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墓王!  作者: 菊次郎
フィール
23/129

謝罪

ごごごごご覧頂きありがとうございます。

なんかえらい人数の方がお気に入り登録して頂けました。

冷や汗が止まりません。いい汗かきたいです。


前話のあらすじ:置き引き犯をゲットだぜ!


修正:コロネさんもそれを察したのか→ミストさんもそれを察したのか

「誠に…誠に申し訳ありません。この度は私の娘が大変なご迷惑をお掛けしました。すでにソーイチロー様のお金に手を付けている始末、どのような謝罪をすればいいのか思いつきません」


「…」


「しかもこの子は私とティアラの生活費を稼ぐため、犯罪に手を染めました。この子の罪は私が引き受けますので、何卒ご容赦を…」


 そう言い放つとミストさんは左手を広げ机の上に置いた。何をするのかと見ていると、いつの間にか右手にナイフを逆手に構えている。

 ギョッとして『楔の盾』を即座に展開し身に纏う。しかしそれを見たミストさんは俺に儚い笑顔を見せ、「このナイフはあなたに向けるのではありません」と呟いた。

 その刹那、ミストさんは躊躇いもなくナイフを振り下ろした。自分の左手の親指に向かって。


「!!」


 俺は咄嗟に『楔の盾』をミストさんの左手に極小展開し、ナイフの刃筋を逸らすことに成功した。逸れたナイフは深々と机に刺さり、ミストさんの本気具合が知れる威力だった。


「お、おかーさん!!なんで?!」

「おかあさん…」


 最初に叫んだのはコロネ、後から囁いたのはティアラだった。


「…何故お止めになるのですか?」


「そりゃ俺が望んだ謝罪の方法では無いからですよ。いきなり親指を渡されたって、どうすりゃいいんだよ…」


「しかしそれでは私達の罪が贖えません。これ以外には…」


「ああもう待って待って、今考えるから!」


 おかしい。ちょっと前まではここに突入するつもりだったのに、なんでこんな裁判官のように悩むはめに…。まあそれは置いておいて。

 まず置き引きをしたコロネは猛省をしているし、罰の親指切断の話を聞いたときも青い顔をしていた。母親のミストさんは…子を守るため代わりに罰を受けようと自ら指を詰めようとした。ティアラは…今一分からん。反省と謝罪という意味では正直お腹いっぱいになるくらいしている。被害も使われたお金を見たが50ゼルほどで、本当に夕ごはんのおかず(ちょっと豪華)を一品増やした程度しか使われていない。

 家の中の様子を見れば判るが、良く言ってとても質素な生活を営んでいる家族のようだった。コロネは贅沢な暮らしをするために…ではなく、家族に良い物を食べさせてあげたくて犯罪に及んだらしい。俺は甘いと言われるかもしれないが、コロネを官憲に突き出して処罰されるのを見たいとは思わなかった。

 しかし最大の問題は、再犯しないか?といことだ。元々の罰則である親指切断だって再犯させないことが目的のはずだ。ここで見逃せばまた同じことを繰り返すのではないかと、どうしても疑惑が晴れなかった。

 結局はこの家族の稼ぎ手が一番若い…というか幼いコロネしかいないことが問題だろう。


「一つ質問をしますが…なぜ、働き手がコロネしかいないのですか?あまり体調は良さそうに見えませんが、それでも出来ることはいくらもあると思いますが…」


 かなり踏み込んだことを聞いていると思うが、今後の判断をする上でどうしても知って置かなければいけないことだった。ミストさんもそれを察したのか、少しの葛藤の後に理由を説明してくれた。


「それは…私達が魔力欠損症に掛かっているからです」


 セフィリアの研究課題でもある魔力欠損症。体から魔力が無くなると重度の貧血や体力不足に陥ることはあるが、決して死に至る病では無い。しかし、別名として社会的死亡宣告とも言われている。

 このアースガルドでは一般的に身分を証す(あかす)手段として、戸籍登録証やギルド印を用いている。その登録証やギルド印は左手の甲に魔法陣を刻んでいるのだが、この魔法陣の維持に極僅かな魔力が必要なため、魔力欠損症の患者はその魔法陣を維持できず無くしてしまう。そのため身の証を立てることが出来ないのだがその結果は…まともな宿に泊まれず、働き口も見つからず、高い買い物もできず、それ以前に街の中にも入れない。


 また魔力が無いということは、魔法具も一切使えないことに他ならない。少量の水を出したり、薪に着火するのも簡易な魔法具を使っている。そのために食事は冷たいものだけ、冬は薪で暖を取ることもできず、大量の水を汲んでこなければいけないことになる。


 現代日本に例えるならば、身分証明証は持ってないし電気ガス水道も使えない生活、と言えばどれだけ悲惨か判るだろうか。


 では街の外に出て自給自足の生活をすれば…とはならない。街の外は魔獣が闊歩し、盗賊が虎視眈々と隙を狙う食うか食われるかの世界だ。


「なるほど、魔力欠損症だったのですか…。失礼なことを言いますが、どこぞの貴族の妾や娼館なら可能なのでは?こう言ってはなんですが、ミストさんは男好きのしそうな方ですし…」


 体を売れ、と俺は言っているのだ。世の中には性風俗に関わりながら立派に子供を育てている母親はたくさんいる。その手段すら取らず、犯罪に手を染め無くてはならない状況に陥るならば、頑張っている母親達に失礼だ。

まあ自分でも鬼畜な事を言っている自覚はあるが…。


「私が12歳くらいでしょうか、魔力が段々少なくなっていくのを自覚しまして…調べたら魔力欠損症の可能性が極めて高いことが判りました。両親と相談し私は…ソーイチロー様と同じ結論に達しました。貴族様に奉公し妾として生きていこうと。両親が奔走してくれたおかげで多少名のある貴族様にメイド兼妾として雇われることができました。この子達はその頃に産んだ子なんですよ」


 ミストさんは本当にティアラとコロネが可愛いのだろう、本当に愛おしそうに見ていた。一息ついてミストさんの話は続く。


「お屋敷では妾としてだけではなく、メイドの様々な技術を取得して何とか必要とされるようにしてきたのですが、ある時に私が魔力欠損症であると広まってしまいました。そして…そのまま貴族様のお屋敷から親子共々追い出されてしまいました」


「ん?なぜ追い出されたのですか?」


 ミストさんの話しを遮るように質問をした。魔力欠損症は人に移るような病ではないからだ。


「魔力欠損症は…世間様では人に伝染ると言われています」


 たった今考えていたことと正反対なことをミストさんが言い始めた。


「あれ?そんな話は聞いたことがありませんが。文献にも書いてなかったはずですし。ただ母娘間では遺伝しやすいとはありましたけど」


「よくご存知ですね。私が調べた範囲でも伝染するとは書かれておりませんし、実際人様に移したこともありません。ですが…治らない病なので、その恐ろしさから伝染すると誤解されているのかもしれません」


 どんな世界でどれだけ情報化が進もうとも、結局は人が信じたいことしか信じないというのは変わらないことだった。


「ところでミストさんのご両親は?」


「私の奉公先を探すときにずいぶん無理をしたようで、それが祟ってすでに他界しています」


「…不躾なことを聞きました」


「いえ」


 そこまで説明された俺はセフィリアの顔を思い浮かべていた。ひょっとしたらこの状況をセフィリアは知っていたのではないか?それで魔力欠損症をなんとかしようと研究していたのだろうか。

 そこで俺は…今回の罰の内容をミスト一家に告げた。

魔力欠損症については、過去に同じ話を記載していますが、結構大事な話なのでもう一度書き起こしました。結構忘れるので…


ミストは初期プロットでは12歳で子供を産んでいましたが、本文に年齢を記載するのをやめました。既読者数にビビっt


しかし、このくらいの時代背景(短い寿命、高い乳幼児死亡率、低い労働効率)なら12歳で子を持つのはおかしい話では無いんですよね。逆に高い年齢で初産のほうが違和感があって…

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