閑話的な本編
※注意※
読んでる途中で『可愛らしい仕草』とありますが、それは読者の中で可愛らしいと思うものです。
※カイトが目覚める数日前、エルスとリーナがグラティウルの復興を手伝っていた、ある日──
【エルス視点】
「エルス。 それじゃあ、聖王陛下が言っていた王家の血による力だったって事なのね? アナタが言っていた胸騒ぎの正体は?」
「えぇそうみたい。リーナより女性歴は短いから、女の勘?と言うのも違うし、第六感と言うのでも違った胸騒ぎの正体は、王族の中で特に、血が濃く流れている者にのみ現れる“予知”能力だってお父様は言っていたわね」
昨日、いきなりお父様から呼び出されて、そんな話を聞かされた。
お父様からそんな話を聞かされた時は、何を言っているの?、と思ったけど、納得も出来た。
初めは、カイトとノエルに合流して、剣魔武闘会の選考会が始まる少し前に、はっきりとは分からない、それらしいモノを感じたから気に留めていた。
そして、選考会が終わり代表者が決まった時に、カイトが最悪の姿になっているのが少し視えた。全てを無に還す存在に。
しばらくしてから、その確証の無い話をリーナとノエルにしたら信じてくれた。
そしてやる事が決まった。私達以外に、カイトにとって大切な人達を作ること。
カイトは家族以外では、自身が少し関わった人を含めて冷酷非情になる事があるから。
普通は、知らない他人を助ける事はしないとは言え、自身に関わった人も助けないのは良くないことだから、少しでも大切な人を作り、そこから少しづつ大きく広げてみんなに愛される存在にしてあげよう、とノエル、リーナと話し合い決めた。
「でも本当に良いのエルス? 大切な人が増えれば、もしもの時カイトが悲しみ、それだけ最悪の姿になる可能性が強くならない?」
「そうならないように、私達ももっと強くならないとイケナイわよリーナ?」
「えぇ、分かったわ!」
そう。その万が一で最悪の姿になる可能性を潰す為に。
「あらん♡?」
と、決意を固めた時に、少し野太く語尾にハートマークが付きそうな声が聞こえた。
その声が聞こえた方向、後ろを振り返るとそこには、フリルが所々に付けたピンク色の可愛らしい服装で、細身で成人男性並みの長身痩躯で、可愛らしい顔立ちに胸元まである艶やかな金髪を顔の両わきから前に流している髪型おさげをした女性が居ました。長さ2m、幅60cmはありそうな木材を両肩にそれぞれ1本ずつ担いで。
「「えっ!?」」
「アラ、ごめんなさい♡」
振り向いた先に居る、その女性から少し野太い男の声がしました。
「てっきり、そちらの金髪の子が私と同類と思ったら違ったみたいね♡」
っ!? なに!? 今この人はなんて言ったの!? 同類!?
「本当にごめんなさいね♡ それじゃあ失礼するわね♡」
少し野太い声のその女性?は会釈して私達を避けて歩いて行きました。
※※※
「ね、ねぇエルス」
しばらくしてからリーナが声をかけてきました。
「な、なにリーナ?」
「あの人ってもしかして……………」
「えぇ、もしかしなくても……………」
「「漢よね!」」
やっぱり私達、感じていることは似ていました。
「しかも、私と同類と言っていたわよね?」
「えぇ、確かに」
「私が元、と言うより転生前が男って事を見抜いたって事なのかしら?」
「それはどうなのかしら? そうだとしても、なぜ気付けたのかしら?」
「気になるわね。あの人を追い掛けましょうリーナ」
「えぇ」
とてつもない衝撃を与えてくれて、しばしその場所に居ながら、その人の姿が見えなくなった方角をしばし見ていた私達は、急いでその人の後を追いかけました。
※※※
私達がその人に追いついた時ちょうど、半壊した建物の前に肩に担いでいた木材を落とし終えた時でした。
「オネェサマ!」
「アラ♡? 今なにか素敵な呼び方が聞こえたわ♡?」
私の呼び声に反応しました。
「お姉さま?」
「アラ♡? 気のせいだったかしら♡?」
今度はリーナが呼びかけました。しかも、私達がその人の後ろに居るのに中々振り向いてくれません。
「オネェサマ」
「アラ♡? やっぱり素敵な呼び声が聞こえるわ♡ って、アラ♡? さっきの子達じゃない♡? どうしたの♡?」
やっと振り向いてくれたその人は、やっぱり少し野太く語尾にハートマークが付くような男の声をしていました。
「オネェサマにお話しがあって来ました。私はエルスと申します」
「私はリーナと申します」
名乗ってから私達はお辞儀をしました。
「アラアラ、綺麗な挨拶ありがとう御座います♡ アタシはエルシャよ、よろしくね♡」
最後にハートマークが飛び出て来そうなウィンクをして来ました。
そのウィンクがサマになっているから、ドキッとしてしまいました。不覚にも。
「それで話って何かしら♡?」
「実は、先ほどの事を聞きたいのです。私と同類と言った事を」
「アラ、気に障ってしまったみたいでごめんなさいね♡ こんな可愛らしい容姿の子がアタシと同類な訳ないのにね♡ 本当にごめんなさいね♡」
クッ! この人は一つ一つが可愛らしい仕草をしてきて、侮れないわ!
「謝らないで下さいオネェサマ。それよりも、どうして私の事を同類と仰ったのか気になりまして」
「あぁそれはね、パッと見て感じたからよ♡」
「感じた? ですか?」
「えぇそうよ♡ アタシってどうやらその人の本質、本性を見抜く力があるのよね♡ 第六感って言えば良いのかしら♡?」
「第六感………………………オネェサマ、ちょっと失礼しますわ」
オネェサマが頷いたのを確認してから、リーナの方を見ると頷いていたので、少し離れてリーナと密談を始めました。
「(ねぇリーナ、この人が居れば進められるんじゃない?)」
「(私もそう思ったわ。この人が居れば一気に短縮になるわね。アナタの事も見抜いた直感力に、あの人の服装からしても分かる通りだし)」
「(なら、あの人には事情説明をして協力してもらいましょう。)」
「(えぇ、そうしましょう!)」
「オネェサマ」
「密談は終わったのね♡? それで何かしら♡?」
「色々とご相談したい事があります。そして出来れば協力して欲しいのです、オネェサマに」
「…………………………ウソではないみたいね♡ 良いわよ、アタシで良ければ話を聞かせてちょうだい♡」
リーナが真剣な眼差しで見ていたので、巫山戯ていないと信じてもらえました。
オネェサマは半壊した建物の、無事な方に私達を連れて行きました。 どうやらオネェサマの家だったようです。
「腰掛けてちょっと待ってね♡ 今、紅茶を煎れるから♡」
そう言ってオネェサマは離れて行きました。
「それにしても見事なピンク1色の部屋ね? エルス」
「えぇ。 ここまでする人って中々居ないわよね?」
リーナの言った通り、私達が通された部屋はリビングと言うのが的確で、その内装がピンクで染まっていたのです。
内装だけでなく、家具類もピンクの物でありました。
「おまたせぇ♡」
オネェサマが持っている木のトレイから陶器のティーカップとティーポットまでピンク色の物だったのです。
流石にここまでピンクで統一されると、引くどころか尊敬しますわ。
「お茶請けにどうぞ♡」
出されたのはピンクの小さな陶器に入った、一般に見る普通の色のハート型のクッキーでした。
「……………………はい、どうぞ♡」
少ししてオネェサマが紅茶を私達の前に出してくれました。
その紅茶を飲んだら、絶妙な味と温度で非常に美味しかったのです。
それからクッキーに手を付けていなかった私達に手で食べるように促して来ましたので、薦められるままクッキーも頂きました。クッキーも非常に美味しかったです。
「オネェサマ! 紅茶もクッキーもかなり美味しいです!」
「はい! エルスの言うとおりかなり美味しいですわ! 店を出して売れば完売すること間違いないですわ!」
「アラ、ありがとう二人共♡ お世辞でも嬉しいわ♡」
「お世辞なんかじゃありませんわ! ねぇリーナ?」
「えぇ、こんなに美味しいのは私達のノエルの腕に匹敵する程です!」
オネェサマは私達の褒め言葉に照れてしまいました。
その照れた仕草も非常に、ひじょ~に可愛らしかったのです。大事な事なので二回言いましたけど。
「そ、それで話って何かしら♡?」
「はい。ですが、その前に幾つか聞きたい事が出来ました。その服装やこの部屋の内装、このクッキーは全てオネェサマのお手製ですか?」
リーナがこれからの事に必要な確認を始めました。
「えぇ、そうよ♡ この服装や部屋の内装、クッキーも全てアタシの手作りね♡ アタシ、こう見えてもお店を開いていたのよ、壊れてしまったけれどね♡」
あの姿は、半壊した部分を直す為に資材を運んでいたようだったのです。
「どのようなお店を?」
「服屋をやっていたわ♡ アタシ一人で、店員も雇うほど繁盛して無かったけどね♡」
「もしかして、売っていたのはオネェサマが着ている可愛らしい服装が殆どで?」
「まぁ、そうなるわね♡ 買っていく人は中々いなかったけど♡」
最後にため息をしていました。その時に頬に手をあてて首を少し傾けていました。
この人はいちいち仕草が可愛いな、憎たらしい! って、いけない、いけない! 嫉妬しても仕方ないわね。
「オネェサマは今後もお店を続けますの?」
「うーん♡? 続けようと思うけど、繁盛しなかった服屋はやらないつもりよ♡ 何か他の事をするわね♡」
「それでしたらオネェサマ。私達と一緒にお店を開いてくれませんか!」
「貴女達と♡?」
リーナがここだ、と言わんばかりに本題に入りました。
「はい。実は私達、将来お店を開こうと思っているのです!」
「あら~♡良いことじゃない♡」
「それで、オネェサマに協力して欲しいのです!」
「どうしてアタシなのかしら♡?」
「オネェサマのその服装や内装を手掛けた手腕に、その人の本質を見抜く力と私達が調べた知識が合わされば、大繁盛間違いなしと感じました!」
リーナは真剣な眼差しでオネェサマを説得していました。
「……………………………………子供の戯れ言では無いみたいね」
リーナに向けられた眼差しから、本当の事を言っていると感じたオネェサマの声は、完全に野太い男の声音に変わっていました。
「はい! 私達は本当にオネェサマに協力して欲しいのです! 協力してもらえたなら私達の秘密を──」
「秘密ってのは、聖王国のお姫様と公爵家の令嬢ってことかい?」
「「っ!?」」
この人は私達のこちらの世界での正体を知っていたのです。でも、いつから!?
「驚いている所悪いが、簡単な事だよ。貴女達、剣魔武闘会の時、紹介していたじゃないか。その時、アタシも観に行っていたんだよ。開会式で観たリーナちゃんがそれ相応の身分で、その人の隣に居るのがそれに匹敵する身分の者って事くらい、考えれば分かるさ」
「恐れいりましたわオネェサマ。ですが、そんな小さな事ではありませんわ」
「ほ~う?」
オネェサマは目を細めてリーナを、そして私を値踏みするように見てきたのです。
「こちらをご覧下さい」
リーナが先に神族と創造神の眷族のみ隠して偽装したり、能力値を低く偽装したステータスカードを出し、私達にも視えるようにしました。
続いて私も同じく偽装したステータスカードを視せました。
「っ!? えっ!? 貴女達、ここにある転生者ってなんなのかしら!?」
オネェサマは最初は戸惑いつつも、表示された内容を指摘して来ました。
「これが私達の秘密ですわオネェサマ。私達はこの世界とは違う、別の世界から記憶を持ったまま生まれましたの」
「ですから、オネェサマが私の事を同類と言った事は間違いではありません。今の私の転生前は男でしたから」
「……………………」
「それでですね、別の世界で調べた知識をこの世界で広めようとしましたの」
「…………………それはどの程度なのかしら?」
「オネェサマが着ている服装が当たり前で、着ている人が殆どですわね」
リーナの言っていることの半分は本当だけどね。色はともかく、それ以外の服のデザインは可愛らしいのが殆どですけどね。
「それは、魅力的なお話ね。つまり、服屋をもう一度始めろって事なのね?」
「いえ、違いますわ。私達が始めるのは商会です!」
「商会? 服以外にも何かを売るつもりって事よね?」
「そうですわ! この世界はまだまだ発展しますから、豊かにそして少し便利にしたいと思っておりますの!」
「………………………………その話を聞いて、貴女達の正体を知った上で断った場合、アタシはどうなるのかしら?」
「(ニコッ)」
リーナは黙ったまま目から光りを無くし、口元だけが笑った回答をオネェサマにしていた。
「………………分かったわ♡ 貴女達に協力するわ♡」
「ありがとう御座いますオネェサマ」
リーナは今度は笑顔を見せてお礼を言っていた。
協力では無く、脅しに近かったけど。
「それで、具体的に何をするのかしら♡?」
「まずは、本店を開くのに建物の確保が必要ですわ。 ですので、オネェサマの家屋を広げようと思いますわ」
「それは構わないけれど、資金はあるのかしら♡? お店を始めるにしても服やモノを作るのに結局はお金が必要よ♡?」
「その点はご心配なく。資金は全部私達の方で用意しますので。オネェサマにはその他の事を色々とお願いしますわ」
「分かったわ♡ 協力すると言った限りは任せて頂戴♡」
オネェサマの仕草はやはり可愛いと思ってしまった。
それから毎日オネェサマの元に趣き、商会を開くの為の準備を進めました。
※※※
「それにしてもオネェサマって本当どうしてあんなに可愛らしい容姿をしているのかしらね、エルス?」
「もう少し親しくなってからお話しを聞きましょうか」
私達が初めて会った時は、かなり洗練された身体強化を使っていたみたいだしね。
それに、一般人にしては高い能力値だしね。 しかも、私達と同じ家事全般のスキルまで出ているわ。
※エルシャのステータスです※
【ダイディスのステータス】
名前 ダイディス・グレバニー 35歳 男 Lv 100
種族 人族
職業 服屋の店主 家事夫
体力 6000┃6000
魔力 3000┃3000
筋力 3000
守備力 1500
魔法力 1000
魔法耐性 1200
知力 160
素早さ 500
運 30
スキル 体術Lv3 火属性Lv2 光属性Lv2 無属性Lv4 家事全般Lv8
※家事夫は男性バージョンの意味です。
お読みいただきありがとう御座います。