2.5章 間話 その後4 前編
「ふぅ~」
「お疲れ様、ジアン」「お疲れ、ジアン」「お疲れ様です、ジアン様」
「あぁ、3人もお疲れ様」
出くわした魔物を倒したジアンに労いの言葉を掛けた、ルセ、ナリア、ティアに、ジアンもまた返していた。
ジアン達が居る場所は、友好都市グラティウルから歩いて、1時間程かかる場所にある、入った者の強さによって、出現する魔物の強さが変わる変異型の洞窟ダンジョンに居た。
ジアンとルセは、家族を捜す旅に出るカイトの代わりに、強敵に対抗出来る様にと、修業を付けてもらっており、修業の成果をダンジョン探索も兼ねて確かめていた。
そこに、ナリアとティアも同行して修業を積んでいた。
ティアは、自分も強くなりたい!と言って、ジアン達と共に修業を仕始めていたのだ。
「ジアンおにいちゃん、お疲れ様です!」
そう、今回のダンジョン探索には、まだ7歳でメイド服を着た少女、カルトが同行している以外は、いつも通りだったのだが…………
カルトはジアンに労いの言葉を掛けつつ、リーナから作ってもらった、カイト達と同じ容量のマジックバッグから、飲み物を出して渡していた。
「ありがとう、カルトちゃん」
ジアンは感謝を述べて、飲み物を受け取って、喉を潤していた。
そして、ダンジョン内を歩き始めた。
「ふぅ~。 それにしても、カルトちゃんをこんな所に連れてきて、後でカイトに怒られるよな~」
「また、言っているのジアン。 もう、ここまで連れて来たのだから、怒られる覚悟を決めなさいよ」
「それにしても、エルスは何故、カルトちゃんを連れて行って、と言ったんだろうか?」
「きっと、今回のダンジョン探索で、何かがあると視たのではないですか?」
ティアの言葉に、みんなは思い出していた。
エルスが以前言っていた事。
エルスには未来予知の能力があると。
「そうだとしても、詳しく教えて欲しいよな」
「そこは何とも言えないよね。 だって、エルスちゃんだもん」
「その通りね。 それに、今回は私達だけでは無いから、大丈夫よ」
「そうですよ、ジアン様。 今回はカルマちゃん達が居るのですから」
ティアの言葉に、皆の視線が後ろに居るカルトと、ジアン達の召喚獣、改め、使い魔のバロン【小型】がカルトに抱えられ、フールは通常サイズに戻り、嗅覚を活かして魔物感知をしながらカルトを守る様に傍に居たり、イクス【小型】はフールの背に停まって、カルマ【小型】は傍らで、翼をパタパタと羽ばたかせている。
「それにしても、バロン達って、どうしてカルトちゃんに懐いているんだろな?」
「子供好き、だったりして」
「私は以前イクスに聞いたときは、気にするなって言われたな」
「私もカルマちゃんに聞いたら、先生と同じ事を言われました」
どうにも、カルトと使い魔達は謎が多いと感じていたメンバー。
「ごめんなさい、ジアンおにいちゃん。 わたしが居ると邪魔ですよね?」
ジアン達の言葉が聞こえていた様で、カルトは申し訳ない気持ちが表情に現れていた。
「あ、あぁ、違うんだよ、カルトちゃん。 エルスが何か意図があったんだろう、って話だったんだから」
「そうそう。 それにフール達も付いているから、カルトちゃんの守りは大丈夫だし、ね?」
『アァ。 ワレラガ、ケイカイシテイルカラ、アンシンシロ、ルセ、ヨ』
「ほらね」
フールは最後に、鼻を鳴らしていた。
「それにしても、カルトちゃんはこういう所は怖くないのです? 色んな魔物が頻繁に出る場所なんですけど?」
「心配してくれてありがとうございます、ティアおねえちゃん。 エルスおねえちゃん達から教えられていますから大丈夫です」
「「「「んん?」」」」
ティアの心配を余所に、カルトが返事した内容は、全員が意味が分からないと言った表情を見せていた。
「ね、ねぇ、カルトちゃん。 聞きたい事があるんだけど良いかしら?」
「大丈夫です、ナリアおねえちゃん」
「カルトちゃんって、普段、何をして過ごしているの?」
「??? お仕事をしていますよ?」
「あぁ、違うのよ、ごめんなさい。 順に聞いていくわね」
ナリアは望んでいた返事と違う事に、訂正をした。
「まず確認なのだけど、エルス達って言うのは、エルス、リーナだけかしら?」
「うん! それとたまにだけどノエルおねえちゃんも」
「………そう。 そしたら、ここ1年、急に屋敷を出ている時って何をしているの?しかも泊まりがけで?」
今現在進行形なのだが、カルトは6歳になってしばらくしてから、気付いた時には、急に屋敷から姿が見えない時があった事を、今更ながら訊ねていた。
「エルスおねえちゃんからは、カイトおにいちゃんがまんぞくしてもらえるおよめさんになるための、勉強をしましょうって言われました。 お泊まりはエイシャオネェサマの自宅でしています」
「「「「…………………」」」」
4人は、あぁ、エルスなら言いそう、と思っていた。
約3年前にサイビス村での悲劇で、フォレスト家がカルト達家族の方針を決める時に、リーナからの話で、カルトをカイトに嫁入りさせる事は、後からカイトの婚約者になったナリアとティアも知っていた。
カイトを除いては。 今尚も知らない。
「因みにだけど、勉強ってどんなことをしているの?」
「う~ん。 まず、エルスおねえちゃん、リーナおねえちゃん、エイシャオネェサマから、読み書きと言葉遣い、礼儀作法を教わっています」
「あぁ、だから、カルトちゃんの言葉遣いが丁寧なんだ」
「ありがとうございます、ジアンおにいちゃん」
どうしてここまで、言葉遣いが丁寧であったのか、他の3人も納得がいった表情を浮かべていた。
「それとリーナおねえちゃん、エイシャオネェサマからは商売の心得?を覚えておきなさいって言われて、教えてもらってます」
「………………リーナちゃん達って、カルトちゃんをどんな風にするつもりなんだろ?…………」
ルセは、コレから先の話が、ある程度予想は付いていた。 エルスとリーナが、関わっている以上、まともになる訳がないと…………
「そして、ノエルおねえちゃんからは、お料理や洗濯、掃除の家事?を教えてもらってます」
「ノエル様はその手に関しては完璧で、誰も到達出来ない程の域にいますからね。 私も師事してもらっていますけど、まだまだです」
ティアは、カイト達と暮らすようになってから、自分に『出来ることは何か?』を考え、その手始めにノエルに家事を教えてもらって、そこで初めてノエルの手腕の凄さに感服していた。
「その他に──」『ミナ、ソコマデダ。 コノサキ二、イルゾ。 カズハ、ジュウニ』
フールからの注意に、緊張を緩めていた先程までと違い、真剣な表情に変わっていた。
バロンが所有している数ある中の一振りで、透き通るほどの青身が掛かった刀身。 そして濃い青で出来た柄。
その剣の名前は、蒼剣ブルーセイバー。
特性として、水属性の魔法を使える魔剣。
その蒼剣をバロンは、ジアンに貸し与えていた。
ルセは、握り拳程の大きさの魔石が付いた杖を。
ナリアも、バロンから貸し与えられていた。
それは、透き通るほどの赤身が掛かった刀身と、濃い赤で出来た柄の一振りの剣。
焔剣クリムゾンセイバー。
特性は火属性の魔法が使える魔剣。
その焔剣はジアンの蒼剣と対を成していた。
ティアもまたバロンから、ティアの身体にあった魔剣を貸し与えられていた。
風魔剣ウィンディセイバー。
刀身は透き通るほどの緑色。 柄は濃い緑をしており、その柄頭部分には、握り拳程の大きさより二廻り程小さい魔石が付いていた。
通常サイズの剣より、刀身が一廻り短い、二刀一対である双剣。
風属性の魔法が使える魔剣で、持ち方によって魔剣の機能が変わる特性を有していた。
「ルーフ。 どんな魔物か分かるか?」
「───リザードソードマン、ッテ、トコダナ」
ジアンはルーフが匂いから、どんな魔物かまで居るかを、ダンジョンに入ってから教えられていた。
魔物の種類が分かると、予め対処もしやすいから、ジアンはルーフにそこまで聞く事を心掛けていた。
『モウスグダ』
警戒態勢で進んでいたジアン達は、ルーフの言葉を聞いて、再度身構えた。
「じゃあ、いつも通りで。 俺と先生が前衛で、ルセが後衛で支援、ティアはまずは後衛でルセと共に支援を。あとは臨機応変で前衛だ」
「うん!」「あぁ!」「分かりました!」
3人は返事をして、そしてティアは双剣を逆手に持ち直した。
「それとバロン達はカルトちゃんの守りを」
「任せろ、君主よ!」
カルトに抱えているバロン【小型】は、手を上げて応えて─
「安心せい、ジアン殿!」
ルーフの背に居るイクス【小型】は、片翼を上げて応えて─
「お任せを、ジアン様」
浮遊状態のカルマ【小型】は、身体全体を使って頷き返して─
『ダカラ、キニセズ、タタカエ』
ルーフはカルトのすぐ傍から、それぞれがその様に応えていた。
「分かった」
そしてもう少し歩いた先には、少し拓けた場所があり、そこにはルーフが言った通り、長剣と盾、鎧を身に付けた大人位の身丈で二足歩行しているトカゲ、リザードソードマンが十二体居た。
そのリザードソードマン達は、その場所を徘徊しており、視認できる距離に居るジアン達の存在に気付いては居なかった。
ジアン達はその手前で、気配を消して身を潜め、リザードソードマン達を確認していた。
「(それにしてもさ、こうして魔物達から感知出来て居ないのに、奇襲して倒すときは二体までって制限はないよな)」
「(それがどうしたって言うのよ、ジアン?)」
ジアンの呟きに、同じ前衛を務めるナリアが応えていた。
「(いえね、先生。 ここ半年は同じ魔物しか出てきていないのですから、別にルセの魔法で一気に殲滅した方が早いと思って)」
「(貴方の言いたいことは分かるわ。 レベルアップを図るにはそれが一番手っ取り早いけど、それだと技は磨けないわね)」
「(そうなんですよね。 結構深くまで潜って来ているのに、同じ魔物しか出てきていないから、同じ事の繰り返しで、イマイチと言うか、何と言うか…………)」
「(同じ事の繰り返しは大事よ。 カイトも言っていたでしょ?)」
「(……………そうですね。 なんかすみませんでした。…………それでは、行きます)」
「(えぇ)」
ジアンはナリアと、少し離れて後ろに居るルセとティアに、手を上げて、リザードソードマンに向かって行く合図を送った。
ジアンとナリアは、二体を奇襲して倒すために、脚力を強化して速度向上させて、同時に飛び出して、近くに居たリザードソードマン二体を腹から胴体を二つに切り裂いた。
二体を倒した2人は1度、少し後退して残り十体の動きを注視した。
そして散らばっていたリザードソードマン達はワラワラと、ジアンとナリアと対峙する様に集まりだした。
後から姿を見せたルセとティアはジアン達から少し離れた位置で、武器を身構えた状態で居た。
カイトから制限を掛けられているジアン達は、動く事無くリザードソードマン達からの攻撃に備えて、ジアンはミスリル製の盾を、ナリアは焔剣で、攻撃を防ぐ体勢でいた。
リザードソードマン達は、ジアン達が仕掛けて来ないと見て、二体のリザードソードマンが、ジアンとナリア、それぞれに長剣で攻撃を仕始めた。
それを、ジアンが盾で防いで、ナリアは焔剣で受け止めずに攻撃を流した。
ジアンは攻撃を防いだ瞬間に、蒼剣で反撃に出て、リザードソードマンはその攻撃を盾で防いだ。
と、思った途端に、盾が切れてそのままリザードソードマンの胴体を横に切り裂き、真っ二つにしてしまった。
ナリアは、受け流してすぐにリザードソードマンを縦に切り裂き、真っ二つにしていた。
それを観ていた残り八体のリザードソードマン達は一斉に、2人に襲いかかった。
それを観ていたルセは杖を、ティアは風魔剣を逆手で持ち魔石が付いている柄頭を、それぞれリザードソードマン達に向けて魔法を放った。
【風刃】をそれぞれが二つ作り、リザードソードマン四体目掛けて放ち、リザードソードマンは自身に迫った【風刃】に気付いて、長剣または盾で防ごうとしたけが、それらを【風刃】はその上から切り裂き、リザードソードマン達四体を真っ二つにした。
そして残り四体になったリザードソードマン達は二手に分かれて、ジアン、ナリアと、一対二の状態になった。
ジアンは、二体同時に切り掛かってきた攻撃を、盾と蒼剣で防いで、押し返して、体勢を崩した二体の内、一体目掛けて蒼剣を振りかぶり、右肩から斜めに振り落として切り裂いた。
その間に体勢を立て直したもう一体は、再度ジアンに切り掛かり、今度は躱したジアンは、盾でリザードソードマンの腹目掛けて力一杯殴り、その衝撃でリザードソードマンは吹き飛んでいった。
リザードソードマンが壁に衝突してへこみが出来、血を吐いて動かなくなった。
もう一方のナリアは、二体の攻撃を一つは躱し、もう一つの攻撃は受け流して、その反動を活かして、そのまま一体の腹目掛けて、焔剣を振り抜き真っ二つにした。
そしてもう一体はその隙を見計らっていた様で、すぐに攻撃をした。が、それを予見したナリアは、そのまま焔剣をもう一体目掛けて、その間に両手で持ち振り抜き、切り裂いた。
全てのリザードソードマンを倒して少しして、リザードソードマンの身体が消失して魔石だけが残った。
ダンジョン内で出現する大半の魔物は、一定時間が経つと、勝手に魔石だけ残して消失する類いが多かった。
「お疲れ様、ジアン、先生」
「お疲れ様です、ジアン様、先生」
後方に居たルセとティアが、2人に近づいて労をねぎらっていた。
「2人もお疲れ様。 四体一斉に来たときは少しヒヤッとしたよ」
「えぇ、そうね。 カイトに修業だからと言われて制限させられているから、今回は私とジアンは攻撃魔法禁止だったしね」
ジアンとナリアは、ヤレヤレといった仕草をしていた。
そう、今回も探索には、カイトが何かしらの制限を設けていた。
その一つが、前衛で戦うジアンとナリアの攻撃魔法禁止。 不測の事態に魔法無しでどう対応するのかを課せられていた。 但し、本当に身の危険を感じたら、魔法は使っていい、ということも。
「おつかれさまです、みなさん!」
少ししてから、身を潜めていたカルトが、ジアン達の使い魔と共に現れた。
「カルトちゃんの方は何とも無かった?」
「はい。 バロちゃん達が居ましたから」
「それはよかったよ。 でも、素の大きさに戻っているフールは不測の事態に対応できるとして、バロンはどうなの? カルトちゃんにずっと抱えられて」
「ムムッ。 君主はこの身なりだと何も出来ないと申すか?」
バロン【小型】は、手をバタバタさせていた。 ジアンに言われて、少しムッとしたようだ。
「バロちゃん、あばれないで」
「す、すまない、カルト」
「ほら~」
バロンの情けなくも可愛い姿に、ジアンは自分が言ったことが合っている感じに言っていた。
「それを言うなら、イクスも同じものよ」
「そうですね。 カルマちゃんも小さい状態ですし」
「我らは別に、魔法禁止の制限をもらっていないから」
「大抵の相手はこの状態で、対処可能なんですよ。ティア様」
『ワレモ、チイサキママデモ、モンダイハナイガ、マモノノ、シュゾクマデハ、ハアクデキナイカラナ』
イクス、カルマ、フールは、小型状態でも問題なし、と弁明していた。
「それならそれで良いけどさ」
そうして、魔石を回収しつつ先を進み始めた。
「そういえばさ、さっきの続きだけど………」
「カルトちゃんの事?」
「そうそう」
ジアンの説明不足に応えたのは、ルセであった。
「カルトちゃんって、家事の他に何を教わっているの?」
ジアンは歩きつつ、視線をカルトに向けた。
「他には、まほうを教わっています」
「へぇ~。 一体どの属性を使えるの?」
「ぜんぶですけど?」
「へぇ~全部ねぇ。……………「「「って全部!?」」」」
カルトの発言に、4人がハモってしまった瞬間。
「えっ!?えっ!?ちょっ、ちょっと待って、カルトちゃん!? 全部って全部!?」
「??? はい、ぜんぶです」
パニック状態になったルセが何を言いたいのか分からないが、カルトは取り敢えず先程の質問であると思い応えていた。
「カ、カルトちゃん!? 四属性だけで無く、雷と氷の魔法も!?」
「はい」
ナリアは興奮状態に陥っていた。
「そ、それでカルトちゃんは、属性レベルは幾つなんです!?」
「5です」
「「「「5!?」」」」
興奮状態のティアの質問にカルトは、ケロッと応え、それを聞いた4人が更に驚いていた。
そして4人は、カルトから少しだけ離れて、円陣を組み始めた。
「な、なぁ。 カ、カルトちゃんってそれなりに強いんじゃないか!?」
「ジアンの言うとおりかも知れないわ。 だってあの2人が関わっているのだから」
「えぇそうね。 ノエルは戦闘に関しては積極的に関わらないけど、あの2人が混ざると話は別ね」
「こう言っては失礼ですけど、エルス様とリーナ様って破天荒な事をしますよね」
ティアの言葉に3人は、うん。と、頷いて納得していた。
「そして後からカイトに怒られる」
「多分、怒られる事が目的だったりして。って、どうなんですか、もっとも身近な婚約者様方は?」
「ひ、否定は出来ないな」「ひ、否定出来ません」
ルセがからかうように言った当てずっぽうに、2人は赤面しながら応えていた。
取り敢えず4人だけでの話を終えて、カルト達の傍に戻って行った。
「ね、ねぇカルトちゃん。 因みに何だけど、レベルって幾つなの?」
「ごめんなさい、ジアンおにいちゃん。 その話はエルスおねえちゃんから、してダメって言われています」
「えっ?」
「だから、ステータスも視せられません。 そして、そのことでエルスおねえちゃんがこう言ってました。『もし、知ってしまったら、どこであろうとつきまとうわよ』って」
「「怖っ!」」「あぁ、やりそう……」「エルス様なら、やりそうです………」
ジアンとルセは身震いを起こして、ナリアとティアは苦笑いをしていた。
「わ、分かった。 もう、これ以上は聞かないよ」
「う、うん。 あっ、だけどひとつだけ良い?」
「な~に、ルセおねえちゃん」
「どうして、エルスちゃんがそこまで、カルトちゃんの情報を守るか話せる?」
ルセから、これ位なら大丈夫かな、と探り探りの言葉が出ていた。
「あ、それならエルスおねえちゃんが更に『もし、カイトに喋ったら、私が代わりに修業を付けてあ・げ・る。 た・の・し・く・ね』って言ってました」
「カ、カルトちゃん!? も、もしかしてその表情と声音もする様に言われたの!?」
「はい」
「「「怖っ!」」」「怖いです!エルス様!」
ジアンが聞いたその表情と声音とは、カルトが目を見開き、瞳から光が無くし、口元は薄ら笑いをしていた表情で、その表情に合うように声音を変えていた事。 そして最後の言葉はその表情に、首をコテッとかしげさせていた。
4人はそれを見て思った。
カルトが、エルス色に染められて手遅れの段階にいる。と。
そして、カルトにその事をさせたからには、カイトにカルトの事を勘づかせたら、自分達の命が危ない、と。
エルスはほとんど有言実行する人だから。
その事をそれぞれ胸に誓い、ダンジョンを進んで行った。
お読み下さりありがとう御座います。