魔法とは
ご覧頂き誠にありがとうございます。「ぼくのかんがえたさいきようのまほう」が少々長くなり読み辛いと思いますが、何卒ご容赦願います。
誤記修正:2時間毎→3時間毎 2時間で鐘なってたら五月蝿い。
そうえば→そういえば
身についた習慣からか、朝の6時くらい?に起きた。一日が24時間かどうか分からないが、まだ朝日が森の木から出てきてはいなかった。台所へ向かおうと部屋から出ると、正面の扉からセフィリアが出てきた。
「おはよう、ちゃんと起きられたようだな。朝食を出すから少し待て」
「おはようございます」
そう返事をし、セフィリアと台所へ向かった。そして出てきた朝食が、干し肉・果物・なにかの葉っぱ…昨夜と同じメニューだった。さすがに同じものを食べてると飽きが来る。
(旨いもん食いたけど、調味料も無いしどうしたもんかな…)
食生活を改善したいが、今はアースガルドでの生活に早く慣れ、魔法も習得せねばならない。後回しになるのは仕方がないと、頭の隅に記録するだけにしておいた。
朝食が終わり、初日は一般常識の講義を行った。要約すると、
一年365日、一日は24時間、そこそこ大きな街なら朝6時から夜18時の間の3時間ごとに鐘の音が鳴り、それに合わせて生活している。1ヶ月30日で2ヶ月に一度、月無しの日がある。
お金の単位はz。1銅貨1zで、貨幣は 100銅貨で1銀貨、100銀貨で1金貨、100金貨で1白金貨と単位が切り上がり、一般的な中流家庭では4人家族1ヶ月で金貨2枚あれば生活していけるらしい。およそ銅貨1枚=10円くらいの感覚だろうか。あと銀貨以上の貨幣に半貨が設定されている。
地理はラーゴ湖という大きな湖があり、それを囲うように4つの大国と多数の小国があり、更にその外側は山脈が連なっている。ラーゴ湖には唯一北側に外海とつながっているリオ川がある。
意思疎通が図れる種族として、人種・妖精種がある。
人種には純人族や獣人族のことであり獣人族は名前の通り獣の因子を含んだ種族で多種多様な獣人族がいる。また人種は全体的に妖精種と比べれば魔力は少ないが、総人口は一番多い。
純人族は獣人族と比べ力が弱い代わりに繁殖力があるため、アースガルドで最も人口が多い種族になっている。ちなみに宗一郎も(一応)純人族になる。
妖精種はエルフ・ドワーフ等があり、竜人やドラゴンも妖精種と言われている。共通する特長は魔力が他種族に比べて圧倒的に多いということ。それ以外はあまり共通する特長は無いようだ。
一日の講義が終わり夕飯となったが、やはり干し肉と果物と何かの葉っぱだった。
翌日、楽しみにしていた魔法に関する講義が始まった。講義の場所はログハウスの中ではなく、外だった。
「そもそも魔法とは、地に満ちる魔素を体内に吸収して魔力に変換・貯蔵し、再び体外へ出し魔力が魔素へ再変換するときに魔法という現象が起きるんじゃ。これはいいじゃろ?」
はい、と頷く。
「では実際に使ってを見せよう。そのほうが想像しやすくなるからの」
セフィリアは手を外に向けて「炎よ」と呟いた。すると手のひらから2mほどの火柱が上がり、こちらまで熱が伝わってきた。
「おおお…これが魔法か!!まるで手品だな…」
「お主の元いた場所では魔法は無かったんじゃろ?まずは魔力の流れを感じるところから始めるとするか。両手を前に出せ」
両手を前に出すと、セフィリアは手を握ってきた。すごく柔らかく肌のきめは細かいので、思わずニギニギしてしまった。しかしセフィリアは気にせず、
「今からお主の体内に魔力を流すから、それを感じるがいい。後はお主が自分の中にある魔力を感じ、それを出すようにしてみろ」
セフィリアは手を通して魔力を流してきた。暖かい何かが腕を通り全身を巡り、かなり気持ち良い。例えるなら、全身マッサージを受けた時に疲労感が一挙に流れ去る感じだろうか。
「これ、かなり気持ちいいな。毎日やってもらいたいくらいだ」
「バカを言ってないで、もう魔力を感じられただろ?手を離すから、今度は自分で魔力を外に出してみるといい。イメージを載せる感じでやってみよ」
分かったと頷いて、目を瞑る。体の奥底、へその奥あたりに暖かい繋がりがあるのが感じられた。それをゆっくり両手両足に送り込み、指先まで満たす。手のひらを前に出し「炎よ」とつぶやくと、ポンッと軽い音がして目の前にライターくらいの炎が上がった。
「おお、でた」
「できたようじゃな。次につかう道具を持ってくるからここでまっておれ」
セフィリアは自宅に戻っていった。手持ち無沙汰になったので、もう一度同じ魔法を繰り返してみようと考え、
「炎よ」
今度は指先に出すことを意識して魔法を使うと、指先に炎が点った。
「おー、仕掛けも無いのに火が付くのはすごいぞ。でもセフィリアと比べるとしょぼいなぁ…」
今度は指先に炎ではなく爆竹をイメージした。
「炎よ!炎よ!炎よ!」
威力が劣るなら数で補うとばかりに指先にポポポンと軽い爆発を連続して起こしたが、爆竹のような迫力も無く、宗一郎はどうしたら派手になるかなぁ~と軽く考えていると、セフィリアが戻ってきた。
「…お主、今のをどうやってやった?」
「へ?セフィリアに比べたら威力が足りなからさ、数で補おうかと思って、ポポポポーンと」
「うむむむ…まあ良い。とりあえず次の確認じゃ」
そう言ってセフィリアは長さ20cmくらいの水晶みたいなものを取り出した。
「これは魔力測定器といっての、暫定的だが魔力の最大放出量を測定できるんじゃ。最大放出量が多いほど、一度に行使できる魔法が強力だと言われておるの。この測定器の両端を持って魔力を通すと水晶の中が光る。その色によって放出量の多さが判るんじゃ。赤・オレンジ・黄色・緑・青・紫と変化していく。紫のほうに近づくほど放出量が多いという訳じゃな。試しにワシがやってみよう」
セフィリアは測定器の両端を持ち、魔力測定器に魔力を込めはじめた。10秒くらい掛けて、赤からオレンジ・黄色・緑・青・紫とゆっくり変化していき、紫色まで点った後、水晶内の光は消えていった。
「おお、最高の紫じゃないか!さすがセフィリアだな!!」
「う、うむ。まあこれくらいはな。さあとっととお主もやるんじゃ」
純粋に褒められたことに照れたのか、セフィリアは押し付けるように魔力測定器を渡してきた。宗一郎は推奨の両端を持ちセフィリアと同じように魔力を込めてみる。すると、電球に電気を通したときのように、一気に赤色の光が点った。
「うーん、赤色か。あんまり放出量は多くないってことか?」
自称神様にとんでも無い力を授けられたのではないかと期待していたが、あまり優秀な魔法使いでは無さそうなので、少し気落ちしながら問いかけていた。しかしセフィリアは真面目な顔をしながら答えた。
「やはりか…確かに最大放出量は一般人に毛が生えた程度じゃが、充填時間がものすごく短いようじゃの。よし、では講義を再開しよう。次は座学じゃから、家に戻るぞ」
充填時間という言葉に疑問を持ちつつ、言われた通りログハウスに戻ると、セフィリアは黒板とチョークを持ってきた。
「まず魔法使いにとって最も重要な項目は、先ほど測定した最大放出量じゃ。これは一度にどれくらい魔力を放出できるか、という項目じゃな。これが多いほど、魔法の威力が上がるし出来る事が増える。通常、魔力が大きいと言われれば、最大放出量が多いということを指すのじゃ。
あと、先ほどの水晶の色が魔法使いのランクを言い表すものになるんじゃ。ワシなら紫級、お主なら赤級、というようにな」
「なるほど。ちなみに赤と紫って同じ色だから同じ最大放出量って訳でも無いんでしょ?」
「その通りじゃ。赤といっても殆ど0に近い者からオレンジに近い者もおるし、紫はある一定上の最大放出量から上は全部紫になるのじゃ。だから紫級と言われる魔法使いは簡易測定では実力が測れないぞ。あとは有名な魔法使いには二つ名が与えられることがあるから、ランクよりそっちで呼ばれるようになるな」
「へ~、セフィリアは二つ名があったりする?」
「ある」
しかめっ面しながら答えてくれた。
「どんなの?」
「傾壁の白髮鬼じゃ」
「けいへきってなんだ?」
「魔獣の群れが街に押し寄せてきた時があってな、その防衛戦に参加したんじゃ。魔獣共をふっ飛ばしてるうちに、余波で街の防壁が傾いての。まあ偉い人からは『人的被害が出なかったのはあなたのお陰です、ええ、人的被害は』とか喜んでおったがな」
「絶対に嫌味だろ、それ」
ちょっと残念な目でセフィリアを見ていると咳払いをし、
「まあワシのことはよい、話を続けるぞ。さて次に重要な項目は最大魔力量じゃ。まあこれはどれだけ魔力があるか、という項目じゃな。多ければ多いほどたくさんの魔法を使うことが出来る。種族ごとで違うらしいが、人族ならおよそ最大放出量10回から15回程度と言われている。一般的に最大放出量が多い者ほど最大魔力量も多い傾向じゃ」
「セフィリアは?」
「ワシは20回程度じゃな」
「随分と人族のわりに多くない?」
「ワシは混血だから、片方の血が作用したのかもしれん。母親は人族だったが、父親は妖精族だったようだな。どんな父親だったのか話を聞く前に母親は死んでしまったがな」
ちょっと重い話を聞いてしまって、うつむいていると
「気にするな。次の項目は、充填時間が挙げられる。これは最大放出量での魔法を連続して使うときに、どのくらいの間隔で使えるかを表した数値じゃな。これは、同じ種族で比べた場合それほど差は出てこない。人族ならおよそ10秒といったところじゃな」
「最大放出量が違っても時間は同じなのか?」
「そうじゃ。だから同じ威力の魔法を使った場合、最大放出量が多い魔法使いのほうが速いんじゃ。対面して戦えば高位の魔法使いが有利じゃな。それ故、最大放出量が最も大事と言われる所以じゃな」
「俺はさっき連打できたような?」
「そこはお主が変なところなのじゃ。お主は威力が弱いながらも、連続で魔法が使えるのは大きなアドバンテージじゃな」
「過去に同じような人はいなかったのか?」
「そんなことは聞いたことがないわい。さて、次の項目は回復時間で…そのままじゃな。どれくらいの速さで魔力を回復できるか、という項目じゃ。といっても、これも種族ごとで大差はないと言われている。人族なら魔力が0から全快するのに3日ほどじゃな。これはワシも変わらん」
そこまで話してセフィリアは一息ついた。
「ここまで理解できたか?」
「大体は」
自分なりに噛み砕いて考えてみる。魔法使いの能力とは、コップと樽に入った水に例えられるだろうか。
樽の中の水:魔力そのもの。樽から水を外に出すことが、魔法を使うということ。
コップの大きさ:最大放出量。コップが大きいほど大きい魔法が使える。
樽の大きさ:最大魔力量と回復時間。樽が大きければ水もたくさん蓄えられるし、水も入れやすいから回復時間も早くなる。
樽から水をすくう速さ:充填時間。素早く水をすくえると、魔法の展開も早くなる。
ざっと考えをまとめて、コップと樽の水の例えを話した。
「なるほどの、いい例えじゃな。その例えで言えば、お主はコップではなく、樽にくっついた蛇口という感じかのう」
「なるほどなぁ」
「あとは最大魔力量の調査じゃな。先ほど魔法を使ったように、全力で魔法を出し続けてくれ。何回全力で魔法を使えたか数えるんじゃ」
魔力は地球から大量に持ってきたから底なしでは?という疑問を持ったが、本当かどうか確かめるために先ほどの魔法を連打してみた。
「炎よ!炎よ!」
呪文を唱えるたびに、手のひらの上でポンポンと魔法が爆ぜていく。1回…2回…と数えていたが、100回を超えたあたりから数えるのを止めて、無心で呪文を唱えていく。そうしているとセフィリアが根負けした。
「も、もうよい。一回一回の魔法は全力なんじゃよな?」
「手加減とかまだ出来ないからなぁ。それに忘れているかもしれないけど、俺は地球から魔力を持ってきているから、どれくらい量があるか分からんよ?」
「そういえばそうじゃった…使いたい放題というわけか」
「そうは言っても、最大放出量は多くないし、大した威力の魔法は使えないんじゃ?」
「せっかくの魔力量なのに勿体無いのう。そういえば、お主を先ほどの樽の中の水で例えるなら、樽ではなく海とでも言った方がよさそうじゃな…」
セフィリアはひと通り懊悩した後、
「魔法使いとしての評価は、第一に最大放出量、第二に最大魔力量、第三に充填時間と言われているが、実際の評価はほとんど最大放出量で決まっている。じゃが、お主の場合は型に当てはめて考えては問題が出てきそうじゃ。とは言ってもまずは基本的な魔法使いの知識を教えていくしか無いかのう」
セフィリアは黒板に追記していく。
「魔法には大きく分けて2つの体系がある。内作用系と外作用系じゃな。内作用系は身体強化や治癒魔法のことじゃ。身体強化は元の体が強い者ほど効果が大きいので、獣人や人族の男、一部の魔獣等が好んで使う傾向にある」
筋肉が無い人物に身体強化しても、たかが知れているということだろう。
「治癒魔法は人体の構造に詳しくないと魔法を有効活用できないからの、治癒魔法使いという専門家がおるくらいじゃ」
もし風邪が一瞬で治るなら、地球よりよっぽど医療について進んでいる世界なのかと疑問に思った俺は
「セフィリア、治癒魔法って病気にも効くのか?」
「一応は効くぞ。だがどこに魔法を使えばいいか分からないらしくて、あまり効率は良くないそうだ。まあ魔力がある内はそんなに病に冒されることも少ないが」
「逆に言うと魔力が少ないと病に冒され易くなるのか?」
「そうじゃ。無意識に魔力を体調調整に使っていると言われておる。あと、治癒魔法は魔法を使って治した状態を維持し続けなければいかん。それを維持するために患者の魔力を使い続けるんじゃ。術者が付きっ切りになれるならば話は別じゃが、そんな事はよっぽどの金持ちじゃなければありえんしのう」
「じゃあ魔力が無い者には治癒魔法も効果が無いのか…」
「そういうことじゃ。あとは大怪我ほど必要な魔力も増えるからの…患者の魔力が足りないと効果が発揮できん場合もある」
魔力が無いと住みにくそうな世の中だった。
「次いくぞ。外作用系は体の外で作用する魔法の総称じゃな。先ほど見せた炎の魔法もそうじゃ。世間一般には外作用系を主に使う者を魔法使いと呼ばれているのう」
「火とか風みたいな属性は関係ないんだ」
「うむ。じゃが、術者がどれだけ魔法のイメージを持てるかが具現化した魔法の精度に関わるからの。それは術者の個人差があるから、それについては属性があるといってもいいかもしれん」
例えば、森に住んでるエルフなら木に関する魔法は頭で慣れ親しんでいる分、イメージしやすいため威力や精度が上がるが、森を焼いてしまう火に関する魔法は小さな炎しかイメージしたくないため不得意になる、そういう感じだろう。あくまで傾向があるという程度ではあるが。
「先にも言った通り、魔素を体内に吸収して魔力に変換し、魔力を体外に放出し再び魔素に戻るときに魔法が使えるのじゃ。その魔素に戻るときにイメージを載せる手法として3つある。無詠唱魔法・詠唱魔法・描画魔法じゃな」
そういってセフィリアは具現化手法の利点と欠点を説明していった。話が長かったのでまとめると、
無詠唱魔法:魔法を使いたいと念じた時点で発動するので、最速で魔法を使える。しかし、魔力の変換効率がかなり悪いため大量の魔力が必要。人族の魔力程度ではそよ風すら起きないくらい効率が悪く、高位妖精種しか使えるものはいない。
詠唱魔法:言葉に出して発動するので無詠唱魔法よりは遅いが、魔力の変換効率は良い。呪文を詳細にして変換効率が上げたり、簡易にしてスピードを重視したりと応用が利きやすい。術者が判る言語ならなんでもいいので使い手は多様。魔獣にも使う種族がいる。
描画魔法:魔法陣を描いて魔法を発動するため、発動速度は最も遅い。反面、魔力の変換効率は最も優れている。魔法が使える道具、所謂魔法具も魔石のような魔法陣を維持できる物体に描いているため、描画魔法に分類される。使い手は主に人種で詠唱魔法を使えない者がなる。
俺はこっそり無詠唱魔法を試してみたが、うんともすんとも言わなかった。
「セフィリアは無詠唱魔法を使えるのか?」
「無理じゃな。そよ風が吹いたか?くらいのレベルでしか使えん」
それでも無詠唱魔法の発動が感じられる程度のレベルであっても、人種の中では破格のレベルと言えるだろう。
「詠唱魔法を使うコツは、術者のイメージを早く正確に発音できる文言ということに掛かっておる。韻を踏むと良かったりするが、多くの魔法使いが自分にあった詠唱魔法を研究しておる」
「じゃあ唄うように発音すると良かったりする?」
「術者がそれで集中できるならアリじゃな。次は描画魔法を試してみるかの。昔は地面に魔法陣を描いてそこに魔力を流し込んで発動させていたんじゃが、今は空中に魔力で直接魔法陣を描くのが主流じゃな。まずは手本を見せよう」
セフィリアは空中に指を這わせ描き始めた。何もないところにまず円を描き、ついでその中に『そよ風を3秒、対面に向かって吹け』と書き込み魔法陣が完成した。魔法陣に魔力を流し込むと、扇風機の弱くらいの風が俺に向かって吹き始めた。
魔法陣は文字を描くのと同じ速度であり、さらに魔力を流す手間まであるからか随分と詠唱魔法より遅い。
「さらに描画魔法には弱点があってな」
セフィリアは先ほどと同じ魔法陣を描くと、魔法陣の文字を指で擦るようになぞった。すると魔法陣はその機能を停止した。
「このように、発動前の魔法陣は妨害されると効果が無くなるんじゃ。ダミーを入れるなど対策が無いわけではないが、ただでさえ遅い発動速度が更に遅くなるからの。あまり使われてはおらん」
後日確認したところ、指だけではなく剣や弓、果ては小枝でもなんでも妨害されてしまうそうだ。
「さっき魔法具の話が出てたけど、それじゃダメなのか?」
「確かに魔法具なら魔力を流し込むだけで良いから発動は速い。しかし魔法具の核となるのが魔石なんじゃが、魔石はあまり大きくないから小さな魔法陣しか保存できんのじゃ。大威力の魔法や複雑なことはできんし、魔法具一つで一種類の魔法しか使えないのも難点じゃの。あと魔石は消耗品なのであまり安いもんでもないしのう。例外は砦の防衛用に配備されてる巨大な魔石くらいじゃな」
「魔法具って一回しか使えないとか?」
「そんな事はないが、威力が大きい魔法具ほど早く消耗する。火起こしとか虫除けの魔法具くらいなら数百回くらい使えるがな。火起こしの魔法具なら、ほれこれじゃ」
予め用意してあったのか、足元から魔法具を取り出してきた。木の棒の先端に小さな石みたいなのがくっついてる。それを俺に渡してきた。
「使ってみるか?魔力を込めるだけじゃ」
言われたとおりに魔力を込めた瞬間、石の部分からライター程度の火が点った。
「やっぱり発動が速いのう…よし、描画魔法も試してみよ。指先に魔力を込めながら、使いたい魔法を文章で描くんじゃぞ」
指先に魔力を込めながら空中に円を描き、先ほどセフィリアが使った物と同じ描画魔法を描き、魔力を込めた。
「ちゃんと起動したな。それにしても描画魔法って指でなぞるのが面倒くさいな」
「今は判りやすくするために指でなぞっているが、普段は視線を這わすだけで描いておる。空中に視点を合わせ、描きたい文字を思い浮かべながらやってみるといい。あと魔法陣は正確な円でなくてもいいぞ」
「視線って、見える範囲ならどこでも描画魔法を使えるの?」
「いや、せいぜい2~3mがいい所じゃな。離れるところに魔法陣を敷くほど効率は悪くなるみたいでな」
「そうなのか。とりあえずやってみる」
空中に視点をあわせ指ではなく視線を動かし、円を描き文字を書き込んで魔法陣を作成し、魔力を込めたところ、そよ風が吹いた。
「お、ちゃんと起動できた。指で描くより速い分マシだけど、空中に視点をあわせるのがちょっと難しいぞ」
「すぐに慣れるさ。さて、入門講座はひと通り終わったが、ソーイチローはどんな魔法を使って行きたい?」
「うーん、描画魔法は出来るけど詠唱魔法だと出来ないこととかある?もしくはその逆でも」
「無いぞ。両者の差は変換効率と速さの違いだけじゃ。但し、詠唱魔法の詠唱文を詳細にすれば描画魔法の変換効率にかなり近づくことができる。もちろんそこまで詳細にすれば速さは描画魔法と大差無くなるんじゃが、応用が利きやすかったり移動しながら詠唱もできるから、ほとんどの魔法使いは詠唱魔法を使っておる」
「なるほど…ちょっと考えさせてもらってもいいか?」
「無論じゃ、じっくりと自分の方向性を考えるとよい。ワシは飯の用意をしてくる」
そう言ってセフィリアは外に出て行った。
区切りを入れるのはとても難しいと思いませんでした。上手に区切る他執筆者様は何に注意を払ってるのでしょうね?