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墓王!  作者: 菊次郎
フィール
24/129

償い

ご覧頂きありがとうございます。


前話のあらすじ:ごめんねごめんね~って言ってきた


誤記修正:

引っ越さなくてもらう→引っ越してもらう

「ミストさん、今回の件ですが…コロネを衛兵に突き出すのは保留にします」


「本当に有難うございます」


 とお礼の言葉と共に綺麗な仕草でお辞儀をしてきた。道理で動きが洗練されていると思ったら、貴族へ奉公しに行っていたおかげだった。

 コロネは姉のティアラに「よがっだあああ」と泣きながら抱きついていた。鼻水付きで。ある程度落ち着いたのを見計らってティアラは、


「ほらコロネ、ちゃんとソーイチロー様にお礼ともう一度お詫びを言いなさい」


「ん…お兄ちゃん、本当にごめんなさい。それとありがとうです!」


「私からも、妹を助けて頂き本当に有難うございました」


 2人もちゃんと頭を下げてきた。しかし…話はまだ終わらないんだよね。


「確かに謝罪受け取りました。但し、使われたお金があるので罰は罰で受けてもらわないといけません」


 その言葉を聞いた3人は背筋を伸ばし、こちらへ向き直った。何も反論してこないということは、罰は罰で受けるということだろうか。


「まず、俺は見ての通り冒険者です。ってコロネ、首を傾げないで」


「だってお兄ちゃんはガリガリだよ?」


「ほっときなさい、目指す処が違うからいいんです。話を続けるよ、俺は ぼ う け ん しゃ だから魔獣を狩りに外出しています。そこでお昼の弁当が必要になるんですが、それを作ってもらいたい」


「作るのは構わないのですが…」


 と、承諾をしつつも困惑した顔を浮かべてるのはミストさんとティアラ。2人の懸念事項は分かっている。


「もちろん材料は俺から持ち込みます。あとそうだ、弁当の材料とかどれくらい買えばいいか加減が解りませんので、食材が余ったら好きに処分してください」


 ミストさんとティアラは俺のセリフに驚き、目を見開いている。コロネは頭にクエスチョンマークを浮かべていた。


「あと場合によっては狩りの手伝いを頼むかもしれません。その時は別途給金を支払います。まあ狩りの手伝いといっても荷運び程度ですけどね」


「…どうしてそこまでしてくださるのですか?」


「言ったでしょう、罰であると。これからあなた方は俺のために食事を作り続けるんですよ?それがどれだけ大変なことか…。手を抜いた料理を出したら叩き返しますからね」


 そう言って軽く3人を睨むが効果は無かった。ご飯が食べられると聞いたコロネは小躍りしていて、ティアラはほんの少し目に涙を溜めながら頬笑み、ミストさんは…若干訝しむ雰囲気があった、条件が良すぎるのではないか、と。そこで俺は追加の話を切り出した。


「最後に一点、俺が信頼に足る人物だと思えた時、一声掛けてください。ある事をお願いするかもしれません」


「それを今言っていただくわけにはいかないのですか?」


 すぐに聞いてきたのは、やはりミストさんだった。


「はい。少々信じ難い話なので。本当に突拍子も無い話なのですが、あなた方家族に害はそれほど無い、ということだけは誓えます」


「それほど、ですか?」


「害は全く無いと誓えたらいいのですが、害がゼロだとは決しては言えません」


 自分がかなり不審なことを言っているという自覚はある。「何か判らないけどお願い聞いてね!」と言われているようなものだし。


「ちなみに断った場合は?」


「特になにも。ああ、断ったからといって衛兵に突き出すことはしないので安心してください」


 そこまで説明すると、ミストさんはクスっと笑った。初めての笑顔だが…2児の母とは思えない少女のような笑顔だった。


「あまり交渉事が上手ではありませんね。そこは嘘でも大丈夫と言い切るところですよ」


 俺は視線を外し、頬をポリポリ掻いて誤魔化した。


「ですが…だからこそ信用できそうです。先ほどの件、かしこまりました。“お互いが”信頼出来そうでしたらお話を伺いましょう」


 すっかりバレているが、この弁当を作ってもらう期間は俺が彼女たちを信頼に足る人物か確認する時間でもある。


 そして肝心の“ある事”とは、俺の精を受けたら魔力欠損症が治癒するのか臨床試験を行うことだ。


 俺に抱かれることで魔力の最大放出量が増える、つまりは魔力が増えるという事は極秘だ。外部に漏れた場合は俺の自由が一切無くなる可能性が高いし、セフィリアにも迷惑を掛けることになる。そのためどうしても秘密を守れる人物か見極めなければならないし、治験の関係で居住をセフィリアのところに移す必要があれば引っ越してもらうなど、俺のことも信頼しなくてはいけない。

 まあぶっちゃけると、「あんたの魔力欠損症を治してやるから、ちょっと抱かせろ」と言って深い森の中にあるセフィリアの庵に連れ出すのだから、怪しいことこの上ない。

 セフィリアにこっちに来てもらうことも考えたが、計測機器や大量の資料があるのでどちらにしても臨床試験はセフィリアの庵になるだろう。

 相手側からしたら、魔力欠損症を盾に男の欲望を吐き出したいだけに見えてもおかしくないのだ。最低でもこの件について俎上に載せてもらえるほどには信頼されないとダメだし、相手が秘密を漏らさないと信用できるか確認しなくてはいけない。


「よろしく。さっそく明日からお願いしたいんだが、最初の鐘(朝6時)くらいにここへ来れば問題ないか?」


「はい、問題ありません。あと弁当を作るお時間は…そうですね、30分ほど頂きたいのですが構いませんか?あとよろしければ朝食も一緒にお作りしますが」


「ああ、じゃあ両方よろしく。あと朝市は最初の鐘が鳴る頃に始まってる?」


 串焼きのおっちゃんがいた屋台(置き引きの現場)の場所が朝方は市場になる。朝と夜で入れ替わっていて、ちょっとだけ朝市を見てみたが中々活気があった。


「そのちょっと前くらいから市は立っていますね。ただ市の価格はお昼の鐘が鳴るころが一番安くなりますが…」


 3人分の食材の価格のことを気にしてくれていた。いくら食材とはいえ、3人分ともなれば結構な値段はする。まあそこら辺も追々考えていこう。


「分かった。ではまた明日な」


「「お気をつけてお帰りください」」

「お兄ちゃんまたね!」


 挨拶をし外にでると、すっかり真っ暗だった。21時の鐘はまだ鳴っていないから、急いで帰れば音の鎖亭のご飯に間に合うはずだ、道に迷わなければ。


 20分ほど走り今回は道に迷わず音の鎖亭に辿り着いた。只今戻りましたと女将さんに声を掛けると、


「おやまあお帰り!待ってたんだよ!あんた、うちのロンコとシルバーを助けてくれたんだってね!どうして言ってくれなかったんだよ、水臭いったらありゃしない!」


 女将さんは夜だというのに声がとても大きい…


「なんというか自分から言うことじゃないじゃないですか。そもそも証明できるものでもないですしね」


「なんとまあ謙虚な子だね!あんた本当にそれでも冒険者かい?唯でさえ見かけが細っこいんだから、態度くらいは図々しくいかないと依頼が取られるんじゃないかい?」


「見かけは言わないでくださいよ…散々言われてるんで…。ところで夕御飯はまだありますか?」


「ああ、あるよちょっと待ってておくれ。あんたー!ソーイチローがご飯だってよ!!」


「あ、お帰りなさい。ソーイチローさん」

「おかえりー、ソーイチロー」


 女将さんが料理を注文してくれたのと同じタイミングでロンコとシルバーが出てきた。


「ただいま。2人はここで働いてるのか?」


「私はここの娘だしね」


 とはロンコの弁。シルバーは何となく料理人(女将さんの旦那)を手伝っていたらしい。


「あとこれ、薬草を届けれくれた依頼金の500ゼルよ。本当に助けてくれてありがとう」

「ソーイチロー、ありがとうな!」


 と、依頼金と2人は再度のお礼を言ってきた。依頼金は約束だからそのまま受け取った。


「いや、間に合って何よりだよ。ロンコの足の怪我はどう?」


「ええ、平気よ。今は痛みも殆ど無いわ」


「そうか、シルバーが頑張ったか?」


 ニヤっと笑ってシルバーを見ると、シルバーは苦笑いをしていた。


「ええ、とても頑張ってくれたわ。もう少し重くてもいいなんて言うから、そこら辺に転がってた石も持ってきたわ」


 と言って入り口付近に転がってる石を指さした。石っていうか岩に見えなくもないんだが…


「道理で途中から重くなったわけだ…」


「いや気づけよ」


「はいよ!お待ちどう様!」


 そんな話をしていたら女将さんが夕食を持ってきてくれた。メニューはパンにビーフシチュー、サラダに焼き肉だった。昨日よりずいぶんとヘビーな量なんだが…


「女将さん?」


「ああ、この焼き肉はサービスだよ!うちの子達を助けてくれたお礼だよ!ここに泊まっている間はなにか一品オマケしてあげるから楽しみにしてな!」


 といってまたカラカラと笑い出した。肉肉すぎてちょっと重いメニューになっているがやはり美味い。深みがある味付けのビーフシチュー、噛みしめるとジュワっと肉汁がでる焼き肉。


「あはは、ありがとうございます。しかし本当に美味しい夕飯ですね」


「うちのダンナは無愛想だからね!その分料理の味付けに集中してるのさ!」


 そう言って他のテーブルを回り始めた。よく考えたらまだ旦那のほうに会ったことがなかった。


「あ、女将さん、明日から朝食と弁当は要らないです」


「おや分かったよ。どこかいい店を見つけたかい?」


「これからいい店になるのかな?」


 女将さんはもちろん理解できなかった。


主人公のこの処罰、ミスト達の環境にただ同情するのみではなく、

損得勘定も入れて考えています。

情と理が珍しく噛み合った例では無いでしょうか。

成立するかはまだ不明ですが。


一方、ミストも計算していて今後どう動くべきか娘たちに言いくるめています。

そこら辺の心理状態も考えたのですが、いざ文章を起こし見直してみたら

「これヒロイン…?」

とかなり生臭い話になったのでカットしました。

なんで幻想を求めたら現実的になったんだろう…

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