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墓王!  作者: 菊次郎
出会いと旅立ち
10/129

魔獣討伐

ご覧頂き誠にありがとうございます。

 夜のほうは控えめに…なんて事を言ってしまった晩は、本当に容赦なく激しい交わりとなった。

 ベッドでひと通り終わった後、セフィリアを腕枕しつつ反対の手は双丘の膨らみにそれとなくおいている。


「お主も好きじゃのう。単に脂肪が詰まってるだけなのに」


「そこには夢と希望が詰まってるんだよ!だからそれらに手を伸ばすのは当たり前な事なんだ。それにしても不思議だよな、仰向けで寝てるのにどうして胸が潰れてないんだ?」


 普通、ある一定以上の大きさになると胸は重力に負けてペタっと高さを低くするのだが、セフィリアの場合はカップの形のままツンと上を向いていた。


「それはソーイチローがもみやすいように身体強化してるからじゃよ」


「魔法バンザイ!今ほど魔法をありがたいと思ったことは無いぜ!」


「そんな泣くほどのことでも…お主にはあるのか…」


「ところではじめから1週間立ったけど、何か分かった?」


「今ここで聞くのか…まあ良い。色々分かったぞ。経口摂取の場合は魔力が回復するんじゃが、お主に抱かれると魔力が増えるんじゃ」


 つまりこういうことだそうだ。仮に魔力が500/1000(現在の魔力/最大魔力)であった場合、俺の精を飲むと500が600になるが、俺に抱かれると600/1100というようになるらしい。


「とうことは…?」


「うむ、他にも色々と確認せねばならんが、お主に抱かれると魔力欠損症が改善される可能性がある」


「おお、研究が進んで良かったな!」


「ほんにワシを抱いてくれてありがとう。80年前の後悔がやっと晴らせる…」


 最後のつぶやきは小さすぎて聞き取ることができなかった。もう一度聞き直そうとして、ふとあることに気づいた。


「あれ?治すためには俺に抱かれる必要があるってことだよね。ということは男を治療するには…」


 アッーーーーーーーーーーーーーー!


「クックック…、安心せい、魔力欠損症は女性特有の症状での。今のところ男性に発症したというのは聞いたことがないわい」


「よ、よかった…って、あれ?どっちにしても他の女の人を抱かないといけないんだよね?セフィリアはいいの?」


「うむ、構わんぞ。このご時世で一夫多妻は当たり前じゃから気にすることはないぞ」


 魔獣が跋扈するアースガルドでは男女関係なく戦闘に向かうが、魔力が少ない男性は主に前衛を務めるため、その死亡率は圧倒的に高い。現在では100:150と言われるほど女性の人口が多いため、経済的に許されるなら複数娶ることを推奨すらされている。


「そう、分かった。でも今は…セフィリアだけだ」


 そう言い放ち、セフィリアに口付けをし第2ラウンドが始まった。


 翌日、お互いに目を覚ましたところでキスを交わし、今後のことについて話し始めた。


「とりあえず攻撃系の魔法作ったけど、あれだけじゃ足りないよね?」


「その通りじゃ。一つは様々な場面を想定し、それに対応しうる攻撃系の魔法を増やすことじゃな。そしてもう一つ、探査系の魔法をどうするかが問題じゃの」


「探査系っていうと魔獣とかを探しだしたりする魔法とかあるの?」


「うむ、あるぞ。ワシの場合は上空に魔力を打ち出して、周囲を魔法の手で探るような感じかの」


 つまりはクジが入った箱に手を入れて弄るような魔法らしい。


「こういっては何だけど、随分と効率が悪い魔法じゃない?」


「うむ、かなり効率は悪いぞ。単に敵の位置を知りたいだけなら、魔力を波のように打ち出して、その反射を感じればいいんじゃがの」


「それをしないということは、何か不具合が?」


「自分を中心で波を打ち出すとな、当たり前の話じゃが相手にも自分の位置がバレてしまうんじゃ。そして波を感じた敵は、逃げるかこちらに向かってくるかの2択になっての。不要な魔獣を呼び寄せたり、必要な魔獣には逃げられたりとかなり面倒くさいことになる」


 水面に大きな石を投げ込み、波が反射してくるのを観測するのが一般的な索敵系の魔法らしい。所謂アクティブソナーのようなものだそうだ。あと魔獣の種類までは判別できない。


「もちろん、目的とする魔獣が何らかの魔法を使えばリスク無しで判るんじゃが、そんな偶然は早々ないしな」


「なるほどな。ということは、別に探索系の魔法でなくても、不用意に魔法を使うと他の魔獣を呼び寄せたりしちゃうのか。でもこの間の魔法戦では全然魔獣が近寄って来なかったよね?ここら近辺の魔獣はセフィリアが倒しきったのか、ボスとして従えているとか?」


「なぜワシが魔獣の王になる…。この間使った『風炎狼の咆哮』は強力な魔法じゃったろ?そんな強い魔法を使うところにノコノコと現れる魔獣もおらん」


「やっぱりボスじゃねえか。まあ索敵系の魔法については分かったよ、何か作ってみる」


 そう言って今度は2週間ほどかけ、新たな索敵系描画魔法を作った。それは『篠突く(しのつく)雨の輪』…情報連結した極小さな魔法陣を多数展開し索敵する。水面に大きな石を投げ入れれば大きな波が立ち相手に場所がバレるが、雨のような小さな水滴が空から落ちてきたならどうだろうか?周囲に無数に存在し、さざ波のような小さな波なら殆ど気付かれることはないだろう。

 セフィリアからの評価も「言われれば判る程度しか感じない」らしく、評価は上々だった。


「さて、索敵系と攻撃系の魔法を覚えたから、次は実践じゃな。家にある魔獣大百科は読んだんじゃろ?」


「読み終わったよ。中身もまあ…大体覚えた、かな?」


 この体になってから知ったことだが、修練や記憶に関してかなり優れているようだ。本を読めば一度で覚えるし、体を動かすこともイメージ通りになる。自称神様が言っていた「学習に最適な環境を~」というのは嘘ではなかったらしい。


「そうか、ではワシは後ろからついていって危なければフォローするから、お主の好きなように狩りをするがよい」


「了解、じゃあ行こうか」


 そう言い、手元に『ショットガン』を呼び出した後、『篠突く雨の輪』を起動しながら北に向かって2kmほど歩いていった。ちなみに家の近くにはまったくと言っていいほど魔獣の気配は無かった…


「ん、北北東に150mほど行ったところに体長2mほどの何かがいるみたい。動きは…無いみたいだから、まだこっちには気づいていないね」


「中々正確に判るようじゃの。全力で索敵しておるのか?」


「いや、半径200mほど索敵してる状態で、全力の半分程度…かな、索敵に割いてるリソースは48%。索敵に全力を傾けるとイザという時に動けないからね」


 常時起動している統合管理システム『TENGA』の使用魔力一覧を見ながら答えた。


「正解じゃ。必ず余力は残しておけよ」


「分かったよ。っと、しまったこっちが風上だったか。相手に気付かれたみたいで、こっちに向かってきてる」


「さてお手並み拝見とするか」


「あと50m、見えてきた。あれは…レッドグリズリーかな?」


「その通りじゃ。動きは早くないが生木すらへし折る力、生半可な魔法は殆ど無効化する赤い毛皮、斬撃や衝撃を吸収する皮下脂肪。ランクBと謂われる所以じゃな」


 セフィリアの解説を聞きながら俺は黙って『ショットガン』を構える。すでに熊撃ちと言われているスラッグショットをロード済みである。身体強化も終え、四本足で駆けて来るレッドグリズリーの頭に向かって3連射した。ダンッという爆音が立て続けに起き、殆ど体もブレず狙い通りにレッドグリズリーの頭に一発、口の周囲に2発叩き込む事に成功。ビクン!と一瞬だけ震えたレッドグリズリーは走ってきた勢いのまま地面を転がってきた。

 死に際の一撃を食らわないよう、銃口はレッドグリズリーに向けたまま近づいていったが、問題なく仕留めたようだ。


「よし見事じゃ。それにしても大した威力じゃの。最初の一撃だけで仕留めていたようじゃし、以前見せてもらった時より威力は上がっておるか?」


「よくわかったね。身体強化が上手く行ってるから、弾頭の重量と魔力量を増やして威力を上げておいたんだよ。ほんと毎日鍛錬しているおかげだ」


 そう、セフィリアに身体強化を教えてもらってから毎日鍛錬していた。なお、身体強化を教わって最初の一週間は筋トレして筋肉痛になって即セフィリアの治癒魔法で癒され、また筋トレという無限地獄を半ば悪夢のような期間を味わったが。


「さて、このレッドグリズリーはどうする?ソーイチローに決定権があるぞ」


 どうする?という問いかけの意味は、魔獣を倒した時の処理方法についてである。普通の獣と違い、魔力で構成される魔獣は心臓に魔石を有している。魔獣を倒した後、そのまま放置すると体を構成していた魔力が心臓にある魔石に集約され、一回り大きな魔石に変化した後他の体の部位は消えてしまう。そのため、毛皮等を採取したい場合は早々に魔石を取り出す事によって部位が消えることを阻止できる。

 つまりは、採取と小さめな魔石 or 大きめな魔石のみ の2択があるということだ。


「こいつって毛皮と熊胆が高値で取引されるんだっけ?」


「その通りじゃ。毛皮は貴族共の毛布になるようじゃの。暗殺者に襲われた時などその毛皮を被って難を逃れた、なんていう話もあるらしくて非常に高値じゃ。熊胆も飽食な貴族共の健胃のために高値じゃな」


「じゃあ採取のほうにしておくか。採取の仕方を指示してもらっていい?」


 昔セフィリアは冒険者をしていただけあって、採取の仕方をよく心得ている。そのお陰でセフィリアの指示は的確で判りやすく、手際よく魔石と毛皮と熊胆の採取を行った。思ったより早く30分ほどで採取が終わった。てっきり血抜きなどで時間が必要かと思っていたが、血の代わりに魔力が巡っているらしく、すぐに採取に移ってもいいらしい。


「さて、これで終わりかな。この残った部位ってどうなるんだ?」


「放置しておけば、他の魔獣の餌になるか元の魔素になって散っていくの。お主の『ショットガン』や石礫だって手を離せば元の魔素に還元されるじゃろ」


「なるほどねーって、あれ?今採取した毛皮とかも魔素になって無くならないの?」


「人が近くにいれば無くならんぞ。採取した部位が極僅かながら人から魔力を吸収してるようでの、早々には無くならん。まあ永久に持つ訳ではないから、徐々に効果は失われていくがの」


「この毛皮でどれくらい効果が保つ?」


「ワシも専門家でないから詳しくは分からんが…そうさの、10年程度ではないかの?」


「ってことは効果無くなる前に買い替えとかしなくちゃいけないのか…」


「その通りじゃ。実際には効果が0になって買い換える訳でもないから、もっと買い替え頻度は高いぞ。オマケに貴族共は見栄っ張りだからの…良い品は余計に高く買ってくれるわ」


 クックックとセフィリアは黒い笑いを浮かべていた。どうやら貴族のことはあまり好きではないらしい。


「へぇー。この毛皮だといくら位で売れそう?」


「ざっと50万zゼルくらいかの?熊胆は10万zくらいか。魔石は…よくて1万zかの」


「魔石が安いのはやっぱりみんな魔石にしちゃうから?」


「まあの。当たり前の話じゃが、こんな大きな毛皮を持ったらもう探索もクソもないじゃろ?人足でも雇わん限りこれで探索は終了じゃ。魔石なら一度の探索でたくさん持てるからどうしても数が増えるしな…」


「でもこんな簡単に60万z以上稼げるなら、みんな冒険者になったりしないのか?」


「…一応言っておくが、レッドグリズリーを倒すのは余程の高ランク者かBランク相当のパーティーのみだぞ?赤級魔法使いが倒したとか吹聴したら酒場で笑いの種にしかならんわい」


「ちなみにセフィリアは?」


「もちろん余裕じゃ。炎槍で頭を吹き飛ばして終わりじゃな。そもそも紫級と赤級が同じこと出来るなどこの目で見ない限り信じる魔法使いはおらんぞ。ワシはソーイチローをよく知っているから驚かないだけじゃ」


 そんな会話をしつつ、俺は熊の毛皮の処遇について考えていた。セフィリアの助言があったとはいえ、これが俺の初めての稼ぎとも言える。親孝行…ではないが、社会人の初任給で親へプレゼントをするみたいに、今まで世話になったセフィリアに対して恩返しをしたかった。この毛皮を加工してもらってセフィリアにプレゼントすれば喜ぶんじゃないか?と思い付いたのだ。


「そうか、ありがとう。あとセフィリア、今までのお礼にこの毛皮を受け取ってくれないか?セフィリアにとっては大した物じゃないかもしれないけど、俺にとって初めて狩りに成功した記念の品として受け取って欲しいんだ。ダメかな?」


 セフィリアには魔法や常識についてずっと世話になりっぱなしだった。口調は砕けているが俺の師匠のような人だし、情を交わす愛しい人だ。

そう話した後、一瞬呆けたセフィリアは俺に飛びつき、胸元に顔を埋めながら言葉を発した。


「グス…ありがたく受け取るぞ。ほんにお主は…ワシにどれだけのものをくれるんじゃ」


 そしてもう一度小さく「ありがとう」とセフィリアは呟き、俺と口付けを交わした。


 後日、熊胆を売ったお金で毛皮を毛布へと処理してもらい、改めてセフィリアに渡した。


相手の位置をどうすれば知ることが出来るか?

相手にどうやったら位置を知られずに済むか?

と、考えるととても難しいことだと思います。

従来の探知魔法は、潜水艦のアクティブソナーみたいなもの

と考えて頂ければ判りやすいかもしれません。


問題箇所を修正2/5

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