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墓王!  作者: 菊次郎
フェーズイン
33/129

持つ者、持たない者

ご覧いただき有り難うございます。


※残酷な表現が書かれています。どこまでセーフか判らないので

苦手な方は…ごめんなさい。

 大きいゴブリンの合図と共に他のゴブリン達が一斉に俺たちがいる丘に向かって突撃してきた。ゴブリン達は我先にティアラとコロネに飛びつこうとガナリ声を上げ、目に欲望に滾らせ(たぎらせ)、ヨダレを垂らし、膨らむ股間を隠すこともせず丘を駆け上がってきている。あまり足は早くなく体躯も小さいゴブリンといえど21匹ともなると迫力はかなりある。しかし、凡そ100mを切ったところで俺は、


「斉射開始」


 と、『タレット』に発砲開始の合図を出した。今まで聞こえていたゴブリン達の大声は『タレット』から多量の弾丸を撒き散らかし始めるとまったく聞こえなくなり、爆音のみが草原に鳴り響くようになった。SP弾は軟らかい材質にしてあるため、ゴブリンの体に当たると弾丸の形状を変え運動エネルギーは全て体内で弾けることになる。自然、被弾したゴブリンは腕に当たれば千切れ飛び、胴体に当たれば背中に大穴を開け、頭に当たれば後頭部が無くなる。特に先頭にいたゴブリンは筆舌に尽くし難いようなミンチになるまで弾丸の雨を喰らい続け、ゴブリンの形を成さないほどバラバラになった。


「一匹に撃ち過ぎだな、あれは。死亡判定がうまくいってないのか…。『タレット』、動目標にのみ射撃、停止体になった場合は次の敵へ」


 と、『タレット』と『篠突く雨の輪』のリンク方法を変更した。人型の形状に対して射撃するように設定した結果、人型で無くなるまで射撃を続けてしまい一匹に対してとことん射撃をしてしまったようだった。


 設定を変えた結果、敵の認定が上手くいきはじめ『タレット』は次々とゴブリンを屠っている。凡そ20秒ほど立っただろうか、全てのゴブリン達は50mほど進んだところで屍を晒すことになった、一匹を除いて。


 味方の死体を盾にして大きいゴブリンだけが生き残っていた。『タレット』は大きいゴブリンが立ち止まっているため射撃を停止していて、射撃音が無くなったこの丘に妙な静けさが漂っている。しかし、生き残った大きいゴブリンから憎悪の視線は途切れること無く続いていて、飛び出す隙を窺っているようだった。


 埒が明かないと思った俺はそのゴブリンに向かって親指で首を掻き切る仕草をすると、言葉は判らなくても俺の考えが通じたのだろう、大きいゴブリンは激怒して突撃してきた。

 動き始めた瞬間『タレット』は射撃を再開し弾丸の雨を降らし続ける。大きなゴブリンは持っていた大きな剣を捨て、両手に1体づつゴブリンの死体を盾にしながら向かってきた。しかし所詮は肉の盾でしかなく、次第に削られ吹き飛び背後にいる大きなゴブリンに着弾し始めるが、怒りが痛みを飛ばしているのだろう、その足は中々止まらない。膝を撃ち抜き腕を吹き飛ばし、失った膝下を地面に付いても尚こちらに向かおうと顔を上げた瞬間、『タレット』の弾丸は大きなゴブリンの額を撃ち抜き、やっとその足が止まった。


 僅か1分にも満たない戦いだった。丘の下にはバラバラになったゴブリン達の死体が散乱し、血のような匂いが充満している。『タレット』は沈黙し、ティアラとコロネも言葉を発せず、戦場となった丘の下を見続けたまま微動だにしない。

 圧勝というのも烏滸がましい一方的な殺戮を見たティアラとコロネは何を思うだろうか?


「ティアラ、コロネ。これが俺の魔法使いとしての戦い方だ…ちょっとゴブリンの討伐証明の耳を取ってくる」


 俺と同じように強力な魔法を使えるセフィリアなら、こんな殺戮現場を見せても不安は無い。しかし力を持たないティアラとコロネが圧倒的な魔法を見てしまったらどうなるだろうか?『タレット』の設計風景を見ていたり、『ショット・ガン』を見せたりはしていたが、その威力まで実感することは無かったはずだ。

 仲の良い友人が常に持っていた物が実は簡単に人を殺せる道具だったら、そして己は身を守る手段が一切無かったとしたら。そこに思い浮かぶ感情は一体何になるだろうか?“頼もしい”だろうか?“恐怖”だろうか?


 2人の反応を知るのが怖くなった俺は、返事を待たず袋を持って丘を下る。


 ひとまず『タレット』は解除したが、生き残りがいた時のために『ショット・ガン』は出しているがあまり心配は要らないだろう。左耳を剥いで袋に詰めていくが15個ほどしか見つからなかった。徐々にゴブリンの体は消え、より大きな魔石へと変化しているはずだが、肝心の魔石が中々見つからない。ゴブリンの中にあるはずの魔石を破壊してしまったのか、飛び散って遠くにいったのか判らないが…


「はい、おにいちゃん。探してたのはこれだよね?」


 とコロネが魔石を見つけてきてくれた。


「ソーイチロー様、こちらにも」


 ティアラも見つけてきてくれたようだった。


「お前ら…」


 ポフッとコロネが抱きついてきて、彼女の軟らかい肌を俺のお腹のうえでスリスリとしている。


「コロネね、おにいちゃんが守ってくれて嬉しかったの。あのゴブリン達がこっちを見たとき、怒ってくれたでしょ?嬉しかったの。おねえちゃんに優しくしてくれたでしょ?嬉しかったの。街の外に連れ出してくれたでしょ?嬉しかったの。ご飯をいっぱい食べさせてくれたでしょ?美味しかったの。コロネ達の病気を知ってもイジメなかったでしょ?嬉しかったの。初めてここにいていいんだって思えて嬉しかったの」


 コロネの頬に手を当てると、もっと撫でろとばかりに擦りつけてくる。ティアラの方をみても異論は無いらしい。怖がられ恐れられる…なんてことが無くて本当に良かった…。

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