をジアン目掛けて投げつけた。


「(マズい!)」


 予想外の行動に、ジアンは反応できずに直撃すると悟った。


 だが、ジアンに直撃するその直前に、大剣が横に吹き飛んでしまった。


 ジアンは大剣が吹き飛んだ反対側を見ると、カルマ+カルトが居て、援護してくれたと悟った。


 大剣を投げつけた巨人兵は、雄叫びを上げる様な格好を仕始めた。


 その瞬間に、遠くに居るもう一体の巨人兵の腕が斬り落とされたのを、ジアンは少し視線をずらして確認した。


「(すげぇー! この硬い鎧を斬り裂いたよ!)」


「ジアンっ!!」


 ルセの大きな叫びにジアンは、こちらの巨人兵に視線を戻すと、巨人兵は拳を作った腕を振り上げて、ジアンに殴りかかる瞬間だった。


 ジアンは咄嗟に【雷装化】になり、その場から飛び退いた。


 そしてジアンがいた場所は、巨人兵のパンチで陥没する程の破壊力を表していた。


「(危なかった! あんなのまともに喰らったら、即死だからな)」


 ジアンは雷装化のまま、再度巨人兵に攻撃を仕始めて、それを、ルセとカルマ+カルトが遠距離から魔法で援護していた。


※※※


 ジアンの決定打にもならない攻撃や、ルセ達の遠距離魔法による足止めをしていたら、また遠くに居るバロン達の方から微かに音が聞こえた。


 ジアンがそちらの方を見ると、巨人兵のもう片方の腕が落ちて、更に、胴体までもが上下に分かれている所だった。


「(すげぇー! ()()()()()()()()()()()()()を斬るなんて)」


 もう一体が倒された直後、ジアン側の巨人兵が、ジアンが余所見をした瞬間に、身体全体を使って気合いを入れる格好をした時、巨人兵が変化を仕始めた。


 巨人兵の体格が3m程まで小さくなり、両腕の下から、左右それぞれ1本の腕を生やし、鎧の色も赤黒く変化していた。 そして、その生えてきた腕には身の丈にあった大剣も携えていた。


「ジアンっ!!」


 ルセが叫んで、ジアンが視線を戻した時には、小さな巨人兵が眼前まで来ており、二本の大剣をクロスにしながらジアンに斬りかかろうとしていた。


 ジアンはその攻撃を盾と蒼剣で防御したが、あまりの力強さに吹き飛ばされてしまい、壁にかなりの衝撃で激突した。


「ガハッ!!────」


 盾は壊され、蒼剣は吹き飛ばされて、終いにジアンは血反吐を吐き、地に伏してしまった。


「ジアンっ!!」「ジアン様!?」「おにいちゃん!?」


 ルセ、カルマ+カルトが吹き飛ばされたジアンを心配していたが、その叫びを聞いた小さな巨人兵は今度は、ルセ達に向かおうとしていた。


 カルマは、この小さな巨人兵の異常なまでの強さを目の辺りにした時に、カイトとの約束を守る所では無いと判断して、全力で魔法を使うことを決め、小さな巨人兵の標的になったルセを、結界や防御魔法を駆使して、小さな巨人兵の攻撃を防いだ。


 だが、カルマの力を持ってしても、小さな巨人兵の攻撃を防ぐのは、ほんの数秒しか持たなかった。 結界を張った瞬間から少しして破られ、それをすぐに張り直すの繰り返す程に。


 カルマがそんな事をしている傍らでも、標的になったルセが最初は攻撃魔法を放ったが、まったく効いて無かった為、距離を置くも、すぐに間合いを詰められの繰り返しをして、カルマの結界の手助けを、精霊の力を使って補助していた。  

 

 そんな事をしているルセ達の傍らで、遠くに居たバロンが地に伏しているジアンの傍に居て、ジアンを抱きかかえた。


「ジアン! ジアン! 生きているか!?」


「───────ガハッ! ハァ…………ハァ…………ハァ…………」


 バロンの呼びかけに、ジアンは血反吐を吐きながら、荒く息をしていた。


「よくぞ、死なずにいたモノだ!」


 バロンはジアンの状態から、それ程のダメージをもらったと悟った。


「ハァ……………ハァ……………ゲホッ、ゲホッ……………ハァ…………ハァ…………」


「(だが、マズいな。 このままでは、本当に死んでしまうな……………)」 


 バロンも回復魔法は使えるが、瀕死のダメージを治す程の回復魔法は、前衛専門のバロンでは為す術がなかった。


「おにいちゃん! バロちゃん!」


 バロンがとりあえずとして、回復魔法を掛けていた時、カルマ+カルトがバロン達の傍に来たのだ。


 バロンは視線をルセの方に向けると、ナリア達も既にこちらに来て、応戦していたのだ。


「おにいちゃん! おにいちゃん!」


「すまない。 私がカイト様との約束を優先したばかりに……………」

「ううん、気にしないで。 それより、ジアンおにいちゃんを治さないと! バロちゃん、ルマちゃん、力を貸して!」

「一体どうなさるのですカルト様?」

「おにいちゃんを()()()()()には、きっとわたしの魔力だけじゃ足りない。 バロちゃんとルマちゃんの魔力も使わせてもらわないと」

「そう言うことなら、遠慮無く使ってくれ!」

「えぇ。 私の魔力は残り少ないですが、使って下さい、カルト様!」

「ありがとう、バロちゃん、ルマちゃん!」


 カルトは、吐血をしたりして、息も絶え絶えのジアンの傍らに膝立ちの状態になり、カルトの後ろにバロンとカルマがそれぞれカルトにそっと触れていた。


※※※


 カルト達がジアンを治す傍らでは、ルセのもとに駆けつけたナリア達が応戦していたのだが──


「一体どういうことなの!?」


 ナリアは驚愕するしかなかった。


 小さな巨人兵になった途端の異常なまでの強さに、ナリアは煌焔の状態と、雷で速度や反射を、炎で火力を補う方法の、()+()()()()()()()()()()の形態になり、攻撃していたのだが、()()()()()()()()のだ。


「センセー! このままだとマズくない!」


 雷で速度と反射を、風で自信の周囲を展開して攻防一体型の、()+()()()()()()()()()()の形態をしているティナも、自信の攻撃が効いていない事に驚いていた。


「えぇ、そうね! 頼みの綱のバロンも、今は動けそうに無いみたいだし!」


 小さな巨人兵の標的が、応戦にきたナリア、ティナ、フールの前衛陣に向いて、コロコロと標的を代えてくるので、ナリアはバロン達の状況を少しは分かる事が出来ていた。


「それにどういう訳か、異常に魔法耐性も高いみたいだし!」


 ナリアの疑問はもっともであった。


 最初の巨人兵を倒した時の状態の、煌焔剣ヴァルクリムゾンで攻撃をして、大剣で防がれるならまだしも、ティナの風塵剣ヴォーパルウェイザーも駆使したりして、ほんの少しの隙を狙って鎧にも攻撃が届いているのだから…………


 その代わりに、フールの爪攻撃は鎧にキズを付けることが出来ていた。


「フム、ケッテイダニカケルナ! バロンナラ、リユウヲシッテイルダロガ!」


 だが、フールの攻撃も段々と、鎧にキズが付かないものになっていた。


 空の飛び回り、遠距離魔法での援護をしているイクスやルセの援護で、ナリア達は喰らったら致命傷になる攻撃を躱したりして、小さな巨人兵に攻撃をしていた。


※※※


 瀕死状態のジアンを、カルトがバロン達の魔力も使って治していたが──


「だめ! 見た目以上におにいちゃんのキズが大きい! このままじゃ完治までいかない!」


 ジアンのキズは、どうして生きていられるのかが不思議な位のダメージを負っていた。


「クッ! 仕方あるまい! ジアンの状態が良くなり次第、撤退をしなければ!」

「撤退ですか? バロン様」

「あぁ! ()()()()になったからには、もはや倒すことは()()()()()()()からな」


 バロンは離れて戦闘しているナリア達の攻撃が、()()()()()()()()()()()()()()()



「(どうしてエルスおねえちゃんがわたしを、おにいちゃん達と一緒にさせたのかわからないけど、エルスおねえちゃん達から教わった魔法でどうしても力になりたい! おねえちゃん、力をかして!)」


 治癒を続けているカルトは目をつぶり、強く願った。 どうしても治したい。 みんなの力になりたい、と。


 その時、カルトは身体の奥底からとてつもない力を感じた。


「カルト、お前は!?」「カルト様!?」


 バロンとカルマの驚いた声を聞いたカルトは、目を開いた。


「えっ!? なにこれ!?」


 カルトが目にしたのは、自分の腕。 ()()()()()()()()。そしてカルトの身体全体が光り輝いていた。


「何かは分からんが、悪しき力で無いのは確かだ!」

「カルト様、この状態ならジアン様を完治出来るのでは?」

「う、うん、いけそう! なんか身体の内側から力があふれてくるの!」


 カルトは、その不思議な現象が何なのかは分からないでいたが、ひとつだけ確かな事が分かっていた。

 とても温かくて優しく、()()()()()()()()()()を感じる事を。


 カルトは、その状態の力を全て使う様に力を振り絞った。


「おにいちゃん! どうか治って!」


 カルトはそう願い、ジアンの身体を治そうと必死だった。


 そして次の瞬間、ジアンの身体が眩い光に包まれた。


 バロンはコレならいけると確信した反面、この眩い光であの小さな巨人兵がこちらに来ると思い、視線を向けると、ナリア達が必死になって足止めをしているのを確認した。


 ナリア達もジアンを治せる光と判断したのだ。


「う……………う、うん………………」


 そんな声と共に、ジアンは目を覚ました。


 そしてジアンを包み込んでいた光が収まり始めた。 


「お、おにいちゃん、無事?」


 バロン達の魔力も使い、自身の身に起きた現象の力も使ったカルトは、疲れ切った表情を浮かべながらも、ジアンの身を案じていた。


「お、俺は一体?…………」


 横たわっていたジアンは、上半身を起こして状況把握を仕始めた。


「ジアンよ、身体の調子はどうだ?」

「どう、と言われても───」


 バロンからそう言われてジアンは起ち上がり、自身の身体を確認仕始めた。


「何ともないけど。 むしろ、何だか調子良い感じがするけど?」

「そうか! なら、さっさと撤退するぞ!」

「撤退!? どう言うことだよバロン!?」

「アレを見ろ」


 バロンは離れて戦闘をしているナリア達を指差した。


「あの小さくなった鎧の巨人兵には、()()()()()()()()()()()のだ」

「どう言う事だ?」

「あの巨人兵の特性は、1度喰らった攻撃は耐性が付き徐々に、その攻撃は効かなくなる。 そして厄介なのは、もう一体にその情報が渡り、倒された攻撃を無効化することが出来るのだ。 だから、ナリア嬢達の攻撃では、鎧にキズも付けられない」


 ナリア達は、自分達の攻撃ではキズが付いていないのに気付いていたが、それでも尚、小さな巨人兵の攻撃を躱しつつ、攻撃の手は休めなかった。 


「────何か手はないのか、バロン?」

「あることはある」


 バロンは腰に帯剣している聖剣を外し、ジアンに差し出すように渡した。


「コレは?」

「聖剣エクスカリバー。 特性は“あらゆるモノを断ち切る”力を有している」

「あらゆるモノを断ち切る………………」

「あの巨人兵の耐性を無視出来る。 唯一無二の力だ」

「ならバロン、さっさとあの巨人兵を倒してくれよ!」

「それは出来ないのだよ、ジアン」


 ジアンは『なんで?』と言おうとしたが、座りこんでいるバロン達の様子を見て、止まってしまった。


 バロンの表情はフルフェイスの兜だから分からないが、肩で息をしていた。 カルトは息づかいが荒く、顔色が優れなかった。 カルマも同様な症状が出ていた。


 カルト達は魔力欠乏症になってしまっていたのだ。


「だからジアン、撤退をするぞ」

「でも撤退をするにしても、アイツが追ってくるだろ」

「なぁに、殿しんがりは私がするさ」


 そう言ってバロンは、ジアンから聖剣を取ろうとした。 だがジアンは、聖剣を強く握ったまま離さなかった。


「ジアン?」

「───バロン。 俺がこの聖剣でアイツを斬るよ!」

「──お前に、この聖剣でアイツを()()()のか?」

()()()んじゃない、()()んだよ、バロン。 だから、その為の()()()を助言してくれ!」


 ジアンは真剣な眼差しをバロンに向けていた。


「─────分かった。なら、お前に任せよう。 但し、チャンスは1度きりだぞ。 ナリア嬢達も限界に達する頃合いだからな」

「あぁ、分かった!」

「ならまずは──」


 目を閉じ、意識を聖剣の()に向けさせて、聖剣に魔力を完全に乗せる様に言った。


 ジアンが次に目を開いた時には、手元の聖剣が光り輝いていた。


 そして次に示したのは、今の小さな巨人兵には、【雷装化】だけでは反射速度が足りないのをバロンは分かっていた。 なので【雷装化】を凌ぐ速度は出来るモノはあるのかと、ジアンに聞いた。


 ジアンはカイトから、【雷光化】の力とその危険性の話しは聞かされていた。 それをバロンに話した。


 それを聞いたバロンは、【雷光化】へ至る為の魔力操作の助言をした。


 ジアンは2、3回の失敗をしながらも、身体は光、雷がバチバチと音を出しながらも身体に纏わる様に帯電していた。 つまり、【雷光化】へと成る事が出来ていた。


「ジアン。 分かっているな、チャンスは1度きりだぞ!」

「あぁ!」


 ジアン達から離れて戦闘をしていたナリア達は、既に限界になっていた。


 そしてタイミングを合わせるように、ナリア達は一斉に持てる力を振り絞って攻撃して、小さな巨人兵の鎧にはキズも付かなかったが──


「今だ!!」


 バロンが小さな巨人兵がよろけた瞬間を見定めて、ジアンに合図を出した。


 バロンが合図を出すその瞬間、ジアンは既に駆け出し、光速の速度であっという間に小さな巨人兵の傍に寄り、聖剣を十字に振り抜いた。


 その瞬間ジアンの【雷光化】は解けてしまった。 ジアンの魔力では、1分も保たないから。


 ジアンとバロンを除いたメンバーは、ジアンが又やられると思った瞬間、小さな巨人兵の身体が4つにばらけだし崩れたのだ。


「─────はぁぁぁぁぁぁ!」


 それを見たジアンは、深いため息と共にその場に座りこんでしまった。


「ジアン! 身体は無事なの!?」


 ルセがそんなジアンの傍に駆け寄った。


「あぁ、俺は無事だよ。 強いて言うなら魔力が無くて、しんどいけど」


 ジアンも魔力欠乏症になり始めて、肩で息を仕始めた。


「良かったぁ! ジアンがあの巨人兵の攻撃をまともに受けて、壁にぶつかったときには、もうダメかと思ったよ!」

「ははっ!」

「───あれ? コレって」


 ジアンは手で頭を掻く素振りをしたとき、首下から何かがこぼれ落ちてきた。


「チェーン? アレ? でも確か私と同じで黄色の鉱石が付いてあったよね?」

「えっ!? あっ!ホントだ! 鉱石が無くなってる! カイトから肌身離さず持っている様に言われていたのに!」


「──それは本当かジアン?」


 ジアンは服の中などを探し始めた時、バロンがいつの間にか傍に立っていた。 カルト達も少しだけだが魔力が回復して、顔色も良くなっており、他のみんなも傍に立っていた。


「あぁ。 確かにルセと同じ鉱石が、このチェーンにくっついていたんだよ! どこで落としたかな? 無くしたと知ったらカイトに怒られるよなぁ」


「ルセ嬢よ、ちょっとその鉱石を見せてもらえるか?」

「いいよ」


 そしてルセは、首下からネックレスを外し、バロンに手渡した。


「────────ふむ」


 バロンは、カルマにも見せ始めた。


「────なるほど。 ジアン様が助かったのはそう言うことでしたか」


 カルマはネックレスを見て、頷いた。


「ルマちゃん、何か分かったの?」

「えぇ、カルト様。 ジアン様が助かったのは、この鉱石が()()()()したからなんですよ」

「身代わり?」

「えぇ。この鉱石には、一定のダメージを肩代わりする付与が施されております」

「「えっ!?」」


 ジアンとルセは同時に声を上げていた。


()()()()その付与が出来るドワーフがいない為、武具やアクセサリーには何の施しもされていないはずですよね、ナリア様?」

「えぇ。 理由は分からないけど、突然ドワーフが一斉に居なくなった為に、そういった事が出来なくなり、鉱石その物の性能しか無いの」

「つまり、ジアン様達のこの鉱石に付与を与え、渡してきたカイト様がその様なことをなさったのです」


 そこまで説明した時、バロンはネックレスをルセに返していた。


「ははは、やっぱりカイトには敵わないな」

「そうだね。 だけど、そのお陰でジアンが助かって良かったよ」

「それにしてもジアン。 貴方よく【雷光化】に成れたわね」

「それはバロンのお陰ですよ、先生」


 ジアン達はバロンに視線を向けさせていた。


「なぁに、私は助言をしたまでだ。 それに応えられる事をジアン、お前が成したのだ。だから良くやったな。 カイト様が心配していたぞ」

「カイトが?」

「あぁ。 『ここ1年のアイツは、どこか切羽詰まった様に生き急いでいる』とな」

「確かにそんな感じはしていたわ」


 ナリアの言葉に追従する様に、ルセとティナも頷いていた。


「…………そっか。みんなから見ると、そう見えるのか…………」

「ねぇ、ジアン。一体どうしてなの?」


 ルセは悲しげな眼差しでジアンに聞いていた。


「…………ほら、カイト達の目的を聞いただろ? 家族を探すのと、魔神復活の阻止って?」

「うん」

「そう思ったらさ、一刻も早くカイトが心置きなく、旅立たせるようにしないと、と思うのと同時に、みんなの中で俺が1番、成長出来ていない様な気がして…………」


 ジアンがそう思う程、ルセ、ナリア、ティア【ティナ】は急成長を遂げたから。


 ルセは、精霊の力の使い方を覚えて、魔法の威力が格段に上がり、ナリアは、この世界の魔法を使う際の常識を捨て、イメージを持って使うことを覚えて、ティア【ティナ】に至っては、カイトに従順なので、カイトから教わったことは全て吸収していったのだ。


 その中で、ジアンだけは成長していないと錯覚を起こしていた。


「ジアン」

「ん?」


 俯いていたジアンは、バロンの呼び掛けに応える様に、顔を上げた。


「お前が成し遂げた【雷光化】はな、本当に危険な魔装なのだよ。 それを成し遂げるには、魔力操作を常日頃から欠かさずして、頭、そして身体で覚えていくしかないんだ。 だけどな、結果はどうだった? 失敗したか?」

「…………………いや、カイトに見せて貰い、話を聞いた通りの速さだったよ。 踏み込んだと思った次の瞬間には、あの巨人兵が目の前に居たから………………」

「なら、自信を持て。 お前は確実に成長している。 むしろ焦ってしまっては、カイト様に見限られてしまうぞ?」

「そうだな。バロンの言うとおりだ。俺もみんなと同じく成長しているんだな!」



 その後は、疲弊した身体を休める為にしばし休憩をして、広間の探索を再開した。


※※※


 ダンジョンの探索を終えた時、外はすっかり夕方になっており、ギルドに報告をしてから屋敷に戻ったジアン達は──


「おかえり、みんな」


 リビングに設置されたソファーで寛いでいたカイトが、声を掛けてきた。

 そしてカイトの両隣にはエルスとリーナが居て、一人掛けのソファーにノエルが座っていた。


 座っているノエルの脚の上には()()()()()()が座っていて、串に刺されているお団子を食べていた。


「ただいま」「ただいまー」「ただいま」「ただいま帰りました、カイト様」


 ジアン、ルセ、ナリア、ティアがそれぞれ挨拶を返した。


 カルトは屋敷に戻ってくる途中で寝てしまい、ナリアにおぶられて、屋敷に戻った時に母親のケイトに預けていた。



 バロン達も小型状態で、それぞれの契約者に抱かれて眠っていた。


「ねぇ、ノエルちゃん。 ノエルちゃんの脚の上に居るのって何?」


 ルセがどうしても気になったらしく、声を掛けていた。


「ん? この子はカイ君の使い魔だよ。 お団子を食べさせたら懐かれちゃって」

「「「「えっ!?」」」」


 ジアン達は驚いていた。


 小型状態のバロン達と同じで小さく、愛くるしい顔立ちに赤髪、その額にはちょこんと二本の角らしき突起物が出ており、着物を着ていた。


「なんだ、わっぱ共。 何か不満があるのか?」

紅鬼こうき、口が悪いぞ! さっき説明しただろ。 ()()()()()()()だって」

「そうだよ、こうちゃん。 あんまり酷いと、お団子は無しだからね」


 そう言ったノエルは、紅鬼からお団子を取り上げた。


「す、すまない、カイト殿、ノエル殿。 だから、お団子を食べさせてくれ!」


 ジアン達4人は『何だコレ?』と呆れかえってしまっていた。


「さぁさぁ、詳しい話は夕食を食べながらしましょう」


 そう言ってエルスはみんなを、リビングの1角に畳が敷かれているスペースに移動させた。



 そしてカイト達が席に付き少しして、メイド達によりテーブルに料理が並べられ始められた。


 和食中心の料理が出て来て、『いただきます』の呼び掛けで紅鬼が目を輝かせてバクバクと食べ始めてしまった。 


 そんな光景に笑いが飛び交いながら、カイトが召喚した使い魔の紹介をした。 


 名前は紅鬼こうきで、種族は鬼人族を纏める王様で、鬼王と言うこと。 実力はバロンより優れており、()()()()()()()()()()()()()()() 


 そんな紅鬼の紹介の後に、今回の探索の報告をした。 もちろん、カルトとジアンが瀕死状態になったことを伏せて。


 途中、匂いに釣られて眠っていたバロン達も起きて、話を合わせたバロン達のお陰で、何の違和感も無く報告をすることが出来、その後も賑わいながら、料理を堪能していた。


お読み頂きありがとう御座います。

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