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墓王!  作者: 菊次郎
フィールの冒険者活動
102/129

予言

ご覧いただきありがとうございます。

※しょ~もないお話且つしょ~もないオチですので、

苦手な方は読み飛ばしても本筋に影響はありません。

「なあ、ソーイチロー、これ本当に着せるつもりか?作った俺たちが言うことじゃないが…」


「パァーフェクツッ!惜しみない賞賛を送ります。俺が注文した通りの水着を作ってもらえました」


「そ、そうか…喜んでもらって何よりだ」


 今日は注文してあった水着を防具屋の”ファルカスの大針”に取りに来たのだ。防具屋に水着なんぞ注文するな!と言われたが、信用且つ安心できる店はここしか知らなかったからしょうがない。それに打ち合わせの最後には店主であるガルベスも乗り気だったのだから問題は無い。


「でもこの水着を作った職人さん達、気分を悪くされたりしませんでしたか?」


「あ~…色々だな。仕事だからと割りきったやつやこんなの防具じゃないと怒鳴ったやつもいたし、大笑いしながら作ってたやつもいた」


「そうですか…ではお詫びとお礼にこのお酒でも飲んでください」


 さすがに無茶させたと考え、ワインを二本ほど差し入れした。陶器製で一本3リットル程度入ってる大きいタイプだったから、ここまで持ってくるのに肩が凝ってしまった。


「おっ、ありがとよ!若けぇのにしっかりしてるな。これであいつらもしっかり機嫌治すだろうぜ」


 最近はこういう差し入れも少なくなったもんだ、などと愚痴が始まったので、急いで残りの代金を渡して店を辞した。




 ティアラとコロネを伴いセフィリアの庵に戻ってから一週間ほどしただろうか、俺はみんなに向かって「明日ピクニックに行こう!」と宣言した。


「いきなり何を言っておるのだ、お主は」

「あらあら、じゃあお弁当を用意しなくちゃいけないわね」

「…」

「やったぁ!ピクニック~!」


 呆れた顔をしているセフィリアに、頬に手を当て何を作ろうかと考えるミストさん、ティアラは持っていく機材を思い浮かべているのだろうか、コロネは小躍りしていた。


「そして向かう場所は森の中にある池だ。草原と小石の水辺のところだな」


「ああ、セタカダイハギの草原か。今の時期は一面黄色になってるじゃろうから、さぞ美しかろう」


「セタカダイハギって?」


「なんじゃ、知らずに場所を決めておったのか。膝くらいの高さの草でな、この時期は黄色の花を咲かせ葉も黄色くなるのじゃ。毒にも薬にもならん草じゃが、草原一帯が一色に染まるのは見事じゃぞ」


「へ~そうなんだ。楽しみだな」


「お主は何故その池を選んだのじゃ?セタカダイハギのことを知らんとなると、他に要因があるはずじゃが」


「そこだとみんなで泳げるから。水辺も素足で歩いて痛くないし、水浴びには最適だったからね」


「また訳わからん行動が始まりおったか…」


「そしてこれが各自の水着、明日よろしく」


「何故お主がワシらの水着を持っておるのじゃ?!」


「見たいから」


「駄目だこの馬鹿、何とかしないと…」


 ガクリとうなだれたセフィリアは別として、ミストさん達三人は黙って受け取ってくれた。


 そして翌日、幸いなことに好天に恵まれたが、少しだけ肌寒い日だった。現地までおよそ1時間ほど歩いただろうか、目的地となる池に到着した。その池は地下水がわずかながら吹き出していて、それが貯まった結果出来た池のようだった。池自体の水深は浅く、また池の縁は地下から出てきた砂で出来ており、そのため泳ぐには悪くない環境だった。俺たちの周囲にはセフィリアの言っていたセタカダイハギが生い茂り、花も葉も黄色く染まった草原が広がっていた。


「お~、すごい風景だね」


「うむ、正にセタカダイハギが見頃な時期じゃったな」

「あらあら、これは…絶景ねぇ」

「…すごい」

「うわあああ!すごいねおにいちゃん!」


 みんなしばらく眺めていたが、役目を思い出しピクニックの用意に取り掛かった。といっても敷布を広げ荷物を置くだけだったが。そしてやれやれと呟いていたセフィリアが池に向い、水に手を付けた後戻ってきた。


「の、のう、ソーイチロー。今日は少し肌寒いし水も冷たいから、水着は無しでもいいじゃろ?」


「それを諦めるなんてとんでもない」


「じゃがの」


 セフィリアに最後まで言わせず、かぶせるようにして俺は話を続けた。


「こんなこともあろうかと!『水着を見るためには何でもする』」


 俺の願望をそのまま名前にした描画魔法を起動する。およそ半径20mほどの球体が周囲を覆い、併せて周囲の気温を上げ始めた。それだけではなく池に熱源を投下、水温が僅かでは有るが温かくなってきている。

 ただこの描画魔法は範囲が広すぎて消費魔力が多いのが難点。しばらくすれば周囲の物の温度があがり、維持するための魔力は減るだろうから、それまでの辛抱だ。


「あら、本当に暖かくなってきたわね」

「…」

「あ、ほんとだー。川の水も…入って平気かな?」

「お主、馬鹿じゃろ、絶対に馬鹿じゃろ…」


 素直に喜ぶ三人と頭を抱えて唸っているセフィリアだった。そしてセフィリア達は木陰で着替えをしに向かい、俺はその姿を想像しながら敷布に正座して待っていた。すると、


「ソーイチローさん、お待たせしました」


 最初に声を掛けてきたのはミストさん。ミストさんの手のひらから溢れる巨乳と腰のくびれ、がしっと掴みたいお尻を余すところ無く見たいため、選んだ水着はもちろん赤のビキニ。


「ぐぅれぃと!素晴らしい!予想通りビキニが似合いますね」


「さすがに私みたいなおばさんにビキニっていうの?この水着は恥ずかしいわ」


「そんなことありません。もしミストさんにビキニが似合わないのであれば、ビキニの存在価値は無くなるでしょう」


「は、はぁ…」


 若干呆れていたミストさんだが、次に現れたのはティアラだった。性格が控えめでそれなりに成長したティアラは黄色のワンピースタイプをチョイス。一本に纏められた髪型と清楚な容姿であるティアラに見事に似合っていた。


「ティアラ素晴らしい!深窓のお嬢様のようで心が洗われるね!」


「…ありがとうございます」


 少し俯きながら頬を赤くするティアラは、本当に世間に不慣れなお嬢様のようだった。そのティアラの後ろから走ってきたのはコロネ。寸胴…ではなく凹凸が少ないコロネには勿論スク水。活発に動くコロネゆえ、しっかりと動きに追随出来る水着を選んだ。


「お、コロネもかわいいね。よくスク水が似合ってる」


 スク水が似合うというのが褒め言葉かどうか分からないが、それでもハツラツとしたコロネとスク水は雰囲気がとても似合っていた。


「えへへ~そう?ありがと!」


 そう言うとコロネは俺の背中に抱きつき…というかしがみついていた。高い体温が中々に心地よかった。そして最後はセフィリアが…こない。


「セフィリア?」


「こっこんな格好で出られる訳無いじゃろ!!」


 大声を出したつもりは無かったが、セフィリアの耳にはしっかりと俺の声が届いたようだった。


「大丈夫!楽しみにしてるんだからこっちにおいで!」


「ぐぬっ…」


 観念したのかセフィリアは木陰から恥ずかしそうに出てきた。ミストさん程ではないが手のひらから少し溢れる程の巨乳、抱いたら折れるのではと思うほどの腰、それに白く長い髪と透けるような白い肌、ワンポイントと言っていい赤目のセフィリアには、それらの美点を隠さないよう白いマイクロビキニをチョイスしていた。


「すげえ…美の神ってこんな感じだって思うな」


「すごいわねぇ、お日様の下でセフィリアさんを見るとホント美の化身って感じね」

「セフィリアおねえちゃん、白いね!」


「まだ全裸のほうが恥ずかしくないわい…」


 胸の半分以上は見えており下もわずかしか隠れていない。しかし羞恥心か怒りか判らないが、若干顔が赤くなっているのもポイントだろう。そして俺たちが本心から言っていると気づいたセフィリアは、これ以上文句言うことも無かった。

 全員が揃ったところで俺以上に楽しみにしていたコロネが池に向かって走ろうとしていたため、


「コロネ、水に入る前に準備運動をしてからな」


「はーい!」


 そう返事をしたコロネだったが、何を勘違いしたのか、走って行くのではなく池に向かってバク転で進み、最後は大きくジャンプし体をひねりながら池に飛び込んで行った。


「どこぞの体操選手かよ…」


「おねえちゃ~ん、気持ちいいいよ~!」


 池の中で泳ぎつつコロネは手を振り姉を誘っていた。


「ティアラ、コロネのところに行ってきな」


「しかし…」


「こっちは気にするな。コロネをしっかりと見てやってくれ」


「ありがとうございます」


 ペコリとお辞儀したティアラはゆっくりとコロネのほうに歩いていった。


「ああ言わないとティアラはずっと控えてるだろうなぁ」


「まあそうじゃろうな」


「ところでコロネもティアラも泳げるようだけど、いつ泳げるようになったんだろ?」


「教育の一環で教えたのよ。主人に仕える者として泳ぎくらいは達者でないといざというときに対処できないし。本来なら着衣のまま泳がせて鍛錬させるところだけど、今日は違うから、ね」


 ミストさんはそう言って教えてくれた。着衣水泳が標準ってヘタしたら拷問みたいなもんじゃ…。


「それにしてもソーイチローよ、よくこんな水着が手に入ったもんじゃな」


「このローブを作ってもらった防具屋に頼んだんだよ。最初は渋ってたけどデザインを教えたら逆に乗り気になってた」


「まあこんな水着はワシも見たことないしのぅ…精々薄い肌着程度のものくらいか」


「そんなもんなんだ。本当は花がらとかもう少しデザインを凝りたかったんだけど、残念ながら模様のような染色技術は無いって言われちゃってね。ベストを尽くせなくて申し訳ない」


「いや、そこは謝るところでは無かろうに。あとこのまいくろびきに?とか言っておたか、妙に肌触りが良かったんじゃが」


「結構いい素材使ってもらったから。セフィリアのがロックシープの初年度の一番毛だったかな。ミストさんのがビスカス蝶の吐く糸、ティアラはのリュウキンカっていう高山植物を編んだ奴、コロネは俺のローブの余り素材って言ってたかな」


「ソ、ソーイチローよ、えらく貴重な素材ばかりが聞こえてきたんじゃが…」


「あ、やっぱり貴重な素材だったんだ。値段とデザインを言って後はお任せしてたから詳しく知らないんだよね」


「適当じゃなぁ…それにしてもお主のローブとコロネのすくみず?だったかの、同じ素材じゃったら捉え方を変えれば、お主がすくみずを着ておることになるんじゃな…うん?」


 セフィリアがそこまで言って何か考えこむようになり、顎に手を当てていた。


「どうした、セフィリア?」


「いや、な、こう記憶の片隅に引っ掛かることがあったんじゃが…うむむむ、思い出せん。ワシも年かの」


「セフィリアさん、断じて年ではありません。ええ違いますとも。それにそういう記憶はひょんな事から思い出すものですから、今はあまり考えないほうがいいかもしれませんね」


「お、おう、その通りじゃな」


 年という言葉にミストさんが即座に反応し、早口で会話の流れを変えようとしてきた。セフィリアも若干引きながらもミストさんの言葉を否定せず、そのまま違う話になった。ふと会話が途切れると、俺たち三人の視線は水辺で遊ぶコロネとティアラに向けられていた。だがすぐに俺の視線は、左右にいるセフィリアとミストさんの乳へと変わった。

 乳を眺めるには4つほどの観察方向がある。正面、側面、上方向、下方向の4つだ。上と下のビューポイントは対になっており、上方向は静的観察(胸の谷間)に向き、下方向は動的観察(ゆさゆさ揺れる)に向いている。また正面と側面も観察ポイントが異なり、正面から観察すると視線は谷間に、側面から観察すると先端へと視線が誘導される。

 また、側面から観察した場合、人によって先端の取付角度が異なることに気づく。背骨をY軸とした場合、ミストさんの先端はY軸に対してほぼ垂直の0度、セフィリアの場合は若干上を向いていてプラス10度程度となっている。ちなみにティアラはミストさんとセフィリアの中間で5度ほど。コロネ?コロネは垂直というより水平だ。そして…


「ソーイチロー、おいソーイチロー」


「なに?今大事なこと考えてるんだから」


「人の胸をガン見して、一体どんな大事なことなんじゃろうな?!」


「人類の神秘」


「やかましいわ!」


 ふと気が付くと、息を荒げたセフィリアと苦笑いしたミストさんがこちらを見ていた。そしてミストさんがまあまあとセフィリアを抑え、


「ソーイチローさん、こんな物で良ければいつでもお見せしますから、今は昼食の時間です。頂きましょう?」


 そう言われると太陽は頂点にあり、いつの間にか戻ってきていたコロネもお腹が空いたのか広げられた弁当をじぃ~っと眺めていた。今日の昼食はナンサンドだった。パンの代わりにナンで野菜や肉を挟んだシンプルな物だったが、それ故様々な応用が効きいろんな味が楽しめるメニューだった。俺が頂きますと唱えるとコロネがさっそくかぶりつき嬉しそうに頬張っていた。ティアラは取り皿に俺の分を取ってくれ、俺はそれを遠慮無く頂いた。


 腹がいっぱいになると眠くなるもので、行儀が悪いと思いつつも敷布の上でごろりと横になった。目を瞑って寝入ろうかというとき、瞼に掛かる太陽の光がさっと陰ったので何事かと目を開けると、近くにティアラが控えていて「お膝をどうぞ」と言ってきた。その好意をありがたく受け取ることにして、自分が羽織っていたローブをティアラに着せ、遠慮無く滑らかなティアラの太ももに頭を埋めた。


「んむ…ふぁぁ…よく寝た」


 ティアラは俺が寝入った時と変わらない姿勢を保ちながら、俺の髪を手櫛で梳いていたのだが、残りの三人は俺の近くでそれぞれ寝ていた。大きな敷布が毛布代わりに掛けられていたため、それをどかすと寝ていた三人も同時に目を覚ます事になった。


「…むにゃ…」

「あらいけない、寝ちゃってたわ」

「む、結構いい時間になったの」


 日はオレンジ色に近くなっていて、そろそろ帰らないと庵に辿り着く頃にはどっぷりと日が暮れてしまう。それに気づいた女性陣は着替えを持って木陰に向かった。また取り残された俺は機材を片付けをしていたのだが、おおよその片付けは事前に行っていたため大した作業ではなかった。残った時間をどうしようかと考えていると、俺は夕日に照らされたセタカダイハギの草原に気がついた。”星藍天”を羽織り、黄色く染まった草原に向かって歩き始めた。昼間もきれいな黄色だと思っていたのだが、今は夕日がセタカダイハギに全面に当たり、まるで黄金のように輝き放っている。その輝きを放つ草原を、俺はなるべく草を踏まないよう歩いていた。


 気が付くと女性陣の着替えが終わっていたようで、四人がこちらを眺めていた。声を掛けてくれればいいのに、なんて思いながら彼女たちの元に戻り、俺たちはセフィリアの庵へと帰路についた。





「ふう、やっとこの水着を脱げるわい。下手に動くとポロっとなりそうで肩が凝ったわ」


「まあまあそう言わないで。ソーイチローさんも随分と楽しみにしていたようですし、実際あの嬉しそうな顔を見れば気を遣った甲斐があったのでは?」


「む、まあその通りかもしれんな。まあ嬉しそうという割には、若干顔はたるんでおったがな!」


「うふふ、それもまた女冥利に尽きるというもの」


「まったく…それにしてもミストのビキニにティアラのワンピース、それにコロネのすくみずと色々とよく考えたもんじゃな、アヤツは」


「そうねぇ…さすがに男の子から水着を貰ったのはびっくりしたけど、まだまだ女を求められていると感じてちょっと嬉しかったわ」


「ま、まあそれは否定せん。それにしても…」


「また何か考え事ですか?」


「いやな、すくみずという言葉をどこかで聞いたことがあってな…どこじゃったかな…」


「まあソーイチローさんを待たせていることですし、歩きながら考えましょう…あら?ソーイチローさんが…」


「ソーイチローがどうかしたのか?」


「いえ、ほらソーイチローさん、草原の中を歩いているわ。夕日が当たってまるで黄金の中を歩いているみたい」


「…思い出した。あの占いじゃ」


「思い出したんですか?」


「うむ、クソババア…じゃなく、ワシの師匠に奥方がおったんじゃが、その奥方は占いを得意としていたんじゃ。ただ占いといってもほとんど未来予知に近い占いでな、本当によく当たったもんじゃ。もう100年以上前になるかの、ある時、何を考えたのかワシの伴侶となる者を占ってくれてな。当時は何を言ってるのか分からんかったのじゃが…」


「その占いが?」


「うむ、確かこうじゃ。”その者、蒼きすくみずを纏いて、金色の野に降り立つべし”とな。占いは真じゃったのか…」



いつもスク水を纏う紳士、いいですよね。なお、眺乳論も偏見に満ちていますのでご了承ください。


この文章を書きたいがために、主人公のローブを青色にしてありました。

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