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入野うらら2

表紙絵みたいなイラストを挿入しました(’’)

うららと、猫人間ってうららが呼んでる子です。名前は第三話にて。


※安定の鉛筆クオリティ

挿絵(By みてみん)  

 真下にいる、愛らしい生物をガン見する。頭部には不釣合いなくらいの大きな猫耳がぴくぴく、と動いている。私が三毛猫っぽいと判断したのは、その耳が黒茶白色と三色のブチだったから。そして……か、髪? でいいのか解らないけれど、とりあえず髪の毛もその三色っぽくて斑になっている。肩より少し上のさらさらストレートだ。瞳は黄色が混ざったような茶色、大きくてキラキラしてる。ほっぺに、長い髭も数本生えていて、ぴよんぴよん動いてた。身長は……八十センチ程度だろうか。私の身長と照らし合わせると、それくらいだろう。靴は履いていないけれど、衣服は着ている。絹っぽいベージュ色したなんか、弥生時代の人々が着ていたみたいなそれ。首には深紅のリボンが巻かれていた。

 そして、最大の特徴は尻尾。二本の尻尾がぴょこんぴょこん、と動いている。

 ……なにそれ可愛い!

 動く耳に尻尾、大きな瞳に見つめられ、私は発狂しそうになった。叫んで思い切り抱き締めたくなった。あぁ、もふもふっ!

「あ、あの、母様! く、苦しいですぅ」

 もふもふ、もふもふー! ぎゅっぎゅっぎゅっぎゅー!

 耳がふかふかで、頬に暖かな感触。華奢な身体は先日の保育園児を思い出させた。揺れる尻尾が私の腕にあたって、くすぐったい。

「母様、母様、くるし、くるしぃっ! ぅぐっ」

 耳元で、聴きなれない何かが潰れたような声を聞いた。我に返った。

 ……どうやら、理性が崩壊してこの猫人間を持ち上げ、思い切り抱き締めていたらしい。軽いから気がつかなかった、無意識だった、悪気はない。

 可愛いからいけないのだ、猫と幼児なんて反則の組み合わせだろう。だって、ふかふかなんだもの。耳とか尻尾とか。

 私は、腕の中で眩暈を起こしてぐったりしているこの猫人間を見つめた。

 じゅるり。


「ごめんね、気がついたら身体が勝手に」

「い、いえ、お構いなく」

 数分したら猫人間が「水、水を」とうわ言のように呟くので、小川へ連れて行き手で水をすくった。口元へ運ぶと無我夢中で飲み始める、何度か繰り返すとぷはっ、と口を大きく開いて、瞳をゆっくりと瞬きした。

 気がついたようだ、よかった、圧死させなくて。

 抱いたまま、先程出逢った場所へ戻ると地面に下ろしてあげる。伸びをして、身体をほぐすように腰は固定したまま上半身を左右に振っている。その度に尻尾がぴこぴこするものだから、可愛くて仕方がない。

 じゅるり。

 また、抱き締めたくなった。あのもふもふを、もう一度。

「母様、母様ー!」

「はっ!? 私ったら、また」

 気がついたら、再び抱き締めていた。目の前で苦しそうに咳込んでいる猫人間に、謝るしかない。だって、抱き心地が良いんだもの。あったかいし、柔らかいし。

 猫人間は学習したのか、私から一メートル程度離れた場所に体操座りをする。近寄るな、ということだろうか。とりあえず私も、地面に腰を下ろした。

 沈黙が訪れる、風が木々の葉を揺らしていった。

 そもそも、一体ここはなんなのか。幼少の頃、漫画と小説、それにアニメで培った情報を整理すると異世界に来てしまったという結論で間違いないだろう。

 しかし、あの神社周辺の雰囲気と酷似しているので、まさか異世界ではなくタイムスリップなのだろうか? いや、古代の日本にこんな猫人間がいたなどという記録はない。ない筈だ。

 首を捻って考えるが、考えても解らない。ともかく優先すべきは、元の場所へ戻る事。私はもうすぐ、保育園で働かねばならないのだから。

「あの、君。訊いてもいいかな? ここって」

 ぐ~ぅ、きゅるるっ。

 盛大な音が鳴る、私は赤面しわざとらしく咳込んだ。お腹が鳴ったのだ、墓参りの後何処かでランチする予定だったのだから空腹なのだ。

 気まずい。私は挙動不審人物の様に瞳を泳がせる、しかし猫人間は立ち上がると近くに寄って来てくれた。

「母様、お腹が空いているのですね! 僕がお食事を用意いたしますよ!」

 無邪気に微笑み、私の手を掴む。ちょっと、ドキドキした。いや、この猫人間の声って妙に甘ったるい。っていうか、可愛い。

「え、えぇ、あ、うん……ありがとう」

 お礼を言うのが精一杯だ、肉球がぷにぷにしてるっ。はぁうんっ。意識が飛びそうだ。

「ふふ、張り切って狩猟してきます! 待っててください」

 聴いた!? 『ふふ』なんて、超絶に可愛い笑い声! あ、あぁっ、また身体が勝手に動いて抱き締めたくなる。けれど、ちょっと待って。狩猟、ってどういうことだろうか。

「狩猟……? い、一体何を食べさせてくれるのか」

「っ! 危ない、母様!」

 引っかかった単語を訊き直す、その瞬間、物凄い勢いで身体が引っ張られた。

 ビィィィン!

 背の後ろで、奇怪な音が聴こえた。同時に、何かちくり、とした。

「な、何?」

「しっ、母様、静かに! 大丈夫です、興味の対象外だと思いますから。ですが、今出るのは危険です。立ち去るまで、もしくはどちらかが倒れるまで大人しくしていましょう」

 ……どういうことなの。

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