天使の施し
炎の中、消え行く意識
少年はこの世から消えさる
しかし、その死には救いはなく
救われるものもおらず、無意味に死に
、何人も悲しみにくれず
先へ進むは、時の流れ
「…して…しっかり…」
少女の叫びが聞こえる…聞いたことのある声…親しみのある声…
「し……かり…」
だがその声を聞く力など残っていない少年は
「し………」
その声の主を確認することなく、息絶えるのであった
目を開けた少年の視界に青白い光が差し込む。
ドームのような空間だが、宇宙のような無限の広さを感じれば、密室かのような狭さも感じる。
「死後の世界…か…?」
「君はまだ生死の境をさまよっている「旅人」ってわけさ」
男か女か子供か大人か分からない姿。しかし全身からは神聖なオーラを感じ取れる天使のような人。いやこれこそが天使なのかもしれない
「やぁアオバ君、僕はアルテナ、君の人生をやり直す為にここにいるんだ」
「やり直す…?」
「君は17才目前にしてリパード家の勢力に殺された。自分の部下、使用人、親友まで殺される、とても悲しくて、残念な人生だ。だけど……僕はそれを望んでいなくてね、君を16才になった日の運命の分かれ目に送り込むと考えたんだ」
「16って…国王に会ってそれから…」
「決闘を申し込まれたんだったね」
「…俺は負けたんだったな…」
アルテナな頷き何かを探しながら答える
「そう、だから君には決闘に勝って運命を変えてもらうんだ、君は17才目前で死ぬという運命を変えるんだ」
「二つだけ確認してもいいか?」
「どうぞ」
「成功した時と失敗したときの僕の扱いについて聞かせてほしい。」
「成功した時は君はそのまま修正後、つまり君が死ななかった場合の世界を自由に過ごせる。失敗した時はただそのまま死ぬだけ。」
「なぜ君がやらないんだ?」
「君の方が面倒じゃないからかな。そもそも僕はそっちの世界には行けない。まぁ僕が行けなくても協力はできるさ。君をそのまま送ったら成功率は限りなく低くなる。今の君を修正力と戦わせてもまず勝ち目がない。だから【天使の加護】を使って君を超人にするのさ!そうすれば修正力なんて簡単に勝てる。ほら、この紙が【天使の加護】だよ!」
なるほど、さっきまでの探し物はこれか。見るだけで強くなれそうだ。
が、どうにも納得がいかない。そもそもこれで得る力は本当に俺の力といえるのか、そして必死に磨いた知略を無駄にしてしまうのではないか。
…というか今の僕じゃ修正力に勝てないと言われているようでもある。こいつにムカついてきた彼は
ビリビリビリビリ
「そうそう、そうやってその紙の呪文を読むだけで……え?」
絶句するアルテナを無視して
「こんなもんいらない、早く16才の時に送ってくれ。」
僕に手をかざすと不思議な紋様の魔法陣ができる
「天使の加護って凄く高いんだよ…破くなんてもったいなさすぎるよ…成功して…というか成功してくださいお願いします…」
アルテナは消え入りそうな声でそう呟くと呪文を唱え始めた
視界が白く染まっていく
そして、戦いの旅がはじまった
次回 運命変更の兆し(月内)
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