ゴブリン
ご覧いただき有り難うございます。
※若干アグネスに喧嘩売ってる表現があります。
もし問題があればもう少し軟らかい表現に変えますので
ご指摘頂ければ幸いです。
能動的迎撃描画魔法『タレット』の実験は続いている。過負荷試験で最大連射速度を調べたのだが、秒間10発ほどにも達した。これには驚いたが、よくよく考えれば『タレット』の弾薬を小型弱炸薬に変えたおかげか弾薬の召喚コストが大幅に削減され、最大連射速度が向上したのだろう。変な共振点も見つからず静目標に対する実験は無事に終了した。
そのタイミングに合わせるようにティアラから昼食の用意が終わったことを告げられ、3人で昼食が始まった。パンにウィンナーと葉物を挟んだフレッシュホットドッグに冷めても美味しい野菜スープと外で食べるには文句のないメニューになっている。
今は3人向かいあって同じ敷布の上で食事を取っていて、ティアラは踝まであるロングスカートのいつものメイド服を着用し、横座りで昼食を少しづつ食べている。一方コロネは膝下くらいのスカートに半袖のTシャツを着ていて、体育座りで昼食を小さな口でもしゃもしゃと食べている。つまり何がい言いたいかというと、コロネのパンティがモロ見え状態だということだ。そのパンティもぴっちりしたものではなく、一昔前にあったダボっとしたパンティで体に密着していないため、その下にある何かがチラリと見えている。パンモロ下チラ…でいいのか?若干視線に困るものがあって、ティアラに救援を求めるため顔を向けるとティアラは、
「コロネ、食事中に膝を立てるのははしたないですよ。あなたも結婚できる年齢になったのですから、少し慎みを覚えなさい」
「はーい…」
と若干不服そうに膝をおろした。が、それどころではない。
「コロネって結婚できる年齢なのか…?」
「そうなんだよ、おにいちゃん!コロネはもう結婚できる年になったんだよ!すごいよね!」
「お、おう。すごいなコロネは。もうすっかり立派な女性だ」
でしょー、とコロネは得意げな顔をしているが、女性はあまりパンティは見せないような気がする。アレを見て喜べるのは悟りを開いた者だけだ。
「ええそうなんです。ついこの間、年齢的には結婚できるようになりました。ただ戸籍登録証が作れないので本当に結婚できるわけではありませんが…」
とティアラは言ったあと、「私も結婚できないんですよね…」と小さく、本当に小さい呟きが聞こえた。
戸籍登録証を作るには手の甲に魔法陣でできた印章を写す必要があるのだが、この印章が手の甲にちゃんと写ったかどうかの確認に微量の魔力を必要としている。そのため魔力欠損症の2人は戸籍登録証を作ることができないのだ。もし確認が無くても印章の維持に極微量の魔力を使うため、魔力が無いと戸籍登録証は消えてしまう。その戸籍が無ければ当然…結婚などできるわけもない。良くて事実婚、普通は妾が精一杯なのだ。
ティアラも頭では結婚出来ないと理解しているが感情は別だ。普段あまり感情を見せようとしないティアラが、ほんの少しだけ漏らした本音を決して忘れてはいけないと心に誓った。
昼食も終え、一息ついているとコロネが森のほうをジッと見ていた。森のなかに遊びに行きたいのかと思ったが、その表情には幾分か警戒を含んでいるようだった。
「コロネ、どうしたんだ?」
「うん…なんかね、森の中がいやな感じがするの」
「いやな感じ…?」
いやな感じとはどういうことだと思い、ティアラのほうを振り返ると彼女はコロネの言葉を聞いて若干警戒心を増している。
「コロネはその…なんというか色々と動物的なんです。無意識に正解を引くというか、危険を察知するというか」
ということはあまり無碍にしないほうがよさそうだな。探査魔法は常時展開しているが、あまり範囲を広げたり、精度をあげると消費魔力が多くなるため全力では展開していない。しかし、コロネの話もあるし探知範囲を広げて確認してみるか。
「『篠突く雨の輪』…コロネ、良くやった。その感じは正解だ。森の奥400mほどのところに小型から中型の人型の魔獣が21匹こちらに向かってきてる。門兵の話だとゴブリンの可能性が高そうだな。数は若干多いが」
俺の言葉を聞いた2人はビクッと震え身を固くした。コロネは不安気に俺を見上げていて、ティアラはメイド服を握りしめている。街中にいれば魔獣なんかに会う機会は無いため、2人が不安に思うのはもっともだ。
さて、この後はどうするべきか。街に向かって逃げるのも手だが、ティアラが走り続けられるか判らない。さらに魔獣の集団を引き連れてフィールの街に向かい、関係ない人に被害が出た場合、俺は激しく後悔するだろうし冒険者としての名声は地に落ちる。先に2人だけ逃し、俺がここに留まる…のも、魔獣達のターゲットがこの2人だった場合、魔獣に突破されたときに非常に面倒なことになる。逃げるティアラとコロネ、彼女達を追う魔獣、その魔獣を更に追う俺、射線が被ったりして非常に戦いにくい。
反面、もし迎撃するのなら今いる所は傾斜が緩いとはいえ丘の上にいるので、防衛に向いた場所だ。オマケに今まで開発していたのは…能動的“迎撃”描画魔法『タレット』だ。この時の為にあるような描画魔法を活用しない手はない。考えを纏めた俺は不安がっている2人に話を始めた。
「俺はここで魔獣を迎え撃つ。もしこのまま街に逃げたら関係ない人に被害が出るかもしれんからな。それで2人には…できればここにいて欲しい。防衛のしやすさからのお願いなんだが、どうしても魔獣が接近してくるから怖い目を見るかもしれん。嫌だったり怖かったりするなら、街のほうに向かって逃げてくれても構わない。もしそちらを選んでも全力で支援する」
彼女達の返事は一つの分岐点でもある。今までの様子から、俺は彼女達からある程度の信頼を得ている自信はある。しかし、命を掛けるほどの信頼を得ているのかと言われれば、そこまでは判らない。もし信頼を得られていないのなら、セフィリアに今後の対応について相談することも考えなければ…
そんな事を考えていると、ティアラがすぐさま返事をしてくれた。
「ソーイチロー様は只、私達にお命じになればいいのです「ここにいろ」と」
ティアラの隣ではコロネがウンウンと頷いている。俺はまだまだ人を見る目が無かったか…
「そうか…ありがとう。ここにいろ、お前たちは…必ず守る」
決意と共に言葉を吐くが、やはり言い慣れないセリフは恥ずかしく、ティアラ達から視線を外し魔獣が出てくるであろう方向を向いた。
「『タレット、SP弾』、『篠突く雨の輪』にリンク。敵殺害後、最寄りの標的を自動設定」
敵は恐らくゴブリンだろうと予想しているため、弾丸は貫通力より破壊力を重視。同時に『ショットガン』と手榴弾も召喚しておく。と、準備が整った頃、森の奥から予想通りゴブリンの集団が現れ、森と草原の境で停止した。ゴブリン共もこの丘に俺たちがいることに気づいたようで、こちらを指さしたりうめき声を上げて会話らしきものをしている。
「なあ、あいつらってなんか会話してるっぽいだが、その内容って…」
「私達が狙いなのでしょう。お腹を空かせた犬に肉を見せつけた時のような目でこちらを見ています。あの欲望に満ちた目はとても…不快です」
ゴブリンは特に女性から嫌悪されている魔獣なのだが…言わずもがな、彼らの生殖には人間の女性も使われる。ゴブリンにもメスはいるのだが、人間の女性に産ませたゴブリンのほうがより強い種が生まれるそうで、積極的に女性をターゲットにしている。女ならなんでも良いらしく、還暦過ぎた老女から初潮前の童女まで何でも御座れと手広くやってるらしい。ちなみに男は食べられるだけだそうだ。
殆どのゴブリン達は棒きれを武器に持ち、僅かな布を腰に巻いているだけだが、その布がこんもりと盛り上がっている。ティアラとコロネを見て発情したようで、捕まえた後のことを想像しているのだろう。
「…なんだろう、すっげえムカつく」
ティアラとコロネは別に俺の恋人でもなんでもないのだから、俺がどうこういう理由は無い。そんな建前は置いておいても、ムカつくものはムカつくのだ。
囃し立てているゴブリン達の後ろに一回り大きいゴブリンが現れた。ゴブリン達が早々にこちらに突撃してこなかった理由はこの大きいゴブリンを待っていたようだった。ということは、ある程度は統率の取れている集団ということになる。その大きいゴブリンは他のゴブリン達と違い、革鎧を装着し若干錆びてはいるが大型の剣を持っていて風格がまるで違っていた。
先ほどのムカつきには冷水を浴びせ、但し決して忘れないように心に沈め、大きいゴブリンに視線を向けると相手もこちらの視線に気づいたのであろう、視線を合わせてきた。その大きいゴブリンがグフと笑い…仲間のゴブリン達に突撃の合図を出した。
ゴブリンは弱いけど繁殖力旺盛、人間の女性をさらって繁殖する
なんていうお話がありますが、人間の女だけでしか繁殖できなかったら
ゴブリンの繁殖力とは相反する気がします。胎児の成長速度は母体に
起因すると思うので…。
そのためゴブリンにはメスもいて、そのメスはポンポン生むことができるが
力が強い種は人間の女からしか生まれない。強い子孫を残したいという欲求を
持つために、ゴブリンのオス達は人間の女に激しく欲情するのでしょう。
そんなことばかり考えていたら、ハリポタのタイトルを炎のゴブリンと
言い間違えて変な目で見られました。