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家族で異世界転生~そして、少年は~  作者: 長谷川
第2章 再会、そして~
22/111

2ー8話

 馬車でギルドに着いた俺達は、リーナが御者ぎょしゃの人に屋敷に戻っているように、と言ってからギルドの中に入った。


 中に入り食堂の方に向かいノエル達を探した。

 見渡して見ると、食堂の片隅に座って料理を食べている最中だった。


「──お待たせ、ノエル、ジアン、ルセ」

「ん?……カイト、よく俺達がここにいるって分かったな」

「ん?あぁ、ちょっとね」

「ふ~ん」

 ノエルをチラっ見ると、ウィンクで返事をしてきたから、俺は軽く頷き返した。まぁ、詳しく言えないのは心苦しいけどさ。


「それよりも……」


 ジアンが歯切れの悪い言い方で目線が俺の後ろに居る二人を見ていた。


「あぁ、改めて紹介するよ。エルスとリーナだ。訳あって一緒に居ることになった」

「改めて初めまして、私のことはエルスと呼んでね」

「あっ、は、はい、エルス様」

「エルスと呼んでね」

「えっ!でも……」

「エ・ル・ス・ね、()()()()()

「あっは、はい!エルス」


 エルスがジアンの名前を強調して、さすがのジアンもあの迫力に負けてしまった。


()()()()()()()

「は、はい!エルスちゃん」

「よろしいですわ。これからよろしくね」


 ルセにも圧力を掛けてすんなり言わせたよ、この人は。


「それでは私も改めて初めまして、私のこともリーナと呼んで下さいね」

「は、はい、リーナさ─」

「リーナ」

「は、はい!リーナ」

「ルセちゃんも」

「は、はい!リーナちゃん」

「ふふふっ。これからよろしくね」


 こちらも圧力を掛けたよ。本当に恐ろしいな、この二人は。


「それでカイくん昼食は?」

「まだ、これから。食べながら話そうかと思って」

「そうなんだ。なら料理の追加をしないとね」


 俺達は席に付き、店の従業員を呼び、料理の注文をした。


 しばらくしてから料理が来て、ジアンとルセは緊張していた所為せいか余り食べてはいなかった。まぁ、仕方ないか、お姫様と公爵の娘と一緒だと普通の人の反応はこんな感じなんだろうな。


 料理を食べたあとは、エルスとリーナを連れて受付に向かった。


「ロールさん、こんにちは」

「こんにちは、カイトくん。先ほどは居ませんでしたね」

「えぇ、用事がありましたから。それで何ですけど、こちらの二人の登録をお願いしたいのですけど?」


 俺の後ろに居る二人のことを目線で知らせた。


「はい、それではこちらの用紙に記入をお願いします」

「「はい」」

「あっ!それと僕と同じパーティーでお願いします」

「はい、分かりました。それはこちらでしておきますね」


 ロールさんに軽く頭を下げてから、ノエル達がいる掲示板の所に向かった。


「なぁカイト、さっきの話は本当なのか?」


 ジアンが俺の顔を見るや否や、食事の時に話したことを聞き返してきた。


「あぁ、本当だよ。エルスとリーナも一緒に特訓することになったのは」

「何でそうなったかは─」

「すまないな、秘密だ」

「あぁ、分かったよ。それならこの話はここでお終いだ」

「本当にすまないな。時期がきたらいずれちゃんと話すから」

「あぁ、ちゃんと分かっているよ。それがお前たちとの約束だからな」


 ──ジアン、お前は本当に良い奴だよ。そんな奴にこちらの事情で巻き込みたくは無いからな。


「それでこれから出来そうな依頼はあったか?」

「それなら、カイトこれなんてどうかなって思ってさ。人数も増えたし」


 ジアンが指差しながら言った依頼書を見たら、王都から馬車で1時間ほどの位置にある村の近くの森に出るベアーの討伐だった。


「う~ん、これならギリギリかな」

「よっしゃっ!なら、この依頼にしようぜ!」


 ジアンとルセには、自身の力量を把握した上で、強くなっても自惚れないようにと特訓している時にきつく言っていたから俺が許可したので嬉しかったようだ。


 そんなジアンは掲示板から依頼書を取り、エルスとリーナがまだ居るロールさんの受付に向かった。


「───で説明を終わります」

「はい、分かりました」


 どうやらタイミング良く終わった所で、エルスが応えていた。


「あら、カイトくん、お二人に説明を終えましたよ。さっそく依頼ですか?」

「はい、これ何ですけど」


 説明を終えたロールさんが俺達を視認してから聞いてきたので、俺はジアンの方を見ると依頼書を受付に出した。


「はい、それでは確認しますね・・・・・・はい、それでは内容の説明確認をします。内容はサイビス村の近くの森に出てきた2体のベアーの討伐です。よろしいですか?」

「はい、それで」

「はい、分かりました。依頼の詳細は村長にお聞き下さい。それとこちらに依頼者のサインを貰って下さい」


 ロールさんが、籠手が中心にありその前に剣と杖がかけるになっているギルドの紋章入りの15cmほどの用紙を出してきた。


「はい、分かりました」

「それでは皆さん、お気を付けて」


 俺は軽く頭を下げ他のみんなは、それぞれ手を振ったり頭を下げたりしていた。


 俺達は、とりあえずギルドから出て外にいた。


「それで、どうするんだカイト?依頼を受けちまったけど、これから馬車の手配や資金を集めたりするには時間が足りないぞ?歩いて行くのか?」

「あぁ、それなら心配するな。移動手段はあるから、とりあえず王都から出ようか」

「おぉ」


 それから東門を出て、近くの森に入ってから防具を身につけた。エルスとリーナはミスリル製の胸当てと籠手を身につけていた。


 それまでの王都から出る道中はエルスとリーナがノエルと話してたり、途中からルセも交えて会話をしていた。移動中はそんなカワイイ、綺麗な笑みを浴びている女子が4人も居ては通行人の視線を浴びてしまっていた。俺は少し居心地が悪かった。きっとジアンもだろう、と表情と行動で勝手に解釈した。


「もう、視線だけで凌辱りょうじょくされた気分だわ」

「えぇ、そうですね、エルス。これからはカイにくっついて歩かないと行けませんね。そうよね、ノエルちゃん」

「んふふふ。そうですね、私たち三人はカイくんに守ってもらわないといけないと分かりましたしね。それにルセちゃんはジアンくんに守ってもらわないと、だけどね」

「なっ!?なっ!?なに!?なにを!?言っているのかな!?ノエルちゃんは!?」


 お~おぉ、ルセの奴、顔を赤くしてメッチャ動揺している。・・・ジアンの奴も顔を赤くしているよ、まったく。


「こら、三人共、ジアンとルセをイジるのはその辺にしろ!」

「「「いや~、つい~」」」


三人はイタズラな笑みを浮かべていた。


「もっ!もう、三人共ひどい!」

「「「カワイ~イ!」」」


 ルセの奴、顔を赤くしたままで頬を膨らましてるよ、それがイジられる原因なのになぁ。ジアンは顔を赤くして黙ったまんまだし。


「さぁさぁ、さっさとサイビス村に行くぞ」


 俺は手をかざして魔法・通門ゲートを使用した。


「っ!!カ、カイトこれは!?」


 ジアンは驚いた表情で聞いてきた。ルセも驚いた表情だったがまだ顔は赤かった。


「ちょっとした移動手段だ。魔法の名前は通門ゲート。俺が行ったことのある場所に瞬時に移動できる魔法だ。ただ、俺が行ったことある場所のイメージがないと行けないのが欠点かな」

「「・・・・・・」」


 説明を聞いたジアンとルセは驚きの余り、固まってしまった。しかも、口は開けて、目はかなり見開いていた。


「ノエル」

「はいは~い」


 俺はノエルの名を呼び、先に通門ゲートに入るように、との合図だった。それを察してノエルは通門ゲートに入って行った。


「エルス、リーナ」

「「は~い」」


二人も察して入って行った。


「(すぅ~)ジアン!ルセ!」

「─はっ!あ、あれ?三人は?」「─はっ!こ、ここは?」


 俺が大きな声で呼んだ二人は、ジアンは何とか状況を把握していたが、ルセは混乱しておかしなことを言っていた。


「ここはまだ王都の近くの森。そして三人は先に行った」


 俺は最後に通門ゲートを指差しながら言った。


「さぁ、さっさと入ってくれ」

「あ、あぁ、分かったよ」

「う、うん」


 やれやれ、やっと行ったよ、まぁ、しょうが無いよな。


 俺は二人に申し訳無いと思いながら通門ゲートに入った。



「カイくん、何だか焦げた匂いがする」


 通門ゲートから出た俺にノエルが言ってきた。


「(スンスン)本当だ!かなり離れているがあっちの方角だ!」

「カイ!あっちの方角になにがあるの!」

「あっちの方角には村が在るんだ!」

「「「「!!!!!!」」」」

「急ごう!」


 俺は村の方に走り出した。そのあとをみんなが付いてきた。


 走って5分ほどで村に着いたが、その村の光景を目にして驚いた。

 村は柵で囲われていたが柵がボロボロで、ほとんどの木造の家は半壊状態で火の手や煙が上がっていたりしていた。終いには村人の死体がちらほらと見えて、それをウルフやベアー数体が食べていた。


「うっ!」


 それを見たルセは手で口を抑えて座り込んでしまった。


「なんだよコレは!」


 ジアンが信じられない光景を目にしてそう言っていた。


「原因を調べるのはあとだ!まずは、あの魔物達を倒しつつ、逃げられた村人を探そう!」

「分かった!」「了解!」「分かったわ!」「分かりました!」


 ジアン、ノエル、エルス、リーナが返事をしたが、ルセがまだだった。


「ルセは、どうする?」

「うん、私も行くよ!私だって生きている人を助けたいから!」

「分かった、なら俺、ジアン、ルセとノエル、エルス、リーナの二手に別れて行動しよう。行くぞ!」

「「「「「はい!」」」」」


 俺の掛け声とともに、俺は剣を、ジアンとルセは剣と弓を、ノエルは短剣を、エルスとリーナが剣身が90㎝で全長120㎝もあるミスリル製の細剣をそれぞれが自身の武器を手にしていた。


 俺が先頭を走り村の中に入ると、死体を食べていたウルフ2体とベアー1体がこちらに気づき襲って来た。

ウルフ2体が先行して来たので1体は俺がウルフの首を目掛けて剣を振り切った。もう1体はジアンが対応してこちらも首を切断した。

 続けて、ベアーが来ていたがノエルが光魔法・光矢ライトアローを放ちベアーは倒れた。

 それを確認して、ノエルの方を確認すると互いに頷きあってから二手に別れた。


 俺達がノエル達と別れてからは、ゴブリンも居て、ウルフ、ベアーを数十体討伐して行った。


「なぁ、カイト何かおかしいよな?」


 しばらくしてからジアンがそんなことを言ってきた。


「なにが?」

「いや、これだけの魔物が今まで何処に居て、何でいきなり村を襲い出したんだ」

「・・・確かに、不自然だな」

「だろう!」

「あぁ、だがそれは後回しだ、気を緩めるなよ」

「っ!あぁ、分かっているよ」


 そんな俺達の少し先にベアー1体が居たが半壊状態の家の前で何やらおかしな行動していた。


「カイトくん!ベアーの近くに人が居るよ!」

「っ!ルセ!」

「うん!任せて!」


 俺の呼びかけにルセがすかさず弓を引き矢をベアーの腕に当てた。

 俺はルセに呼びかけてすぐに駆けだした。


 ベアーがルセの放った矢で悲鳴を上げて怯んだ隙に、ベアーの首を切り落とした。


「ふぅ~。──どこかケガはありませんか?」


 少し緊迫していたのを緩めてから、その座り込んでいた人達に話し掛けた。


「っ!!あ、え、は、はい!助けていただきありがとう御座います」


 礼を言ってきたのは、くすんだ色した短い金髪の優しそうな顔立ち、質素な服装と長身であろう男性が応えた。


「そちらの二人は?」


 俺が指摘したのは、その男性が守るようにかばっていた、背中まである赤茶色の髪にこちらも優しそうな顔立ち、質素な服装にやや背が高いであろう小柄な女性と、首まである赤茶色の髪にまだ幼い可愛い顔立ちに質素な服装にまだまだ小柄な小さな女の子が見えたからだ。


「あっ!は、はい!助けていただきありがとう御座います」

「───ぇぇぇん!」


 今まで泣いていたのだろう、女性が礼を言うためにこちらに向くと、それまで強く抱かれていた小さな女の子が、女性の緩みから泣き声が聞こえた。


「お、おかげで助かりました!妻と娘も少しのケガをしただけで済みました!」


その男性が礼を言い終えた時にジアンとルセがこちらに来た。


「分かりました。それではあとは、こちらの二人に付いて行って下さい」

「ん?カイト?」「ん?カイトくん?」

「ルセは移動しながら三人のケガの治療を!ジアンはみんなを守りながらノエル達に合流しろ!」

「カ、カイト!?」「カイトくん!?」

「早く行け!!」


 俺の呼びかけに二人は不振になりながらも二人は行動を仕始めた。

 

 仕方ないさ。なんせさっきから背後にイヤな魔力の感じがこちらに来ているからな。


 俺はみんなを見届けてから振り返った。


「あん!?なんだお前は」


 黒いフード付きのローブを頭から足元まで羽織り顔がよく見えないが声からして男だろう長身の人物がそう言ってきた。


「お前は誰だ」

「あん!?ガキがなに粋がってやがる!」

「(鑑定で視てみるか)」

「それにその身なりからしてこの村のガキじゃないな」

「(コイツ、ステータスがまったく視えないぞ?どういうことだ?)」

「村に放った魔物どもが帰って来ないから様子を見に来れば死骸になってやがるし、テメェがやったのか!あん!?」

「貴様がこの村をやった張本人か!」

「だったらなんだって言うんだよ!?ヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!」


 さすがの俺も腸が煮えくりかえる程の外道の奴だ!


「貴様を殺す!!」

「カスい魔物をやっつけた位で調子に乗るんじゃねぇ!!ガキが!!テメェの相手はコイツだ!」


 奴は手を地面にあててその瞬間に魔方陣が現れた。その魔方陣は召喚魔法の陣だった。

 魔方陣から現れたのは頭部に二本のツノがあり口元から牙が出て厳つい顔立ちに3m程ある筋骨隆々の全身が赤い背格好をした魔物・オーガが現れた。


「その程度の魔物でなにができる!」

「あん!?だから粋がるなよガキが!」


 今度はローブの男がオーガに何やら魔法をかけ出した。それを受けたオーガは瞳から光がなくなり、全身の赤い色が黒くなって体格も一廻り大きくなっていた。


「絶望しろ、ガキが!行けオーガ!!」

「グオオォォォォ!!」


 そのローブの男の掛け声と共にオーガが雄たけびを上げてこちらに突進して来た。

 俺は突進して来たオーガを躱しながら一太刀入れた瞬間に鉄製の剣が折れてしまった。


「(ちっ!なんだコイツ硬ってぇ!)」

「ヒャヒャヒャ!ますます絶望的だな、ガキ!」


 折れた剣を捨てて、マジックバッグから刀【虚空】を取り出した。


「あん!?ガキが珍しい得物を持っているじゃねぇか!?」


 ローブの男の言葉を無視して【虚空】に魔力を流して強化してオーガに斬りかかった。

 オーガが腕をこちらに出してきたのでその腕を切り落としてから距離を置いた。見事に切断できた。腕を落とされたオーガは悲鳴のような雄たけびを上げていた。


「ヒャヒャヒャ!まだまだコレからだぜぇ!!」


 いけるっ!と思った瞬間にローブの男がそう言っていた。


 次の瞬間、オーガの切り落として無くなった腕から無数の小さな泡が現れて、たちまち切り落とす前の腕に再生した。


「っ!」

「ヒャヒャヒャ!驚くのもムリはねぇ、コレが()()()()()よ!!」

「っ!!!」


 まさかここで、その名前を聞くなんてな。思っても見なかったよ。


「貴様を殺すのはやめだ!」

「あん!?」

「貴様を取り押さえる理由が出来た!」

「やれるもんならやってみろよ!ヒャヒャヒャヒャヒャ!」


 かなり久しぶりに全力でやってみるか。


 今度は俺から攻めて行った。

 そのタイミングを狙いオーガが腕を振ってきた。それを躱して今度は両腕を切り落とした。切り落とした瞬間に再生を仕始めていたが関係無く続けて今度は両脚を切り落としてその拍子にオーガは体制が崩れて横たわった。


「ちっ!なんだこのガキの強さは!?───炎よ、貫き焼き尽くせ、炎槍フレイムランス


かなりの魔力を練り上げた魔法は上位の性質に変わるものがあり発動することが出来た。

そんなローブの男がこちらに手かざして発動した魔法は40cm程の鋭さの長さに、火魔法より更に赤い性質をしている。それを4つ作りこちらに放ってきた。


 結構な速さでこちらに向かってきたが、俺に取っては問題無くそのまま【虚空】で切っていった。


「っ!?ちっ!」

「グオォォォォォォォ!」


 オーガがその間に切り落とした両腕両脚の再生を終えて雄たけびを上げていた。


 やれやれ、これはかなり苦労する様だな。


雄たけびを上げたオーガが突進をして来た。


※※※

※時間を少し遡りもう一方のノエル達はというと

【ノエル視点】


「これでおしまい」


 エルスちゃんがウルフにトドメを刺して私達はここら辺の魔物を始末した。それにしてもリーナちゃんとエルスちゃんは見事な連携で魔物達を倒していった。リーナちゃんが前衛をしたらエルスちゃんが魔法で援護を、エルスちゃんが前衛をしたらリーナちゃんが魔法で援護を()()()()()()()それを片方がまだ魔物にくっついている時にも躊躇ためらわず魔法を放って、もう片方が自分か魔物に当たる直前で離れることをやっていた事に驚いた。


「それにしても、ヒドい有様ね」

「そうですね。一体なにがあったのでしょうか?」


 ひと息付いてリーナちゃんとエルスちゃんが私の少し先でそんな会話をしていた。


「この村はこうなる前は一体どんな感じだったのかしら、来たことあるのよね、ノエル?」

「この村はですね、私とカイくんがいた村と対して変わらない感じでしたよ。ただ、温泉が無いだけで、30人程いて豊かでのんびりとした感じの村でしたよ。エルスちゃん」

「そうだったの。・・・それよりノエル、その()()はどうにかならないの?」

「えっ!?何か変ですか?」

「いいえ、ただせっかく生まれ変わって同い年になったのだし遠慮しなくても良いのよ?家族なんだし」

「エルスの言う通りよ。それに今まで一人でカイのサポートと自分達のことを誰にも話せないのは大変だったでしょう?お疲れさま」


 リーナちゃんが最後に私を抱いて頭を撫でてくれた。


「うっうえぇぇぇぇん!」


 今まで胸に刺さっていたものが取れて軽くなって、自然と涙が溢れてきた。


「やれやれ、カイトはこっちに来ても罪な奴だね」

「まったくね!合流したら説教をしないとね」


 しばらく泣いてから二人がそう話していた。


「それにしてもノエルちゃん、アナタ10歳の割に胸の発育が良すぎよ」

「なに!?それは本当か、リーナ!」

「えっ!?なっ!?リーナちゃん!?」


 リーナちゃんから離れ咄嗟とっさに両腕で胸元を隠した。


「くっ!私達だってやっと膨らみ出したのに!リーナ!」

「そうね、エルス!やっぱり私達のライバルはこの子なのね!」

「も、もう二人してなにを言っているの!?」

「その調子だよノエル。泣いてすっきりした後は、笑わないと」


 もう、この二人には本当に敵わないなぁ。私に取っても自慢の家族だよ!


「ん?何か聞こえないか?二人共」


エルスちゃんがいきなりそんなことを言ってきた。


「────だー!────こだー!」


「──確かに、ノエルちゃんは?」

「はい、私も聞こえました」


 その声が段々近づいていた。


「──ちゃんどこだー!───ルちゃんどこだー!」


「ん?この声は?」


 聞き覚えのある声だった。そうその声の主は──


「ノエルちゃんどこだー!ノエルちゃーーん!」

「ジアンくん!?」


 そう呼びかけた人の傍にルセちゃんと見知らぬ男女に小さな女の子がいた。


「ジアンくん!一体どうしたの!?」

「ハァハァ、やっと見つけた!カイトが!」

「ノエルちゃん!カイトくんが!」

「落ち着いて!ジアンくん、ルセちゃん!まず、どうなったかゆっくりでいいから説明して、そちらの人達も気になるし」


 見たところ二人に大きなケガは見当たらない、それにカイくんが今のこの村の状況で二人だけに行動させるとは思えない。


「ふぅ~。ノエルちゃんまずこの人達だがこの村の生き残りなんだ!」

「「「!!」」」

「それでカイト何だが──」「───ォォ!」

「「「「!?」」」」

「何!?今何か聞こえた!」


 ルセちゃんが驚いた拍子に言葉にしていた。


「ジアンくん!カイくんの所に案内しながら説明して!」

「あ、あぁ!こっちだ!」

「すみませんが、あなた方も付いて来て下さい!今、離れて行動するのは危険ですから!」

「は、はい!」


 村の生き残りの人達のことは、みんなも同じ考えだったらしく頷いていた。

それからは案内してもらうためにジアンくんが先頭を走った。



 ジアンくんが案内してくれている方向でたまに、雄たけびが聞こえてきたのでその方向にカイくんが居ると確信した。


 もう少しで着く、とジアンくんが言っていたが、そんなことは関係なく私達の視線の先に土埃が舞っていた。


 土埃が見えてからは、慎重に近づいていった。

 私達が慎重に近づいている最中に、カイくんが姿を見せた。


 カイくんの手元見ると【虚空】を使用していた。それほどの相手なのだろう、と思っていたらその相手が姿を現した。


「なんだよ!?アレは!?カイトは一体なにと戦っているんだよ!?」


 ジアンくんがそう言うのは仕方ないよ。得体の知れない姿の魔物?がカイくんに襲いかかっているから。


「あっ!・・・なんだよ!?カイトのあの動きと、強さは!?」

「カイトくんってあんなに凄かったの!?」


 ジアンくんとルセちゃんがカイくんの強さに驚いていた。

 カイくんは魔物?の攻撃を躱しながら腕や脚を切り落としたり胴体に切り込んでいた。カイくんが押している感じに見えた。でも、次の瞬間に信じられないことを目にした。


「なっ!?あの怪物、カイトに切られた所が再生したぞ!?」

「何だがカイトくん、大変そう」

「えぇ、そうね。──ノエル!」

「っ!!な、何、エルスちゃん?」


 びっくりしたよ、いきなり私に振ってくるから。


「行きなさい。行ってカイトの手助けをしなさい。私達では足手まといになるだけ。だけど貴女は力になれるでしょう?」

「だけど・・・」

「大丈夫よ!今は貴女がカイトの力になれる。今度は私達が力になれるから。ね!」

「っ!!うん!私、カイくんを手助けしてくるね!ありがとうエルスちゃん!」


 心が軽くなった気分だった。

 私はカイくんを助けたい。

 その気持ちしかなかった。

 私は駆け出していた。


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