第十八話 誰がために竜は啼く 5 Irreversible atonement
竜要素ゼロです今回。
「ん・・・?どこだここ?」
目が覚めると、澄み渡るような青空、心地良いそよ風に青々とした芝生。
見渡す限りの草原が眼前に広がっていた。
さっきまでのことが嘘のような心地よさ。現実感の無い非日常的な体験だった。
異世界に来ている時点で日常感なんてあるわけないのだが。
しかし、やはりというべきか青空もそうだが芝生も広がりがずっと続いている。
その広がりは限りが無いようで言うならば・・・それは・・・。
「天・・・国・・・なのか・・・?」
「残念!ここはあの世じゃないし、だからといって地獄でも冥府でも無いよ!」
・・・いや、うん。今までのパターンでいくとそうなるんじゃないかな?
って薄々感づいていたけど実際にやられると腹立つわ。どっかの人の発言を
借りれば、上等な料理に蜂蜜をぶちまけるが如き思想、って感じだ。
「ようこそ、幼い魔王君。私がここを作ったきれいなお姉さんだ。もっと惚れても
褒めても良いよ!大歓迎だ!さあ!是非!」
うっわー凄く胡散臭い。そして腐っていそうだ。精神的に。ちょっといじめてみよう。
いや、誰でもこんなことするわけじゃないぞ!?なんとなーくしても良いかなと
思ったからです。ろくでもない理由だわ。
「ではお言葉に甘えて、・・・すー・・・はー・・・。・・・そいっ!!」
「!?!?」
自分でもよく分からなかったが、横にいたお姉さん(自称)の大きな胸を
ぎゅっ!!っと掴んだ!もう一度言う。よく分からないがとにかく胸を
もにゅって掴みました。はい。とても柔らかくて触り心地が大変結構でした。
「ちょっと!?いきなり胸を掴むなんてすばら・・・酷いことをしてくるの!?
お母さんあなたをそんな子に育てた覚えはありませんよ!?」
そう言いつつ顔は赤くなり、どこか嬉しそう・・・。すごい残念な人だ。人かは分からないけど。
「いや、あんたお母さんでも何でも無いし。というかさっき素晴らしいって
言いかけましたよね?そうですよね?」
「あ、ああ、あははははは・・・イヤーナンノコトカナーサッパリワカラナイナー。
わ、私がそんな変態的でドMでかなりヤバイ女とでも思ってるの!?」
「なるほど、貴方は変態的でドMで・・・」
メモメモ・・・
「わあー!!??分かったから止めて!許してぇぇ~!!・・・うええぇぇぇん!!!」
見た目は美女、頭脳は知らん!精神年齢は恐らくかなり低い!傾けるは国では無く
自分の評価!おかしな美女、降臨!・・・なんてイメージ映像が
つい想像されてしまった。こんな時でも想像してしまう自分に内心呆れながらも
目の前で泣き喚く美女さんを慰めることにする。このままだと煩いし。
「ああもう!泣くのを止めて下さい!この程度で泣いてたらお姉さんなんて
言えませんよ!?それに俺まだ貴方の名前を聞いていないんですけど!!」
「はっ!!そうだ!こんなことじゃ笑われちゃう!!」
※もう手遅れです。心の中で大笑いさせて頂きました。
「こほん、では自己紹介といこう!我が名はラファエル、この空間を統べる者です!」
「・・・へえ!?」
え・・・!?ラファエルって・・・え!?どういうことなんだ!?
「むふふふふ・・・!!気になっているご様子だねぇ・・・!でもダメ!
まだ教えられないよ!もやもやしてる?・・・溜まってる?おっぱい揉む?」
「喧しいわ。やっぱり揉んで欲しいんじゃないですか。この変態がぁ!」
「あふぅん・・・!」
あ、駄目だこれ。このまま続けていたら本当に取り返しの付かないことになる
パターンだ。だって声は何か色気があるし、顔は赤いし、目はとろーんとした感じで
なんというか不思議な包容感がある。・・・足もじもじさせて手で胸を揉んで
もう片方の手が下半身の方に行ってなければの話だがな!感じてんじゃねーよ!
台無しだよ!なので強制的に話の本筋に持って行くことにする!
「で、いい加減俺がどうなったのか教えて欲しいんですけど。」
「・・・ふぅ。驚かないで聞いてね。」
途端に重苦しい雰囲気になり、さっきまで快く感じていたそよ風が俺と彼女を分断する
壁のように通り抜けていく。少しの後、彼女が告げた内容は当然であったが、
救いはないという宣告をされたようにも聞こえた。
「多田影人、あなたは心臓を貫かれて死にました。ご愁傷様です。」
抑揚のない声で彼女の声からそう告げられた。―吹いた風は・・・冷たかった。
「あのですね、どうして数分前からこんな状況になるんでしょうか?」
「いやー・・・やっぱりハッピーエンドが一番だよ!はい、おしまい。じゃあ・・・
昼寝でもする?」
Dランク冒険者:ベルゼから多田影人(享年15歳)になりました。いえーい。
さっきまで膝枕で耳かきされてました。え?どうしてこうなったって?
「そう・・・ですか・・。そう・・・だよな・・・。」
「・・・ああもう!そんなにしんみりしない!気持ち切り替えて!」
「いでぇっ!?で、デコピン痛ぁぁ・・・!何だ今の殺人的な威力ぅぅ・・・!」
「あ、やべっ!やっちまった!ステータスに大きな差があること忘れてたや!てへっ!」
何なんだ本当にもう・・・!あっさり死にましたって言われるわデコピンめっちゃ痛いわ
踏んだり蹴ったりだ!・・・いっそのこと全部・・・
「はーいストップ!それ以上は私が見逃さないよ!魔王のスキルに呑まれない!」
いきなりラファエルにハグされた。何だこの女。ってあれ?・・・もにゅ。
・・・もにゅ!?・・・え!?もにゅって!?ちょっ!最高!じゃなくて!息が!
きつっ!!離せえええ!離せええええ痴女!巨乳お化けめ!
「や、止めて痛い!胸握ってる手が洒落にならないぐらい力入ってるから!
もげる!シュークリームみたいにぐしゃっっ!!ってなる!」
そうかそうか。何となくあんたの正体が絞れてきたのでちょット意地悪シヨウ・・・!
「いだだだだだ!爪食い込んだ!魔王要素入ってない!?今魔王要素入ってるよね!?」
あ、やば・・・意識が・・・苦しい・・・。
「あり?力が緩んで・・・ってうわあああ!!しっかりして!!おお、魔王よ
こんなことで死んでしまっては情けないぞぉぉ・・・。えぐっ。」
で、こうなるのだ。この人にはシリアスが似合わないってことがよーく分かった。
全く、どうしてこうなった。・・・これから俺どうなるんだろうな。
どうせここにいられるのは長くないだろうし。聞いておいた方が良いだろう。
「あの、一つ聞いてもいいですか。」
「良いよ。好きに聞いて。」
いつの間にか毛布が掛けられて後ろから抱きつかれている。・・・胸がすごい
当たってる。質問させる気あんのか。思春期男子に一番やっちゃいけないだろこれ!
「俺、これからどうなるんですか。一生ここにいるんですか。」
「・・・ずっとは無理だね。本当は一緒にいたいけど・・・。」
僅かに抱きしめられる力が強くなる。声が少し震える。・・・外見が変わっても
性格までは変わらないんだ。・・・あいつらしいな。
「貴方の未来は決して楽な道では無い。だけど歩き続けなければいけない。
歩きたくなくても周りが無理をさせて歩かせる。そうして満身創痍になって辿り着く果てが
救いのない地獄かもしれない。誰にも理解されず、非業の死を遂げるかもしれない。
でも!貴方が為す行いによって救われる人はいる!存在によって助かる人はいるの!
だからっっ・・・お願い・・・!今だけ・・・一緒にいさせて・・・!もう未来の
貴方は今の貴方とは違うから・・・!」
一層握る力が強まる。ここまで聞いたらもう誰なのかバレバレだ。
というか間接的に恐ろしい将来を聞かせていることに気付いて欲しい。
まあ・・・一芝居打ってみますか。演技とか苦手だし顔に出やすいけどな俺!
「・・・きっと未来の俺は普通の道は歩めないんでしょうね。だけど、それが
自分が後悔しない道だったのならそれで良いんです。起きてしまった事を後から
変えようとしてもきっと上手くいかないと俺は思うんです。だから・・・もう
いい加減前を向こうぜ、喜美。未来で何があったかは知らない。聞きたいとは
思わない。でも、今も未来もない。俺は俺だよ。」
「・・・。・・・少し気が楽になったよ。ありがとう。やさしいね今も昔も。」
「気にすんな、ところで俺これから何をすればいいの?」
「えーっとね・・・その・・・冥府まで行ってきて生き返るついでに冥王さまに
セクハ・・・お話に行こうかな・・・なんて。」
「・・・あのさ、言いたいことは沢山あるが一言言わせてくれ。俺の感動を返せ!」
ウロボロス「あのさ、我の出番何処?」
ラント「私の出番も何処ですか。ボコられて終わりとか嫌ですよ。」
すまんな、この竜は啼くシリーズ、ウロボロスサイドとラントサイドと影人サイドと
あと、三つか四つぐらい出るからかなり長くなるんだ。だが私は謝らない。
ところで、喜美(現在)を精神崩壊させるか否かで迷ってるんだけどどっちが良い?
2人『この鬼畜め!!』
ありがとう、最高の褒め言葉だ。あ、今新作の執筆とこの作品の改稿作業と
あと、勉強でかなり遅れますがゆっくりお待ち頂けると幸いです。次回は・・・
多分、別のサイドから話が進むと思います。




