2ー20話
昨日はエルスのおかげで大変な一日になってしまった。
まさか、ロールさんも婚約者にする事になるとは思わなかったよ。一体何が目的なんだろうな、エルスの奴は。
「それではナリア先生、後のことは任せましたよ」
「はい」
朝早くに、サナア学園長がいち早くグラティウルに向かうことになった俺達代表者とナリア先生の見送りに王城に来ていた。見送りには王様、王妃様、アルフさん、ジェイド兄ちゃん、セリカ姉ちゃん、エルス、バーンさんが一緒に居た。
俺達は王様が用意してくれた馬が二頭で6人も乗れる幌型でない上等な馬車に乗り込み、御者を先生が務める事になっていた。この中では先生だけが馬車の扱いを心得ているから。
俺も後で先生に教えてもらわないと、先生だけに任せるのも何だしな。
俺達代表者組はラフな服装でいるのだが、先生だけは今までズボンスタイルにラフな格好をしていたのだが、何故か今の格好は膝上丈のスカートタイプのややブルーのスーツ姿になっていた。靴はキレイな生脚を出して、つま先が出て踵が少し高く足首で留めるタイプのブルーのサンダルを履いていた。
どこから新調したの先生?
「それではカイト、しばしのお別れですね(ウゥゥ)」
「大袈裟過ぎだよエルス。それに嘘泣きは止めなさい」
「でも寂しくなるのは本当よ」
「はいはい」
エルスが本当に寂しそうな表情をしていたから優しく頭を撫でてあげた。
エルスは内政問題を解消して行ったせいでエルスが長く王都を離れると問題が生じる案件があるので、大会中問題無く居られる様に片付けると言っていた。本人はやり過ぎて悔しがっていたから、通門でいつでも戻ってこようか、と提案したら自分で蒔いたタネだからと断った。そこら辺はエルスらしい。
「フフフッ!ありがとう。 リーナ、ノエル、後はお願いね?」
「分かっているわ」「うん、任せて」
「大会最終日で闘えるのを待っているよカイト」
「ハハハッ。程々にしてよジェイド兄ちゃん」
次に声を掛けてきたジェイド兄ちゃんはかなりワクワクした表情をしていた。多分、試合が始まったら加減を忘れてしまうんじゃ無いのかな、楽しくなって。
「カイト、大会が終わったら話があるからな!冒険者の事で!」
「それは、エルスが………」
「そうかも知れないが、お前にも責任があるからな!」
「はい………」
やっぱり、バーンさんに怒られてしまったよ。理不尽な………。
「それとコレを」
バーンさんがギルドの紋章が入っている手紙を寄越した。
「コレは?」
「グラティウルにはギルドの本部があり、そこに重大な事など報告の義務があるのだがそれでお前の事を話したら機会があればお前に会いたいと行っていたからな、ギルドマスターが。それでお前と関係者達の事を詳しく書いてある。これに関しては勝手に書いて済まない」
「まぁ、構いませんよ」
「何かあれば、ギルドマスターのカサドラ様が力になってくれるはずだ」
「分かりました」
俺は手紙をマジックバッグにしまった。
「カイトよ。これからも自重してくれよ?」
「はい、できるだけ心掛けますが、ダメだったら仕方ないですよね?王様」
「……………………お前の良心を信じているぞ」
最後は諦めた様に言っていた。
「それでは、出発します!」
ナリア先生が掛け声と共に馬を走らせた。それぞれが手を振って見送り俺達も振り返した。
貴族街を抜けた北門から出て北東の方角に、馬車でスムーズに行けば4日掛かる位置に目的の友好都市グラティウルがある。
グラティウルまでの道のりはエルスの手腕で、道路がキチンと整備されており観光客や行商人の人達が利用しているのだが、たまに魔物が出没して襲って来る時があるらしく、冒険者を護衛につけて利用しているとの情報をリーナが教えてくれた。
「それにしてもこんな立派な馬車を用意してもらって何だか畏れ多いよ」
「そうだよね。本当に良いのかなこんな優遇してもらって」
王都を出てしばらくしてからジアンとルセが言ってきてそのとおりだと思うのだが、わざわざ王様が用意してくれたのだから、有り難く使わないとな。それに少しだけ席は余裕があり、ゆったりできる様に大きいのを用意してくれた。
のだが、ノエルとリーナがぴったりくっつき腕を絡ませてきているのだ。
「あのさ、どうしてくっついているの、二人共?」
「カイくんの愛を補充しているだけだよ!」
「ノエルの言うとおりね。これからナリア先生に馬の扱い方を教わるのでしょ?」
「そうだけど、よく分かったな」
「フフフッ。それ位見抜け無くてはアナタの隣に居られないわ」
うーん、色んな手を使ってでも居そうな気がするけどなノエルとリーナとエルスは。
「リーナちゃんって結構大胆な事もするんだね。今まで腕を絡ませるをやる所は見たこと無かったけど」
「それはジアン君とルセが身内だと思えてきたからよ」
「ん?それはどういう意味なの?」
まぁ、ルセの疑問は当たり前だけどな。リーナは自分の不利になる様な事は成るべく避けているからな、知らない相手には。
「アナタ達が私の中で大事な人になったって事よ。そんな相手には隠す必要はないでしょう?」
「あ、ありがとうリーナちゃん」「あ、ありがとう」
ルセとジアンがリーナの素直な気持ちが照れくさかったみたいで笑みをこぼしていた。
でもまだ、リーナはデレデレの状態を見せていないから半分本当で半分嘘なんだけどな。
「まぁ、そういう訳だから先生みたいにこんな風に静かに出来ないと思うけど、その時はすまない、みんな」
「いいよ、いいよ。そういうのも楽しまないとな!」
「うんうん!」
ジアンとルセも何だかんだでこうゆう事に対するメンタルは強くなったよな、本当に。
その後は談笑しながら途中馬車を停めて昼休憩を挟んだ。今のところは魔物に遭遇する事無く順調に進んでいた。
街道沿いから少し外れてそれなりに拓けた場所があったのでそこで昼食をすることにした。俺はたまに出てくる魔物に襲われない様に周囲に極薄の水を立ち巡らせ光を屈折させて見えないように結界を創った。他の人達の目もあるから。それからリーナが丸テーブル1卓と椅子を6脚出しノエルが料理を出した。席順は俺から左隣にノエル、ナリア先生、ルセ、ジアン、リーナとなっている。馬達にも水とエサをやった。
本日の料理は冷やしうどんだ。王妃様がノエルに王城にある材料を好きに使って構わないと言われていたそうだ。その代わり私達の分も作れと。
それにしてもノエルの再現力はかなりのモノだよ。スキル欄に家事か料理スキルがあればLv10で間違いないんじゃ無いか。
「先生、目的地のグラティウルに行く途中に街があるんでしたっけ?」
「あぁ、順調に行けば夕方頃に最初の街に着く予定だ。グラティウルに向かう途中には街、村、街、グラティウルとなり、ちょうど一日置きで着ける様に街道が整備されているから通行がかなり楽になっているな。これも陛下のおかげだろうな」
あぁ~先生は知らなかったんだっけ、実はエルスが俺と結婚したくて宰相や貴族などの周囲を黙らせるためにやっていた事を。
「それにしても今回の料理は弾力がありツルッとして、オマケにこの黒っぽい液体も初めてだが美味しいな!」
「先生この料理はうどんと言うんですよ」
ノエルが先生に料理の名前を教えていた。
「うどん………」
「そうです。今出してあるのは冷たくしてありますけど、温かいのもあるんですよ」
「温かいの?」
「この黒っぽい液体は魚や海藻類から旨みを取って調味料を混ぜたつゆです。これを温めて食べるのも美味しいですよ」
「それは美味しそうだな!それも用意しているのか?」
「当然ですよ!」
「楽しみだよ。……あと気になっていたのだが、どうしてこのつゆはこんなに冷たいのだ?うどんもそうだが」
「あ~~それは~」
ノエルの奴、また、事情を知らない人がいる事を忘れていたな。こっちを向き視線がやってしまったから助けてって言っているしさ。
「あのですね先生」
「何だカイト」
「お話ししますから秘密にしてくれますか?」
「??? あぁ良いぞ」
俺は席を立ち後ろに下がり、何も障害が無い場所に手をかざして1m程の大きさの氷の塊を作った。
氷の塊は空中に作ったから、ドォンと大きな音を立てて地面に着いた。
「こ、これは!?」
「これが冷たい正体です、先生。触ってみて下さい」
先生は恐る恐る触り出した。
「これは冷たくて気持ちいいな!」
「先生、手の熱が無くなる前に離して下さい」
「どうしてだ?」
「熱が無くなり手の感覚が無くなったら手が使えなくなりますよ」
その言葉を聞いた先生はバッと氷から手を離した。
「カ、カイト、そういう事は前もって言ってくれ」
「す、すみません」
「そ、それで氷は何なんだ?」
「コレは氷と言って水本来の冷たさを更に冷たくした水の結晶です」
「氷…………水の結晶………」
先生は俺の簡単な説明を聞きブツブツ言っていた。
「な、なぁカイト、これは魔法だろう?この魔法を私に教えてくれないか、頼む!」
先生は最後に頭を深く下げてきた。
「良いですよ」
「ほ、本当か!?」
「はい。先生。俺、エルスから先生の話を聞きました」
「………………」
そう言った途端、先生は一度上げた顔を再び下げてしまった。
「先生はひと月前の“あの村”の事をどこまで知っていますか?」
「学園長からお前達が王都が大事になる前に事態を未然に防いだ位の情報しか私は知らない」
ふむ、余り公にせずにしていたみたいだな。
「実は先生の話で出て来た黒い靄を出して豹変したオークとは別のオーガがその状態になっていたのですよ。それを黒いフード付きのローブを着ていた者が魔物を使役し村を襲い、終いにはオーガを呼び出して豹変させたのです」
「そ、そのオーガは?…………」
「ノエルの手を借りて、俺が倒しましたよ、この魔法で」
「そ、それじゃあ!」
「はい、この魔法だと黒い靄で豹変した魔物の動きを封じる事ができますよ」
半分本当だ。この魔法で異常な再生と動きを封じる事は出来るけど、倒すまではいかない。他の属性でも倒す事もできそうだが、もう一つの魔法は後にでも教える事にするか。
「ですがこの氷はこちらの人には馴染みが無いですから、習得までかなり掛かりますよ?ジアンとルセは前からこの氷はイメージさせてますが」
「ん?カイト今、こちらの人って言わなかったか?それはどういう意味だ?」
あっ!?やっちまった!ジアンとルセには俺達の事を詮索しない様、厳命していたが先生には約束させて無かった。
「先生。無闇に詮索するとカイトは秘密にしたまま居なくなるよ」
「うん、私達、カイト君達の事を詮索しない代わりに修業を付けてもらっているから」
ジアンとルセが先生危険無闇に触れるなっと言わんばかりに助けてくれた。まぁ約束を守らせる事は色々あるけど。
「そ、そうなのか?」
先生が二人の言葉を確認するために俺に尋ねてきた。
「まぁ二人にはいずれ話すからとも言っていますからね。先生に関しては信頼してますから婚約者として」
先生は言葉のイトを察して黙ったまま頷いた。
「半分冗談ですよ。でも俺に取って大事な人には俺達の事を話すつもりですから、いずれ。ですので今は詮索しないでもらえると有り難いです」
「…………分かった。お前から言ってきたのだ私も待つよ、婚約者としてな」
先生が仕返しと言わんばかりに笑みを浮かべて言ってきた。
俺は食べ終えた後、馬達の所に向かい疲労回復させるために【キュアヒール】を掛けてあげた。疲労も状態異常扱いになっているからこの魔法で済むのは有り難い。
その後は、食休みをしてから再び馬車に乗り込んで出発した。
俺は御者をしている先生の隣に座った。
「それじゃあカイト、手綱を握ってみようか」
「はい」
しばらく走ってから先生が言ってきた。
馬達が手綱を握っている人が代わったのを感じて先ほどまで静かに走っていたのだが、少し荒々しく走り始めた。
「ははは。やはり急には上手くいかないか」
「やっぱり大変ですね、コレは!」
しっかり手綱を持っていないと馬達があらぬ方向に向かって行きそうだから気が抜けなかった。
「コラお前達!せっかく疲労回復させたのに直ぐにバテるぞ!」
まぁ、馬達に話し掛けても仕方ないけどさ。
だが、俺の言葉を理解したのか急に大人しく走り始めた。
「おいおい、急に大人しくなったぞ」
「先ほどまでとは違い楽になりましたよ」
ここまで大人しく走っていると手綱を持っているのがかなり楽になった。
「畏れ入ったよカイト」
「いえいえ、先ほど馬達に魔法を掛けて疲労回復したのをちゃんと覚えてくれていたからだと思いますよ」
「それならそれで構わないか。それにしても、先ほどの氷といい選考会で結界を壊した強さといい、その年でそこまでの強さを身に付けて何をするのだ?」
「うーん、ここまでの強さになるとは俺自身思わなかったですけどね。きっかけはただ単純に俺の大事な大切な家族を守りたかっただけなんですけどね」
そう、二度と家族の命を失わないために。
「………………………なぁカイト、お前本当に10歳か?」
「!?な、何を急に!?」
「だってな、10歳より前から強くなっているとしたら、既にその考え方をしていたのだろう?それを考えたら、とてもじゃないが子供らしくないから。大人びた考え方と配慮、だけど子供みたいな時がある。だからかなお前の言葉でドキッとしてしまう時が最近あるのは」
「ははは」
先生って何気に的を射る時があるから恐いよ。
「すまない、詮索するつもりは無かったんだ」
「良いですよ、気にしないで下さい。それより先生」
「何だ?」
「その格好ってどうしたんです?」
「な、な、なんだいきなり!?」
何でそんなに動揺するのさ。しかも顔を赤らめて。
「いえね、いつもと違う服装だから気になって」
「き、き、気分的にこ、こ、こうゆう服装がき、き、き着たかったのだ!」
動揺の為過ぎで噛みまくっているし。
「それ俺の目を見ながら言えますか?」
「カ、カ、カイト前を見てないと危ないぞ!」
「お前達、街に着いたら疲労回復だけで無くブラッシングもしてあげるから自分達で安全に走ってくれるか?」
「「ヒヒィーン!」」
「えっ!?嘘!?何で!?」
先生が驚くのも無理は無い。俺だってまさかダメ元で言ってみたのに言うことを聞いて安全に走ってくれるとは思わなかったよ。
「さぁ先生、改めて俺の目を見て言って下さい。さぁ!」
先生は目を泳がせてしまっていた。
「す、すまない、正直に話すから許してくれ」
「それで本当は、どうしてそんな格好をしているのです?」
「姫様に言われたのだ。カイトはこういう格好が好きだからって」
「ったくエルスの奴は。先生も流されないで下さいよ」
「す、すまない。それでカイト、この格好はどうなのだ?正直に言ってくれ」
先生そんな期待した目で見ないで下さいよ。
「と、とても似合ってますよ!」
「あ、ありがとう。それとそう言われたらこれも言えと言われた。す、好きか嫌いと言ったら?」
エルスめ!俺に関する事の予想を立てすぎだ!
「す、好きですよ!」
「あ、ありが……」
先生、恥ずかしさの余り最後は小さく言っていたよ。俺も正直、恥ずかしいよ。絶対、顔は赤くなっているだろうな。
馬達もやれやれと言わんばかりに鼻を鳴らしていた。本当、人の言葉を理解しているみたいだな。
街に着くまでの間、何気に先生が甘えたりしてきたのでノエル達にやってあげている頭を優しく撫でてあげたり、手を繋いであげたりと色々したりされるがままにしていた。
そして魔物にも遭遇せずに無事、夕方頃に最初の街クォーネに着いた。クォーネは1万人程の人口が居る位の街である。街の大きさも大き過ぎず小さくも無い位だ。街の雰囲気も賑やかに栄えており、俺達は街の入り口南側で警備をしていた兵士に挨拶と訪れた目的を言い街に入った。夕方頃に着いた事もあり、先生が知っているのでそのまま宿屋を目指した。
宿屋に着いた俺達は一度中に入り俺だけ馬達の手入れをするために宿屋の女性従業員の案内で厩舎に馬達を引きながら連れて行ってもらった。
「エサの方はどうしますか?エサを含めますと一頭に付き銀貨一枚で二頭ですから二枚になりますけど?」
「エサは用意していますので大丈夫です」
「それでしたら二頭で銀貨一枚になります」
俺はマジックバッグから銀貨一枚を取り出し従業員に渡した。
「はい、確かに。それと水の方は好きなだけ使って構いませんので、それでは」
従業員は必要事項を言って宿屋に戻っていったみたいだ。
「それじゃあお前達のブラッシングをするか!馬は初めてやるけど痛くしてしまったらごめんな?」
馬達はブフゥンと静かに鼻を鳴らして返事をしてきた。本当に言葉が通じているみたいだ。
俺は拙いながらも、ミケとハナにやってあげてた様に出来るだけ優しく、程良い力加減を心掛けて馬達をじっくりとブラッシングしてあげた。その途中、ノエルから【念話】で、ここの宿屋は食堂もやっているので先に食事をしているよ、と言ってきたので了解した。
馬達のブラッシングしている時に、気付いたけど雄と雌であった。
馬達は交互にブラッシングしている時に片方の背中に首を乗せていた。どうやら気持ちいいみたいでリラックスしていた。
「気持ち良くなったみたいで良かったよ」
馬達は鼻をならしながらスリスリしてきた。よっぽど気持ち良かったみたいだ。最後に【キュアヒール】とエサを与えて厩舎をあとにした。
俺も飯にするために宿屋からも行けるが、食堂自体にも入り口があるのでそちらから入った。入った際に、中が騒がしかった。
「他を当たって下さい!」
「いいじゃねぇかよ姉ちゃん!俺達と飲もうぜ!」
その声の方向を見るとノエル達が料理を食べているテーブルに座っていたナリア先生が冒険者らしい服装の男4人に囲まれていた。 何故か先生が困っているのにノエル、リーナ、ジアン、ルセは何もせず見ていた感じだった。
「こんなガキ共と食ってないで俺達と一緒にどうだよ!」
「そうそう!それにそんな色っぽい格好をしているんだ男に飢えているんだろ、俺達とそのまま夜を明かそうぜ。遊んでヤルからよ!ギャハハハハハ!」
「「「ギャハハハハハ!」」」
「貴方達、今から地獄を見るわよ?」
リーナの声が近くに聞こえた時、俺は冒険者の1人を掌底で入り口に吹っ飛ばしていた。
「な、な、なんだこのガキ!?一体どこから現れた!?」
俺はもう1人別な奴を入り口に向けて掌底を喰らわせて飛ばした。
「このガキ!」
その冒険者は殴りかかってきたので、手で受け止めてそのまま腹に掌底を喰らわせて入り口に飛ばした。
すかさずに最後の1人も入り口に吹っ飛ばした。
入り口から外に出た冒険者らしき者達は、ダメージを与えた箇所を抑えながら咳き込んでいた。
「こ、このガキ!一体テメェは何なんだよ!」
「そうだ!いきなりこんな事してただで済むと思っているのか!」
「俺達がテメェに何かしたかよ!」
「クソっ!痛てぇ事してくれたじゃ無いかガキが!」
冒険者らしき者達がそれぞれ勝手な事を言っていた。
「勝手な事ばかり言いやがって。まず確認するがアンタら冒険者か?」
「だったら何だってんだ!」
「それに、俺達に手を出したんだ!」
「??? それが何か?」
「あの人が黙っていないぞ!」
「ガキのお前は知らないだろうがな俺達のバックにはあの人がいるんだぞ!」
「??? だから誰だよ!」
それぞれ言ってくるのは良いが勿体ぶるなよ!流石にあんな言葉を俺の大事な人に言っていたんだ、こっちは頭に来てるんだよ!
「我ら冒険者の間で知らない者は居ないその名は!」
「「「「鬼神と神童の鬼神ことカイト様と神童のノエル様だ!!」」」」
「っ!?」
「カイト様とノエル様はな、何と10歳にしてAランクの実力の持ち主だがSランクまたは、かの剣聖と並ぶSSランクの実力があるのでは無いかと言われているお方なんだぞ!」
「それに、カイト様は身内に危害を加えた者には容赦をしないのだ!」
「そうつまり俺達冒険者も冒険者仲間だから身内になるのだ!」
「ここまで言えば分かるだろクソガキ!俺達に手を出したって事は」
「「「「カイト様が黙っていないぞ!!」」」」
はぁ~~~~~。頭が痛くなってきた。何故お前らが自身満々で言ってるのさ、俺はお前らの事、知らないのに。半分萎えてきた。
冒険者達は、先ほどまでダメージを受けていた箇所の抑えを辞めて腕組をしていた。仁王立ちのごとく。
「はぁ~~。因みに聞くけどその人の特徴は?」
「あん?恐くなったか」
「あぁ恐くなったから、その人の特徴を知りたいな?」
「良いだろう、特別にテメェに教えてやるぜ!」
「その人は、茶色い髪に瞳、子供らしくない言動、身内には優しく危害を及ぼした者には一切容赦しない性格、そして他の冒険者とは桁違いの実力の持ち主だ!」
「……………………ちなみに、もう1人は?」
「何だ、ノエル様のことも知りたいのか、しょうがないな」
「ノエル様は藍色の髪をポニーテールにしていて、青い瞳、天真爛漫なキュートな笑顔、この方は他の者にも優しいが身内に危害を喰らわせた者には一切容赦をしない性格、そしてこの方も桁違いの実力を持っている。そしていつもカイト様と行動を共にしている」
「はははっ!どうだ恐れいったか!クソガキ!はははっ!」
「「「はははっ!」」」
そこまでの情報と先ほど自分達で味わったダメージを誰に受けたか検討も付かないのかよコイツらは。
「はぁ~~! なぁアンタら」
「何だ?」
「言っておくけど、恥ずかしながらそれは俺の事なんだが?」
「はぁぁっ!テメェ巫山戯たこと抜かしてるんじゃねぇぞ!」
「そうだそうだ!何を巫山戯たことを!俺達の話を聞いた後ならいくらでもそういう事は言えるぜ!」
「話を聞いてカイト様とノエル様のことがいきなり恐くなったからってそんな冗談を!」
話しているだけで頭が痛ぇ!
「まず、さっきアンタらが言っていたノエル様の外見は?」
「あん?ノエル様の外見は藍色の髪にポニーテール、青い瞳だが?」
「そしたらさ、アンタらが声を掛けていた人の傍の中にその外見に合う子が居なかったか?」
「ん?確かに、藍色の髪にポニーテール、青い瞳で10歳位のガキが居たな」
「そしたらもう1人の外見は?」
「あん?カイト様はな、茶色い髪に瞳、子供らしくない言動」
「最後に?」
「10歳位の…子供に……桁違いの………実力の……………持ち主に……」
「「「「身内には………優しいが………危害を及ぼした者には…………容赦しない性格。まさか!?」」」」
ようやっと気付いたよコイツら。
「分かっているよな!俺の身内、女に手を出したんだ覚悟しろよテメェら!」
「「「「ヒィイヤァァァァァァ!!!!!」」」」
恐怖を与えた後再起不能にしてから回復魔法を掛けてそのままその場に放置した。そして騒ぎを聞きつけた兵士数人が来て、事情を言い、俺は注意を受け、冒険者達を連れて行った。
その間は、いつの間にか野次馬が出来ていてその際に、歓声が上がっていた。野次馬の中にはノエル達も居た。
「カ、カイト」
「はい、何です先生?」
「あ、ありがとう」
先生は顔を赤らめてお礼?を言ってきた。
「どういたしまして」
「格好いいぞ坊主!」
「面白かったぞ!」
「やるな坊主!」
食堂で食事をしていた人達も一緒に野次馬になって見て居たらしくそんな事を言っていた。
「みんな!今日は朝まで飲むぞ!」
「「「「「おおぉぉぉ!」」」」」
野次馬してた人達が俺達を中に引き連れて俺達の事を肴に飲み食い騒ぎが始まってしまった。
ノエル、リーナ、ジアン、ルセは途中で抜け出して休む事になり、当事者の俺とナリア先生は朝まで捕まっていた。一応外見は10歳の子供の身体なんだが。中身は成人しているけど。
お読み頂きありがとうございます。