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墓王!  作者: 菊次郎
フィール
21/129

置き引き

ご覧頂きありがとうございます。


前話のあらすじ:ワニワニパニック

 フィールで午後3時の鐘が鳴る頃、再び門兵のコワードと話すこととなった。


「お、早いじゃないか。ゴブリンは倒せたか?」


 Fランクでは街の外に出る依頼は数少ない…というか殆ど無い。唯一とも言えるのは定常依頼のゴブリン退治かモグラ退治であるが、一般的にモグラは狙って倒せるものではない。そのためルーキーの冒険者が外に出る=ゴブリン退治と相場が決まっているらしい。


「いえ、モグラを倒してきました」


「お、運がいいな。これからも、もし見かける事があったらどんどん倒してくれ」


 狙って倒したんだけどまあ言わなくてもいいかな、と思いコワードの言葉を訂正せずに会話を続けた。


「やっぱりモグラは厄介ですか?」


「厄介だね。街道を穴ぼこだらけ落とし穴だらけにされるんだ、たまったもんじゃないよ。おまけにモグラ塚が街道に近づいたら、地面を叩いて追い出すのも俺たちの仕事の一つだからな…」


「それは大変ですね…じゃあこれからもどんどん倒していきますよ」


「そうしてくれ、っと、では次の人!」


 相変わらずこの時間は忙しくなるようだった。背を向けてフィールの街の中に入ろうとしたとき、コワードが言い忘れていたことがあったようだった。


「おっと、朝方話したスリだがな、さっきも未遂があったようだ。技術は大したこと無いがとにかくすばしっこくて捕まえられなかったらしい。注意しとけよ」


 と、進言してくれた。


「ありがとうございます。注意しておきます」


 そして今度こそフィールの街中に入り、その足でギルドに向かう。中に入ると人は疎らで、混む時間には少し早いようだった。カウンターを見ると名前は知らないが、いつもいる受付嬢がいた。


「いらっしゃいませ。あ、ソーイチローさん、ギルドマスターが呼んでいましたよ」


「そうですか、じゃああとで伺いますね。先に報奨のほういいですか?定常依頼なんですけど」


「かしこまりました。ではこのトレーの中においてください」


カバンの中からモグラの尻尾を10本取り出しトレーの中に置いた。


「これは…モグラの尻尾に間違いないはずですが…少々お待ちください」


 そう言ってトレーを持ってカウンターの奥に引っ込んでいった。数分待つと受付嬢が戻ってきた。


「ソーイチローさん、ギルドマスターがお呼びです。先に向かっていただけますか?あちらの奥に階段がありますので、登って一番奥の部屋がマスターの部屋になります」


「…分かりました、では」


 このタイミングでマスターのギザルムに呼ばれるってことは、モグラの尻尾が拙かったのかな?本数か狙い通りにモグラを狩れたことか…まあ行けば判るか。そこまで考えてギルドマスターの部屋に向かった。ギルドマスターの部屋の扉は他の扉より少し豪奢にできていた。部屋の前についたのでノックをし、ギザルムの返事を待った。


「入れ、開いてるぞ」


 失礼しますと一声掛け中に入ると副マスターのシルクさんも横に控えていた。


「まあ取り敢えずは座れ。シルク、飲み物持ってきてくれ」


「かしこまりました」


 シルクさんは了承の返事を返し外に向かった。飲み物を出されるということはすぐには開放されないってことか…


「呼んだのは2点だ。この間の模擬戦の魔法と今回提出されたモグラの尻尾についてだ。そもそもあの魔法はなんだ?というかそもそも魔法だったのかすら分からん」


 俺の描画魔法が特殊であることはセフィリアから散々言われてきていて、どこまで一般に話すかは相談していた。その話し合いで決めたことは、俺の精を受けると魔力が増えるということだけは秘密にし、ほかはオープンにしていくことになった。そうでなければ活動が著しく制限されてしまうから、と。

 そこまで思い浮かべていると、テーブルにはいつの間にか紅茶が置かれていた。シルクさんはマスターの横にいつの間にか控えていた。本当にいつきたんだ…


「あれは描画魔法ですよ」


「はあ?描画魔法ってあれだろ?空中に魔法陣出して「出でよ!ほにゃらら!」ってやつだろ?あんなに立体的な…なんっつったっけ、ショットガンだっけ、みたいになるもんなのか?」


「普通はなりません。俺のショットガンで凡そ300から500程度の魔法陣が組み合わさって、あの形状になってるんですよ」


「へ~そんなこと出来るん「出来ません」だ…」


 ギザルムの感嘆の間に否定の言葉を挟んだのはシルクさんだった。そこからシルクさんのターンが始まった。


「一般的に描画魔法は空中に一枚の絵を描くようなものと言われています。しかも時間を掛け過ぎると最初のほうに描いたほうは消えていくので大規模な物はまず作れないといっていいでしょう。また、描くのにも非常に時間が掛かることから敬遠され、オレンジ級以上の魔法使いは詠唱魔法を主に使っていきます」


「と、言ってるが?」


 あまり魔法には詳しくないらしいギザルムは疑問そのまま俺に投げてきた。


「一般的にはそのようですね。但し俺は特殊体質らしく、最大放出量は赤級ながら連続して魔力を放出できるんですよ。だから魔法陣を組み合わせつつ色々な事が出来るようになったんです」


「つまりどういうことだってば」


「でっかい樽に入った酒をジョッキですくって飲むのが普通の魔法使い、コックが付いててそこから飲むのが俺です」


「なるほどよくわからん。まあ描画魔法でいろんなことが出来るってことだけ覚えておけばいっか」


 ギザルムはあまり理解していない…というか理解するのを諦めているようだが、隣にいるシルクさんは青い顔をしながらこちらを見ていた。女性であることからも彼女も優秀な魔法使いなのだろう。


「ってことは、このモグラも描画魔法で倒したのか?もし秘密にしたいってんなら無理には聞き出さないが…」


「この程度なら話せますよ。地下を探査する描画魔法を作りました。まず魔力波を出す魔法具を用意してそれを地中に埋めて、魔法具から出る魔力波は地中の空洞やモグラ、石などの境界面を反射しますから、それを描画魔法で受信します。俺が歩きながら受信すればおおよその形はつかめるので、そこからモグラの位置を掴み攻撃して倒しました」


「…おいシルク、理解できたか?」


「一応は…私も探査魔法が使えますからその応用とも言えます。しかし同じことをやれと言われれば不可能とは言いませんが、かなり時間が掛かります。連続的に反射波を受信することが出来ないので、どうしても…」


「かぁ~!ダメか!せっかくモグラ退治の目処が立つかと思ったのにな!」


「位置をつかむだけなら魔法具で代用出来るかもしれませんが、地中にいるモグラを倒す術がありませんよね?」


「優秀な魔法使いなら出来るだろうけど、優秀ならわざわざモグラ退治とかしないしな」


 微妙に諦めが付かないギザルムは、くそーとまだ呟いていた。


「んで、このモグラの尻尾はその魔法で倒したってことか」


「そうです。やっぱり尻尾10本は多すぎましたか?」


「だな。Fランクがいきなり尻尾10本も持ってこれば、ギルドランクを上げるために尻尾だけどっかで買い取ったって考えちまうからな」


 危惧した通り、不正を疑われていたようだった。


「これで疑いは晴れましたか?」


「端から疑っちゃいねえよ。まあ色々と分かった。ところでどうする?さっそくギルドランク上げるか?」


「ランクを上げるのに試験があるようなことを言っていませんでしたか?」


「FからEランクになるのに試験なんざしないよ。手も足りないしな」


「なるほど、ではよろしくお願いします」


「あいよ、んじゃシルク頼んだわ。もし困ったことがあったら相談させてもらうかもしれんが、構わんか?」


「出来るかわかりませんが、相談程度なら大丈夫ですよ」


 と、了承の意を表しておく。


「ありがとな。あと今回だけモグラ退治の報奨に上乗せしておくから、これからもよろしく頼むわ。あとモグラの毛皮はどうした?あれも毛艶や防水性から結構値段高いぞ」


「…全部破壊してしまいました」


「勿体無いことを…んじゃ今日はありがとな」


「はい、では失礼します」


 それで終わりの挨拶を交わし、一階のカウンターに向かった。受付嬢には話が通っているようですぐにランクアップの手続きが始まった。手続きと言っても左手の甲にあるギルド印をFからEに文字を変えるだけだが。


「すごいですね~。加入した翌日にランクアップした人は初めて見ましたよ。報奨金も出ていますね。一本100ゼル10本で1000zですが、今回だけ1割上乗せされて1100zです。お受取りください」


 と、対応してくれた。日本円に直すと一匹1000円か。そこまで高くはないが街の近くで稼げるのは楽だな。


「ありがとうございます。色々と運が良かったんですよ。では失礼します」


 と、挨拶をしギルドの外に向かった。

 ギルドの外は夕暮れ時であり、市民の夕食を出すため様々な屋台が軒を連ねていた。宿で夕食が出るとはいえ、屋台から肉を焼くいい匂いを漂わせていて小腹が空いてきていた。


「ウマそうだなぁ…」


「ウマそうじゃなくて美味いんだよ!どうだ兄ちゃん一本10zだよ!」


「んじゃもらおうかな。2本ちょうだい」


「あいよ!まいど!」


 お金を払い地面にカバンを置いて串焼きを食べる。肉に塩を振っただけのシンプルな串焼きだが、空きっ腹にこれはたまらなく美味い。


「これは美味いね。おっさんもう一本くれ」


「ありがとよ!手元のが食べ終わったら渡すよ」


 夢中で食べていると2本の串焼きはすぐに無くなった。そこで追加の代金を払おうと思いカバンを見ると…無い。カバンが無い。


「あ、あれカバンが無いぞ?!」


「にいちゃんあそこあそこ!走って逃げてるのがいるぞ!」


 と言われた方向を見ると、小柄な少年が俺のカバンを持って一目散に逃げていた。しかも足がかなり速くて追いつけないときてる。1万zくらい入ってるのに…どうしよう…。


思ったより長文になってしまい投稿が遅れてしまいました。


やっと…ヒロインが出せた…

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