冒険者ギルド
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前話のあらすじ:やっとフィールの街の中に入った。ギルドの建物の前についた。道に迷わなかった。
誤記修正:
取らないよの→取らないのよ 殿様かよ…
ギルドの建物の中に入ると受付、ご依頼、登録、報奨と書かれたカウンターがあり、それぞれに見目麗しい女性が座っているが、全員笑顔の仮面を被ってるように見えた。なぜ全員そんな顔をしてるのかと疑問に思ったが、登録と書かれたカウンターの前で騒ぎが起きており、そのせいで仮面をつけているようだった。
まずは薬草を届けるのが先決だと考え、
「ここかな?こんにち…」
「巫山戯るな!なんで俺たちが仮組みなんだよ!とっとと依頼をやらせろ!」
3人の男たちがカウンターの前で騒いでいて、受付嬢は感情のこもらない視線を男たちに向けていた。
「何度も申し上げますが、Bランク以上の冒険者による推薦状が無ければいきなり本採用にはなりません。仮組みで下積みをするか正規冒険者と同じパーティで経験を積んでいただいたあと、採用試験を受けていただくことになります」
「俺達はこう見えても村で一番の戦士だぞ!そんな御託はいいからとっとと仕事回せよ!どんどん解決してやるって言ってるだろうが!」
一番騒いでいる大男は背中に刃が欠けている大きな斧を担ぎ、もう一人も背中に刃こぼれした大剣を背負い、一番後ろにいる男は腰に短剣を付けていた。3人とも胸から入場証を掲げているが、俺の持ってる入場証と形は同じだが色は赤くなっている。皆が思い思いな革鎧らしきものをつけていたが、3人ともとても臭かった。水をぶっかけてやりたいと思ったが、ここでさらに騒ぎを起こすのも面倒になるので素直に違うカウンターに並んだ。このカウンターの受付嬢も髪をショートにして出来る女の雰囲気を醸し出している。
「あの、すみません。薬草採取の依頼を代理で届けにきたのですが、ここでもよろしいでしょうか?」
「はい、大丈夫ですよ。代理とのことですが、どなたの代理でしょうか?」
「ロンコとシルバーの依頼です。森の中で足を怪我してしまい、通りがかった俺が代理で届けるように言われました」
「なるほど、では依頼の品を確認させていただきますね」
薬草の束が入った袋を職員に渡すと、そのまま鑑定係の職員を呼び鑑定を始めた。すぐに鑑定が終わり品にも問題が無かったようで依頼は完遂になった。
「こちらの品で問題ありません。お疲れ様でした。ところで…怪我されたと言われましたが、どちらが怪我していましたか?」
「ロンコのほうですね。歩けないほどひどい訳ではないようでシルバーとゆっくり戻ってくるはずです」
「なるほど、ロンコが怪我するなんて珍しいわね…いつもはシルバーがドジ踏んで怪我するんですけどね」
「そしてロンコがフォローするという感じですか?」
「クスッ…よくわかったわね、いつもそんな感じよ。まあそもそも無茶ぶりするのはロンコのほうで、シルバーが素直に受けて怪我するんだけど」
共通の知人の話のためか、受付嬢の口調がだんだんよそ行き用ではなくなってきた。こっちのほうが親しみやすくて助かる。
「何やってるんだか…ところで、俺も冒険者になりにきたんですが…やっぱり仮組みからになるんですか?」
「基本的にはそうです。今は冒険者志望が多すぎてちょっと質が下がっちゃってね…こういう処置を取っているのよ」
「あらら…どうやって生活していこうかな…」
「仮組みは街中の力仕事が主な依頼になるから、それだけでもなんとか食べていけるわよ」
「力仕事か…俺は魔法使いですが同じ扱いになりますか?」
「あら、あなた魔法使いだったの?服装が市民と同じだし、男で魔法使いって珍しいから分からなかったわ。じゃあちょっと魔力鑑定機に触ってくれる?優秀な魔法使いならいつでも冒険者になれるわ」
「そうなんですか?」
そう言われ、セフィリアのところにあったのと同じ簡易魔力鑑定機に触り、魔力を込めた。
やはり鑑定機は赤く光り、変わらず赤級の魔法使いであることを差し示していたが、以前測ったときより若干黄色かかった赤色になっていた。
「うーん、赤色、かしら…ごめんなさい。魔法使いで登録できるのは黄色以上なのよ」
いつの間にか大人しくなっていた3人組の男たちは、受付嬢の会話を聞いていたのか大笑いをし始めた。
「ブハハハハハハ!聞いたかお前ら!あいつ赤色程度なのに魔法使い名乗ってるぞ!」
「ブヒャヒャ、赤色とか村にいたクソババアと同じじゃねえか!」
「やめとけやめとけ、家に帰ってママのおっぱいでもしゃぶってろよ!」
ヤジが煩いが構えばさらにややこしいことになると思い、無視して会話を続けた。
「そういえば紹介状を預かってるのですが…」
「あら?そうなの?ちょっと見せて…ってマスター宛じゃない。今ってマスターは紹介状を受け取らないのよ」
「何故です?」
「実は紹介状という名の陳情書がたくさん来ていてね。それで一端受付を停止しているのよ」
「うーん、じゃあマスターに一言「スカートのはき心地はいかがでしたか?」とだけ言伝いいですか?」
あまり大声で言うものでもないため、受付嬢に耳打ちするようにして話した。幸い、後ろのほうでは先ほどの3人組が騒いでいるため、周りに話は漏れていなさそうだ。
先ほどの一言はセフィリアから教わったギルドマスターの過去話である。ギルドマスターが若い頃、魔獣からお漏らししながら逃げあまつさえ替着がスカートだったという…もし俺が同じ過去を知られていたら穴掘って埋めたい。
そう伝えて貰うようお願いした後ふと気がついたが、ギルドマスターがセフィリアの知らない人物だったらどうしよう?
「?、どういことか分からないけど…一応聞いてくるわね。少し待っててくれる?って思ったけど、ちょっとこっちに来なさいな」
「あ、はい」
代替案が思い浮かぶ前に、そう呼ばれてカウンターの隣にある扉を開けられ、その奥にある休憩室のような場所に連れていかれた。
「ここは?」
「あのままあなたをカウンターの向こうで待たせていたらさっきの3人組に絡まれると思ってね。それとなんとなくだけど、ただの冒険者志望じゃない気がするの。じゃ、もう少し待っててね」
と、言い残し紹介状をマスターに届けに行った。
「まあセフィリアの知ってるギルドマスターじゃ無かったらその時はその時だな。あと一体何なんだろうな。なんとなく冒険者志望に対する風当たりが強い…のかと思えば、普通に接して気を使ってくれたり。イマイチ態度がはっきりしないな」
まあ適当に座って待つか、と思って椅子を引いて座ったとたん、ベン!と扉が勢いよく開けられた。そこから頬に大きな切り傷がある頭が禿げ上がった筋骨隆々な大男が休憩室に入ってきた。一歩一歩の踏み込みが強いのか、なんとなく建物が揺れている感じもする。
「貴様が、この紹介状を、持って、きたのか!」
「あ、はい。そうですが何か…」
「さっきの話は誰にもしてないか!!」
「さっきの話と言うと、スカートの」
「シャアアアアアアアアアラッアアアアアアアアアプ!!!」
判りやすい悪漢が出てきましたが、もし実際に悪漢と出会ったらどうするでしょうか?
例え戦う力があったとしても、実害がなければスルーするのではないでしょうか。