第五話 女神様はろくでもない奴でした
真っ白だった。色の白、というよりは本当に無色という方が合ってるかな?
広がりに限りがなくて、明かりは見当たらないのに明るい。
そんな場所に一人ポツンといた。
わぁい!異世界もののテンプレだぁ!っていつもならはしゃぐことが出来た
と思うけど私はさっきまで体スパーンで瀕死の状態だったはずなのに
傷の一つもついて無い。んーじゃあここ天国かな?意外と殺風景だねー。
・・・って何でこんなにあっさりとした反応しかしないんだろう私。
おや?なんか一際明るい場所がある。まさかあそこから女神様とかが
出てきて・・・ぐふふ!どんな可愛い子が出てくるのでしょう!?
「・・・。」
白っ!!全身真っ白!人みたいな輪郭は分かるけどそれだけだ!
何これ?手抜き?作画崩壊?どっかのボールにしか見えないキャベツより酷い!
「あのーすいませんちょっと聞きたいんですけど・・・」
「・・・。」
話すらしない!ひどい!鬼!悪魔!人でなし!白!わけのわからないもの!
まあどっからどう見ても人じゃないからあながち間違いでは無いんだろうけど。
「・・・・・・・・・・・・。」
ん?今なんか言った?よく聞き取れなかったけど、何かを伝えるような・・・。
あれ・・?目の前が真っ白に・・・
え!?これで終わり!?ちょっと待て!それで良いのか!?
もっとお約束的展開は・・・!
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「・・・という訳で起きたら二人が話してたので割り込んで来ました。」
「なるほど、わからん。」
現在起きた喜美から事情聴取しているがサッパリ分からん・・・
話を聞けばせめて治っている体のことぐらいは分かると思ったが
逆に疑問が増えた。面倒くさいので保留にしよう。
「・・・まぁいいやそれより今はここから脱出することを考えないと・・・。」
「・・・何故私を見る。言っとくけどここからの脱出方法なんて知らないぞ!
そもそもここはクエイクの底の底!ここに来たら帰る事は諦めろっていう程の
魔境なんだぞ!?出れるならもうとっくに出ているぞ!?」
ま、そういうことだろうと思ったよ。じゃなきゃここに落とすなんて
考えつかないだろうし。だからといってはい、そうですかと引き下がる
訳にはいかない。とりあえずいろいろ試してみる以外は無い!
「・・・ふえっ!?」
「いきなりどうした喜美・・・魔物と遭遇でもしたか?」
「いやいや、そんなことになったらとっくに私死んでるから。
こんなところで会ったらまず生きてないでしょ・・・。」
・・・俺遭遇した上、襲われて返り討ちにしたんだけどなー・・・。
絶対言えないけど。言ったら十中八九化け物がぁ!て言われそう・・・。
「ってそうじゃなくて!私のステータスがおかしなことになってるの!」
うわぁーすごくいやなよかんがするぞー!みたくないよー!
「・・・何だこれは・・・!?」
ハデスの反応からどんなものがあったのか予想は付く。付いてしまった。
意を決して喜美のステータスを見ることにした・・・。
名前:大和喜美 称号:女神 種族:半神半人
体力:20500
攻撃力:10300
防御力:59400
俊敏:10400
魔力:測定不能
俺も大概だったがもっとぶっ壊れだったよこいつ・・・
なんだよ喜美中心の耐久パでも作れと?魔力が測定不能っておかしいわ・・・
だが今見るときに表示された方を見るふりをして魔王鑑識を使ってみたのだが
なかなか良い。今後もお世話になりそうだ。よくあるパターンだ。
「今、影人私のステータスを見たふりして鑑定したよね!」
「!?何故分かった・・・!?」
「むふふふふ!」
自慢げに喜美は自分のステータスチェッカーを起動させた。
まぁさっき基礎ステは見たからスキルだけ見ればいいな。
保有スキル:天啓、未来予測、自動回復(極)〈体力、魔力〉、全属性適正、
魔法攻撃耐性、物理攻撃耐性、結界の極意、天の加護、思念伝達、鑑識眼、
思考効率向上
《固有能力女神》
女神の庇護・・・結界内の全ての味方のステータスを大幅向上。
女神の籠絡・・・自分を対象とする精神操作系、鑑識系の魔法、スキルを
感知する。また抵抗判定を行い成功した場合は無効化、
失敗した場合は80%、効果を低減する。
神聖なる幸福・・・対象に対して精神操作系のスキル、魔法に対する耐性を
付与。効果は最大一日持続する。
幸福の神託・・・魔力を消費することで使用した魔力の量に応じた
物質の創造を行う。
絶えなき意思・・・魔力が尽きるまで死亡時に即時回復を行う。
全てを包容する意志・・・一分間自身に対しての全ての攻撃行為を無効化する。ただし発動は一日一回のみ。
ああぁ・・・うん見なかったことにしよう、うん。それがいちば・・・
「ちょっと待ったぁぁ!!」・・・もう話すのも面倒くさくなってきた。寝たい。
「もうちょっと驚かないんですか!!これすごいんだよ!」
いやそれは分かっているがもういちいち反応するのが面倒くさいのだ。
勝手に俺のステでも見りゃいいじゃないですか。
「ではお言葉に甘えて。鑑識眼!・・・?????」
思考停止してますね。はい。でもお前のも大概だと思うんだ俺。
「・・・ちょっとチート過ぎない??」
お前にだけは言われたくない!俺もお前も大して変わらねえよ!
「・・・私のこと忘れてないよな?うん?」
あ、すまん忘れてた。申し訳ないですーハデスさんー。
だから真顔で近づいてくるのを止めて下さい。本当に怖いです。
ただでさえここ鉱物以外の明かり無くて暗いので・・・。
「あーうん。忘れてないよ。」
「嘘だっ!!顔に出ているっ!」
「ちっ、バレたか。」
「お前達がおかしいだけで私も十分凄いんだぞ!」
「そうだよ!こんなロリ・・・逸材滅多にないよ!」
喜美、お前は一体何を言っているんだ。魂胆が丸見えだ。
見ろ、ハデスがドン引きしてるぞ。最初は綺麗だった涙目もすっかり
濁った黒になっているぞ!どうしてくれるんだ!?よくやった!
「・・・影人、あの女が怖い。そしてお前も何か内心とんでもないこと考えてそうだ。」
「大丈夫だ、あれよりは(比較的)マシだから。」
※十分危ない人です。普通の範疇を超えてます。
「ちょっと!?私なんでか不審者扱いみたいになってるけど!?」
「みたいじゃねぇよその通りだバカ。こんなんが女神とか・・・」
「ううぅぅ・・・それより!速くここから脱出するんじゃなかったの!?」
確かにその通りだ。クスのことを考えると一刻も早くここを抜け出さなければ。
でも問題はその手段が無いのだ。方法がないのに脱出するなんて何を言っているんだ
という話だ。
「ワープすればいいんじゃ?」
「んな身も蓋もないことを・・・そんなのハデスが既に試してるだろ・・・。」
「・・・。」
全力でハデスが目を逸らす。思いっ切り顔を引きつらせて震えている。
あれー・・・まさか・・・?
「ハーデースー?まさか思いつかなかった訳じゃないよねー?」
「・・・っっ!だってぇぇ!そんにゃのできると思わないもん!・・・それに
私が使える魔法や、持ってるスキルにそんなこと出来るのは無いんだもん!」
絶賛キャラ崩壊中です。あんだけ経験積んでそうなロリババアからただの
駄々こねるロリに瞬時に切り替わった。恐ろしく速い精神崩壊、俺でなくても
びっくりするね・・・。少しは大人になって下さい。
「で、喜美のどのスキルで出来るんだ?」
「分からないけど差し当たりでやってみる!」
やっべー・・・途端に成功率が下がるような発言聞いたわこれ・・・。
・・・あ、でも逆にこれがフラグになるなら良いか。案ずるより産むが易しって言うし。
「瞬間移動!」
魔法陣が地面から現れ、魔法の行使が始まる。鑑識で見たが成功らしい。まじか。
喜美・・・成功したのは良いんだが・・・ハデスが本気で泣くぞ!
隣で女の子が大泣きしているのに何だその嬉しそうな表情は!
・・・分からんでもないけど。
でも現実にハデスが涙目になって俺の服を掴んでいる。ああ、俺に妹がいたら
こんなことも・・・。
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・・・俺たちは地上に戻ってきた。戻ってきてしまった・・・。
・・・簡単に戻れすぎだろ。この泣きすぎて目が腫れてるロリをどうするつもりだ。
俺の手には負えないぞ。
「うえぇ・・・私の数百年は一体・・・。」
・・・ハデスはしばらくそっとしておこう・・・
あそこまで落ち込んで泣いている神さまとか可哀相にも程がある。
「よし!行こう!いざケモ耳娘救出へ!」
「待て待て待てぇぇ!!俺たちだけじゃ少なすぎるだろ!何かあった時どうするつもりなんだ!?」
「うるしゃい!ケモ耳は世界を越える!」
「それは同感だ!でも俺たちだけじゃ何があるかわからないだろ!」
「だったらどうするの!」
「下僕を呼ぶ!」
「なるほど!」
マシンガントーク。何を言ってるんだ俺ら。でも能力を試すついでに
やってみるのも良い。気になった能力がさっきあったからな。
「魔王召喚」、鑑定によると魔物を召喚するスキルのようだがどうすれば
魔物を呼べるのか見当も付かない。どうしたものか・・・。
「何か口上を言うとか!身振り手振りを付けるとか!」
「それをやったら俺の黒歴史が増えるじゃねえか!」
「背に腹は?」
「変えられない・・・はぁ・・・。」
ええいやってやるよ!やりゃいいんだろ!
「適当に悪魔っぽいのを呼び出す感じで・・・よし。
罪深き冥府の者共よ、その存在を此処に。我が力に屈し従わんとするのならば
汝、その全てを我に捧げ我が忠実なる従僕としてここに姿を現さん!」
おまけ程度に掌底を前に突き出す。これが最初で最後だ!
ああもう恥ずかしい。死にたい!本当に死にたい!誰か拳銃か青酸カリか
何でも良いから何か殺せる物持ってきてくれませんか!?
「っっっっwwww」
腹を抱えて笑っている駄女神は後でしばく!!
目を離した隙に地面から魔法陣のような物が現れて輝く。
ええぇ・・・あれでOKとか・・・。かなりそういうところがルーズじゃあ
ありませんかね?
「・・・。」
なにか悪魔的なのが出てきた。しかも6体も。見ただけじゃどれが
どれだか分からんな。というか性別とかあるのかこれ?
『召喚した魔物にスキル、禁忌の契約を適用しますか?』
ステータスチェッカーから音声が流れ、そう告げられた。
え?ああ、あのスキルはこういうときに使うのか。
でも使ったらどうなるんだろうな・・・?
『・・・適用した場合、召喚した魔物のステータスが向上し、配下として正式に
扱われます。ただし魔力を一体につき1000消費します。』
ステータスチェッカーさんかなり便利なんですけど。
答えはYESだ。とにかくできるだけ使える物は増やしておきたい。
『禁忌の契約が適用されました。魔物のステータス変更を行います。』
ーーーーーーー魔物達の体が輝き始めた。
おまけ:
ハデス「・・影人、あの女の格好が・・・」
影人「ああ、そうだった・・・喜美、お前自分の今の格好が分かっているか?」
喜美「もちろん!下半身に何も着てなくて服でギリ見えない状態だよね!」
影人「分かってるなら自分のスキルでなんか服を作れ!」
これで一応外に出る前に露出狂と言われることは無かった。
影人「・・・どこに行っても恥ずかしい喜美だろ。」
ハデス「うん。あれはきつい。」
喜美「何か言いましたか!?」
二人『いや?何も?』