復讐or襲撃
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野営地は街道から少しだけ奥に行ったところにある森の中にあった。もう少し降りたところに川が流れていて、そこで人や馬の飲水を確保できるようになっている。多くの人が利用したであろう野営地は、自然に中央に薪を燃やすエリアが作られ、その周囲を囲うように平たく土がむき出しになった土地があった。
俺たちが野営地に着いた時には他の人は誰もいなかったが、太陽が森の木に隠れる頃、新たに二組の旅人がやってきた。一組は貴族とその護衛の四名、もう一組は夫婦の行商人だとそれぞれ名乗っていた。そして同じ野営地にいるということで軽く自己紹介となった。
「私はあの方の護衛を請け負っているオイリーだ。お忍びの旅であるから名乗りは勘弁してくれ」
「あっしは見ての通りのしがない行商人、ソンドっていいますわ。クスリの販売しとるからいつでも言ってくだせえ、安くするで。隣にいるのは妻のケイリー、あっしより腕が立つんで、いざという時には頼りにしてくだせ」
モンドも同じように挨拶をした後、各団体が少し離れた距離を保ちながら休憩を始めた。見ず知らずの旅人が同じ野営地に集う事はよくあるが、往々にして相手が盗賊という時もあるため、護衛の人達は薄い緊張感を持ちながらの休憩となっている。
一方、まったく見知らぬ業種やお客予備軍とも知り合えるため、護衛される商人は積極的に会話を行っているが、護衛する方は気が気ではなかった。
「あれ?」
「どうしたんです、ソーイチローさん」
モンドは意識を商人のキンタナに向けつつ問いかけてきた。
「探査魔法に人影が写ったんですよ。北東60m先の木の上」
「その距離と場所だとクロスボウかな?北東だと…キンタナさんの定位置は射線通っていませんね」
「ですね。というか木の影に隠れて野営地全体の視界は遮られてますね。何が目的なんだろ?」
「撤退の支援目的、ですかね」
モンドは立てた予測を話していた。
「ああ、なるほど。それで対応はどうします?今のところ相手の周囲に人は居ないようですが」
「放置しましょう。こう言ってはなんですが、この三組の中では私達が一番襲われにくいですね。キンタナさんの積み荷を確認しましたが、香辛料と塩しかなく特別な品はありません。片やお忍び貴族、片や怪しげな薬売り、比較にもならないでしょう。あと貴族の護衛の一人だった場合、我々が先に攻撃してしまえば面倒なことになります」
「巻き込まれる前に潰すという考えはありませんか?」
「他者の争いに顔を突っ込んで、余計な怪我を負う必要はありません。ですが相手が増えてきたら教えてください」
モンドは護衛隊のリーダーとして、とりあえず様子見という結論を出した。警戒度を上げながら、それぞれ夕食や寝床の用意を始める。そうして日も地平線の向こうに沈み、本格的な夜がやってきた。昼は晴れていたが、夕方から曇りとなっているため、月明かりが出たり陰ったりを繰り返し、確実にある光源は野営地の中央にある焚き火だけだった。
どこか緊張をはらみながら焚き火を囲い、話す言葉もどこか上の空だった。その代わりというか、周囲にいる虫達は存分に声を上げ、高らかに自身の存在を歌い上げていた。しかし、その歌も侵入者の存在により、中断させられることとなった。
「侵入者、きます」
「全員、警戒しろ!」
俺の声が切っ掛けとなり各々が動き出す。索敵係の鳥人兄妹か俺からの合図があった場合、各々担当の商人を背にしながら守るよう事前に決めてあった。商会の長たるキンタナには俺と兄のモンドが、御者の三人にはティアラ、コロネ、ルーナがマンツーマンで配置につく。ちなみに護衛されている御者達もおっかなびっくりに腰の小剣を抜いて構えているが、いずれも自分より年下の女の子に守ってもらっている現状に複雑な表情を浮かべていた。
「な、何事だ?!」
俺たちの突然の行動に、貴族の護衛達は狼狽した声を上げた。一方、薬売りの行商人ソンドはその妻と共に無言で剣を抜き放ち、その切っ先を貴族たちに向けた。
「ち、そこの商人達は随分と勘がいいわな。あっしたちはそこの貴族しか目に無いんで、おとなしくしててや。あっし達は復讐のためにおるんでな」
護衛達も剣を抜き、薬売りのソンドとその妻と対峙する。しかし両者共何かを待っているかのように、どちらから仕掛けることもせず、ジリジリと間合いを詰めたり離したりを繰り返しているだけだった。次第にソンド達が徐々に貴族とその護衛達を押しこみ、段々と貴族が下がり俺たちのほうに近づいてきた。最初は焚き火を中心に120度間隔で各団体はいたのだが、今はちょうど焚き火の反対に薬売りのソンド達が、貴族達は俺と接するほどまで近づいてきている。
剣戟も無く後ろに下がる貴族たちを訝しげていたが、俺が察知した侵入者が姿を見せた。彼らは3人組で簡素な皮鎧と長剣を身にまとい手には投げナイフを持ちながら、薬売りのソンドの後ろに着いた。
「兄貴、到着しましたぜ」
「よし、やれ!!」
「「「「「おう!!!!」」」」」
ソンドが合図を出すと、彼らは野太い声を返し今まで動けなかった分の鬱憤を払うかのように一気に動き出した。ソンド達は投げ針を投擲し、貴族たちは抜いていた剣で一足飛びに斬りかかる。
ただ予想と違ったのは、ソンド達と貴族の護衛の攻撃の矛先が、俺達ということだった。
「な?!貴様ら!!貴族の護衛というのは嘘だったのか!」
驚きの声を上げたモンドだったが、辛うじて貴族の護衛の一撃を防いでいた。だがモンドに向かった敵は一人だけで…残りの余剰人員はほとんど俺のほうに来ていた。
「『楔の盾』…こいつら全員盗賊団か?それにしてもなんで俺の方ばっか来るんだ…」
防御魔法を展開し投擲武器や切りかかってくる貴族の護衛達の攻撃を跳ね返しながら、そんなつぶやきを漏らしたが残念ながら敵は答えてくれなかった。
「ちぃぃ!だまし討も駄目か!ソンド、こいつらの仲間を牽制しとけ、お前らはこいつが魔力切れるまで攻撃続けろ!!」
「だまし討ち”も”?」
彼らの言い方に若干引っ掛かりを覚えながら、俺は『ショットガン』を出して対抗しようとするが、目前で左右に動かれ中々対応しづらい上、射線にこちらの護衛対象を微妙に入れてきたりと攻めきれなかった。まあティアラ達や護衛対象者に敵が行かないからいいか、なんて思っていのだが、
「兄貴!ソーイチロー!…くっ!」
ルーナがモンドや俺の方に救援しようとしているが、その動きを阻害するように襲撃者達が投げ針を投げまくっていた。一方、ティアラとコロネは護衛対象者の前から動こうとはせず防御に専念していた。
「ちょっとあんた達!何とかならないの?!」
前に出ようとして邪魔されて…を繰り返しているルーナが、動こうとしないティアラ達に苛立ち紛れに言葉をぶつけているが、それでも尚動こうとしないため一層苛立ちを募らせていた。
「おにいちゃんに下手に近づかないほうがいいよ?」
「邪魔立てすることになりますので」
「そんなわけ無いでしょ!魔法使いがずっと防御魔法を使い続けられる訳が…何で防御魔法が消えてないの?」
「おい、早く防御魔法を叩き割れ!」
「割れないんだよ!てめぇも手伝え、ちきしょう!」
未だ『楔の盾』を叩き続けている襲撃者の罵声を聞いて唖然とするルーナと、それとは反対にさもありなんと頷くティアラとコロネ。
「おにいちゃんに防御魔法を使われると、どうにもならないんだよねぇ…」
日々の鍛錬で俺が対戦相手を努める時のことを思い出しているのか、コロネは若干遠い目をしていた。
「それほどなの…?」
「蹴っても突いても掴みにいっても弾かれるし、罠仕掛けても落とし穴は踏み潰されるし、頭上に丸太落としても弾かれるし、括り罠も潰されたし、毒煙を撒いても駄目だったし…」
「あんた、かわいい顔してえげつないわね」
「それくらいおにいちゃんの魔法は硬いんだよ」
「ソーイチローって一体どんな魔法使いなのよ。けど、だからと言ってこのまま助けない訳には…」
そんな女の子達の会話を後ろ耳で聞きつつ、ショットガンが疲れの見え始めた盗賊を捉えることに成功した。モロに被弾した盗賊はもんどり打って倒れピクリとも動かなくなっている。停滞していた戦局が動いて、少なくなった盗賊に戦力を集中出来るかと思った矢先、同じことを敵側も敏感に感じ取ったようですぐに撤退命令を出していた。
「ちっ、撤退だ!」
号令と共に敵の一人が魔法で煙幕を出しながら撤退を始めた。その引き際は干潟にいるカニのように鮮やかで、今まで戦っていた面々がポカンと口を開けるほどだった。しかしすぐに護衛隊のリーダーであるモンドが、被害状況の確認を始めた。
「こちらの被害は?」
「幌に穴が開いたくらいかな」
「ふう、無事に凌いだか…では」
少し緊張を解いた仲間にモンドが次の指示を出そうとした時、肌を撫でるような探査魔法がどこからか発せられた。
「撤退時に敵の探査魔法?」
そう呟いた瞬間、闇夜を切り裂く一本のクロスボウの矢が向かって飛来した。敵は視界が通っていない場所でも探査魔法で俺たちの位置を特定し、不意を突く一撃を放ってきたのだ。緊張を切らしたタイミングといい、視界が開けていない場所からの狙撃といい、並大抵の冒険者なら被弾する一撃だろう。しかし、ティアラやコロネは鬼教官であるセフィリアやミストさんから教えを受け、闇夜の不意打ちなど骨が折れるほど訓練を積んでいる。
実際、ティアラ達はすぐに矢の方向を警戒し防御の姿勢を取っていて、彼女たちのほうは心配いらないだろう。モンドは狙撃に気づいていないが、俺の背後であるため『楔の盾』で払い落とすから問題は無い。そしてルーナであるが、彼女もどうしてか狙撃に気づき矢の方向に顔を向けていた。
ルーナが気づいているなら大丈夫だと安心し、俺は『楔の盾』に魔力を注ぎ込み迎撃体制を取る。弾道はどうやら俺狙いらしく、一直線に飛んできていた。俺狙いなら問題ないと動かずにいると、ルーナが予想外の行動に出たのだ。
「ソーイチロー!危ない!」
ルーナはそう叫びながら一歩前に出て、抜身の細剣でクロスボウの矢を切り払い俺を守ってくれたのだ。切り払われた矢はまるで砂細工のように砕け辺りに飛び散っていた。
「けほっ…なにこれ?目に入っちゃった…」
「ど、どうした?!」
「敵の狙撃です。こちらも反撃しますからルーナはちょっと動いて」
遠距離攻撃用の描画魔法『遼遠の辿着』を起動し、迎撃体制に入る。長さ1.5mほどの狙撃銃を膝撃ちの姿勢で構えた。
「距離62m、高低差プラス4m、方角北東、微風…よし。見えない相手を撃てるのはお前だけじゃないぜ」
敵影を直接視認できていはいないが、こちらも探査魔法『篠突く雨の輪』で敵影を捉えているため狙撃には問題無かった。敵も二射目に入るのか再度探査魔法を使ってきたが…少し遅い。軽い引き金を引くと込められていた魔力が爆発し、直径13mmの銃弾がクロスボウとは比較にならないほど直線的な弾道を描き飛ぶ。そしてクロスボウを構えていた敵に狙い違わず着弾し、木上から吹き飛ばす事に成功する。
「キャッ!何この大きな音?!」
「とと…やっぱ姿勢が不安定だったか。あ、すまんね。警告するの忘れてた」
伏せ撃ちはどうかと思い、膝撃ちをしたのだが、反動で後ろに転がりそうになってしまった。事前の警告を忘れていたことを謝罪し、護衛対象者へ振り返ると爆音に驚いたのか後ろにひっくり返っていた。まったく、女性陣のほうが肝っ玉が大きいってどういうことだ。
「ソーイチロー君、敵の様子はどうだい?」
「敵の狙撃手は排除、他の敵は…一目散に逃げていますね。周囲にも人間らしき影は見当たりません。それにしても…」
襲撃者達が「だまし打ち”も”」と言っていたのが気になる。
「モンドさん、ちょっと奴らを追撃しに行ってもいいですか?」
「…駄目だ。僕達の役目は商人の護衛であって敵の殲滅じゃない」
「でもあいつらが「だまし討も」って話してたのが気になるんですよ。ひょっとしたらまた襲撃があるのかも…」
「…」
モンドも彼らの話を聞いたのか苦い表情を浮かべていた。そうは言ってもモンドが言う事も正論ではあるが、もし同程度の戦力が襲撃してくるならティアラとコロネが居るだけで撃退できるのも事実。しかしそれを証明する時間が無い。なら…
「じゃあちょっとトイレ行って来ていいですか?でっかい方を1時間ほど」
「あ、あなた何いきなり言ってるのよ?!」
話を聞いていたルーナは内容を額面通りに受け取ったのか、顔を真っ赤にしながら一歩退いた。そしてモンドは俺が何をしようとしてるのか気付き、少し考えた後、
「…絶対に無理するな。敵を遠くに追い払うだけでも効果あるから」
「分かりました。ではちょっと行って来ます」
そう言って俺は追撃を始めた。
「さてと、敵影はまだ捉えているが…随分と足が早いな。もう1km以上離されてる。ここは一つ、あれ使うか」
敵の通った道ではなく、俺はそこから外れ上空が開けている川べりに向かった。川べりに着いた俺は周囲を見渡し人も動物も居ないことを確認した。
「よし、ここでいいな。多少でこぼこしてるが…なんとかなるな。『アルバトロス、九八』」
描画魔法で呼び出したのは、セフィリアの庵付近でワイバーンどもに撃墜されたことがある滑空機。もし同じようにワイバーンに襲われたら撃墜されてしまうが、さすがに魔獣の森から遠い場所だけあってワイバーンは居ないだろう。
そしてしばらく待つと描画魔法で作られた片翼12m、全長7mの滑空機が鎮座した。この機体は静音性に優れている上、今回は色を黒くしてあるため、夜である今ならまず気付かれる事はないとはずだ。
「っと、斜めだと乗りにくいな…よし、キャノピー閉鎖、点検プログラム起動…オールグリーン、じゃないけどいいや。『アルバトロス』離陸開始」
主翼下のスラスターを起動させ、ゆっくりと上昇を始める。スラスターからの風で河原の小石は飛び、水面が暴風に晒されているように波立っている。離陸時の騒音は結構大きいが、気にせず出力を上げ高度を稼ぎつつ、後部にある魔力タービンエンジンに火を入れる。推力を段々と上げ垂直方向から水平方向の移動へと切り替えていった。ちなみに点検でオールグリーンにならなかった箇所は機体の水平だ。
「敵は…こいつら逃げ足速いな、もう索敵範囲ギリギリだぞ」
ばれないように高度を保ちつつ、上空から襲撃者達の後を着ける。襲撃者達の上空に辿り着き、彼らの足取りに併せてゆっくりと飛行していると、森の開けた場所に陣取り荒くなった息を整えているようだった。再びスラスターを起動しホバリングを開始しながら、適当に作った集音の描画魔法を稼働させる。
「これであいつらの声を拾えるかな…?」
向きを合わせて耳を澄ますと、思ったよりクリアな声を拾う事ができた。
「──追撃は…──」
「────ですぜ、頭」
「─はやっぱ死んだ?」
「頭、さすがに上半身吹っ飛ばされちゃあ生きてないでしょ」
「ちっ、あの矢だけでも回収したかったのよね…」
「あの場に留まったら訳わからん魔法で俺たちもやばかったぜ?」
「わかってるわよ!そんなこと!また作戦練り直しじゃない…」
あれ?こいつらの頭ってソンドって薬売りの妻とか言ってた女の人か。名前忘れたけど。
「やっぱソーイチローの復讐は諦めないんで?頭」
「当たり前じゃない!”赤い曲剣”がたったひとりの魔法使いに負けたなんて広まったら足元見られるのよ!!」
「頭、もうちょっと声を抑えて…」
「わかってるわよ!」
”赤い曲剣”ってナルニール商会を襲撃してきた奴らみたいだな。今回の襲撃は俺に対する報復と、商隊の荷物を狙ったものだったってことか…随分とフットワークが軽いというかなんというか。
「それで頭、これからどうするんです?随分と仲間減っちまいましたが…」
「面子はまた適当な盗賊を襲って見込みある奴を引き入れるわよ。で、次だけどソーイチローに女がいたでしょ?」
「ティアラとコロネとか言ってやしたね。二人共とんでもない美少女ですぜ」
「フィールの街中で拉致するのよ。道具あるでしょ?」
「へい、一式ありますぜ」
「二人を人質にして、ソーイチローの前で徹底的に嬲りなさい。私達が受けた屈辱を何倍にもして返すのよ」
「ひゅぅ!頭、話分かる!」
「ぐふふ…ボロ屑になるほどやるぜ」
「今度は俺の番からって忘れんなよ!」
「その女ども、息さえしてればいいんだろ?じゃあ今度は鉄杭を──」
「──ばーか、それは俺たちの後に───」
目の前がスッと暗くなった。
「『100kg爆弾』、よーい」
胴体下に無骨な一発の爆弾の形成が始まった。対ワイバーンの研究の一環で作った試作品ではあるが、その破壊力は十分実用に耐えうる。ただ誘導装置の類は一切無いため、落下に任せるだけのシンプルな構造ではあるが、一応高度計くらいは内蔵している。大きさが大きさであるため瞬時の形成は不可能だが、それでも数秒ののち呼び出しが完了した。
「座標確認、敵直上」
水平爆撃や急降下爆撃を行えるほどの腕も機体も無いため、俺はスラスターの出力を上げつつ、ゆっくりと襲撃者達の真上で停止した。起動しっぱなしの集音器からは下卑た声が変わらず聞こえていた。
「──なあ、さっきから変な音が聞こえないか?」
「風の音じゃないのか?」
「それにしちゃあ変な音なんだけどよ…どっから聞こえてるんだ?」
「投下」
スイッチの安全カバーを開け、レバーを倒すと『100kg爆弾』がリリースされた。機体が軽くなった事で一気に上昇し、その勢いのまま爆発の範囲から離れるためにエンジンに火を灯し現場から急いで離脱を開始した。
「──なんか今度はヒュルヒュルって音が──」
「上?」
襲撃者達が暗い空を見上げた途端、ほぼ狙い通りに落下した爆弾が彼らの上空で大爆発を起こした。急いで離脱したつもりだったが衝撃波で機体が大いに揺さぶられ、少しの間コントロールを失うことになった。次いで爆発音が轟き、大して防音機能もないコックピットは大爆音を十分に堪能させてくれることとなった。
なんとか機体を立て直し着弾地点を見下ろすと、高温に晒された木立に火が着き夜空を明るく照らし、熱がこもる噴煙が俺がいる高さまで到達していた。一通り煙が落ち着くのを待ち地上を視認すると、枯れ草に火が灯りチラチラと周りを明るくしていた。細い樹木は放射状になぎ倒され、動くものは一切見当たらず、襲撃者達が持っていた武器が炎の灯りを反射し、中身の入った防具が周囲に散らばっているようだった。
「人影は…無いな。戻ろう」
今回の襲撃に”赤い曲剣”が全員参加していたという保証は無いが、2度の襲撃を全て退けた挙句に、今回はほぼ壊滅に近い打撃を与えたことだけは確かだろう。俺も奴らに掛り切りになるわけにはいかないからこれ以上追うことは無いが、再度顔を見せた時には地の果てまで追い詰め、俺の大事な人に手を出そうとしたことを後悔させてやる。そんな決意を抱きつつ、俺は帰路についた。
「ただいま」
「おかえりなさいませ」
「おかえり~」
「…」
「おかえり!」
夜営場所に戻ると笑顔を浮かべた女性陣と引きつった顔をしているモンド、一箇所に固まってガクガクと震えている護衛対象者達の姿が見えた。
「なんだこの状況は」
代表してモンドが教えてくれた。
「東のほうで爆発音と共に突然空が明るくなっただろ。その明るくなった空を巨大な黒い鳥が飛んでいたとルーナが教えてくれてな。それで商人たちは次は俺たちが襲われるんじゃないかと怯えているんだ」
「ほ、ほ~…そんなことがあったんですね」
俺を見つめるモンドの視線をツイと外し、少し冷や汗を垂らしながら答えた。夜だから『アルバトロス』は発見されないと思っていたが、鳥人の視力は侮れないもののようだった。
「それでソーイチロー、その爆発について何か知らないか?」
「さ~…よくわかりません。ただ、悪事を積み重ねてきた奴らに、悪因悪果の理があったってことじゃないですかね?」
モンドは半眼で俺を見た後、少し目を瞑り考え、最後には苦笑いを浮かべていた。しかしモンドをやり過ごしたと思ったら、今度はルーナが絡んできた。
「ねぇねぇ、ソーイチロー、あの黒い鳥見た!?すっごいんだよ!羽ばたかずにスーっと空を滑るように飛んでてね、あんな鳥見たこと無い!!それにすっごく綺麗でね…」
「お、おう」
若干引いている俺を気にせず、結局ルーナが寝入るまでその興奮が落ち着くことは無かった。
その後は魔獣の襲撃すらなく、極々順調にフィールへの距離を縮めていった。肩を並べ共に闘った後、今度は一転して安全な行程になると結構手持ち無沙汰になるもので、自然に女性陣の会話に華が咲くようになっていった。すると当たり前にティアラとコロネ、ルーナ達がとても仲良くなっていった。
そんな彼女達が俺に聞き取れない会話をしていると、何故か真っ赤な顔をしたルーナが俺にケリを入れに来たことが何度かあったが…何だったのだろうか?
戦闘描写が解りにくく申し訳ありません。




