我が家を確認
大声出して気持ちをすっきりした咲希はくるりと後ろを振り返り、ここに来てずっと寝泊りしている小屋を改めて眺めた。
小屋と言っても日本で言うログハウスの作りで、なかなかしっかりしている。
でも、一家族が住むような広さはなく、こじんまりした造りは一人暮らしに適した大きさだ。
さっきの神もどきはここで好きなように生きろ、と言った。
ならばこの建物も自分の好きなようにしてもいいと解釈する。
最初にここに入った時見つけたのは、埃の積り具合で最近使われていないとはいえ、誰かが生活をしていたと明らかに分かる生活用品の充実さ。
持ち主に迷惑がかからないよう家の中を必要最小限に使用していたが、これからの生活のため家の中の調べることから始めることにした。
玄関の扉を開けるとすぐリビングダイニングになり、めったにお目にかかれない暖炉が目に入る。
その近くには座り心地の良さそうな一人用ソファ。
視線を変えると台所ではないキッチンと呼ぶのにふさわしい設備がある。
脇には保存食品がずらりと並び、咲希もこれのおかげで飢えずにすんでいる。
保存瓶の一つ一つに丁寧に日付と名前が書いてある。
自分が今まで見たことない文字で。
読めなかったら、問題はなかった。
自分が知っている唯一の外国語の英語でないならちんぷんかんぶんのはずが、ここにあるラベルが読めてしまう。
この文字を見る度にここはどこなのか、地球じゃないのか考えてしまう。
新しい発見がなかったので、別の部屋に移動してみる、奥の扉の向こうにある寝室だ。
最初の晩からベッドの埃っぽさが気になっていた。
今日は幸い快晴で、お日様に当てたらふかふかになるだろう。
居心地良くする一歩として、布団干しをすることにした。
勢いよく布団をはがすと奥の棚にぶつかり、ばさばさと落ちる音がする。
窓を開け、布団を干した後、何が落ちたか見に行く。
何冊か積み重なったノートが数冊落ちているの見えて、拾い上げ表紙を読み上げる。
「レシピ日記…?」
「お料理好きなのかな?」
中をパラパラと流し読みをして、わかったのはただの料理好きではなかったこと。
料理に限らず、薬、道具、はては生き物のレシピまで書き付けてある。
ホムンクルスなんて単語を見た時、脳裏に浮かぶのはただ一つ。
「錬金術ってことないよね、まさか…」
ここの住人が創作好きなおちゃめな人でありますように、と祈りながらじっくりすみからすみまで読む決意をした咲希でした。