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墓王!  作者: 菊次郎
フェーズイン
36/129

ハトバチ討伐

ご覧頂きありがとうございます。

 冒険者ギルドを出て街道に向かう。いつもの出口とは違う門から出たため、顔見知りの門兵に出会うことはなかった。

 北門を出てまっすぐ北上する。主要街道には1km間隔で石碑が置いてあり道を違えることはない。まあ石碑といっても単なる石積みでしかないが。


 普段実験している草原はフィールから東や南にあるため、北のこちらは行ったことがなかった。初夏に成る手前のこの時期、周囲の麦畑は膝下程度までしか成長していない。しかし、これからもっと成長しようとする麦達の力強い息遣いを感じ、街道を駆ける俺の足にも自然と力がこもった。


 街を出て10分ほどで目当ての池についた。池は周囲20mほどで、溜池といったほうが似合う池だった。その周りには林があり、そこそこ管理されている林のためか、下草はあまり伸びておらず木も間引きされているため、比較的視界が開けている林だった。


「さて、ハトバチはどこかな?『篠突く雨の輪』…んーこれかな?池の反対側に3匹それらしいのがいるな。『ショットガン、バードショット』」


 手にショットガンを召喚し攻撃に備えておく。シェルは勿論鳥撃ち用のバードショット。小さな弾丸が無数に装填されているため、小型の飛翔体を撃ち落とすには最適な弾薬になっている。

 ゆっくりと池を周り反対側まで向かうとハトバチのブーンというような羽音が耳につき始めていた。


「『楔の盾』、『なのです』」


 防御用の描画魔法である『楔の盾』を召喚すると、薄く透明な積層状の盾が俺の全周を覆うように現れた。続いて使った『なのです』は『楔の盾』の周囲に電撃をまとわせ、攻撃してきた者に電撃を食らわすというちょっと極悪な描画魔法になっている。

 この2つを同時に使うことで受動的迎撃魔法『すぱしーば』として運用していくことにした。

因みに『タレット』は能動的迎撃魔法になっていて、同じ迎撃系の描画魔法としては用途が若干違っている。


 ハチたちの方も俺のことに気づいていて、こちらに向かって飛んできている。俺の近くまで飛んできたあと、ハトバチは口をカチカチと鳴らし警戒態勢に入り、俺の周囲をぐるぐると飛んでいる。


「さて、駆除に移りますか」


 その言葉が合図になった訳でもないだろうが、3匹のハトバチが一斉に襲いかかってきた。ある程度の知性があるのだろう、正面と左右から時間差で攻撃を仕掛け3匹で連携を取っているようだった。

 ハトバチの攻撃手段は地球のハチと同じく尻に付いている針を何度も刺し、持っている毒を相手に流し込む手段を取っている。ハトバチの毒性は低いが、それでも何度も刺されれば死に至るし、首や目などの弱点となる場所を刺されてしまえばまともに動くことなどできなくなってしまう。

 しかしそれも俺に近づくことが出来れば、の話ではあるが。

 俺に近づいたハトバチは各々『なのです』の雷撃をくらい、飛んできた勢いのまま『楔の盾』にぶつかり地面に落ちると、もう動くことはなかった。


「よし、特に問題は無さそうだな。まあ2つとも実績がある描画魔法だったしな」


 落ちたハトバチが死んでいることを確認し、討伐証明兼売り物の針を取っていく。針の中にある包嚢ほうのうに毒が入っているので、それを傷つけないように慎重に取っていった。と、思ったら…


「一つ、包嚢が爆発してやがる…」


 恐らくは電撃が強すぎたのだろう。死んだハトバチの見た目は普通で焦げたりしている訳ではないが、その体内では激しく電流が流れたためか節々から薄っすらと煙を上げていた。


「おうふ、出力の調整は難しいぜ…俺の魔法は殲滅には向くけど、採取には向かないって冒険者としてはどうなんだろうな…」


 少し自分の立ち位置に悩みつつも、その後何度かハトバチに襲われ出力を調整して、なんとか10匹中9匹は包嚢ごと剥ぎ取れる出力を見つけた。ただ、ギリギリ全殺しいう無茶ぶりすぎて、何度もトライアル・アンド・エラーを繰り返すはめになってしまった。


「ふう…これでちょうど30匹だな。包嚢付きは23匹分か…結構無駄にしたな。無駄にした額は2100ゼル分程度か?まあ実践あるのみだな」


 林の中を探査魔法を使いながら歩いているのだが、


「んー、さっきから北の方角から蜂達はきてるな。巣があるのか?とりあえず向かってみるか」


 そう考え北に向かって歩き始めると、ハチ達がある点を中心に円を描くように飛んでいる場所があった。その中心に近づけば近づくほどハチたちの攻撃は苛烈になり、採取したハチの針は60を超えていた。間断なくハチたちが襲ってくるため、俺の周りは『なのです』の電撃でパチッパチッと光と音が止む時が無かった。


「傍から見ると今の俺って昔のコンビニにあった青いライトのあれだ、誘蛾灯みたいになってるな…」


 しょうもないことを考えていると、この先に二抱えほどもあろう大きな蜂の巣が木にぶら下がっていた。ミツバチではなく所謂スズメバチの巣のような形をしている。


「あれがハチ達の本拠地か…あの中にいる女王蜂を退治すればオマケの依頼も完了か。確か…女王蜂の討伐証明は羽、その羽は虹色に煌めき装飾品の材料としても人気がある、だっけな。女王蜂自体に戦闘力は無く兵隊ハチがその身を守っている。兵隊ハチは針以外も強靭な顎によるかみ砕きが侮れない、だったな」


 セフィリアの所で読んだ魔獣大百科の項目を思い出しながら巣に近づいていく。しかし先ほどまで周りを飛んでいたハチが一匹も居なくなっており、足元には大きな顎を持ったハチが5匹ほど転がっていた。


「あれ?こいつが兵隊ハチ…?って、あら…倒しちゃってたか」


 近づく者に対して電撃を与えているため、俺の意識とは関係なく攻撃をしていたようだった。


「確か兵隊ハチは討伐の対象じゃなかったはずだから放置でいっか。あのでっかい蜂の巣を壊して女王蜂を倒せば終わりだな。『ショットガン、バックショット』」


 ショットガンのシェルを鳥撃ち用の小さな弾からパチンコ玉程の弾をばら撒くバックショットに変更する。そのまま木にぶら下がっている蜂の巣の根本にショットガンを向け、『楔の盾』に射線を通し発砲すると、土と唾液でできた蜂の巣は重力に負け落下し壊れてしまった。

 すると中から一匹だけ他のハチより一回り大きい女王蜂が出てきた。女王蜂は背中に虹色に輝く羽を一対持ち、こちらを見上げ飛べずに地を這うことしか出来ずとも女王としての威厳を欠片も失ってはいなかった。


「『ショットガン、スラッグショット』」


 一粒弾に変更し女王蜂の頭に向けて発砲する。狙い違わず女王蜂の頭を飛ばして女王蜂の羽を大事に剥がし、依頼は完了となった。

 そして意味の無い行動だと知りつつも、穴を掘り女王蜂の遺骸をそっと土に埋めた。


「ほんっと自己満足だな。さてあとは…蜂の子も売れるんだっけ?命をもらったからには大事にしないとな」


 蜂の巣の中にはカブトブシの幼虫並みの大きさの蜂の子が100匹ほど蠢いていた。蜂の子を残さず袋に詰め、やり残したことが無いか確認しそのまま帰路についた。


 足元にあった兵隊ハチの死体には、もう蟻たちが群がっていた。


「お前たちにも生活があるだろうが、すまんな、退治させてもらうぜ」

を「さて、駆除に移りますか」に変更しました。

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