コピペ
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セフィリアの解説であった通り、やはり描画魔法は遅い。一々魔法陣を描いているため遅いのは当たり前なのだ。しかし、魔法具は魔石中にある魔法陣を理解せずに魔法が使えた。ということは、魔法陣に魔力が流せる状態でありさえすれば効果は発揮できるということだ。魔法陣を最初から描くんじゃなくて、絵柄として記憶しておいて、それを一気に描くことができないだろうか?所謂コピー&ペーストのようなものだ。
早速試してみる。先ほど使ったそよ風の魔法陣を頭の中で絵柄として思い浮かべ、一気に貼り付ける。
すると時間差も無く魔法陣が起動し、そよ風が吹いた。
「よし、成功だ!」
「お、お主今のはどうやったんじゃ?!」
集中していて気が付かなかったが、セフィリアは戻ってきていた。
「魔法陣を最初から描くんじゃなくて、図柄として記憶していたものを出したんだ。そうすれば速いだろ?」
「いとも簡単に言うのぅ…ワシもやってみるか。絵柄として魔法陣を記憶して…それを出すと…」
ブツブツと小言で言い始め、またセフィリアは虚空に視線を漂わせ、一気に魔法陣を描くことに成功した。ただ発動までは少しタイムラグがあったが。
「できた…これは魔法の歴史が変わるぞ!?」
「そうなのか?だけど複雑な魔法陣ほど記憶するのが大変だし、融通が効かないし、魔法陣を描いてから発動までのタイムラグは無くなってないみたいだから、妨害される欠点も変わってないな」
「まあそうかもしれんが…今まで詠唱魔法をロクに使えない魔法使いが、代わりに描画魔法で代用できるかもしれんのだ。魔法使い人口が一気に増えるかもしれん」
「なるほどなぁ。そうなると描画魔法の課題をもうちょっと減らしたいところだな。他に描画魔法って何かに使われてたりする?」
「あとは…ギルドの印章や戸籍登録証、奴隷紋等じゃな。魔法ギルドにワシも加入しておるから見せよう」
セフィリアは左手の甲をこちらに見せながら魔力を流すと、本の上に杖が2本クロス状で置いてありその周りを蔦で囲んでいるような印章とが浮かび上がってきた。
「これが魔法ギルドの印章じゃな。魔力を流すと相手に見せれるし、印章同士を重ねると相手の情報を読取ることができる。奴隷紋は隠すことができず、常時表示されておる」
「情報って何が読み取れるんだ?」
「氏名やギルドランク、登録地、受託業務の内容などじゃな」
「それって自分で書き換えるのか?」
「普通は受付の者が書き換えるな。自分で書き換えもできるが、偽造を疑われるからやる者はまずおらん。書き込まれた情報と同じ内容をギルド側でも保管しておるから、差があれば面倒くさいことになる」
「なるほど…じゃあその印章をメモ代わりに書き込んだりできない?」
「変わったことを考えるな。おそらく出来るじゃろうが、印章を維持するのに僅かだが魔力を使うんじゃ。わざわざ最大魔力量を減らしてまで、メモに使うことも無かろう?」
俺が今考えていることは、魔法陣を印章として体に記憶できないか?ということだ。どうやら最大魔力量は膨大だし、いくら書き込んでも平気そうだ。もし出来たら、様々な描画魔法を使いこなせるかもしれないからな。やってみる価値はありそうだ。
「そろそろ今日は終いにしよう。明日から4日程度、ワシは買い出しに行ってくるから好きに過ごすといい」
「俺が来たせいか?」
「まあの。じゃが気にすることは無いぞ?今まで停滞していた魔法に変革が起きるかもしれんのじゃ。こんな時を逃す魔法使いなどおらんわ!」
子供が新しい玩具を買ってもらったときのように、目をキラキラさせながらこちらを見ている。100歳を超えている年齢とはとても見えなかった。
セフィリアがそう言うなら気にするのではなく、新しいことをやってみせるのが恩返しになるのだろう。とりあえず自身が思った道を歩んでみると俺は決めた。