1ー6話
はぁ…………思い出した。
あの時、ノエルがウルフに襲われそうになり、間に入りかばったんだった。
あれから何日が経ったんだろう?
それに、どうして今まで分からなかったんだ?あの自称女神め!なぜ無事に転生させなかったんだ!失敗したのか!クソ!
色々なことをベッドに横になりながら思っていたら、部屋の扉に誰かがノックをして来た。
どうぞ、と返事をしたら入って来た。
「はい、カイくん、どうぞ」
部屋に入って来たのは、お盆の上に木の器一つとコップに湯気が上がっており、温かい料理だと分かる物を持ったノエルが渡して来た。
「あぁ、ありがとう。ノエル」
「……………えっ!? カイくん!? 今、ノエルって!?」
ノエルが驚いた表情をして、そう聞き返していた。
「あぁ、心配かけたな、しずく」
「ハルくん!ハルくん!ハルくん!」
ノエルが泣きながら抱きつこうとした瞬間に、俺はすかさず器を持った手を高く上げた。
それからしばらく、雫=ノエルが泣き止むのを待ってから、情報交換をした。
色々とこんがらがったが簡単に整理するとこんな感じかな。
一つ、俺は大怪我をして、傷は塞がったけど、熱で三日、熱が引いて四日、寝込でいたこと。
一つ、他の皆(転生前の家族)は分からないけど、ノエルは記憶を持って転生出来たが、なぜか俺だけ今まで記憶を無くしてたこと。
一つ、自称女神と居た空間で話してた通り知識はあったが、強さの方は普通の人達と変わらない位だったこと。
「つまり、俺は一週間も寝ていたのか」
「ねぇ、ハルくん……あっ!?今はカイくんだね!これからどうしよう?」
「あぁ。とその前にノエル………危ない目に合わせてすまなかった、ごめん」
そう言って俺は頭を下げた。
「ううん!気にしないで!………やっぱりカイくんは優しいね! 記憶を無くしてた頃もちゃんと謝ってくれたし」
ノエルは前半は慌てたようになり両手を左右にふり、後半は笑顔を見せてくれた。
「さて、これからのことたが……」
「うん?」
「この世界のことはまず、あの自称女神の知識があるから今の段階としては良いとして、まずは、目の前のことだ」
「目の前のこと?」
「あぁ、まずは強くならないと! ノエルや前の家族と今の家族、俺の身近の人達を守れないからな!」
「私も、カイくんと一緒に強くなるね! 今回みたいにカイくんが危ないことがないように!」
俺とノエルは次にどうするかは決まった。そしたら、次に強くなるために必要な人物を探しに行くことにした。
その人物は食堂に居た。昼時であり昼飯を食べていた。
俺とノエルはその人物を見つけると、近づいて行った。
「まだ、寝てないとダメじゃないか!カイト!ノエルちゃんも、ちゃんと止めないと!」
「「ごめんなさい」」
その人物は俺を見つけると、食事中の手を休め少し怒っていた。
俺達は意気込んで近づいたが、その人物に正論なことを言われすぐに謝った。
「ジェイド兄ちゃん!」「セリカお姉ちゃん!」
「僕に」「私に」
「「修業をつけて下さい!!」」
最後に頭を下げそう宣言した。
「まず、頭を上げてくれ。………どうしてそんなことを俺達に?……理由を聞いてもいいかい?」
ジェイド兄ちゃんとセリカ姉ちゃんの二人は顔を合わせてからこちらを見て、真剣な眼差しに少し優しい口調でジェイド兄ちゃんが聞いてきた。
「ノエルに聞きました。僕の傷をたちまちに治したって、そんなセリカ姉ちゃんと知り合いのジェイド兄ちゃんは、ただ者ではないって。………僕は今回のことで大切な人を守るために大怪我を負った。………だけどそんなやり方では大切な人は守れない。悲しませるだけだと!それなら大切な人、大切な人達を守れる強さが欲しいんです!!」
俺はジェイド兄ちゃんの目をそらさず真剣に、又、相手も同じく視ていた。ジェイド兄ちゃんは何かを感じたのかしばし俺を視ていた。
それから目を伏せてからノエルの方を見ていた。
「──私も今回のことで、カイくんが私を守って大怪我をしました。大怪我をしたカイくんを見て私は…………何も出来なかった、悔しかった。…………何も出来ない自分が、守ってもらうだけの自分が!私に力があれば、大切な人を守れる強さが!あの悔しい思いはしたくないんです!だから私………私達に守れる強さを下さい!」
ノエルは途中泣きながらも、最後の方は泣きやみ、頭を下げてからジェイド兄ちゃんの目をそらさず視ていた。
ジェイド兄ちゃんはまたもしばし視ていた。
ジェイド兄ちゃんは今度は目をしばし伏せていた。
「───分かったよ。………二人の覚悟は受け取った。修業をつけさせて貰おう。セリカもいいかい?」
一息吐きながら目を開けこちらを視て告げた。
「いいですよ~。私~痺れちゃいました~。それに~ジェイくんの頼みなら尚更です~」
「ありがとう。(それにしても、まだこの歳で何て目をする二人だ)」
ジェイド兄ちゃんから修業の了承を貰って、セリカ姉ちゃんに了承してくれたことの感謝を告げた。
ジェイド兄ちゃんから修業は明日から、今日は休むように、と告げられた。
ジェイド兄ちゃんとセリカ姉ちゃんが食事をさっさと終わらせて、二人は、食堂兼宿屋を出て行った。
※翌日※
村から少し離れた所に稽古するには適した拓けた場所があるので、その場所に俺、ノエル、ジェイド兄ちゃん、セリカ姉ちゃんの四人で来ていた。
「さぁ、始めるか。まずは俺からだな。二人共、掛かってきな」
飾り気のない冒険者らしい服装にミスリルの籠手に木剣をつけたジェイド兄ちゃんは木剣を俺達に向けてた。
いつもの服装の俺に、スカートからズボン姿にあとはいつもの服装のノエルとそれぞれに木剣を持ち向かって行った。
「オオォリャャャァァァ!」
「ヤァァァァァァ!」
ジェイド兄ちゃんは俺達の木剣を軽くいなした。
いなされた俺はすぐ様続けてジェイドに向かった。
今度は躱された。それがしばらく続き、俺達が息も絶え絶えで片膝をついていた。
俺は最後に、一太刀浴びせたくて立ち、木剣を両手で持ち躰の正中に据えた。
それを見たジェイド兄ちゃんの表情が驚きつつも笑みを浮かべていた。
そんなジェイド兄ちゃん目掛けて木剣を振り上げ降ろした。ジェイド兄ちゃんは木剣を受けてなぎ払った。
そのまま俺は座り込んでしまい、俺の木剣が離れた場所に刺さった。
「さぁ、これで今日の剣術の修業はお終いだ!」
ジェイド兄ちゃんが告げた。
ジェイド兄ちゃんが俺に何か言いたそうな眼差しをしていた。
「さぁ、今度は魔法の勉強だ!村に戻るぞ!」
「「はーい」」
セリカ姉ちゃんはジェイド兄ちゃんと頷き合い、しばし休憩してから村に戻ると言った。
村に戻った俺達は俺の家兼宿屋の一室で魔法の勉強に掛かった。
「まずは~、お二人に~聞きます~。魔法の属性っていくつあるか分かります~?」
「はい。火、風、水、土、光、闇、無、の七属性です」
セリカ姉ちゃんの質問にノエルが答えていた。
「はい~。正解です~。では~次に~魔法の種類はどうですか~?」
「はい。火、風、水、地、光、闇、の他に無属性の中に回復魔法、召喚魔法、時空間魔法があります」
「はい~。またまた正解です~」
セリカはよく出来ました、とノエルの頭を撫でた。
「次は~。魔法の発動条件って何ですか~?」
撫でながらノエルに聞いていた。
「魔法にはスキルの適正と魔力と呪文が必要で、火属性の魔法を使う時に必要な詠唱をしないと出ないです。例えば・・・火よ、来たれ、ファイアボール、と」
「うーん?大体正解です~」
「大体ですか?」
「はい~。魔法って実は~無詠唱で~イメージしただけでも~発動するんですよ~」
「イメージだけで?」
「はい~。私がカイトくんに~回復魔法を使った時~、いきなり~光ったでしょ~。アレがそうです~。それに~属性を持ってない~魔法を修得するにも~使えますよ~。例えば、その人に~火属性スキルが無くても~イメージを浮かべ~魔力を発動することを~何回も繰り返すと~火属性を修得出来ますよ~。まぁ~元々~持っていた才能も関係してますね~」
「セリカお姉ちゃん、すごい!」
それを聞いたノエルはセリカ姉ちゃんを褒めちぎり、セリカ姉ちゃんもうれしくなりノエルに抱きつきながら撫で回した。
その後もそんなやりとりをしてセリカ姉ちゃんから魔法の修業を教わった。
それから毎日、俺とノエルは、ジェイド兄ちゃんとセリカ姉ちゃんから剣術と無詠唱での魔法の修業を、日々重ねて行った。
※それから、月日は流れ──