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魔王と女神になるのは中学生  作者: しゅれねこ
第二章 帝都での1ヶ月
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第二十三話 ふれいくたいむ 恵愛は反転し無間の鐘と化す


― ― ― ― ―




「・・・殺して。私は人で無ければ女神みたいな高尚なものでもない。

・・・ただの人殺しだよ。『』にとって不都合か世界の存続に不適と判断されたものを

排除していくだけのシステムでしかないんだよ・・・!」


―ああ、私の最後に見た******の姿だ。そして・・・。


「・・・****。************」


―何を言っていたのかは覚えていない。ただ、その後にあったのは・・・。


「******!!!********!!!!!」


―剣を握っていたその両腕は最早人の物でなく蠢く肉塊としか言いようがない。


「****・・・**!!・・・・***・・・・**!!」


―両足、胴体も同様に肉塊と化していく。もう、人の面影はない。


「・・・・・!・・・・・・・・!!」


―最後に何かを伝えようとした彼は完全に怪物というべき形相でどこかに消えていった。

・・・これが私の物語の結末。賭け値無しのバッドエンド。

だから・・・私はもう・・・繰り返したくない。


―現実を直視し、理想を捨て、最善を選ぶ(異物を排除する)のも。


―理想を追い求め、現実から目を逸らして、最良を選ぶ(合理的選択を実行する)のも。


―・・・ましてや、何も選ばず、決断をせず、ただ自分の願望だけに従う。

そして、最低の選択をする(最悪の結末を遂げる)のも・・・!


―だから、私は歩みを止めない。使命があろうと、役目があろうと、失わなかったものが

あったのだとしても、その果てに無しか無かったとしても・・・!


―・・・私はすぐ近くの存在すら救えなかったのだから。




― ― ― ― ― ―





「あ、目開けた。おーい、起きろー!」


「はっ!・・・夢を見ていた!」


パシーン!


「お、思いっ切り叩くことないでしょ!?」


「・・・いや、突然様子が変わったと思ったらキスして挙げ句の果てぶっ倒れるとか

俺のことも考えて欲しいんですけどね・・・?」


全く、喜美から、というより全ての面で濃くなっている気がするのは自分だけだろうか?

強くなったり、より自由奔放さが増したり、・・・きれいになったり。

・・・あああああ!もどかしい!悶絶する!何でこんな事考えるんだぁぁぁ!


「仲良くいちゃついてるな2人とも。冥王の前で良い度胸だ」


・・・ギリシアに目付けられた。鋭い眼光が肌にひしひしと刺さる。

だが、ここで萎縮するわけにはいかない・・・!

今、言わなければいつ言うというのか・・・!


「ペルセポネさんをお姫様抱っこしている冥王サマには言われたくないです!

説教なら逃げずに受けるのでまずは彼女を降ろしてからにして下さい・・・!」


一瞬何を言っているのか分からない様子だったが、自分の腕を見て気付いたのか

顔を赤くして、ペルセポネを降ろした。あー愉快愉快。


「き、気にしないでねギリシア。別にこのくらいよくある失敗だから、ね?」


「う、ううう・・・恥ずかしいんだぁ・・・!」


・・・ギリシアってもしかして俺と同類かもしれない。


「・・・ちょいちょい、ちょっと聞いて?」


「は?何だよ?」


ギリシアが落ちこんでいる?間にラファエルが裏から小声で話しかけてきた。


「・・・いや、あのー・・・さっきのキス?の説明は無しって事で・・・」


「出来ると思ってんのか?ああ?」


「で、ですよねー・・・!・・・」


半分泣きそうになっていたが、しぶしぶ撤退していった。何があったのか。


「ううぐ・・・ではしっかり説明してもうぞ・・・うぐ、・・・」


泣いてるじゃないですか・・・。冥王の威厳とかなんとか台無しじゃないですか。


「・・・チャンスは今だっ!」


『え?』


ラファエルの突然の発言に俺、ギリシア、ペルセポネの声が見事にハモった瞬間

どこかに俺は飛ばされたのだった。


「・・・な、何をした!?」


「焦る必要はありませんよ冥王。彼にはこのような些事に付き合わせるつもりも

余裕も無かったので退場頂いただけですよ。さて・・・どこからお話しましょうか・・・?」


それまでの飄々とした態度から打って変わり、淡々と言の葉を紡ぐ女性が

そこにいた。彼女以外からすれば道理も理屈も通らぬ突拍子ない行動にも

眉一つ動かさずにいた。


「・・・じ、じゃあ教えて下さい。・・・一体貴方は何者なんですか・・・?」


厳かな雰囲気を身に纏った彼女に気圧されつつも、ペルセポネは恐らくこの場で

最も重要な問いを投げかけた。そんな問いにも彼女は態度、表情、それを全く

変えずに答える。


「そう・・・ですね。確かに知りたいでしょう」


ほんの僅かに思案する素振りを見せる。実際はもう何を話すかは決まっている。


「神の種を贋作呼ばわりできるのは古より生き、真に神と呼ぶにふさわしい存在を

見てきた貴方だから出来ることでしょう。冥王、いやハデス・ギリシア?」


「・・・ますます謎になってきたな。貴様、本当に何者だ?現代の人物でない

ことは確かだがそうなるとその力量に疑問が残るな。そして我々の時代を知るときた。

・・・貴様もあの時代の生き残りか?私の名前を知っているということは」


「ふふふ、考察としては良い線をいっていますが外れです。あなたが思案する

いずれでもありません」


一つ一つの動作にも威厳を感じる彼女の発言にギリシアは眉を顰める。

・・・そうでなければ何だと言うのだ・・・?そう思った彼女の疑問に対して

戯れのように少しずつ情報を明らかにしていく。


「一つ、私は過去の存在ではありません。貴方が言うような神話の・・・です」


「・・・」


一つ目のヒントでギリシアは正解に辿り着かない。続いて二つ目の情報が開示される。


「・・・二つ、私は全てを知り得る立場にありました・・・


「・・・どういうことだ・・・?」


―二つ目のヒントによってより困惑した。


「三つ、私にとって種族は関係ありません」


―三つ目は何かを掴ませるように開示された。彼女によって、答えに限りなく近い

情報を明らかにしているつもりだった。


(・・・まだ、駄目・・・ですか)


「四つ、・・・私は人ではありません・・・・・・・・。見定める者です」


「・・・そうか、貴方はあの使者様・・・だったのか」


「嘘・・・でもあの時はこんな風に会話なんて出来なかった・・・!」


ギリシアは四つ目のヒントによって答えを出し、ペルセポネは信じられないという

様子で驚く。


「・・・まあ、驚くのも当然です。というか同一存在・・・・ではありますけど

同一人物・・・・ではありませんので。あ、そういえばさっきのアレ・・

説明していませんでしたね」


「・・・私が覚えている限りでは貴方はそういう事をする人物では無かったと

記憶しているのだが・・・」


「それは・・・同一人物では無いからです。この体もあくまで依り代のものに過ぎません。

それと理由ですが彼の・・魔力が至急に必要だったからです」


「・・・つまり、量より質の問題だと?」


ラファエルの意図を読み取り、ギリシアが応える。


「その通りです。では、私もそろそろ帰りましょう。彼が心配ですので」


(どういうことだ・・・?あの方は質疑応答ぐらいの会話しか出来ない上に、

特定の個人を贔屓する人物でも無かったはず。それに同一存在であって

同一人物とは何を意味しているんだ・・・?肝心な部分を教えないのは変わってないが

さすがにここまで酷かった覚えは無いぞ・・・!?)


思い詰めているギリシアを余所に腰まで長く伸びた髪を回し、妖艶な立ち振る舞いで

その場から去っていった。消える瞬間、何処か悲しげな表情をしながら。


―その事に気付いたのは誰もいなかった。




― ― ― ― ―




―精神改変度が25%になりました。【絶えなき意思】を【不滅の代償】に変更します。



―特定条件の達成を確認、【魔王】の保持者に《邪神との接触》を付与します。


次回から本編に戻りますヨ。でも、ぶれいくたいむが本編に関わらないとは

言ってない!寧ろストーリーの根幹にとっては重要なのデス。

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