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墓王!  作者: 菊次郎
フェーズイン
28/129

朝市と朝食と血筋

ご覧頂きありがとうございます。


メリークリスマしておめでとうございます。

1ヶ月ほど時間が空いてしまい誠に申し訳ありません。

まだフィール編は続きますが毎日0時に5~6話ほど上げていく予定です。

 翌朝、音の鎖亭の前で待っていると、ティアラとコロネが迎えにきた。


「おはようございます、ソーイチロー様」

「おはよーおにいちゃん」


「ふたりともおはよう。じゃあ早速朝市のほうに行こうか」


 朝市に2人を連れて行く目的は荷物持ちをしてもらう…ことではなく、3人の家に不足している調味料を買ってもらうことだ。腕は良さそうなのに、家庭の事情により圧倒的に調味料の類が足りていない。それを買い足して俺の朝食や昼食を豊かにしようという考えだ。


 目的を再確認し、俺達は朝市に向かい始めた。相変わらずの賑わいで、焼き立てのパンの香りや果物、香草類、肉の匂いが立ち込めていた。近くに漁場でもあれば、これに魚の匂いが足されたであろうが、偶にある干し魚では周囲の食材の匂いには勝てないのだろう。

 コロネは俺の隣でスキップでもしそうな勢いで歩いており、周囲を興味深そうにしながらキョロキョロとしている。そんな注意散漫なのに周りの人とはぶつかる気配も無い。上を見ているのに足元にある小さなカゴはしっかり避けたりと、かなり器用に歩いている。

 ティアラは俺の3歩後ろで黙って歩いている。ふと気がつくとその気配が感じられなくなって、慌てて振り返るとちゃんとついてきている。そしてまた前を見ると気配がだんだん感じなくなる。金髪の座敷わらしと言われれば信じてしまいそうだ。少々体は発達しているが。


 昨日きた朝市の露天につくと、俺のことを覚えていた野菜売りのおっさんが声を掛けてきた。


「お、昨日のにいちゃんじゃないか!どうだい今日もうちの野菜を買っていってよ!」


「ええ、そう思って来ましたよ。また100ゼルのセットでお願いできますか?」


「ありがとよ!」


 と、お願いしようとしたら、ティアラが話しかけてきた。


「少々お待ちを。昨日の食材も100zだったのですか?」


「そうだよ」


「ここは私が交渉させて頂いてもよろしいでしょうか?」


「ん?うん、いいよ」


 そう言うと、ティアラは前にでて野菜売りのおっちゃんと交渉を始めた。


「おや、ティアラちゃんじゃないか。お母さんは元気かい?」


「はい、おかげ様でなんとか過ごしております」


「今日はどうしたんだい?にいちゃんと知り合いだったのか?」


「この方に仕えておりますので」


「にいちゃんやるねぇ!」


「あはは…」


 この色男め!みたいな表情でおっちゃんが俺に話しをしてきたが、苦笑いするしかなかった。


「それで野菜なのですが、レタスはそちらの芯が白いほうで、トマトは…そうですね、こちらをいただけますか」


「相変わらずティアラちゃんは目が高いねぇ。このにいちゃんは気にもしてなかったのに」


「男の方ならそれが当たり前かと。店主も他の店で買い物するときは似たようなことになりませんか?」


「そりゃちげえねえ!それでいつもカカァに怒られてるからな!」


 と、ガハハと笑った。そんな会話をしながらも手は止めずティアラもそこから目を離していなかった。同じような感じで他の店も周り必要な食材を買い集めていった。買い終わった荷物はコロネへ順番に渡していった。


「そうだ、ティアラ。ティアラの家にはお茶の類はある?」


「お恥ずかしながら…」


 と言って俯いた。決して責めているわけではないんだが…。


「お茶は嗜好品だからな、俺の我儘だ。朝食の後にお茶が欲しいからついでに買いに行こう。お茶の他に調味料とかの足りないものは無いか?」


 お前んち調味料無いだろ!と、直接言うとさすがに失礼かと思い、嗜好品の買い物に混ぜちゃえ作戦を考えた。これならさりげなくミストさん達の食卓も豊かになるだろう。


「あ…、ありがとうございます」


 ミストさん仕込みの美しいお辞儀を見せてくれた。というか、俺の考えがバレバレだったらしい。赤っ恥もいいところだった。


「バレてるか…。昨日の飯は美味しかったぜ。だけど調味料がもっとあったら、さらに美味しいご飯になるんじゃないかと思ったんだよ。まあうまい飯を食いたいがための俺の我儘だな」


 ティアラはきょとんとした表情をしたあと、小首を傾げながら微笑んでいた。


「コロネ、ソーイチロー様が私達のご飯は美味しいって」


「ほんと!よかった!」


「そうね、これからも頑張ろうね」


「うん!」


 ティアラとコロネは空いている方の手をつなぎながら笑顔で歩いて行った。

 一体何がそんなに嬉しかったのか理解出来なかったが、まあ喜んでいるならいいかと気にするのを辞めた。そしてそんな2人を後ろから眺めながら、残る買い物のお茶と調味料を買い足していった。

 2人の家に戻ると、さっそく朝食の用意をしにコロネとティアラは台所に向かった。


「おはようございます、ソーイチローさん」


「おはようございます、ミストさん」


「2人とも随分と嬉しそうにしていますが、何かあったのですか?」


「俺もよく分かっていません。ただ朝食が美味しかったと言っただけなんですけどね」


「ああ、なるほど」


 合点がいったのかミストさんは納得できたようだ。


「何か知っていますか?」


「そうですね、あの子は何も言わないでしょうから。実はティアラはあまり料理が得意ではありませんでした。意外かもしれませんがコロネのほうが上手なくらいで…」


「そりゃまた意外っていえば意外な気も…でも朝食や昼食は美味しかったんですけど」


「かなり下調べと練習していました。あとは…ティアラは身内以外の他の人から初めて認められたのが嬉しかったのでしょうね。やはりあの子も私達の血筋をしっかりと受け継いているようです」


「ミストさん達の血筋?」


「私達の一族はスチュワードやバトラー、各種メイドを輩出しています。いえ、していました、ですね。人に仕える事を生業としている者からすると、その仕える方から認められるというのは何物にも代えがたい喜びになります。そのためにティアラは毎日遅くまで鍛錬や勉強をしているようです。あの子もあまり体が丈夫ではないので、あまり無理はしないほうがいいのですが…今は言っても聞きませんね」


「聞きませんか」


「聞きませんね、誰に似て強情なんだか…。なのでもし頑張ってる姿を見たら褒めて頂けるとあの子も報われるしょうから、気にかけて頂けると助かります」


 ティアラのは承認欲求に近いものかもしれない。社会的弱者がなり易いという話もあるし。


「分かりました。もし気づいたらそうします」


「はい、そうして頂けるとあの子も喜ぶでしょう」


 そんな雑談をしてるうちに朝食が出来上がった。野菜スープにサンドイッチ、焼いたソーセージが出てきた。野菜の優しい香りと食欲をそそる肉の匂いがマッチして朝からお腹が鳴ってきた。4人分の朝食がテーブルに並び、皆が席についた。そして恒例の…


「「「私達に生きる糧をお与えくださったソーイチロー様に感謝を捧げます」」」


 と、お祈り?を3人が唱えた。お礼を言われるのは嬉しいが、祈られるのは慣れない。


「そのお祈り?なんだけど、どうも慣れないんだが…」


 と、話を切り出すとミストさんが返事を返してくれた。


「ソーイチローさんがそう仰るなら辞めますが、それでも私達の感謝の気持ちは伝えたいのです」


「それなら俺と同じように、いただきます、って言いませんか?」


「それはどういった意味があるのですか?昨日もソーイチローさんは呟いていたようですが」


「本来は位の高い人から食べ物を貰うときに、頭の上や高いところに掲げられてたみたいです。そこから貰うときの謙譲語としていただくから来てます(※諸説あり)。そこから食材となった生き物の命をもらったり、調理人への感謝を表すのに使われていますね」


「なるほど…では私達も同じように「頂きます」と言うようにします。ティアラ、コロネもいいですか?」


「「はい」」


 そうして今度は全員でいただきますと唱え食事が始まった。買い足した調味料がいい味を出していて料理にしっかりアクセントがついていた。サラダには酸味と辛味、サンドイッチには甘みと辛味が絶妙にブレンドされている。これでティアラが料理初心者とはとても思えないレベルだった。


「うん、やっぱりご飯が旨い。ふたりとも、これからも頼むな」


 そう言うと、コロネはニコニコしはじめ、ティアラは無表情ではあるのだが、俺の取り皿に黙ってサラダを山盛りによそってくれた。サラダばかりそんなに食べられない。会話は少ないが優しい雰囲気が流れる朝食を過ごすことができた。


「ああ、そうだ。この辺に長時間居座っても文句言われないお店とかある?」


 しばらくはギルドに行かず、描画魔法の新規開発に時間を費やす予定だ。幸い大鷲討伐で懐具合は暖かい。広場の真ん中とかで無ければ開発するのに場所はどこでもいいのだが、それでも椅子やテーブルがあるほうがいいし、できれば飲み物や軽食がある場所がいい。

 最初は音の鎖亭を考えていたがベッドはあるがテーブルや椅子はないし、食堂を占拠するのも忍びない。勿論頼み込めば了解してくれるだろうが、何となくロンコを助けたことの恩を笠に着る感じがしないでもない。


「広さなど他にご要望はありませんか?」


 とミストさんから尋ねられたので、魔法陣の開発をしたいことなど先ほどの考えたことをそのまま伝えた。


「それならこのままこの家で開発…?というのもされてはいかがですか?」


「いいんですか?」


「ええ。ただ魔法の実験で家を壊されたりすると困りますが」


「勿論そんなことはありませんよ。じゃあお言葉に甘えます」


 と、ミストさんの家で開発できることになった。


フィール編が書き終わったら投稿しようかと考えていましたが、

あまりに時間がかかりすぎて忘れられると考え、大筋が変わらない

ところまで書き上げたら投稿するようにしました。

突っ込みがたくさん来るだろうなぁ…


10文字書いて9文字消すという日々。他の書き手さん達はどうやって毎日投稿とかできるんだろう…

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