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墓王!  作者: 菊次郎
フェーズイン
38/129

優良物件

ご覧頂きありがとうございます。

「ただいま戻りました」


 と宿の女将さんに声を掛け、自分が戻ったことを知らせる。


「おかえり!」


「女将さん、これ御裾分けです」


 と言って残りの蜂の子を全部女将さんに渡すと


「おやなんだい?…こりゃまた美味しそうな蜂の子だね!ありがとよ!」


「それで俺の夕食にも2匹ほど出して欲しいんですが…」


「たった2匹でいいのかい?!分かったよ、そう伝えておくよ!もう夕食を食べるかい?」


「できれば」


「じゃあ席に座って待ってておくれ」


 と言われ座席に座り夕食を待つことにした。実は蜂の子を食べたことがなかったので、少し楽しみでもある。そんな時間を過ごしていると、シルバーが俺の分の夕食を持ってきてくれた。


「おす、シルバー」


「こんばんは、ソーイチロー。はいこれ、夕食。そしてこれが蜂の子の素揚げ、熱いから気をつけてね」


「おう、ありがとう。まずは蜂の子からいくか、初めて食べるんだよな…」


「そうなんだ?素揚げだけど頭は食べられないからそのまま残してね」


「了解」


 言われたとおりに頭だけ残して一口で口の中に入れる。外はカリッとしているが中はトロトロ、生臭いわけでもなく濃い生クリームのような濃厚さとほんのりとした甘みがあり不思議な旨味がある食べ物だった。


「アッチチ、旨いなこれ」


「でしょ?結構癖になるよね。街でも人気あるんだけど、ハトバチの蜂の子なんて中々お目にかかれないんだよ。ソーイチローに感謝だよね!」


「そう言ってくれると取ってきた甲斐があったな。ハトバチの巣の除去は普通は複数人でやるみたいだから、中々蜂の子の御裾分け出来るほど数が揃えにくいせいじゃないかな?」


「だね。僕達もハトバチの巣を退治できるか挑戦したことあったんだけど、無理だったよ」


「そうなんだ?」


「うん。鎧を借りれるときがあってね、やってみたんだ。動けないし暑いし臭いし蜂のターゲットは取れないし転んだら起き上がれないし、もう散々だったよ…」


「まだダルマのほうが優秀だな…」


「だるま?」


「こっちの話だ。俺は魔法使いだからなぁ…パパっとやっちゃって終わりだったな」


「いいなぁ…魔法使いは…」


「羨ましがってないで、あなたも厨房を手伝いなさい!」


 気がつくと横にロンコが鬼の形相で立っていた。なんか会うたびに怒ってる気がするな…


「おす、ロンコ」


「こんばんは、ソーイチローさん。蜂の子ありがとう、みんなで美味しく頂いたわ。そしてこれが私達からのサービスよ」


 ロンコは手に持っていた皿をテーブルに置いた。皿には縦に避けた紫色の瓜?のような物が乗っている。


「これは?」


「アケビよ。本当はこの季節には採れないんだけど、偶に採れるときがあるのよ。ボケアケビって言われてるわ」


「ネーミングがひでえな…。ありがとう、頂くよ」


 裂けている所に力を加え半分に割るとほんのり甘い香りが漂い始めた。外見は紫色だが中は純白の綿が黒い種を包んでいる。そのまま中の白い綿にかぶりつくと、口の中いっぱいに甘さが広がっていった。


「うまっ!季節外れだからそんなに甘さは無いかと思ったけど、これすっごい甘いな」


「でしょ。まあ甘さは強いけど風味は季節物のほうが良いから一長一短なんだけどね」


 本来のアケビは可食部分は殆ど無いのだが、ボケアケビは種が小さく白い綿の部分が結構多かった。種を吐き出し食事を終える。


「ご馳走様でした。美味かったよ」


「どういたしまして」


 そう返事をしたロンコは珍しく俺の前の椅子に座る。いつものロンコは俺に顔を見せには来るが、シルバーを引き取りに来るか皿の片付けくらいなため、同じテーブルに付くことは今まで無かった。


「どうしたロンコ?」


「いえ、大したことではないのよ。ただギルド職員の間でソーイチローのことが話題になってるわよって言いたかっただけ」


「そうなのか?ああそれで思い出した。なんかギルドの印章の書き換えの時、受付嬢が俺の手を両手で包み込むようにしてたんだが、それの意味って…」


「想像の通りよ、あなたに興味ありますってアプローチを掛けられているわね」


「やっぱりそうか」


「男の魔法使いってだけでも目立つのに、その後の活躍ぶりは目を見張るものがあるわ。まさに期待の新人って感じで、今のうちから粉掛けておこうという職員は多いわね」


「むう…」


「あまり嬉しそうじゃないわね?ギルド側も冒険者のやる気を促す意味もあって、受付嬢って美人揃いよ?ためらうってことは故郷に残した彼女でもいるのかしら?」


「うーん…」


「あ、無理して言わなくてもいいわよ。以前、私はギルド職員になりたいって言ったと思うけど、その伝手でソーイチローの事を聞かれているのよ。だから私を使って受付の人達にアプローチすることも出来るし、逆にそれとなく断ることもできるわ」


 ロンコの目は俺に好きになさい、と言っているようだった。別にセフィリアのことは秘密でも何でもないのだが、立ち位置が微妙によくわからないのだ。体が先行した関係ってどうなんだろうな?お互い憎からず思っているのは確実だが、何か約束をした仲でもない。


「そうだな…田舎に彼女がいるとでも伝えてもらってもいいか?」


 アプローチされている身としては勿論悪い気はしない。しかし、そう簡単に付き合える訳もない。それなら始めから脈無しと伝えてもらったほうが相手にもいいだろう。

 俺の体質上、おいそれと手を出すこともできない。


「そう、分かったわ。それとなく伝えておくわ」


「すまんな」


「これくらいどうってことないわ。じゃあシルバー、おさぼりは終わりよ。とっとと仕事に戻って頂戴」


「じゃあねーソーイチロー、またね~…」


 そしてシルバーはロンコに引っ張られ厨房に戻っていった。


「あいつはいつも引っ張られてるな…まあお似合いか」


 夕食を終え自室に引き上げ、部屋の中に常設されている洗い桶で体を拭き、一日が終わりを告げた。


フラグをへし折っていますが、脈無しなら脈無しって早めに伝えておいたほうがいいのになぁ…なんて思うこともしばしば。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] オナニーせな耐えれんいうてテンガ開発したのに、街出てからは堪えれるんや。何か美談にしてたけど結局ヤりたいでセフィリアに手を出してるのに、美人の受付嬢とはやりたいとも思わへんのんや。ご都…
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