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家族で異世界転生~そして、少年は~  作者: 長谷川
第2章 再会、そして~
27/111

2ー13話

「はぁ~」

「どうしたのよ、カイト」


 俺のため息にエルスが応えてきた。


「いや、ランド・ホージウム(あの馬鹿)の所為で、強さが学園中に知れ渡ってしまったからさ」

「ごめんなさいね、カイト」

「いや、ルカ姉ちゃんが悪い訳じゃ無いから」

「そうですよ、ルカお姉様。それはカイトが家族を大切にしているから、カッとなり易いのがいけないのよ」

「いや、そうなんだけどさ、誰だって家族を馬鹿にされたら頭に来るだろう」

「それがアナタの良いところよ」

「あんがと、エルス」


 そんな会話を俺、ノエル、エルス、リーナ、ジアン、ルセのいつものメンバーにルカ姉ちゃんを混ぜた7人で校舎の屋上で昼食を食べながらしていた。

 今回はノエルとルセだけで無くエルスとリーナも料理をしたとのことで結構な数と量になっていた。

 メニューはグリフォンの肉のステーキ、コロイモ【元いた世界で言うジャガイモ】を潰して野菜を混ぜたポテトサラダ、ウルフの肉と野菜を挟んだサンドウィッチ、デザートにアイスクリームまであると言う。

 そんな料理の数々をジアンが目を輝かせながら見ていた。


「今日は一段と豪華な料理だな!」

「あぁ、本当だな」

「スゴいわねぇ!これ、全部ノエルちゃん達で作ったのでしょう!」

「そうだよ、ルカお姉ちゃん。今日のは一人一品作ったから、どうぞ」

「「「「「「いただきます!」」」」」」


 ノエルのどうぞの合図で俺達は料理に舌鼓しながら食べていた。


「それでルカお姉様、実習先は決まりましたの?」


 食べている途中でリーナがルカ姉ちゃんに聞いていた。


「それが、ホージウム君がどこから知ったのか、私が希望した実習先に根回しをしたみたいで、中々決まらないのよ」


 ルカ姉ちゃんのいる文芸学科は5年生の内に実習をしながら進路を決め、6年生になったらほぼそのまま実習先に勤めるのが学園からの申告なのだが、ランド(あの馬鹿)はそこまでしてルカ姉ちゃんを自分の物にしたかったらしい。


「それでしたらルカお姉様、午後からの抽選が終わったあとの時間になりますけど時間は大丈夫ですか?」

「えぇ大丈夫よ、リーナ」

「そんなこと聞いてどうするんだ、リーナ?」

「ふふふ。ルカお姉様の実習先の永久就職(お話)をするだけですわ、カイ」


 あれ、なんだかリーナがろくでもないことをしそうな予感がしてきたぞ。


 その後は、雑談をしながら食べ終え、抽選をするために屋内運動場に向かった。


 トーナメントに参加できる俺を含めた10名が壇上に上がっていた。


「これよりトーナメントの抽選を行う!」


サナア学園長が高らかに宣言していた。


 引く順番は試合を終えた順で教員が持っている箱に入った数字が書かれている紙を引くことになっていた。

 対戦する相手は1と2、3と4、5と6、7と8、9と10となっている。

 1番手は6年Sクラスのシャルト・リューゼが箱に手を入れて紙を取り出して、トーナメント表に書き込む教員に渡していた。

 それを見ていたら3の数字の様だった。


 次に、5年Aクラスのユング・シトエンが箱に手を入れ紙を取り出して教員に渡した。ユング・シトエンは2の数字を引いた様だ。


 次にジアンが箱から引き、5の数字を引いた様だ。


 次に、5年Sクラスのイト・タランが引き、7の数字を引いた様だ。


 次はルセが引き、8の数字を引いてここで対戦相手が決まった。

 その二人は互いに頷いていた。


 次は6年Bクラスのジャッカル・ライクが引き、10の数字を引いた。

 次にノエルが引き、9の数字を引いてここでまた、対戦相手が決まった。ノエルがジャッカル・ライクを見たときにジャッカル・ライクは口元を少し歪ませていた。


 続いて、5年Bクラスのヒュム・クライスラーが引き、6の数字を引いてここでジアンの対戦相手が決まった。二人は互いに頷いていた。

 次はリーナが引き、4の数字を引いてここで対戦相手が決まった。


 ここで俺の対戦相手がユング・シトエンに決まった。

 俺はユング・シトエンの方を見るとあちらも見てきていたので何となく頷いてみたら、頷き返してきた。


「これで明日からの対戦相手が決定した。トーナメントはここ屋内運動場で開催する!なお、代表者が決まる明日からは聖王陛下も観戦にお越しに来られるので、各自、万全の状態で奮闘するように!それと、カイト!」


 サナア学園長はそう言い俺を見てきた。


「あとで私のところに来なさい!シトエンも」


 俺は頷き返事をした。


「それでは、今日はこれにて終了とする。解散!」


 その言葉を受け生徒達それぞれが、帰宅したり明日の話をしたりと様々にしていた。


 サナア学園長に呼び出されたので、渋々向かう時にリーナからルカ姉ちゃんを屋敷に連れて行くからと言われてそのまま別れた。

 俺を除くいつものメンバーも公爵家の訓練施設に行くと言いリーナに付いて行った。


サナア学園長はまだ屋内運動場にいたので近寄った。


「来たか、カイト、シトエン」


 そう言われて、ユング・シトエンが一緒にいたことに気づいた。


「さて、二人に来てもらったのはどうするかの話だ」

「どういう意味です?」


 俺は分からずに聞いていた。


「ハァ~。カイト、お前の実力は分かった。このまま試合をしてもお前が勝つのが分かる位にな。むしろシトエン、お前はどうしたい?このバケモノと闘いたいか?」


 ストレートにバケモノと言ったよこの人は。


「………僕はカイト君と闘いたいです。先ほどの試合を見て勝てないのは重々承知しています。むしろ、この身で手合わせをして強さの上限を知りたいと思っています!」


 ユング・シトエンはこちらを見据えていた。


「シトエンがそう言うのなら問題ないが。カイト、お前はその言葉を受けてどうしたい」

「まぁ、僕なんかでよかったらそうします」

「僕なんかで、何て謙遜はしないでくれ、カイト君。むしろ、手合わせと言うより、手ほどきをしてほしい位だよ」

「…………分かりましたシトエン先輩。明日はよろしくお願いします」

「いや、こちらこそよろしくお願いします」


 俺がお辞儀をしたら、ユング・シトエンがお辞儀を仕返してきた。


 この人、メッチャいい人なんですけど!こういう人には本当に何かしてあげたいよ、まったく。


「それでは話がまとまった様なので二人は帰っていいぞ」


 サナア学園長は他の教員達の下に行った。


「カイト君、先ほど魔法はまったく使っていなかったのかい?」

「えぇ。全部魔力のみで魔法を相殺していたんですよ」

「フフフッ!君は面白いね!明日の試合が楽しみだよ。それでは」


 シトエン先輩も俺に手を上げて帰って行った。


 さて、俺はこれからどうするかと思ったら、ルカ姉ちゃんの件を思い出してリーナの下に向かうことにした。


 ノエルに念話で現在地を聞いて、まだ着いて無いとのことだったので俺は通門ゲートで先回りしようと思い人気の無い場所に移動してから、公爵家の訓練施設に移動した。


 先回りした俺は訓練施設から出て屋敷前で待ち伏せをしていた。


「あら、カイト様こんなところでどうなされたんです?」

「おいいたん!」


 屋敷前で待ち伏せをしていた俺をケイトさんがカルトちゃんと共に洗濯物を取り込んできたらしい。ケイトさんが洗濯物カゴを両手で持っていた。

 そんな中カルトちゃんは俺の足に引っ付いてきた。


「こんにちは、ケイトさん、カルトちゃん」


 カルトちゃんの頭を撫でながら挨拶をした。


「こんにちは、カイト様。それでこんなところでどうなされたんです?」

「実は、リーナを待っているんですよ」

「リーナ様を?」

「えぇ。リーナが身内うちの姉ちゃんに実習先のことで屋敷で話があるとのことで、先回りしてここで待っているんですよ」

「そうでしたか。それでしたら、中で待っていたらよろしいですのに。リーナ様がご帰宅なされましたらお知らせしますので」

「大丈夫ですよ。もう少しで着くと言っていましたから」

「そうでしたか。それでは私は失礼します。さぁ、カルトちゃん」

「あい!」


 ケイトさんは念話のことを知っているから、納得してカルトちゃんを連れて中に戻って行った。

 カルトちゃんの頭を撫でて癒された俺はケイトさん達が中に入って少ししてから、リーナ達を乗せた馬車が屋敷前に到着したのを確認した。


 御者ぎょしゃをしていた執事のオコードさんが俺のことを視認すると会釈してきたので俺も会釈してそれを確認してから馬車の入り口に踏み台をセットをしてから扉を開いた。


「お待たせ、カイ」

「大丈夫それほど待って無いよ、リーナ」


 リーナが先頭で降りて来て残りのメンバーも続いて降りてきた。


「それでは、屋敷に入りましょうか」


 リーナがさっさと向かうので俺とルカ姉ちゃんも続いた。

 ノエル達は鍛練をするからと訓練施設に向かった。


 リーナのあとを付いて行くと公爵様の執務室に着いた。


「(コンコンコン)お父様、いらっしゃいますか?リーナです」

「どうぞ」

「失礼します」


 リーナが執務室の扉を開いて中に入ったので続いた。


「お帰り、リーナ」

「ただいまですわ、お父様」

「それでどうなった?勝ち残れたのか?」

「えぇ、もちろんですわ!カイとノエルちゃんはもちろんのことですし、ジアン君とルセちゃんも無事に勝ち残れましたわ!」

「おぉ!やったじゃないか!」


 公爵様は自分のことのように嬉しそうにしていた。


「それよりお父様、カイの姉のルカさんをお連れしましたわ」


 喜んでいた公爵様を無視するかのように、リーナは話を進めた。


「おぉ、すまんすまん。んん、それでは改めて。私はライナー・ツォン・フォレストと言う。公爵でここの屋敷の当主をしている。以後よろしく」

わたくしはカイトの姉のルカと申します。今まで挨拶にも来ずに申し訳ありません。いつもカイトがお世話になっております」


 最後にルカ姉ちゃんは綺麗なお辞儀をした。


「ううむ、さすがはカイトの姉君だ。上品な佇まいだし文句の付けようが無いな!よし、採用だ!」

「んん?」


 公爵様は最後にいきなりそんな訳の分からないことを言うから

つい俺は唸ってしまった。


「お父様!まだろくに説明をしていないのですから、話をすっ飛ばさないで下さい!」


 リーナが口調を強め公爵様をたしなめていた。

 公爵様は俺達にソファに腰掛けるように、手で促した。


「うう、すまんリーナ。んん、それでは順を追って説明をしようか。まずルカさん、失礼ながら君の学園での生活、成績を調べさせてもらったよ、すまない」

「いえ、構いません。ですがどうして私のことを?」


 そりゃそうだ。どうして公爵様はルカ姉ちゃんのことを調べるんだ?


「それはリーナに言われていたからなんだが。まぁ、順を追って話すとして、君の学園でのことだが」

「はい」

「学年でトップの成績に雑仕事も率先して進んでするし、後輩や先輩の人達からも頼りにされているし、生活も規則正しく、困っている人達の手伝いもする!まさに優秀と言っていいほどだ!」

「いえ、私に出来ることをしてたまでですから」

「更に、そのことを自慢げにしないその態度、実に素晴らしい!」


 なんだが公爵様は段々と興奮をしているみたいだ。


「そんな優秀な君が希望した実習先には断られていたと」

「はい。どうやらホージウム君が根回しをしていたらしく」

「うむ、そうであったな。だが、正直に言うと私はリーナから話を聞き、君のことを調べたときはこれほどの人物なら是非とも我が屋敷で学んで欲しいと思っていたのだよ」

「どうゆうことですか?」

「うむ、実は我が屋敷で経理業務などを任せている高齢の文官が最近腰を痛めて、その助手が必要になってしまってな。それでリーナに言われ()()()で君のことを調べていたら、助手の件でちょうど条件を満たすことが分かってリーナに言って連れて来てもらったのだよ」


 ん?今、公爵様おかしなことを言っていたな。


「公爵様、別の件とは」

「えっ!?・・・あっ!」

「カイ、その話は別の機会に」


 公爵様のうっかり喋っちゃった、みたいなリアクションにすかさずリーナが割って入った様子から、何か企んでいるぞ、この二人は!


「そう言う訳で、ルカさん、君の実習を我が屋敷でやってくれないだろうか?」

「お心遣いありがとう御座います公爵様。こちらこそよろしくお願いします」

「では、よろしく頼んだよルカさん」


 そのあとは公爵様がルカ姉ちゃんを高齢の文官の人のところに案内と説明をするからと連れて行った。

 残った俺とリーナはノエル達が鍛錬をしている訓練施設に向かうことにした。

 途中、先ほどのことを聞いたが、はぐらかされてばかりで詳しいことは何も分からなかった。


 ノエル達と鍛練をして腹ペコになっていた俺達は公爵様のご好意で夕食を食べてから寮に帰った。



 翌日になり今日から三日間で代表者を決定する。

 ルカ姉ちゃんは今日から公爵様の屋敷に実習をしに向かった。


 商業・経営科と文芸学科の5・6年の生徒達は基本的に実習をしているが、三日目には代表者が決まるのでその時は学園に戻ってくることになっている。


 残りの生徒は学園の屋内運動場に集まっていた。


 そんな中、5名の代表者を決める俺を含めた10名の選手は100m四方の大きさの舞台上に上がっていた。ここで試合をすると思われる場所であった。


「皆の者、これからの試合は剣魔武闘会の代表者が決定する。今日は聖王陛下も御覧になられるために来て下さった!そして陛下の護衛に近代こんだい最強の剣士である剣聖ことジェイド・ラーディエル様と最強の魔導師であるセリカ・マルティン様が付いて、一緒に御覧になられる!」


 サナア学園長が、短めの金髪に髭を生やした優しそうな顔立ち、中肉中背の体型に上品な服装を着ている聖王陛下と護衛にジェイド兄ちゃんとセリカ姉ちゃんがいる特別席から話出していた。

 エルスも制服姿で特別席のところにいた。


「一部の例外がいるが、選手は持てる力を持って代表者に選ばれるよう大いに奮闘してくれ!それではこれより第一試合を開始する!第一試合の選手の者は準備をしてくれ!」


 そう言われて、何の装備もしていない俺と手甲と胸当てを付けているシトエン先輩は舞台上に残り他の選手は降りて行った。

 舞台は外の時にも使った結界を更に魔法も通さない仕様になっていた。


「それではこれより第一試合、5年Aクラス、ユング・シトエン対1年Eクラス、カイトの試合を行う!」


 審判役をやっているナリア先生が声を高らかに上げて進行していた。


「それでは、始め!」


 その宣言で試合は始まったのだが俺とシトエン先輩はすぐには動かないでいた。


「それでは先輩、よろしくお願いします」

「こちらこそよろしくお願いします、カイト君」


 そう挨拶をしてから俺は構えた。シトエン先輩も似た構えを取っていた。


「それでカイト君、乱戦の時の僕の闘い方はどうだっただろうか?」

「悪くはなかったですよ。近接戦闘しか出来ないと思わせて、魔法で中距離までをカバーする戦闘方法は」

「君にそう言ってもらえるなんて光栄だね」

「先輩は身体強化は出来ますか?」

「出来ることは出来るが今の状態と対して変わらなくてね」


 ただ、話しているのも何なので、手合わせをしながら話していた。

 シトエン先輩は今は魔法を使わず結構な速さのパンチを繰り出しており、それを俺は軽く()()()()いた。

 動きもよくスピード重視のタイプのようだ。


「先輩は身体強化を使う時はどんな感じで使っていますか?」

「ん?ただ漠然と身体中に魔力を通しているだけだが?」


 それを聞き俺は手でシトエン先輩に待ったをかけた。

 それを見てシトエン先輩は攻撃をやめた。


「先輩は魔力操作はしていますか?」

「いや、していないよ。それと関係があるのかい?」

「えぇ、かなり重要ですよ。いいですか先輩。まず魔力を身体中を駆けめぐるように循環させてみて下さい。もしくは、魔力を水か自分の血がめぐる感じでも構いません」


 シトエン先輩は自然体になり目を閉じた。


「循環出来ましたら、そうですね~右手に全部魔力を集めて下さい」


 それを聞いたシトエン先輩が右手に魔力を集めたのが分かった。


「次に左手に全部」


 今度は左手に魔力を集めたのが分かった。


「次に右脚、左脚と順番に」


 シトエン先輩はこちらの要望に応えていた。


「次に頭、最後は全体に」


 シトエン先輩はすべてこちらの要望に応えてくれた。


「さすがですよ、先輩」

「これは結構キツいね」

「えぇ。ですが常日頃からイメージを浮かべて魔力操作をしていれば、よりスムーズに必要な箇所に必要な魔力を集めることが出来ますよ。それに先輩のような近接戦闘型は足に魔力を集めて近づき、攻撃をするときに手に集めれば威力が高まりますしね」

「なるほど、かなり勉強になったよ」

「そしたら先輩、両手両足に魔力を集めて、続きをして試しますか」


 先輩は拙いながらも、両手両足に魔力を集めてまた手合わせをした。

 先ほどよりもかなり速く攻撃を繰り出してきていた。

 その攻撃も軽く()()()()いた。


「どうですか、先輩」

「これは、かなりスゴいね。先ほどまでとはまったく動きが違うよ。自分の身体じゃ無いみたいだ!」

「ですが先輩、魔力を出し続けていますとすぐにバテますから程々に」


 しばらくして、シトエン先輩は肩で息をする位消耗していた。


「先輩、忠告したのに」

「ハァハァ、すまない。つい嬉しくてハァハァ」

「あとは、魔法を使う際も魔力の量を調整しますと目眩ましにも使えますよ」


 俺は手をかざして【火球ファイアボール】をひとつ作りその場に留めた。


「っ!?今、詠唱をしていなかったよね!?」

「それはあとで教えますから、とりあえずこの【火球ファイアボール】に触ってみて下さい」


 シトエン先輩は恐る恐る【火球ファイアボール】に指で突いていた。


「大丈夫ですよ、直接触っても火傷はしませんから」

「・・・熱くないね。一体どうゆうことなんだい?」


 今度は手でがっつりと触っていた。


「それが魔力を調整して作った見た目だけのものだからですよ。次にこっちの方も触ってみて下さい」


 俺はすぐに【火球ファイアボール】を作った。


 シトエン先輩が二個目の【火球ファイアボール】に触れた瞬間に【火球ファイアボール】は弾け飛んだ。


「っ!?カイト君、今のは!?」

「今度のは、必要以上の魔力を受けたら弾け飛ぶように調整しました。どんな人間や魔物も魔力は自然に流れていますから、それを利用したんですよ」

「いやいや、スゴいね。恐れいったよ。まだ10歳にして恐るべき強さと魔力、魔法に対する知識。一体君は何者なんだい?」

「それは内緒ですよ、先輩。そして最後に僕から先輩にこれからの目標を差し上げますよ」


 俺は舞台の端に移動した。


 舞台の端に移動した俺は結界が機能しているか何もない空間を触ってみたら、バチっと弾けた音がしたので結界が機能しているのを確認した。


 舞台の端を背にして、右手右足を後ろ気味に左手左足を前に重心をやや低めにした構えを取った。


 そして右手に魔力を高めて、それを反対側の舞台上の端に向けて右手右足を突きだして撃ち込んだ。

 俺が放った魔力の塊は舞台上を駆け抜けて、反対側の舞台上の端の結界をバチっと音を立て、次の瞬間にはパリンとした音に代わり結界が崩れ、魔力の塊は霧散した。


 俺はシトエン先輩の下に戻った。


「先輩、先ほどのはただ魔力のみでの力になります。魔力を一部に集めそれを放てるようになれば一気に戦況をひっくり返すことが出来ますよ」

「・・・・・・えっ、あっ、うん。あ、ありがとう、精進するよ」


 あれ、ちょっとやり過ぎたかな?シトエン先輩、何だか顔を引き攣らせているぞ。


「カイト!お前は何てことをしでかしたんだ!結界を壊す奴があるか!馬鹿者!」

「あっ!」


 やっべー!やり過ぎた!・・・みんな、引いてるし、そしてエルスとジェイド兄ちゃんとセリカ姉ちゃんは笑っているし。


 ナリア先生に注意をされて辺りを見渡した俺は初めてかなりやり過ぎたと感じた。


「あの~ナリア先生これにて、僕は降参をします」


 シトエン先輩がこれ以上は良くないと思ってかそう進言していた。


「あぁ、分かった。──ユング・シトエンの降参によりカイトの勝ちとする!」


 最後にナリア先生は声を高らかに上げて言った。


「ありがとう、カイト君。君から教わったことを活かして鍛練を積むよ。ただ、結界を壊す域になるのは出来るか分からないけどね」

「あははは、そこまでの威力にならなくても大丈夫ですから」


 いや~空笑い声しか出ないよ、今は。


 最後に握手を交わした。


「カイト、ちょっと待て」


 舞台上から降りようとした俺をナリア先生が呼び止めた。シトエン先輩は先に行ってしまった。


「何です、先生?」

「お前がシトエンに教えていた魔力と魔法のことを最初から知っていて私の授業はさぞつまらなかったのではないのか?私をあざ笑っていたのか?」

「いやいやいやいや、何を言い出すのですか、いきなり!先生の授業は楽しかったですよ!それにナリア先生みたいな美人に教えてもらえるのですから俺的には毎日、学園に来るだけでもウキウキ気分なんですから!ナリア先生のことは好きですし」

「っ!?な、なにを言い出すんだ、きゅ、急にお前は!」


 あれ、いきなり顔を赤くなったぞ?何か言っち待ったか?


「いや、先生から言い出したことなのに」

「お、お前の考えは分かったから、行きなさい」


 分からないまま俺は舞台上から降りて、選手達の専用の観戦席に向かった。


 俺が壊した結界はセリカ姉ちゃんが結界の構造を知っていたので直してもらった。第二試合は昼食を挟んでから行われるとのことだった。


※その後、ユング・シトエンはカイトからの助言を活かして鍛練を積み重ね、大きく成長して学園を卒業後は聖王陛下の近衛騎士団に入りその後も鍛練を積み重ねて、数年後にはその努力の甲斐あって近衛騎士団団長にまでなっていきました。

そんな彼の呼び名が“魔甲拳のシトエン”と近隣諸国に伝わっていきました。


※一方、カイト達の試合が始まる頃のエルス達はと言うと──

【エルス視点】


「あの茶髪の者がジェイドとセリカの弟子か?」

「はい。二人の弟子の内のカイトです」


 お父様がジェイド様に質問をしておりました。


「ヌグッ!あの者がワシの可愛いエルスたんを誑し込んだのか!」

「あら、お父様。私はたらし込まれてはおりませんよ。なにせカイトは私の運命の相手なのですから!お父様より大好きですわよ」

「そ、そんな・・・エルスたん!」

「陛下、口調口調」


 お父様ったら、私の言葉を聞いて絶望していますわ。存分に絶望なさればよろしいのに。


 お父様は言動をジェイド様から指摘されていました。


「はぁ~。何でエルスたんはあの者に出会う前から、ジェイドに話を聞いただけの相手と結婚をしたいと決めたんだ」

「それは、ビビッときたからですわ。もう、愛していると言っていいほどですわよ」

「そ、そんなエルスたん!」

「ですから、陛下、口調に気をつけて下さい。生徒達に聞こえて無いとは言え公衆の面前ですので。エルス様も公衆の面前で陛下で遊ばないで下さいよ」

「ごめんなさいですわ、ジェイド様」


 ジェイド様に怒られてしまいましたわ。お父様が素直に私の婚約者にしないから、つい八つ当たりをしてしまいましたわ。


「んん。すまんな。納得出来無いがそれはあとにして、学園長よ、カイトの対戦相手はどんな人物なのだ?」

「はい。相手はユング・シトエン。シトエン男爵家の次男になりす」

「して、シトエン家の者は勝てる見込みがあるのか?」

「いえ、まったく無いです。昨日の内に二人に聞きましたところ、この試合はシトエンの申し込みによりカイトに手ほどきをしてほしいと言っていましたので、カイトの実力は見れないですね」

「ふむ。この目で見られないのは仕方ないか。それにしてもカイトは何の装備もしていないが?」

「それだけの実力があるんですよ、陛下。あの者は」


 お父様もやはりじかにカイトの実力が知りたかった様ですわね。


 学園長がお父様にカイトの装備のことを説明していました。


「それではこれより第一試合、5年Aクラス、ユング・シトエン対1年Eクラス、カイトの試合を行う!」


 ナリア先生が試合開始の宣言を声を高らかに上げて言っていました。


 そして、始まった直後にユング・シトエンがカイトに速いパンチを繰り出していますが、カイトがそのパンチを()()()()いました。


「ワシの聞き間違いか?今、カイトの学年がEクラスと言っていたのは?」

「いえ、陛下。聞き間違いではありませんよ。あの者は試験の時に手を抜き、実力を隠していましたから。試験官をした教員達はそれを見抜けなかったのですよ。情けないくらいに」

「あの~サナア様。もしかして、カイトから手紙なんて物を受け取っていなかったのですね?」


 ジェイド様がお父様と学園長の会話に申し訳無いような感じで話しておられました。


「ん?何のことですか、ジェイド」

「いや~、カイトにはもし、試験の時に施設などを破壊したときのためにサナア様に僕達のことを書いた手紙を渡していたのですが」

「それでしたらカイトもノエルも施設を壊すどころか、的にキズさえ付けなかったですよ」

「カイくんは~ともかく~ノエちゃんは~無茶なことは~しませんから~」


 セリカ様は愛弟子であるノエルのことを嬉しそうに話しておりました。


「セリカ、アナタは相変わらずですね」

「はい~私は~いつだって~変わりませんよ~サナア姉様~」

「あの~学園長とセリカ様は一体どうゆう関係なのです?」


 私は二人の関係が気になり、質問していました。


「私とセリカは同じ師匠に魔法を教えてもらったのですよ、姫様」

「そうなんです~姉様が先にお師匠様に~教えてもらっていて~私が~後から教えてもらっていたから~姉様は~姉弟子になるんですよ~姉様には沢山お世話になりました~」

「まったくですよ、あの当時はアナタの心配ばかりしていましたからね」

「エヘヘッ。ありがとうございます~姉様~」


「ん?シトエン家の者は何をしているのだ」


 お父様がカイト達の試合を見ていて何やら変化が起こったようです。


「ん~ユング・シトエン(アッチの子)が魔力を~移動させてますね~」

「どうゆうことじゃ?」

「どうやら、カイトが何かを教えて、それをする準備をしているのではないですか」


 さすがはジェイド様ですわね。武術に関することはお見通しの様ですわね。


「おぉ、また始まったぞ」

「やはり、カイトは身体強化を教えていたみたいですね。先ほどより格段に動きがよくなりましたよ、陛下」

「ふむ、そう言われると確かに先ほどよりも速くなっておるな」


 確かに、速くなっていますが、カイトはそれでもユング・シトエンの攻撃をいなしていますわね。


「陛下、ユング・シトエン(あの子)には目を掛けていた方が良いかもしれませんよ」

「どうゆうことじゃ、ジェイドよ」

「普通の子なら、いくら相手が年下で強くても言うことを聞きません。ですが彼は自分より年下のカイトとの力の差を理解して手ほどきをして欲しいと言い、素直にカイトの指示を受け、先ほどの身体強化をしたからです。そんな人物は将来、化ける可能性を秘めています」

「うむ。ジェイドお主が言うなら間違いはないが、化ける可能性にはどれ程の時間がかかる」

「そうですね~、彼は今は5年生ですから、卒業までにどれ程の力を付けたかによりますが、現時点では10年は掛かるかと」

「ふむ、それ位なら、確かに目を掛けていた方が良いかもな。学園長よ、そう言う訳であの者が卒業後は近衛騎士団に配属ということでな」

「分かりました。彼には時期がきましたら話しをしておきます」

「よろしく頼んだ。───ん?次は、何を始めるきじゃ」


 お父様がそう言うのも無理はありません。カイトは【火球ファイアボール】を出したのですから。


「今度は一体何を始めるつもりなのじゃ、カイトは」

「ん~~もしかすると~カイくんは~魔力操作の重要性を~教えているのかもしれませんよ~陛下~」

「それと、火球(あの魔法)が関係しているのか?」

「おおいに~関係してますよ~。ねっ!姉様~」

「セリカ、アナタって子は。陛下、魔法を使うには何が必要ですか?」

「それは、魔力と詠唱ではないのか?」

「そうです。ですが─」


 説明をしようとした学園長はカイトがまた【火球ファイアボール】を出して、ユング・シトエンが二個目に触ったときに【火球ファイアボール】は弾けてしまいました。


「今度のは、弾けたぞ!」

「魔力操作をスムーズに出来るようになれば魔法に使う魔力の量を調整して先ほどのように出来るようになります」


 学園長は先ほどの説明をお父様にしていました。


「ん?今度は、何をするつもりじゃ?」


 お父様の疑問はごもっともです。カイトが舞台上の端に向かっていて、次に結界が機能しているかの確認をしだしました。


 そしてカイトはその場で構え出し、そして右手に魔力を集めていたのです。


「っ!!アイツ、まさか!?」


 ジェイド様が声を荒げていました。

 そして次の瞬間にカイトが舞台上の反対側目掛けて、右手に集めた魔力を撃ち放ったのです。

 魔力の塊は反対側の端に着くと、結界に阻まれていたのですが、次の瞬間、結界が崩れてしまいました。


「「・・・・・・」」

「ククククククっ!」

「フフフフフフっ!」

「フフフっ!カイトったら」


 お父様と学園長は信じられないものを見た、と言うような表情をして、ジェイド様とセリカ様、それに私は笑っていました。


「アイツめ!やっちまいやがった!しばらく会わなかったが大分だいぶ力を付けたな!」

「フフフっ!そうですね~。後で結界を直さないといけませんね~」


 ジェイド様とセリカ様はカイトがやらかしてしまったことを嬉しそうに言っていました。


「のう、セリカよ、あの結界はそうそうに壊れる物ではなかったはずと、ワシは記憶していたが」

「そうですよ~。結界を壊すとなれば~ジェイくんか私、どちらか一人の全力攻撃で~初めて少し壊れる位の強度ですね~」


「ユング・シトエンの降参によりカイトの勝ちとする!」


 ナリア先生が声を高らかに上げて、カイトの勝利を宣言しました。


「それでは~私は~結界を直して来ますね~」

「あっ、うむ、分かった」


 お父様の許可が出たことでセリカ様は結界を直しに舞台上に行ってしまいました。


「それでジェイドよ、この間、言っていたカイトとの試合はどうじゃ、やる気になったか?」

「えぇ、今の攻撃を見て決心しましたよ、陛下。カイトと試合をしたくなりましたよ!」

「よくぞ、言った!これでエルスたんとの婚約は出来なくなるぞ!カイトめ!」

「お父様。私、お父様とは一生お話ししませんから」

「ご、ごめんなさい~!ちょっと、巫山戯ふざけてみただけなのに~!」


 お父様の謝罪を無視して席を立ち、カイト達と昼食を食べるためにカイト達のところに向かいました。


「ちょっ、ちょっとエルスたん~!どこに行くの~!本当にごめんよ~!」


 お父様は私が離れてからも謝罪をしていました。


 ただ、追いかけてこなかったのは良いところでしたけどね。

 追いかけて来たら本当に許さなかったから。


お読みくださりありがとうございます。

次の投稿は日曜日になります。

すみません。

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