朽葉3
皆で鍋を囲んだ、湯気の向こうに見える顔が笑顔だ。食べ物というのは不思議なもので、生きていく上に必要だが、こうして幸せをも届けてくれる。
自然災害で気が滅入っている時に、最低限の食事を摂る……それは必要なことなのだが雰囲気良い場所で、少しでも豪華なものを食べるだけで人は生きていく事に希望を見出すらしい。
と、何かの本で読んだ。
そして食事は一人よりも大勢で食べたほうが美味しい、そう考えると質素なものでも人、という温もりが最大の調味料になる気がする。
人、というかこの場合妖怪だが。
「みょうちきりんうららは、う、美味いものを作れるのだな」
「素晴らしいよ、うらら! こんなに美味しいもの初めて食べた」
「美味しいです、母様。僕はとても幸せです」
「あったかいコン、美味しすぎてほっぺたが落ちてしまうココン」
「ぴぴぴぃーい」
一心不乱に食事していた私だが、皆は口々に私にお礼を言っていた。大したものは作っていないが、悪い気はしない。
すっかり空になった鍋は、蒲公英と深緋が川に洗いに行ってくれた。働き者の良い子達だ。
京紫と花緑青は重いものを持って飛行した為、相当疲労しているらしい。その為、焚き火の前でぐったりとしている。
電気がないので、暗くなったら眠ることにも慣れて来た。何時ものように朽葉を枕元に置き、タオルを被せて寒くないように保護すると、川から戻ってきた二人の愛らしいもふもふ達を抱いて眠りにつく。
……眠りにつく。
「おぉ、温かい」
「ぬくぬくだね」
……何故京紫と花緑青まで共に寝ているのだろう、混ざってしまった。
確かに温かいが、これは私の操の危機ではなかろうか。
一応左右は蒲公英と深緋に護られているが、どうなることか。
「みょうちきりん、良い香り」
「うらら、とても良い香り」
……眠れない。




