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墓王!  作者: 菊次郎
フェーズイン
35/129

ハトバチ討伐の依頼

ご覧頂きありがとうございます。


早2月に突入してしまいました。寒くて出不精になる日々が続いていますが、

そんな出不精の一助(?)となれば幸いです。

 ゴブリンの襲撃から暫く『タレット』の改良に時間を費やしていた。動目標に対する追従性と殲滅力の向上に対して特に重点を置いた。

 殲滅力については銃身を増やして4連装砲に変更し銃身一つ当たりの連射速度を下げ、高威力の弾丸を使っても銃身一箇所当たりの衝撃緩和に要する時間を確保し、『タレット』全体としては連射速度を下げず殲滅力を向上させている。オマケに4連装砲の一斉射撃を行った時の面制圧力は中々に侮れない物があった。やっぱり連装砲ちゃんはすごかった。

 勿論弊害もあり、『タレット』の召喚時間が大幅に伸びてしまい、俺の固定砲台としての地位を着実に固めている。機動性も疎かにするわけにもいかないから次は手軽な描画魔法を作ろう…


 問題は動目標に対する追従性だ。今は探査魔法『篠突く雨の輪』を使ってリンクさせているのだが、元々『篠突く雨の輪』は第一に隠密性、第二に情報の精度を重視していたため、応答速度は度外視している。水面に雨粒が落ちた時の波紋のように、極小さな探査魔法を無数に打ち出し、得た情報をバトンリレーのようにこちらに持ってくるという仕様なためこればかりはどうしようもなかった。

 そこで『タレット』用に隠密性を捨て、応答速度を早めた探査魔法を開発し、『タレット』自身に探査魔法を使わせるように変更しておいた。強力な魔力波を打ち出すだけの、普通の魔法使いが使う探査魔法と同じタイプだったため開発に手こずることは無かった。

 この応答速度を早めた探査魔法は使うと相手にこちらの位置が直ぐにバレてしまうという欠点もあるが、『タレット』を使う時は敵にこちらの位置がバレてるため(ある程度は)問題無い…が、新たな敵を引き寄せる可能性もはらんでいるのだが。


 と、ここまで改良をしておいてなんだが、『タレット』を本当に使えるようにするには動目標に対する未来予測をしなくてはいけない。放物線や自由落下するだけなら楽なのだが、相手は魔獣、ランダムで動く相手の未来予測など出来るわけがない。


 そこで達した結論は…下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる、しかなかった。弾を多く打つには魔力を増やす必要があり、魔力を増やすには描画魔法をバンバン使って鍛える、という至極当たり前の結論に達し『タレット』のこれ以上の改良は一端保留となった。



 いつものようにミストさんの家で描画魔法を作っていると、珍しくティアラが話しかけてきた。


「ソーイチロー様、洗い物はどうされているのですか?宿に頼んだりされていますか?」


 この世界の宿屋の多くは追加料金を払うことで洗濯をしてくれるサービスがある。大切な装備の類は自分で洗うのは当たり前だが、下着や部屋着などの安い衣類は面倒になると宿屋に頼んだりする。ほつれた所や破けている所もついでで補修してくれるので結構使い勝手がいいのだ。相場は物によって違うが一泊の10%程度なので、音の鎖亭は20z前後だ。


「普段は風呂の残り湯で洗っているが、面倒なときは利用するときもあるな」


「もし宜しければ私達が洗濯しますが」


「さすがにそこまでは悪いだろ」


「どうかお気になさらず。せめてこれくらいはやらせて頂きたいです」


「うーん、そうか。じゃあ悪いが頼む」


 なんのかんので自分で洗うのは面倒くさかったし、申し出はありがたい。このお礼はまた違う形でするとしよう。


「…下着も全部持ってきてください」


「え?それはさすがに…」


「ソーイチロー様は新たな魔法を沢山作られております。こういう雑事は私達に任せて、時間をそちらに割いたほうがいいかと思います」


 ティアラが目を細めて一歩こっちに近づいてくる。なまじ美しい少女が真面目な顔をして近づいてくると迫力が違う。


「…はい、分かりました」


 後日、俺の下着を洗うティアラの姿を見かけたが、少しの汚れも見落とさないように裏返したり透かしたり顔を近づけて匂い嗅いでいたりとかなり丁寧に洗う姿を見かけた。そんなに丁寧だと下手に汚せなくなってしまう。汚せない下着とか何の価値があるのやら…


「ソーイチロー様、本日のご予定は如何なさいますか?」


「『タレット』の開発は一段落ついた、というか魔法をどんどん使って地力を上げるって結論になったからな。鍛錬がてらギルドの依頼をこなそうかと思ってる」


「そうですか。では私達は家で待機しています」


「すまんな」


 謝罪する必要は無いかもしれないが、元日本人はついつい謝罪してしまう。さすがに森の中になったら自衛手段が無い人を連れつつ依頼をこなすのは危険が伴う。まあ森の中の依頼とは限らないがどのみち危険に晒される可能性があるし、ティアラもそこら辺の事情を踏まえているのか無理は言ってこなかった。


 いつものようにミストさんの家から冒険者ギルドまで駆け足で向かう。すると朝市に野菜の店を出していたおっちゃんが歩いてきた。


「お、坊主、今日はギルドか?」


「ええ、依頼をこなそうかと。おっちゃんは店終わりなんです?」


「おう。これから昼と夜の仕込みだ!また買ってくれよ?」


「また伺いますよ、ではまた!」


 と売り込んできたおっちゃんに苦笑いしながら挨拶をした。他の街はどうか判らないが、ここフィールの市場は朝は食材を売り、昼と夜は朝市で余った食材を使った惣菜関係を売るというスタイルを取っている。冷蔵技術が未発達なため、そのようなサイクルになっているそうだ。そのため朝市の状況によっては夜には店を出さなかったり、逆に大量に余った食材の処分のため激安な惣菜が売られていたりと、2日と同じ市は無いとも言われている。


 更に言うと、ここフィールは辺境の街であり、魔獣が跋扈する森の最前線の街のなかで最も大きい都市だ。フィールより首都側に行けば麦などの食の基礎となる食材が栽培され、一方魔獣の森からは季節ごとに様々な肉や食材が採取できるため、フィールの街の市場はこの国の中でも特に混沌としている。珍味から滋味あふれる物まで様々であり、同じ食べ物を食べようとするほうが難しいとすら言われているため、売り文句が「二度と食べられないよ!」という掛け声はよく聞かれる。但し、美味しいかどうかは別問題だが。


 おっちゃんと別れ、暫く走るとギルドに到着した。毎度のことながらこの時間のギルドは混雑している。人混みを掻き分けてEランクの提示版の前にたどり着き、依頼表を見るとまだまだ残っていた。


【ハトバチ討伐】

【街道沿いのハトバチの討伐。ハトバチの巣の場所が不明なため、巣を特定した場合別途報奨金アリ。ハトバチが現れた詳細な場所は課員に確認のこと】

【報奨金:10匹以上討伐で500ゼル、巣の特定で追加500z、10匹以上は追加1匹50z、針は別途買い取り】


「お、これがいいか?場所が特定されてて無駄足が無さそうだな」


 ハトバチとはその名の通り鳩サイズのハチで、縄張りに入らなければ襲ってこないという比較的温厚なハチではあるが、偶に畑や街道のそばで巣を作るとこういった依頼が出るらしい。ハチの針にある毒は薄めると痛み止めとして一般的に出回っている薬のため、大体針一本300zほどで買い取られている。ハトバチも魔獣に分類されているが小さすぎて魔石が取れないので針以外の産物は無いそうだ。


 少し関係ない話だが、痛み止めの薬があると聞いた時にセフィリアに対して「治癒魔法使いがいるなら痛み止めいらなくね?」と尋ねた所、「誰もが治癒魔法を使えるわけでもなく、直ぐに治癒されるわけでもないから意外と需要はある」だ、そうだ。


 依頼書を提示版から剥がして、同じ冒険者が並んでいるカウンターに並び自分の番が来たので受付嬢に依頼書を渡した。確かこの受付嬢は大鷹討伐の時にいた人だな。


「これお願いします」


「いらっしゃいませ、ソーイチローさん。え~と…ハチの討伐ですね。お一人で受けられるんですか?」


「そのつもりですが、何かまずいことでも?」


「まずいワケではないんですが…大体ハチの討伐は複数人で受ける人が多いんですよ」


 それを言われて理由を考える…までもなく、思い浮かぶ理由はひとつしかなかった。


「ハトバチが複数で襲ってきたり?」


「その通りです。ハトバチは一人を集中的に攻撃してくるので、ガチガチに装甲を固めるか避けるのが上手い人がターゲットを取って残りの人が攻撃するのが一般的ですね」


 同じ状況を考えると、俺なら『楔の盾』で全周防御しつつ『なのです』で電撃をまとえばなんとかなるかな?


「まあ魔法でどうにかなるかな?場所はどこになりますか?」


「北門を出て主要街道を2kmほど北上すると小さな池があります。その池の周囲で見かけられたそうです。判り難い場所ではないので街道をまっすぐいけばすぐに分かります」


「分かりました。あとハトバチの巣を見つけて女王蜂を倒したらどうなりますか?」


 一般的に魔獣系の蜂の巣の討伐は女王蜂を倒せば終わる。恐らくではあるが探査魔法『篠突く雨の輪』で巣の索敵し、破壊するまではそこまで難しくないと思ってる。


「はぁ~さすが魔法使いの方ですね。巣の討伐は別途依頼を出す予定ですので、その依頼分の報酬が支払われます」


「了解です。まあできたらってことで」


「ソーイチローさんならどうにかできそうですね。では依頼を登録しますので左手を出してください」


 俺は左手の甲にある冒険者ギルドの印章に魔力を通し浮かび上がらせた。浮かんできた印章を受付嬢に差し出すと、彼女は左手の印章を両手で包み込むように握り、印章に依頼の情報を書き込んだ。

 俺はその様子を黙って見ていたが、確か前回とやり方が違う気がしたので少し尋ねてみることにした。


「この印章の描き方って担当や時によって違うんですか?」


「ええ。ようは冒険者の方の印章に書き込んで、ギルド内にある情報と整合性が取れさえすればいいので、やり方自体は個人に任されています」


「へぇ~、そんなもんなんですか」


「ええ、だからよろしくお願いしますね?」


 と言ってウィンクをしてきた。


「ん?こちらこそよろしくお願いします?」


 そこまで受付嬢に言われると、やはり裏が有る気がしてしょうがない。なんて思ったら周りにいる同業者(男)から殺気のこもった視線を向けられていることに気づいた。身に覚えがない…というか、これは受付嬢からのアプローチらしい。

 普通なら小躍りするくらい嬉しいのだろうが…俺の場合はそんな簡単な話じゃないしな。


「ではそろそろ向かいます。では」


「お気をつけて」


 そんな言葉とともに受付嬢は俺に掌をヒラヒラさせて見送ってくれた。もう一度提示版を見る振りをして受付嬢の印章の書き換えを見てみたら、手の甲を合わせる程度の接触しかしておらず、わざわざ両手で包み込むようにしているのは俺の時だけだった。

 まあ受付嬢がアプローチしてるのが俺だけかどうかは判らないが。


連装砲のアイデアや利点を教えてくれた方、ありがとうございました。連装砲のアイデアは某ぜかましもあり出したかったのですが、利点より欠点が多いと考え単装砲にしていましたが、希望が叶いました。


書き溜めが9話分ありますので一日一話づつ投稿していきます。

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