定番
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ゆっくりと意識が覚醒してくると、隣にセフィリアの息遣いを感じられた。腕枕をしているせいで若干腕が痺れているが、こんな痺れ方ならいつでも歓迎できる。
「ん…おはよう、セフィリア」
「んむ、おはよう。そして貴様は何をしている?」
「神秘の探求を」
「ほう、魔法使いらしいなってやかましいわ!」
「それで…魔力は回復したか?」
「うむ、あとで測定するが、回復した感じがあるの。またしばらく毎晩情けを貰い受けるから頼むぞ」
「いくらでも。ところで妊娠とかしたらどうする?俺も金を稼ぐ手段とか覚えたいところだが」
「あと100年は遊んでいられる金はあるぞ。と言っても、さすがに心苦しいか。妊娠じゃが、異種族間だと相当確率が低いのと、お主の魔力がどう影響してくるか分からんが、まあどう考えても確率が上がる方向にはならんから、あまり心配しておらん」
「あれ?異種族って?俺って人族じゃないの?」
「このような精を出せるのが普通の人族なわけ無かろうに。かといって何族かは分からんが」
「ということは、子供欲しいって思ったときは…」
「相当仕込まないと無理だと思うぞ」
「うわー…当面の心配は無いけど当分先の心配はあるんだ…」
「うむ、その通りじゃ。あと、お主の金を稼ぐ手段じゃが、手っ取り早いのが冒険者家業で次点が魔法ギルドに加盟して研究成果を売り渡すことかの。他はどこかの国に仕える…のは赤級だとまず無理か」
「おすすめってある?」
「冒険者じゃの。多少制約はあるが基本的に自由だし、結果を出せば文句も言われんかったわ。魔法ギルドは…派閥やらしがらみばかりでロクな思い出もないわい」
「んじゃ冒険者かなぁ」
「そうするとお主に色々と仕込まんといかんな。お主は攻撃系の描画魔法は何か用意してあるか?」
「なんも。『カ○ピス生成器』とTENGAの環境を整えるので精一杯だったよ」
本当にこの2つは難産な描画魔法だった。
「それを利用してるワシが言うのもなんだが、もうちょっとまともな事をしておけよ…」
「やり始めたら止まらなくてな。まあ攻撃系も何か作っておくよ。あと冒険者って、ギルドに入って獣や盗賊類と戦ったり、薬草とか取ってくるイメージあるけどどんなん?」
「概ねその通りじゃ。よく知ってたな。行政や市民からの依頼で動くのも多いぞ。魔獣との戦闘や力がいる日雇い仕事を集めたギルドという感じじゃな」
テンプレ通りだったようだ。
「魔獣と獣と何か違うの?」
「魔獣は魔力を糧にする生物じゃな。獣と言いつつ魚や樹木型の魔獣もおるが。魔獣は基本的に魔力を持つものを襲うんじゃが…人族は強さの割に美味しい獲物らしくての。頻繁に襲われるのでその駆除じゃな」
「へ~、軍隊とかが駆除しないのか?」
「訓練がてら駆除することもあるが、主だった役割ではないな。騎士団は対人戦を訓練しておるから治安維持や他国へ牽制するのが主じゃな」
「似たような感じになりそうなんだけどね」
「対人戦は盾と重装備と片手武器で攻撃を耐えるんじゃが、対魔獣戦は軽装備で回避しつつ両手武器で大ダメージを与えるのが多いの。低レベルの魔獣はそうでもないが、中級以上の魔獣になると固かったり当てにくかったりと一癖あるのばかりじゃな。なので戦い方が違うんじゃ」
「騎士団の防具だと魔獣の攻撃は耐えられないのか?」
「ぷちっと潰されて終わりじゃな。攻撃力も足りないしの」
「なるほどねー、じゃあ俺は対魔獣を想定して作るよ。攻撃魔法作ったら評価をお願い。あ、自衛用の魔法ってこの間の魔法戦で使ったやつでいけそう?」
「うむ、評価は任せろ。あの『楔の盾』だったか?頑丈なのは素晴らしいんじゃが、魔獣相手だと展開速度のほうを優先したほうがいいかもしれん」
「じゃあもうちょっと強度下げて展開速度を上げる方向でやってみるよ」
「そのほうがよかろう。お主の新たな描画魔法は楽しみじゃ」
セフィリアはクリスマスのサンタの靴下を眺めるように楽しげな笑みを浮かべていた。
そうして、新たな描画魔法を作る日々が始まった。
俺は対魔獣用の武器として最初に思い浮かんだのは、所謂ショットガンだった。初心者が突撃銃で敵をバッタバッタと倒す…なんていうのは夢すら見る気もしない。
中・近距離で面制圧でき、ショットシェルも多種類あれば多少狙いが逸れようとも当てる事は可能になるだろう。また銃身内に直接シェルを呼び出すので、リロードが不要なのもポイントだ。
ショットガンの口径は20mmの実包が入り、集弾率を可変にするため3種類ほどバレルの長さを設定しておく。ショットシェルの種類は、小型生物対策に直径2mm弱の弾を無数にばら撒くバードショット、鹿サイズの中型生物にパチンコ球程の弾を9発ばら撒くバックショット、熊などの大型生物用に単発且つ最大威力のスラッグショット、敵の装甲を貫通目的で小さなダーツをばら撒くフレシェットショットなどを用意した。
いきなり発砲は怖いので、近くにあった木にくくり付けて試射したところ、とりあえず暴発はしなかったので、セフィリアに評価をお願いしに向かった。
「セフィリアー、魔法が出来たから評価お願い」
「お、できたか。どんな物じゃ?」
「『ショットガン』って描画魔法だな。散弾銃でもいいけど」
「散弾というからには石弾が飛び散る感じかの?」
「そんな感じ。だけど今から撃つのは単包だけどね。じゃああの木に向かって撃つよ。耳塞いでね」
そう言い、『ショットガン』を呼ぶ。すると、多数の魔法陣が浮かび上がり、それぞれが絡みつくようにショットガンの形を形成していく。それが終わると手にはつや消し黒の無骨なショットガンが手元に出現した。そして俺はストックを肩に当て10mほど先にある木の幹に照準を合わせ引き金を引いた。爆音と共にライフリングが刻んである大粒の弾丸が木に命中し、その幹を大きく爆ぜさせた。と、同時に俺は後ろにひっくり返っていた。
「うむ、展開速度も良いし威力も高いの!…で、ソーイチローは何故後ろにひっくり返っているのだ?」
「思ったより反動が酷くて…イタタタ」
「反動は無くせないのか?」
「出来なくはないけど…反作用を抑えるには弾丸に必要な魔力が倍になるし、構造上狙いが付けにくい形にしないとダメなんだ。俺の場合、魔力が倍必要ってことは時間も倍必要になるんで、実践だとどうなんだろう?」
「なるほどの。それなら反動は体で抑えるほうがいいかもしれん。内作用系の魔法で身体強化を使ったらどうだ?最初の頃にお主の体に魔力を流したじゃろ?あの感じで魔力を使いたい筋肉に流すんじゃ」
「あ、なるほど。試してみる」
そう言い、魔力を背筋や腹筋、腕の筋肉に通し強化を施す。少し体が頑丈になった気がしたので、同じように『ショットガン』をぶっ放す。今度はどうだろう、ひっくり返るようなこともなく、体が流れる程度で反動を抑えることができた。
「とと…今度はひっくり返らなかったけど。まだ体が安定しないな」
「身体強化があまり効果的では無いようじゃの。お主の体は…どう見ても貧弱すぎる。魔法だけではなく鍛錬したほうがいいかもしれん」
「あー、ここにきてから全然体を鍛えてなかったな」
日々を振り返ると、ひたすら描画魔法を作ってばかりいたから当然といえば当然の結末であった。これ以降、毎日鍛錬をするようになった。
「じゃあ鍛錬のほうに体力回すんで、夜のほうは控えめに…」
「それはそれ、これはこれじゃ」
セフィリアは小憎たらしいほど綺麗な笑顔で答えてくれた。
お金稼ぎの定番と言えばやっぱり冒険者家業。
魔獣相手に戦うのならやっぱりショットガンですよね。
大型且つ頑丈な獣相手に突撃銃で戦う姿が想像出来ませんでした。
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