傲慢が招く犠牲
人は油断した際に何らかの災いが訪れる。傲慢は視野を狭くし、犠牲を招く。
軍師はそう考えた。
だから軍師は常に油断せず、清廉潔白な人間であり続けた。そのせいで薄毛が進行し、髪をすべて剃ったらしいが、それは目標達成のための致し方ない犠牲であると軍師は結論付ける。
「全軍突撃」
背水の陣を引き、死力を尽くさせる人物が清廉潔白であるかの証明が可能そうだが、それはいいだろう。雄叫びを上げて敵に突っ込む歩兵たちは皆士気が高いようだ。表示されるステータスが輝いている。
「敵の大将を狙え!」
一騎打ちという選択肢はないようだ。実に卑屈である。卑しい人間だとしか思えない。守銭奴などではないことが、唯一の救いだろうか。
そして力のなさそうな平凡顔の少年が対象を討ち取った。
「WIN」
テレビ一面に表示された勝利を告げる文字。同時にファンファーレが響き、コントローラーを握る少年の気分を盛り上げる。
「はー。この軍師いっつも変な行動するよな」
そんなつぶやきが少年の口から漏れる。軍師は製作者のお気に入りであり、特別なAIを使っているため変な動きをする、というのはプレイヤー皆知っているのだが、その中でも少年の操作する軍勢の軍師はさらに一味違った。性格は清廉潔白に設定してあるのに、言葉に出すのを憚られるほどの策を立てるだとか。
この後少年は異世界に召喚されたりするのだが、それは蛇足だろう。
短すぎました。
蛇足
異世界に召喚された少年は、軍師(女体化)と共に戦乱の世を駆け抜ける
連載化未定