表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
家族で異世界転生~そして、少年は~  作者: 長谷川
第3章 動き出す者達、そして~
110/111

エルスの心情 後編

 カイトがまだ目覚めない為、次に私は一旦聖王国の王城に戻る事にしたわ。


 精霊王ウォルス様から、行方知れずだったガリアーノ様とアイリーン様、ジェイド様とセリカ様が自力で帰って来ていたと話を聞かされていた為、その確認をしに。


 それにウォルス様から各国でこれから起こるであろう異常事態の対処をしに、力を吸われて真面な状態を顕現出来なくなって、ぐでぇとした姿形をしたウォルス様とリーナとノエルと一緒に戻る事にしたの。



 聖王国に戻った私達は直ぐさま手分けして事の次第に当たったわ。


 私はガリアーノ様達の安否確認とこれから起こるであろう異常事態、もしくは起こってしまった事の確認を兵士を各地に派遣するよう指示を。


 リーナはウォルス様と共に各地の地脈の状態の確認。ノエルはギルドに依頼と言う形で、兵士達と協力する事の旨を。その他にも隣国の騎士王国と帝国にも似た依頼と王族への協力要請。それらを手分けして行う事を決めていたの。


 そこで私は王城に戻ってお兄様に事情説明をして、お兄様は直ぐさま兵士達に念話による伝令を走らせたわ。その後でお父様にガリアーノ様達の確認をしたわ。


 どうやら入れ違いでガリアーノ様とアイリーン様、それにアイリーン様が趣味で作った露出度の高いメイド服を着させた魔族らしき人物でミランダと呼ばれる女性の3人が、魔族領に向かったと言う話。


 何故3人が魔族領に向かったのかを聞いたら、どうやら文句を言いに行ったらしいの。イマイチ要領を得ないのだけれどお父様やお母様も詳しくは聞かされてなかったと言うより、ガリアーノ様からはぐらかされてしまったと言う方が正しかったようなの。


 そんな要領を得ない話をし続けても仕方ないので、お父様には用が無くなった為、ジアン君とルセが上手く引き継げているかの様子を見るために、彼らに念話で居場所を聞いて合流する事にしたの。



 だけど二人から応答の返事がなく、途中メイドを捕まえてジアン君達が居る場所を聞いたら、最近は修練場に居る事を聞いてその場所に向かったの。


 ジアン君達が居るであろうその場所に近付くにつれ、激しい音が頻繁に鳴り響いてきたわ。


 私が段々と修練場に近付くと音の正体が金属や魔法による騒音と分かったの。どうやらジアン君達はかなり激しい訓練をしていることと、私はその時は思っていたわ。


 だけど私が修練場で観たのは意外な光景だったわ。


 ジアン君とルセの二人が、ジアン君達より小さな体格の少年少女の二人組で、ジアン君とルセ相手に奮戦している光景。勿論ジアン君とルセは本来の実力を出してはいないけれど、それでもその二人相手に奮戦している光景であったの。


 周りを見渡せば、訓練をしている筈の兵士達が修練場の外周部に居て、それぞれが歓声をあげていたの。


 それもそのはずよね。ジアン君とルセは私達が王都に居なくなっても問題ない様に、異常に鍛えてあげたのだから。そのジアン君達と奮戦出来るほどの少年少女との戦闘シーンは面白いものだもの。



 修練場に居た者達は私に気付くことないため、そして私もジアン君達の戦闘を観たい為に、その場に静かに観戦させてもらっていたわ。


 それにしても少年少女の得物が【刀】であるのが気になるのよね。本来この世界の鍛冶師はとある種族を除いては【刀】を打てないし、造れないの。まぁ、ガリアーノ様という例外も居るみたいだけど。


 それはさておき、少年少女の表情を観るに、とっても楽しそうね。その点、ジアン君達は少しうんざりしている感じではあるわね。


 どうやら私がその他色々と思案しながら観戦して程なく、ジアン君が少年少女の得物である【刀】をそれぞれ弾き飛ばして、それが戦闘終了の合図でジアン君が大きく深呼吸をしたの。


 その後に私がジアン君達に労いの言葉をかけようと近付くと同時に、私が知らない赤茶色の髪を一房の三つ編みにした女性が近付いていたの。


 その女性は私に軽く会釈して少年少女にタオルと飲み物が入ったガラス瓶の容器を渡していたわ。ジアン君はルセから貰っていたけれどね。


 そしてジアン君達は私に少年少女達を紹介してくれたわ。少年はソウジ、少女はナツメ、女性がクララと言って、3人共ガリアーノ様とアイリーン様の子達と分かったの。クララさんは自分は養子と言っていたけれどね。


 しかもソウジ君とナツメちゃんは戦闘中鑑定で覗き見たから年齢とかも知っていたけれど、クララさんは今覗き見てみたら、確かに養子だと言えるかも知れないことが分かったの。それは彼女の種族がドワーフと言うこと。


 お父様や文献からこの世界に鍛冶に長けた種族、ドワーフが居たことは知っていたけれど、私がこの世界に生を受けてからはドワーフの種族だけが忽然と姿が消えたことしか分からなかったの。


 それが今目の前に生き残りとも言える彼女が居る。勿論、彼女だけじゃないかも知れない。私はまだ直接会った事がないから確証は得られないけれど、ガリアーノ様、アイリーン様のどちらか一方もドワーフである可能性も捨てきれないのだから。


 だけど今は彼女に詳しく聞く事は難しいわ。初対面の相手にいきなり自分の秘密にしていることをベラベラと話す人なんて居ないのだから。まぁ探せば一部例外の人は居るかも知れないけれどね。ウチのフォルティスみたいな子が。


 と、私の事も自己紹介をして少年少女の興味がどうやら私に移ってしまったみたいなの。『本物のお姫様だー!』『綺麗な人!』とか。その賛美を受けていたら、ルセがポツリと『こう見えて、私達より遥かに強いんだよね~』と。


 その言葉を聞き逃さなかったソウジ君とナツメちゃんは勝負してとせがんできたの。その所為で一気に私に対するソウジ君とナツメちゃんの距離感は縮んでしまったけれど、そこはクララさんが宥めてくれたわ。勿論、ルセには後でイタズラをすることは決定したけれども。


 まぁそれでもせがんでくる二人には明日勝負をすると約束したけれど。ジアン君達相手にかなり体力魔力共に消耗しているからね。


 その後は兵士達の訓練を再開させて、私はジアン君達五人に簡易なお茶会に誘いながら私が王都に戻って来ているわけを教えたの。勿論ソウジ君達の事も聞ける範囲で聞いたわ。


 それから翌日の昼間に私はソウジ君とナツメちゃんと模擬戦闘を始めたの。結果を言うなら、私の圧勝で終わらせたわ。勿論二対一と言う形で。


 私は昨日の時点で鑑定で視た事も含めて二人の実力を把握していたわ。2人共魔法より剣術が得意としているの。むしろ魔法に関しては、ここ王都に来てから覚え初めて、今じゃ中級の魔法は全属性使える様になっていると、ルセが言っていたわね。


 私は二人相手に素手で相対したわ。勿論、魔法、魔力による強化はしているけど。


 私が二人相手にとった戦法は、受け流しとカウンター。


 二人が【刀】で斬りかかってくれば、程よい大きさの弾力性の水の玉を手に留まらせ衝撃を吸収したり、弾力をつけて弾き飛ばしたり、時には滑らせたりと。一通り【刀】で試して来てダメと分かったら、魔法による攻撃に切り替えてきたけれど、結果は同じ。


 二人は私の対応に『すげぇー!』『すげぇー!』と満面に笑みを浮かべて攻撃して来ていたのはどうかと思うわけだけどね?


 その後は姫姉ちゃんと呼ばれて懐かれてしまったわ。人見知りせず二人共結構ぐいぐい来るのね。そして事あるごとに勝負、勝負とせがんでくるのよね。どうりでジアン君達がうんざりしていたわけね。まぁ、私は勝負する代わりに、魔法、魔力の繊細なコントロール法を教えてあげていたけれど。


 それから更に二日後、調査に出ていたリーナとウォルス様、ギルドと各国の王城に言伝を頼んでそのままリーナと合流していたノエルとギルドにて合流。ギルドとも連係するためにも、私たちと同じカイトの婚約者でギルドマスターになったナリア先生と秘書をしているロールさんも一緒に。


 そしてウォルス様から聞かされたのは、その土地に本来通っているはずの地脈が枯渇していた事。何故その様になっているのかは、その地脈の流れの上には必ずその場所には不似合いのモノがあったから。



 その不似合いのモノとは───洞窟。



 ウォルス様曰く、その洞窟にて地脈に流れる膨大な魔力を利用した儀式が行われた痕跡が微かに感じる事が出来たと。


 そしてリーナとウォルス様が調べてくれた中に二つだけ見知っていた所があった事。



 ひとつは、私達が5年前に初めて冒険者として登録し、初めての依頼をこなそうとした場所。その場所はサイビス村。カイトの屋敷で執事長をしているミゲルさん、ケイトさん、私達と同行しているカルトちゃんの出身地。今はまだミゲルさん達と話し合い、復興計画段階中。


 その村の近くの森の中に突如として現れた洞窟。その当時内部を調査した時には何もないがらんどうであったと報告があった。その後、その洞窟は破壊されたと。


 そしてもう一つの場所はノエルが教えてくれた。


 その場所はカイトとノエルがこの世界に生まれ育った村。その村の名はアデル村。そしてその村の近隣の森にて、カイトが苦肉にも生死の境の末に記憶を取り戻すきっかけとなった場所にその洞窟があった、と。


 その洞窟もその当時ジェイド様とセリカ様が再度調査をしたけれど、何もなかったと報告をしていたらしいの。そしてジェイド様がそのまま洞窟を破壊をしたとも。


 だけどウォルス様は曰く、とりあえず今の所その二つは元々流れていた地脈程太くはないが、年月も経ちそれなりの太さになっている地脈が役割を果たし、その土地が枯れるのを防いでいる。つまりは、人体でいう肝心の血管が機能不全を起こしても、代わりの血管が役割を為していると言う話。


 だけどウォルス様は問題が生じているとも言っていたわ。


 本来この世界の地脈とは魔力を生み出す役目を果たしていると言うこと。だけどその土地に生まれる魔力が急速に無くなると、代わりに他の土地に流れる魔力がその土地の分まで補おうとする。


 すると、その土地に合った太さで機能していた地脈に負担が掛かり、しばらく機能しなくなると言う。そしてその【しばらく】とはその時の状況によって変わり、下手をするとその地脈は機能不全になることも。


 そんなことをウォルス様は教えてくれたわ。


 そしてその話を一緒に聞いていたロールさんが何気なく口に出したの。『それって、神の力を使えるエルス様達の力で代替え出来ないのですか?』と。


 その言葉を聞いたウォルス様は肯定したの。それもそうよね。元を辿ればこの世界を創造したのは他でもない女神様。そしてその力を引き継いでしまったカイト。カイト経由で私達はその神の力を使える様になり、ほぼ自分達の力にしたのだから。


 その恩恵で急を要する事に私とリーナは普通ではないことを散々していったのだから。主に商業方面で………。


 でもそうすると一つだけ問題があるわね。その方法を試すには今の所リーナだけになるのよね。私はノエルとともに不意打ちをくらい神の力の一部を吸われ、それがまだ回復すらしていないの。


 何故回復しないのかの確信はないのだけれど、おそらくは未だに昏睡状態のカイトが関係しているのでしょうね。そしてナリア先生は神格化に成れるけれども、その代償として強制的に深い眠りに就かないといけないの。


 その事をウォルス様に説明したら、ウォルス様は意外なことを言ってきたの。『それもそうなるやろ、御子はん。このナリアお嬢はんとあっちでカイトはんの世話をしているティアナお嬢はんの神力の取り込み量は御子はん達に比べてまともに取り込んでいるのやから』


 その言葉を聞いてナリア先生は心当たりがあるのか、顔色が見る見るうちに紅潮しだしたの。そして私はリーナにアイコンタクトで次の事の合図を送り、リーナが直ぐさまゲートを開きもう一人の人物を迎えに行ったの。


 そしてリーナが連れて来たティアナにナリア先生とともに、神格化に必要な神力の量をどれくらい取り込んでいるのかを尋ねたの。


 私達が神格化に必要な神力の量は、その人の魔力量に対して約五割程なのだけど、二人は特にカイトに対する依存性が私よりあるため、約七割、八割程余計に取り込んでいたらしいの。


 だから二人が神格化を解いた代償として、躰がその量の力に適応するために強制的な眠りに就くと、ウォルス様が彼女達と私達の神力と魔力を調べての推測をたてたの。


 二人にも神力の扱い方の注意はしていたの。だけど口頭だけでもっと気にしなければいけなかったのね。信用信頼はしていた結果の落とし穴だったわけね。


 そんな訳で、ナリア先生とティアナには適した量をちゃんと取り込むようにしてもらい、二人は無事に神格化の代償を払う事なくいつでも使用することが出来たわ。


 このまま神の力に適応するのはまだ早いと思うからね。種族名は変わってしまっているけれども、私が想像した通りなら完全に人には戻れなくなるでしょうから………。


 そしてそんな感じでリーナ、ナリア先生、ティアナが現在ロールさんが提案した方法を実行出来る訳なのだけれども、やっぱりここはリーナに任せるのが妥当なのよね。


 結果的にはリーナが補充する役目に決まり、補充する間隔を五日にしたの。この期間は教団にまた地脈が狙われる恐れがあるのを考慮してのこと。


 やろうと思えば半永久的な補充も可能なのだけど、それだと不測の事態に対応出来ないし、かと言って、間隔が短いのはリーナにとってもわずらわしくなるから、この間隔で補充する事にしたの。


 一通り話が終わったタイミングで、ギルドの応接室をノックしてきた人が居たの。まあ、ノックしてきた人はギルド職員だったのだけれど、その後が意外な人物が訪ねて来たの。


 まず最初に入って来たのはソウジ君とナツメちゃん。その次が5年前に消息不明になっていたジェイド様とセリカ様。二人は5年前より顔付きやら雰囲気が様変わりしていたわ。どこか落ち着いて余裕が見え、より大人な風格を醸し出していると言えばいいかしらね。


 そしてセリカ様に抱きかかえられている可愛らしい幼女。この幼女はどこかジェイド様とセリカ様に似ているわ。そういう子って大抵は二人の子供と推測するのが無難だと思うわけだけど。


 その後はマルティン伯爵様とルフィア夫人。二人はジェイド様とセリカ様の捜索に尽力してくれたことの感謝を述べて来たわ。結果的には私は何もしていなくて、自力で帰ってきたわけだけれどそれでも捜索を辞めず、励まし続けてくれたことと言っていたわ。


 私は感謝の言葉を素直に受け止めたわ。それからはマルティン家は現在ジェイド様を当主とするべく引き継ぎの作業をしているなどの報告をしてくれたわ。ジェイド様も苦笑交じりながらも嬉しそうだったわね。


 多少の世間話をしてマルティン伯爵様とルフィア夫人の二人は先に帰ってしまい、ジェイド様とセリカ様の子、アイカちゃんをソウジ君とナツメちゃんの二人が別室で遊び相手をしてもらい、せっかくなのでジェイド様とセリカ様を交えて先ほどの話の要点を話したわ。


 何か問題が出ればギルドマスターの言葉や対応だけではなく剣聖の言葉と行動での信用度が違くなるから。その為にジェイド様不在中も名声を維持し続けたのだから。ジェイド様には悪いけれど使える手は残していかないと、あの予知夢は訪れないわ。


 そしてここでの用事をリーナに任せた私は一人、エルフのラムル国に戻って来たの。ここで出発前にフォルティスに私達みたいに強くなるにはどうしたらいいと問われたから、修行を積ませていたの。


 最初はどうゆう風に心身を鍛えるのかは分からないだろうからティアナに任せていたから、今はまだ序の口の段階だけどね。


 それから私達はカイトが目覚めるまでの間、やれる限りの事を進めて行ったわ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ