2.5章 間話 その後2
「さぁオネェサマ。 今日は開店の日です。じゃんじゃん売りましょう!」
「えぇ、こんな斬新な発想の商品はすぐ完売すること間違い無しよ♡」
今日は、エルシャオネェサマと共同で、オネェサマの住宅を改築して商会の店にした、初めての販売。
商品は地球の家電製品(電気の代用品は魔石。魔石は魔力を溜めておける性質を持っているから)をこちらの世界で使えるようにした家電製品ならぬ、魔石製品。
それぞれの製品に、それぞれの属性の魔石を内蔵しましたから、世界中の方達が当たり前に使える魔力を流すだけで、使えると言う優れものにしました。
魔石はジアン君達の修業で、魔物討伐等でギルドに売らずに、沢山確保していましたから。
娯楽があまりないこの世界に、盤上モノや球技が出来る製品を造りました。 これで娯楽に関しては、解消したでしょう。
服装や下着類は、オネェサマのセンスが冴え渡り、カワイイ系から際どいセクシー系まで何でもきなさい、という位のモノを作りました。 やっぱりオネェサマと組んで良かったです。
そして、肝心のお店の名前は【クサナギ商会】
私達の婚約者の家名を勝手に借りて出す、最初のお店です。
従業員は、私、エルス、オネェサマ、ノエルで、臨時で王家と公爵家から数人のメイドを強制的に手伝ってもらっています。 今後店の制服にするメイド服に着替えてもらって。
品物はかなり前から準備していたから大丈夫ですけど、従業員はオネェサマが忙しくて、募集はして居なかったですから。
そしてそれに伴い、エルスを商会の会長に据えて、王族の保証付きの後押しを付けた商品を売る算段です。
まぁ、王族の保証付きを販売するのですから、確実に売れるでしょう。
それで私が専務取締役で、オネェサマは店長、ノエルには副店長と言う、取り敢えずの肩書きの役職を付けました。 エルスの役職は固定ですけど。
「これも全てオネェサマのお陰です。ありがとう御座います」
エルスは深々と頭を下げて、感謝をしておりました。
「良いのよ、気にしなくて♡ 結構楽しんでやっていたのだから♡」
「それでも、ありがとう御座います、オネェサマ」
私も深々と頭を下げて、お礼を述べました。
「も、もぅ、イヤだわこの子達ったら♡ アタシ達は一蓮托生でしょう♡?」
オネェサマは褒め慣れていないらしく、照れておりました。そんな照れてる時の仕草が可愛いです。
「それじゃあ、ノエル。 気合い入れて売るわよ?」
「任せて!」
「皆さんもよろしくお願いしますわね?」
「「「「「「「「かしこまりました、リーナ様!!」」」」」」」」
さぁ、店の制服である、露出を高めたメイド服に身を包んだ、私達の初めての販売が始まるわ。
※※※
「完売でーす! 本日買えなかった皆様、ごめんなさいっ! 代わりに優先券をお配りしますので、そのまま並んでいて下さーい!」
ノエルが品物が無くなった事を告げると、未だに長蛇の列を作っている住民の方々は、残念な表情を浮かべておりましたが、明日以降の販売の優先券を貰える事を聞くと、表情が一変しました。
それから優先券をメイドさん達が配り始めました。
「ふぅー♡ 経ったの1時間で完売するなんて、やっぱりみんな、リーナちゃん達の発案した商品を試したかったのね♡」
「準備期間中、散々口コミで宣伝しましたからね」
使用人の方達に協力してもらったからですけどね。 使用人達には、休日の時に、それとなく広めるように賄賂を与えたからね。
「それだけじゃないわよ、きっと♡」
「そうだよ。………………それにしても、リーナちゃん、よく作れる位の知識を知っていたね、どうして?」
「そ、そんなの必要かなぁ~って思っていたからよ」
「ふ~ん」
まさか、晴斗と雫の転生前の現代の為に、何が1番儲かるかを、大学の授業そっちのけでエルスと一緒に調べていたとは、言いずらいわね。
晴斗と雫の子供も含めて、不自由なく生活出来るように、会社を優斗と二人で立ち上げる為にありとあらゆる知識を調べていたのが、まさかここで役に立つとは思わなかったけどね。
「そう言えば、この後はどうするの、リーナちゃん♡?」
「この後は、オネェサマと私は面接をしますわ」
「面接♡?」
「そうですわ。 オネェサマの本質を視る力で、このメイド服を恥ずかしがる事の無い、それを望んでいる人を探して下さい」
「分かったわ♡ 任せてちょうだい♡」
「それじゃあ、リーナ。 私はここで抜けるわね?」
「えぇ、分かったわ」
そう言ってエルスは、メイド服を着たままお店を後にしました。
エルスは今朝、ギルドマスター統括のカサドラ様に呼ばれていたから。
「それじゃあ、ノエル。 明日の準備をお願いね?」
「りょうか~い!」
ふふッ、ノエルってば、子供みたいにはしゃいじゃって、可愛いんだから。
その後は、ノエルとメイドさん達にお店を任せて、私とオネェサマはカイの屋敷に向かいました。
※※※
200人は軽く超えており、その方達の面接が終わりました。
「どうでしたか、オネェサマ?」
「フフッ♡ 中々の粒ぞろいが居たわよ♡」
オネェサマは面接した女性の方達の、受付番号が書かれた紙を私に渡してきました。
ふむ? 20人ですか? 結構居ますね。 取り敢えずの希望人数は、10名なのですけどね。 これは早急に、2号店以降を探さないといけないですわね。
「では、オネェサマのお眼鏡にかなった方達の中から、更に半分の人数にしませんと」
「あら、そうなの♡? 残りの半数も勿体ないと思うのだけど♡?」
「ご心配には及びませんわ、オネェサマ。 今回ダメだった半数は2号店に間に合うように、教育をするだけですから」
「流石ね、リーナちゃん♡」
「それではオネェサマ、次に移りますわよ?」
「分かったわ♡」
さて次は、体力テストと、作法のテストでもしようかしら?
※※※
「──合格者の方はこのまま、オネェサマに付いていって下さい。 お店に戻りましたら、制服を貰い、接客の仕方を教わって下さい」
10名の合格者は笑みを隠しきれ無いほどに嬉しそうでした。
「それではオネェサマ、よろしくお願いします」
「はーい、任せてちょうだい♡ それじゃあみんな、付いてきてね♡」
「「「「「「「「「「はい!」」」」」」」」」」
そのままオネェサマは合格者を連れて、店に戻って行きました。
「それでは残りの皆さんは、このまま次の出店に向けて、研修として接客の仕方を学んで頂きます」
「えっ!? 私達って不採用じゃないんですか?」
今回、不採用で残った10名の方の内の1人が聞いて来ました。
「本店はですよ。 近々、2号店を出店する予定ですから、今の内に学んで欲しいのです。 この屋敷に住み込みで学んで貰います。もちろん、それまでの間、お給金をお支払いします」
その内容を聞いた途端に、残りの方達で手を取り合いながら大いに喜んでいました。
「そう言うわけですので、1度解散とします。 夕方頃までに各自で必要な物を用意して下さい。あっ、もちろん、この屋敷で研修中は、店の制服のメイド服を着て学んでもらいますので、服は下着のみ用意して下さいませ。 下着も用意してっと仰る方がおりましたら、喜んで用意しますから仰って下さいませ」
ふふふっ、とっても際どい下着を用意してますから。
私からの注意事項を聞いた方達は、部屋を退出して行きました。
そんな方達と入れ替わりで、エルスが戻って来ました。
「ただいま、リーナ」
「お帰りなさいエルス。それで、要件はなんだったの?」
エルスは少し複雑な表情を浮かべいました。
「…………実は………………………王都のギルドマスターをして欲しいって話だったのよ」
「っ!? ギルドマスター!? エルスが!?」
驚きしかありません。
「そもそも、10歳の私達がギルドマスターになれるの!? それにバーン様が居るのにバーン様はどうなるのよ!?」
「お、落ち着いてリーナ。 ちゃんと順番に話すから」
はっ! つ、つい興奮してしまったわ。
「まず、ロールさんを確保するためにギルドで、その時居た冒険者の方々を教育したじゃない?」
「え、えぇ、容赦なく」
「その後も私、貴女達が剣魔武闘会の代表メンバーに選ばれて、グラティウルに向かっている間も含めて、ちょくちょく教育していったのね」
本当、面倒見が良いんですから、昔から。
「で、この間その子達の教育が終わったのよ」
「ん? それとなんでギルドマスターにって話になるの?」
「いえね、それをバーン様が終始観ていたらしいのよ」
「終始って………………気付かなかったの?」
「まったく…………」
エルスの表情を視る限り、ホントの事のようね。 それでも、私達から気配を感じさせない何て、流石ですわね。
「で、その子達のお陰もあり、王都のギルドの評判が良くなっているのも相まって、バーン様がカサドラ様に進言したらしいのよ」
あ~。そう言うことね。 私達の秘密も話して、それに見合う実力もあるし、ついこの間Sランクにもなったものだから。
「カサドラ様も思い切った事をするのね。 仮にエルスがギルマスを承諾したとして、バーン様はどうするのよ?」
「ひとまずは、私の補佐役をして、時期が来たらカサドラ様の後任として、本部のギルマスをお願いするって言っていたわ」
カサドラ様って、若く見えて60歳のお婆ちゃんですものね。 確かに、後任を決めるのは当たり前よね。
「で、何て言ったの、エルス?」
「取り敢えず、保留にしてもらったわ。 急な事だし、色々と私の方も立て込んでいるから」
そうね。エルスが内政にまで手を出しているから、代理を探さないと────あっ!
「それならエルス、ナリア先生をギルマスに推薦したら良いんじゃないかしら!」
「っ! それは良い考えねリーナ! 私とした事が盲点だったわ! 先生もカイトに鍛えてもらっているから、ジアン君達と同じ強さを身に付けてもらえば、反対する人は居ないでしょうからね!」
「それに、エルスのエルス式教育を伝授すれば、ずっと先生って呼べるしね?」
「そうね、そうと決まればその方向で進めましょう」
先生には申し訳ないですけど、頑張ってもらはなくては。
「あぁそれと、面接に来た方達には、エルスに頼まれていたパーティーの招待状を渡しておきましたよ」
「ありがとう、リーナ。 折角だからあの子達の生涯のパートナーも集めておかないとね」
「律儀ねエルス。昔から」
本当、エルスの良いところでもあり、悪いところだわ。
私の言葉を聞いて、エルスは苦いような顔付きをしておりました。
その後、本店での爆発的な売り上げに驚異を感じた、他店の方達が【クサナギ商会】と契約したい、と、私の目論見通りに申し出があり、徐々にクサナギ商会の支店を出していきました。
勝手に王族の許可なく、王族の保証付きと公言して、バレた時に、どれ程の重い罰を罰せられるか分かったものではありませんからね、それならとクサナギ商会の支店になれば良いじゃん、と言う人が居るのは分かっていましたから。
それでも勝手に使う店が居るかも知れないので、厳重に注意はして居ますけどね。
そして、半年足らずで、聖王国と騎士王国で、クサナギ商会の支店が次々と出来ていき、アッという間に、二国で1番の商会になりました。
と、言うわけで、他の国にも支店を出さなくては。
エルスはエルスで、いつの間にか『エルス教団なんてモノが出来てしまっていたわ』と、後にも先にもこの一幕の時が、一番やり過ぎてしまったと、本当に後悔の表情を浮かべていました。
お読み下さりありがとう御座います。