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最果てのディスペア  作者: しろ
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第一章

            ニュー・ハウスメイト

「っ、ぁ――」

目覚めは最悪だった。

視界が歪み、頭が割れるように痛く吐き気がする。酒を飲んだことはないが、

きっと二日酔いとはこれに近い状態なのではないかと思う。

「ふぁぁ~」

体を伸ばすと同時に口から大きなあくびがこぼれる。

徐々に意識が覚醒していくさなか自分が次に何をするかを考え、行動を始める。

ベットから起き上がり部屋の姿見で今の自分の姿を確認し、縦横無尽に跳ね上がる寝癖にため息を漏らす。

「はぁ、昨日手入れしておけばよかったなぁ」

昨晩の行動を多少後悔しながら、寝癖を直すために洗面所へ向かうため廊下に出る。

すると、胸元に飼い猫のシロが飛び乗ってきた、主が起きたことに気付き食事の催促でもしに来たといったところだろう。飛び乗り方からしてかなり空腹であることが、理解できたため素早く胸元から下し、素早く階段へ向かう。

階段を下りて洗面所のドアノブに手をかけようとすると、中から人が出てきた。その正体は、―――見知らぬ少女だった。

「ッ―――?!」

碧はその少女を見た瞬間息を詰まらせた。

理由は彼女の外見にあった。

見る者全てに妬心を抱かせるほどの、整った容姿。

緋色に輝く紅玉のような双瞳。

絹のように光で輝く銀髪。

人工物ではないかと疑問視するくらい、非の打ちどころのないスタイルの良い身体。

一度その姿を見たら忘れることは決してないと確信できるほどその少女は美しかった。

だが、碧が息を詰まらせた理由は、少女の体を直視できない現状にあった。

その少女は、―――裸だった。

「ぇ?!・・ぇえっと?・・・と、とりあえず、かくして!!」

碧は、紅葉のように顔を赤らめながら動揺を隠せず慌てふためいた。

少女は目線を碧から自分の体に落とすと碧ほどではないが顔を赤らめ

「ごっ、ごめんなさい」

と、碧に告げタオルを体に巻き付け始めた。

碧は、自分の目を手のひらで覆いながら口を開いた

「き、きみは、誰?何で僕の家にいるの?」

動揺した口調でそう言うと体を隠し終えた少女が気まずそうに話し始めた。

「ぇーっとですね?私は貴女のお義父さん、彰さんに言われて今日からお世話になる者です。

この様なはしたない格好で申し訳ありませんが、これからよろしくお願いします」

丁寧な口調でそう告げ終えると軽くお辞儀をしてきた。

「えっ?!き、きみ義父さんの事知ってるの?!」

「はい、私の母の兄ですので・・・そう考えると私は貴女の従妹ですね!」

驚愕に顔を染める碧に、嬉しそうに従妹だと言い張る少女。だがそこで、少女はとても困った表情を浮かべ始め質問をしてきた。

「それにしてもいくら裸で見知らぬ人間が出てきたとはいえ、女の子同士なのに驚きすぎでは?」

「い、いや!僕はその・・・」

碧は、そこで自分は今、人生の大きな選択をしなければならないことに気が付いた。

(まてよ、この子はいま女の子同士なのだからと、主張していた。確かに初対面だからといって、女性同士

なら裸体を偶然に見てしまっても、さほど問題にはなりえない。だからといってこのまま「僕は女です」

と、発言した場合僕は、彼女に嘘をついてしまったことになる。だからといって事実を言えば、僕の体は、十中八九Fly awayすることになる。万が一違う結果になろうとも幻滅されるのは確定だし。逃げる、襲う、裸体についての感想を言うなどetc..の最低の行動もあるけど・・・)

碧の脳内で、数々の選択肢が考え出されていたが、判断を下すほどの時間をくれるほど現実は甘くなかった。

「あのぉ?」

「は、はい!」

「何か聞かれてまずいことでもありましたか?」

「い、いや、そんなことはないよ!言われた通り女の子同士なのに驚きすぎてたねー ま、まぁこれから宜しくね!」

(ゃ、やっちまったぁぁぁ!!どうして女の子同士なんて嘘ついちまったんだよさっきの話からしてこれから一緒に住むんだろ・・・というよりなんでこの子が家に住むの?まずそこだよ!!あーまじで今後ばれたら殺されるよぉぉぉ!!)

と、脳内一人ツッコミをかましている間もなく

「はいっ!よろしくお願いします!」

と、元気に、にこやかに返されてしまった。

「はっ、ははっ、」

碧はどうしていいのか分からずに、下手な笑みを浮かべ、現実はいつも意味が分からないと、理解した。

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