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家族で異世界転生~そして、少年は~  作者: 長谷川
第2章 再会、そして~
31/111

2ー17話

【ノエル視点】


 お父さん……お母さん……本当にこっちの世界に転生しているのかなぁ?転生しているのなら会って話したいよ。


「ノエル!」


「はっはい!」


 ビックリしたぁ~!カイくん、急に声を掛けるんだもん、おかしな返事をしちゃったよ!


「ノエル、昨日エルスが話したことを気にしているのか?何度も呼びかけてたんだぞ?」

「えっ!あっ、ごめん」

「ノエル、本当にごめんなさいね。私の不用意な発言で期待させてしまって」

「ううん。…………ごめんねエルスちゃん」


 エルスちゃんが申し訳なさそうな表情を浮かべて謝ってくれたけれど、やっぱりお父さんとお母さんであってほしいと想っちゃうよ。 


「それでは、みんなまた後で。カイトは()()()()()をやりなさいよ」

「ん、うん。うん」


 ん?カイくん、エルスちゃんに何か言われてたのかな?なんだか、切れの悪い返事をしたけど?


 学園に着いて、エルスちゃんは特別席に向かう間際にそう言って、別れた。 


「それじゃあカイ、私達は先に観戦席に向かうから、ノエルちゃんの事、()()()()()()

「あ、うん。うん」


 リーナちゃん達も早々に行っちゃった。それにまた、カイくんに何か意味深なことを言っていた様な?


 そしてカイくんが何も言わずに黙ったままになっていたので、私は試合の準備をする為に更衣室に向かったのだけど、カイくんが一緒に付いて来ました。


「なぁノエル」

「なぁに?」


 カイくんが更衣室に着いた時に声を掛けてきました。真剣な面持ちで。


「エルスが言ってた、二人が転生しているって話しなんだけどさ」

「うん」

「俺はさ、二人が転生しているって信じているんだよ。むしろ確信していると言っていい」

「──どうして信じられるの?」

「だって、俺は二人に会ってちゃんと言わなければいけないことがあるからさ!」

「何を?」

「ノエルを、いや雫を俺に任せて下さいってな!」

「ハル君!」


 カイくんが最後に唇に優しくキスをしてくれた。好きな人からの告白と優しい温もりを貰った。私は涙が溢れた。


「だから、俺は絶対に二人を探してみせるから!」

「うん!うん!分かったよ。………………ありがとうカイくん。励ましてくれて。それにエルスちゃんにもだね」

「あぁ。国で探せなくても、俺達が一緒に探すから、心配しないでいつも笑顔なままのノエルでいてくれよな!」

「うん、ありがとう」


 そして私は更衣室に入った。

 そして訓練着に着替え、胸当てだけを身に付け、舞台がある屋内運動場に向かうとすでに、上半身の躰の部分だけの鎧に籠手、すね当てに両刃斧を持っていたジャッカル・ライク先輩とナリア先生がいました。


「それではこれより、最後の試合、6年Bクラス、ジャッカル・ライク対1年Eクラス、ノエルの試合を開始する!」


 ナリア先生は私が着いて、少ししてから声を高らかに張り上げ宣言してました。


「それでは、始め!」



「オイ、1年!お前、何の武器も持たずに舞台に上がってくるとは、オレ様に勝ちをくれるのか!」

「いえ、譲りませんし、勝つのは私ですので」


 開始早々に見当違いなことを言ってきたよ、この先輩は!まぁ、私の格好からしてそう言う人がいる方が当たり前かな?


「そう言うことなら、──土よ、足場を無くせ、【流砂クイックサンド】」


 先輩は私の足元目掛けて手をかざし、魔法を発動させ、足元を硬い地面から何処どこまでも沈んでいきそうな砂地に変えて来て、埋まって行きそうになる前に、足に魔力を集め身体強化をして、その場から離れました。


「やるじゃないか、1年!」

「いえいえ、先輩こそ流石です」


 先輩は笑みを浮かべ、私も笑みをこぼしていました。


 うーん、でもどうしようかな?すぐにでも決着はつけられるんだけどなぁ?


「そちらから来ないなら、こちらから行くぞ!」


 先輩は見た目に反して意外にも素早い動きで、距離を詰めて、両刃斧を両手で持ち振り上げ、私目掛けて振り下ろして来て、私は躱すために、かなり強く地面を蹴りその場から離れ、私がいた場所が地面がえぐれ、戦塵が舞いました。


「先輩!今の攻撃は、大怪我では済まない位でしたよ!」

「結界内に居れば多少の怪我は付きものだろうが!」


 戦塵が晴れない内に先輩が素早く、私の方を目掛け今度は横薙ぎに攻撃をして来たので、地面を強く蹴り上に跳び上がりました。


「上に逃げるとは、格好の的だな!土よ、飛礫となれ【土塊アースロック】」


 先輩が私に手をかざし、6個の【土塊アースロック】を放って来て、私は手をかざし【風球ウィンドボール】を6個作り、【土塊アースロック】目掛けて放ち相殺して、土埃が舞う中、地面に着地しました。


「おいおい、1年!オレ様が魔法を使うと予想していたのかよ!?」

偶々(たまたま)ですよ、偶々」 

「じゃ無かったら無理だよな!」


 危なかったぁ~!そう言えば昨日エルスちゃんに言われてたんだった。公の場での無詠唱での魔法の行使を控える様にって、危ない危ない、気を付けないと。


「それにしても、今回の選考会はどうなって居やがるんだ?1年のしかも落ちこぼれと言われているEクラスが続々と代表になるなんてなぁ!しかも、第一試合のあの1年の小僧の強さ、人の強さを遙かに超えてんだろ!もうあれはバケモノだろ!」


 言うに事欠いて、私の好きな人をバケモノ扱いしたよ、この人は!!絶対に許さない!


「先輩って、デリカシー無いって言われませんか!」

「急に何言ってやがる、1年?」

「アナタの様な人ともう試合はしたくありませんので」

「あぁん、降参でもするのか?」

「いえ、早々に試合を終わらせますよ、私の勝ちで!」

「巫山戯た事を言うんじゃねぇよ1年!」


 先輩がその言葉と共に駆けて来たが、そんなこと私は関係なく魔力を圧縮した50cm程の大きさの【風球ウィンドボール】を作り手元に留め、身体強化したままの私は先輩の攻撃を掻い潜り懐に入り、【風球ウィンドボール】を直接ぶつけ、先輩はそのまま勢いよく吹き飛び結界に激突して倒れこんだ。

 

「──ジャッカル・ライクの戦闘不能により、勝者ノエル!」

──ワァァァァァァァァァァ!──

 ナリア先生が先輩の元に近付いて確認してから宣言していた。その宣言と共に歓声が巻き起こった。


「ノエル、最後のは少しやり過ぎでは無いのか?」


 ナリア先生が近くに来ていた。


「だって先生!あの人カイくんをバケモノ扱いしたんですよ!好きな人をそう言われたら腹も立ちますよ!先生は違うんですか!」

「う、うん、そうだな。た、確かに自分の好きな人がそう言われたら腹も立つな」


 あれ、何か先生おかしな反応をしている。私、おかしなこと言った?


「それはそうとノエル、代表おめでとう」

「ありがとうございます、先生」


「皆の者、これにて5名の代表者が決まった!これにて剣魔武闘会代表者選考会を終了とする!教員は昨日の話した通りに準備を始めてくれ!そして代表者5名とナリア先生は学園長室まで来る様に!それでは以上だ!」


 サナア学園長が終了の挨拶と共に、そんなことを言っていました。


「先生は何か知っているんですか?」

「まぁ、準備の方は知っているが、何故私まで呼び出されたのかは、分からん。とりあえず行ってみようか、ノエル」

「はい」


 ナリア先生が先に歩き、その後を付いて行きました。


 先輩は職員の人から治癒魔法を受けていました。


※※※

【エルス視点】


 カイト、上手くやれるかしら? 原因を作った私が言うのもどうかと思うけど。ノエルには悪いことをしてしまったわね。


「おはよう御座います、ジェイド様、セリカ様、学園長」

「「「おはよう御座います」」」「あれ、ワシはエルスたん!?」


 お父様ったら、呼ばれなかっただけで慌て始めましたわ。大人気ない。


「ついでにお父様もおはよう御座います」

「だからワシ、ついでなの!?パパの事、キライなの!?」

「いやですわお父様ったら!私なりのスキンシップですのに!」

「それにしたって、最近エルスたん、パパの扱いがヒドいよ!?」

「あぁ、それはただの八つ当たりですから気にしないで下さい」

「八つ当たり!?もしかしてカイト辺りから嫌がらせを受けているのか!?」

「違います、自分の不甲斐なさに苛立っているのをお父様にぶつけているだけですわよ。カイトとは熱烈なスキンシップを取っていますから、その点は心配ないですわよお父様」

「……………なぁ、ジェイドよ。ワシもう隠居生活をしても良いかのぉ?胃に穴が開きそうじゃ」

「陛下、しっかりして下さい。エルス様だって本気で言っている訳では無いでしょうから。そうですよね?」


 ジェイド様も大変ですわね、お父様の相手は。ここは私がビシッと言わないといけませんわね!


「えぇもちろんですわ!お父様ったら八つ当たりと熱烈なスキンシップ以外を本気にするなんてイヤですわ!」

「…………もうイヤじゃ」「エルス様………」


 あら、お父様ったら意気消沈してしまいましたわ。本当の事ですのに。ジェイド様も。


「それではこれより、最後の試合、6年Bクラス、ジャッカル・ライク対1年Eクラス、ノエルの試合を開始する!」


「ほら陛下、試合が始まりますよ、元気出して下さい」

「そうですよ~陛下~。ノエちゃんが活躍する様を~しっかり見て下さいよ~」

「うむ、二人の言う通りだな。もう一人の弟子の実力を見ておかないとな」


「それでは、始め!」


 それにしてもノエルのあの表情、カイトからちゃんとキスされたのね。嬉しそうにしちゃって、笑みがこぼれているわ。


「ん?躱したとは言えジャッカル・ライク(あの者)の攻撃、いくら何でも強くないか?結界から出たらダメージが残り過ぎるのでは無いか?」

「ナリアが止めない所を見ると大丈夫ですよ。それにあの程度の攻撃はノエル(あの子)に取って問題ないでしょう?ジェイド」

「えぇ、もちろんですよサナア様。ノエルにもカイトと同じ修業をほどこしましたからね」

「なら、良いがのぅ」


 まぁお父様が心配するのも無理は無いですわね。カイトと違ってノエルは()()()()()()実力を見せてこなかったでしょうからね。


「学園長」

「ん?どうなされました姫様?」

「ナリア先生とは一体どのような関係何ですか?先ほど呼び捨てだったような?」

「あぁ、彼女とは以前に私が学園長になる前の時にギルドの依頼で一緒になり、それから定期的に連絡を取り合っていて、三年前に彼女がギルドの依頼を失敗して自信を無くしており、それなら学園の教員で少しずつでも自信を取り戻せる様にとスカウトしたのですよ」


「オホッ!凄まじいのぉ!」

「当然ですよ~。伊達に~鍛えてませんからね~!」


 確かにそうですけど、ノエル(あの子)ったら、無詠唱で魔法を使ったのね。昨日、忠告したのに。


「ちなみに彼女はギルドで言う、Aランクの実力の持ち主ですよ」

「そうでしたの」


 だから以前、鑑定で視たときに実力とランクがおかしかったのですのね。何か理由があると思っておりましたけど。


「ですから本当の実力を隠していたカイトがおかしなことをしない様に見張りの意味もあり担当教員にしていたのでしたが、最近の彼女はどこか楽しそうにしていましたからね」

「まぁカイトは控える時は控えますが、何かをやる時はやり過ぎますからね。それは仕方ないですわね」

「えぇ。姫様には申し訳ありませんが」


「今度は何じゃ!?魔法を手元に留めておるぞ!?」


 ノエル(あの子)ったら、何か合ったのかしら?少し怒っている様な?あの魔法、かなり圧縮していないかしら?


ジャッカル・ライク(あの方)、何か余計なことを言ったのでは無いかしら?」

「何かとは何じゃ、エルスたん?」 

「多分、悪口みたいなことを言ったのでは無いかしら? 例えば、ノエル(あの子)の事か身近な人達、カイトの悪口とか?そしてカイトの事ならバケモノ扱いしたとか?」

「まぁ確かに、事情を知らない者からすれば、あの強さはバケモノ扱いしてもおかしくないのぉ」


 その所為で、早々に決着がつきましたけれど。


「──ジャッカル・ライクの戦闘不能により、勝者ノエル!」

──ワァァァァァァァァァァ!──

 ナリア先生が確認してから宣言して、その宣言と共に歓声が巻き起こりました。


「それでは陛下、昨日お話しした通りで宜しいですか?」

「うむ、そうしてくれて構わないぞ、学園長」

「では」 


 何だか、私だけ事情を知らされていない事ですわね。ジェイド様とセリカ様は知っている感じですけど。


「皆の者、これにて5名の代表者が決まった!これにて剣魔武闘会代表者選考会を終了とする!教員は昨日の話した通りに準備を始めてくれ!そして代表者5名とナリア先生は学園長室まで来る様に!それでは以上だ!」


「それでは学園長よ、ワシ達は先に戻っておるよ。また後でな」

「はい、陛下。()()()ありがとう御座います」


 最後に学園長がお辞儀をしました。


「それでは行こうかの、ジェイド、セリカ」

「はい」「はい~」


 3人は早々に言ってしまいましたわ。一体何を成されるのかしら?


「学園長、一体何を成されるのかしら?」

「それは、カイト達と共にお話ししますよ姫様。一緒に学園長室に行きましょうか」


 学園長はそれだけを言い、歩き出して後に続きました。


※※※

【カイト視点】 


 一体何の様で学園長室に来いって言ったんだろうな。


「(コンコンコン)学園長、居ますか?」

「入りなさい」

「失礼します」


 俺が先に入り、続けてノエル、リーナ、ジアン、ルセ、ナリア先生が入った。

 入った先にはエルスがソファーに腰掛け、学園長はいつも自身が使っている椅子に腰掛けていた。

 学園長は手を差し出しソファーに座る様にとしていたので座ることにしたのだが、その際にエルスが俺は此処と言わんばかりに手を座る場所を叩いていた。

 座る位置が学園長が座っている執務机と入り口の間に縦に並んでおり、入り口から見て右側にエルス、俺、ノエル。左側にリーナ、ジアン、ルセ。ナリア先生は入り口近くの単独のソファーに座っている。全員が座ってから学園長がみんなの分のティーカップを配っていた。中身は紅茶の様だった。


「皆の者選考会、お疲れ様。それと代表、おめでとう」


 学園長がナリア先生の反対側の単独のソファーに座り話し出した。そして何故か、エルスが腕を絡めて頭を俺の肩に乗せ寄り添ってきていた。ノエルもちゃっかり腕を絡めてきていた。そしてそれをみんながスルーしているのが当たり前になっているのが気になるんですけど!


「「「「「ありがとうございます」」」」」

「それでみんなのこれからの予定なのだが、二日後に友好都市グラティウルに向かって貰う」

「「「「「「えっ!?」」」」」」


 ナリア先生を除く俺達は見事にハモってしまった。大会までまだ時間があるのにどうしてそうなったんだ?


「順を追って話そう。まず、()()()()私が代表者に大会までの間、少しでも実力を伸ばせる様に手ほどきをするのだが、お前たちには必要ないだろ?」


 学園長が俺達を見渡していた。それを言われると返す言葉がありません。


「別に大会までの移動時間を除いた数十日間、学園に居て全校生徒から毎日質問攻めにあっても良いなら構わんが?」

「あっ!それなら行く方向でお願いします」


 代表して言うとエルスとナリア先生を除いた皆が頷いていた。多分、俺には近付く人は居ないと思うけど?そしてエルスはエルスで腕を絡めたり、恋人つなぎの様に手を握ってきているし、ノエルも一緒になって恋人つなぎしているし。


「そしてその引率をナリアにお願いする」

「私ですか?」

「そうです。ここ居る子達はアナタのクラスの子ですし性格は知っているでしょう?リーナ様もこの子達と一緒に行動していると知っていますから問題無いと判断したのですよ」

「私はナリア先生で大丈夫ですわ」


 リーナが問題無しと言わんばかりに言っていた。


「分かりました。引き受けます」

「よろしくお願いします、ナリア。それで早めにグラティウルに向かった後は大会まで基本的に自由にしてもらって構いません。そして宿泊場所ですが、大会期間中選手は王族が専用に使っている施設があり、その一角で寝泊まりする事が出来ますのでその施設で寝泊まりして下さい。これにはナリアも含まれます」


 ナリア先生は頷いて返事をしていた。そして両脇の二人は、交互に俺に紅茶を飲ませてくれてましたよ。塞がっているから。もう恥ずかしいと言う感じがして来なくなってきたよ、全く。


「そして交流試合の内容ですが、ソティウル騎士王国の生徒だけでなく、今回からグラティウルに新設された学園の生徒も参加することになりました」

「ん?つまりどう言うことですか?」


 話の内容が掴めずに聞いてしまった。


「今回の試合は3校で試合を行います。団体戦と各学園の代表者2名を選び出し闘う個人戦が行われ、個人戦にはカイト、貴方が一枠に決まっています」

「えっ!?既に!?」

「陛下から言われていたでしょう?優勝してみせろ、と」

「あっ!そう言う事ですか」


 納得納得。どうして代表者5名も居るのに名指しで優勝しろなんて言っていたのか疑問に思っていたから、そう言う事だったのか。 エルスはエルスで耳元で小さく『頑張ってね』って言ってずっとまともに発言はせずに、一体何がしたいんだ?


「もう一枠は貴方達で決めて下さい。順調に行けばカイトと当たるはずですよ?」


 学園長は最後に笑みを浮かべていた。絶対楽しんでいるよ、この人は。


「大体の説明は以上ですね。大会の時には詳しいルール説明がありますからさほど今は気にする必要は無いでしょう。それと今回陛下のご厚意で王城の迎賓館で貴方達代表者の祝賀会と壮行会を兼ねたパーティーが開かれます。このパーティーは全校生徒が集まる予定になっていますから、本格的に始まるのは夕方頃になりますね」

「まぁ、お父様ったら気前が良いですわね!」

「えぇ。私も陛下からこの話を聞いた時は驚きました。因みに貴方達代表者には王城にて正装を用意しているとの話です」


 えっ!?そんな物までわざわざ用意しているの!?


「制服ではイケナイのですか?」

「カイト、仮にも全校生徒の中から選ばれた代表者なのですから、ここは陛下のご厚意に甘えて正装しなさい」

「はい」


 マジかー。絶対服を着るんではなく服に着せられてる位、似合わないと思うんだよねぇ。


「最後に貴方達は出発までの間は王城で寝泊まりする様にとのことですので」

「どう言うことです?」

「陛下が貴方達のデタラメな強さによる学園での騒動を危惧しての処置です。その事をパーティーで身に染みるはずですよ、カイト貴方以外の人達が特に」

「あ~。何となく分かりました」


 確かにジアンやルセ辺りは質問攻めに合うかも知れないな。その辺りまで考えてくれているとは、流石王様だ!


「それでは以上ですね。私も後から向かいますから、ナリア、後は任せましたよ」

「はい」


 そして俺達は、学園長室を後にして、学園の外に出るまでの間はノエルは離れたが、エルスがずっと寄り添って手を恋人つなぎの状態にしており、それを学園にまだ残っていた生徒が目を見開いたり、マジマジと見ていた。


 学園の外に王族の馬車と公爵家の馬車が来ていたので、王族の馬車に俺とリーナ以外の全員が、公爵家の馬車には俺とリーナだけが乗り込んで王城に向かって出発した。

 

「なぁリーナ」

「な~にカ~イ?」

「コレってノエルとエルス(あの二人)に嫉妬しての行動?」

「ううん、嫉妬はしてないよ~。私達3人、おんなじ位カイのことが好きな態度の現れだよ~」


 いや、そうは言うけどさぁ、エルスと同じ、腕を絡めてたり手を恋人つなぎ状態で肩に頭を乗せる行動って、どんだけ仲良しなのさ!3人共!


「ねぇカ~イ」

「ん?」

「好き。きゃっ!言っちゃった!」

「あぁ、うん、ありがとう?」


 リーナは本当、身内だけしか居ない状況だと甘えて、大胆になるよなぁ。仕草も可愛くなるし、参っちまうよ、本当に。


【エルス視点】


 リーナはちゃんと甘えているかしら?………うーん?()()()()は上手くやっているみたいね。


「ナリア先生、お聞きしたいことがあるのですけれど?」

「どう成されました姫様?」

「学園長からお聞きしたのですけれど、ナリア先生は以前冒険者を成されてらしたと」

「えっ!?先生、冒険者だったの!?」


 あらあら、ジアン君ったら食い付いてきましたわね。


「Aランクの実力の持ち主だそうよ」

「先生スゲェ!」

「えぇそうなのよジアン君。だけどね、そんな方が依頼を失敗をしてしまったそうなのよ。よければ一体何があったのか教えてくれませんか、先生?」


 ジアン君は先ほどまで元気だったのに大人しくなりましたわ。先生は少し俯いていましたけど、でもどうしても聞いておきたいことですの、何やら胸騒ぎが起こっておりますから。


「──大したことはないですよ。ただ、護衛の依頼を失敗しただけですよ」


 先生はその当時を思い出してか悲しげな表情を浮かべて話してくれました。


「出来れば詳しくお願いしますわ、先生」


 先生の方を向き、最後に頭を下げました。


「……分かりました。3年前、私は18歳のその当時、4人パーティーを組んでおりました。メンバー全員がAランクで私より実力は上でしたね。そんなメンバーと他の4人組のAランクパーティーに指名の依頼があったのですよ、隣街までの護衛の。依頼内容はその隣街に帰る商人の護衛でした。護衛の依頼はそれが初めてでは無かったので問題無いと思っていました、その時は」


 何だか先生の表情が険しくなってきましたわ。


「その時が起こったのは、隣街に着く前の最後の森で起こりました。その森は通常、ウルフやベアー、ビーなど低級の魔物しか居ないのですが、その時はオークが居ました」

「オーク?。ですが先生達Aランクの方達なら問題無かったのでは?」

「そうです、()()()()()()なら問題無かったですね」

「普通ではなかったと?」

「はい」


 やはり、何か良くないことが起こっておりましたのね。私の胸騒ぎも捨てたモノではなかったですわね。


「そのオークは一体だけだったのですが、現れてから急に闇?とでも言えば良いでしょうか、()()()()を纏ったのですよ」


 もしや、アデル村でカイトが対峙したオーガに起こった現象?


「その黒いもやが落ち着いたオークは一廻り大きくなり体中に血管()が浮き出て居ました。そしてそのオークに二人が攻撃を仕掛けたのですが皮膚が硬くて攻撃が通らないと驚いていた時に二人は反撃に合い一撃で殺されました」


 やはり、魔神の力を注がれたみたいですわね。


「そのオークは見境無く攻撃を繰り出して次々に仲間、それに護衛の商人を殺していきました。先に亡くなって逝った仲間の攻撃で突破口を見いだして、あと少しの所まで追い詰め、最後に残った私を含めた3人でトドメの攻撃をする間際にオークが最後の力を振り絞ったのでしょう、私に攻撃をして来たのですが仲間の2人が私をかばって犠牲になり、その2人の叱咤(しった)を受けた私がトドメを刺してそのオークを倒したのです。そして生き残りは私一人になり護衛の依頼も失敗、ランクも降格になり自信を無くした私を学園長が学園の教員にスカウトしたって事ですね」

「ありがとうございます先生。辛いお話しをさせてしまいごめんなさい」

「いえ、姫様達が気にする必要無いですよ。私達が力不足だっただけの事ですから」


 先生は苦笑いを浮かべて否定をしてきましたけど、話しを聞く限り大分前から魔神の力を使っている者が居たんですのね。ちょっとマズイかも知れないわね。


「先生、このお話しをカイト達にも話してよろしいかしら?」

「別に構いませんが?」

「ありがとうございます。それと先生」

「何でしょう?」

「もし、何か困ってしまった時があれば威圧的では無く、純粋に頼み事をするとカイトは協力してくれますよ?そちらのジアン君とルセ(お二人)みたいに」

「………分かりました、肝に銘じて起きます」


 ジアン君とルセ(二人)は自分たち!?っみたいに自身を指差していましたけど、二人の真剣で純粋な眼差しを受けて協力する気になったってカイトが言ってましたからね。いつまでもそれを忘れないで下さいね二人共。


 話しを聞いている内に王城に着きそうですわね。


お読み下さりありがとう御座います。

次回は日曜日です。

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