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第四話 黒部の初心・原点(後編)

 携帯電話のベルが鳴る。

 デフォルトから変更していないそれは、無機質な機会音で俺に存在を示す。

 くる時間はいつも夜だ。

 八時位にくる電話の主は、いつもの通り活発な声で俺に話しかけてくる。

 今はどこにいるのか、とか。

 いつになったら帰ってくる、とか。

 俺の事を、放浪癖のある奴と思っている彼女らしい、そんな質問。

 迷惑なのは、こちらの事情も知らないままにかけられる電話は、相手に状況を伝える事が出来ない事か。

 電話相手ではなく、電話自体に苛立ちを覚えるとは、現代人として不適合者だ。

 それでも、俺は現代に生きる人間だ。

 電話がくれば応えるし、電話されれば少しは嬉しい。

 それが、自分の大切な人なのだから尚更だろう。

 二度と帰れない、元々俺が住んでいた、あの場所で待っている。

 彼女は、今も元気に暮らしているのだろうか?

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「黒部さん、それで、半分の話は聞きましたけど、残り半分はどうなんですか?」

 コンの推理、否、推測を聞いた後、黒部さんはまだ半分しか話していないと言った。

 僕達としては、その半分が気になってしょうがない。

 黒部さんが痛めつけたと言う、苗草と言う男性の末路が…。

「鴉が言う程ですからね…。生半可な痛めつけ方はしていないでしょうね…。」

「舌を抜いたか、傷に塩水を塗ったか、はたまた純粋に半殺しか。可能性としてはここらが妥当ですね、ご主人様。」

「お前等、俺を閻魔か何かだと思ってんのか⁉」

 コルの推察にうんうん、と頷く僕達に冷たい視線を送る黒部さん。

 でも、案外良い線いってると思うのだが。

「いってねえよ。いってたまるかよ、むしろ。」

 つまんないと言って、コンとコルは僕の膝に頭を乗せる。

 ずっと正座をしていて疲れたのだろう。

 乗せた頭は小さくて、髪は柔らかく僕の膝に乗っている。

 まったく、見栄を張って正座するからそうなるのだ。

 僕は胡座をかいていたから楽だけど。

「はあ、とにかく、残り半分の話を始めるぞ。どうせたいした時間はかからないと思うしな。」

 黒部さんは胡座の姿勢から片足を体育座りの形に持っていく。

 彼はまた黒い笑みを浮かべながら、男の顛末を話し出す。

 昔の詩人の様に、子供達に語り聞かせる紙芝居の様に。

 自身の黒の原点を…。

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 家政婦は見た!なんてネタが昔は流行ったものである。

 何か重大な事を目撃した時、何かを盗み見た時なんかに使われて、俺も昔は使ったものだ。

「それで?渡瀬先生が殴られている所、見た事があるの?」

 それは何も、昔に限った事では無い。

 今だって子供達が色々な事を発見して、現代の『見た!』を知っていてくれる。

「うん。確か、放課後の空き教室で先生が殴られてた。」

 四年生の男子生徒、その子から、俺は今聞き取りを行っている。

 明確な証拠や証言を得られなければ、奴はいくらでも逃げおおせてしまう。

 苗草の暴力を目撃してから二日、俺はあらゆる生徒から出来るだけ情報を集めていた。

 証言の方は大量に得られたし、生徒達も、苗草には色々と恨みがあるらしい。

 こちらの協力も、惜しむ事なくしてくれている。

「相手が小学生じゃなければ、もっと手こずってたかもな。」

 純粋な小学生…最高だぜ!

「何て、ネタやってる場合じゃねえな。…次は、確実な証拠を出さねえと。」

 生徒達が帰った放課後、俺の務めももう少しで終わるが、今はやらなければならない事がある。

 渡瀬さんは、暴力を受けた箇所が腹や背中と、服で肌が隠される所をやられていた。

 苗草の奴、一度や二度じゃなく、ほぼ日常的にやってるのは明らかだ。

「場所が不定期なのも、奴自身やましいと思ってるからだろうし、運任せじゃどうにもならんな。」

 大学の授業で使っているレコーダーがあるから、それを使えば声を録音して証拠に出来るのだが、如何せん、場所が分からねば意味が無い。

「残りの日数は今日を除いて四日間。それまでに、何とか対策を練らねえと。」

 廊下を歩きながら俺は呟く。

 声に出して考え事をするのは、俺の癖の様なものだ。

 情報漏洩が危ぶまれるが、これが一番考えがまとまる。

 幸いな事に、周りには人がいないし。

 …なんて思ってると、人に会うのがお約束。

 案の定、教室の中にまだ残っている生徒を見つけて、俺は考えを中断した。

「お〜い。お前等、何やってるんだ?もうすぐ暗くなるし、早く家に帰りなさい。」

 お決まりの台詞を並べて、教室の中にいた生徒二人に声をかける。

 生徒たちはこちらを見ると、手を背後に回して何かを隠した。

「ん?今、何を隠したんだ?下手に隠そうとすると、後で怖い事になるぞ?」

 二人の少年は互いに顔を見合わせて、諦めた様におずおずと手を前に持ってくる。

 手の中には、それぞれカードが持たれていた。

「これって…トレーディングカードか?ははあ、さては交換でもしようと思って持って来てたんだな?」

 俺は少年達に普通に問いかける。

 無闇に怒っても意味は無いし、何より俺自身も経験があるから気持ちは分かるのだ。

 少年達は怒られると思っているのか、一人は既に半泣きである。

 泣くぐらいなら持ってこなければいいと思うのだが、こればっかりは致し方ないか。

「あ〜、安心しろ。別に取り上げようとか、怒ろうとはしてねえよ。次から気をつければ良いだけだし、別に交換や貸し借りがいけない…訳じゃ…。」

 そこまで口にして、俺は自分の考えに再び頭を走らせる。

 そこで気付く、一つの方策。

「そうだよ。こうすれば…あるいは。おい、君達、確か渡瀬先生が担任だったよな?」

「は、はい。」

 泣いていない方の少年がしっかりした声で返答をする。

 俺はその少年の目線に合わせながら、今までにない真剣さで一つの頼み事をした。

 勿論、その理由は少年には告げない。

 勝手な話だし、少年には断る事も出来ると言ってある。

 しかし、少年は快諾してくれた。

 自分がそれで一体何をする羽目になるのか、責任を一切負わない影の重要人物として、俺に力を貸してくれると言ってくれた。

「ありがとう。」

 俺は少年に礼を言って、明日の準備の為に急いで家へと足を伸ばした。

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 教育実習残り四日。

 俺はいつもの如く迷いに迷った挙句に学校に到着し、とある一人の人間を探していた。

「あっ、おはようごさいます、渡瀬先生。」

「おはようございます、黒部先生。この前はすみません。何か、疲れでも溜まってたみたいで。」

 五年生の教室のある階で渡瀬先生と遭遇。

 そのまま世間話を始める。

 渡瀬先生はこの前の、苗草の暴力については一切口を開かない。

 自分はあそこで寝てただけ、とそれだけを言い続けている。

 何故そこまでして苗草を庇うのか、それも策が功をきせば分かる事だろう。

「渡瀬先生、一つ聞いても良いですか?」

「はい、何でしょうか?」

「昨日、夜に苗草先生が電話してきまして、学校のパソコンが壊れたから修理しろ、って言われたんですけど、教育実習生に普通やらせますかね?」

「ああ、あの人ならやりそうな嫌がらせですね〜。何なら、私から校長先生に言っておきますけど。」

「あ、いえ。別に出来なくはないですから。機械関連は得意なんですよ、俺。」

 苗草の横暴な命令について、俺は渡瀬さんと語り合う。

 それだけなのに、俺は夢中になって語っていたと思う。

 苗草の不満を…ではない。

 渡瀬さんと語り、話す事をだ。

 俺の言葉に彼女は笑う。

 この一週間ちょい、おそらくこの学校で一番関わりを持った人間は彼女だけだろう。

 俺が話しているうちに、学校の予鈴が無常にも鳴り始める。

 俺は仕方なく、その場を惜しみながら後にする。

 やがて一日は、光が走るかの様に駆け抜けた。

 放課後、学校のパソコン室に俺はいる。

 パソコンが壊れた、なんて言うデマに引っかかるのは、機械に疎い人間だけだ。

 実際、パソコンは壊れていたではなく、壊されていたというのが正解だ。

 丁寧に誤魔化されてはいたが、生憎俺は機械には詳しい。

 直らないと分かれば速攻で切り捨てる、それが俺という人間だ。

 では、何故俺が未だにパソコン室にいるかと言うと…。

「さて、そろそろかね。あの子がちゃんと仕事をしてくれてると、俺の仕事がだいぶ楽になるんだが。」

 高望みはしない。

 最悪、逃げられていても俺は責められない。

 パソコン室の扉を開き、自分が受け持っている教室へと向かう。

 教壇の中にあるプリントの山。その上から三枚目と四枚目の間に一枚の紙が挟んであり、その横にはある物が…。

『しちょうかくしつ』

 その紙には、平仮名でそう書かれていた。

「うん、良い仕事するじゃん。これで、策が無駄にならずにすんだ。」

 俺はポケットに入っているレコーダーを起動させ、すぐに録音が出来る状態にした後、単身で視聴覚室に向かった。

 扉の前、完璧に閉ざされた扉は一切の音を遮断している。

「……。」

 視聴覚室の扉は非常に軽い。

 ほんの少し力を入れただけで、扉は抵抗なく開いていく。

 数センチの隙間を開けると、そこには何か、いや誰かを見下ろす苗草の姿が。

 俺がパソコン室に入ったのは今から一時間前。

 苗草の用心深い性格を考えると…この教室に入って三十分位と思われる。

 証拠能力としては、三十分もあれば十分だろう。

 俺はそう思い、視聴覚室の扉を勢いよく開け放ち、電源を入れておいたレコーダーの録音ボタンを押す。

「はい、ちょっと邪魔しますよ〜。」

 どこぞの番組の何とかGメンっぽい登場で、苗草の視線を俺に集める。

「黒部…。お前、パソコンはどうした?」

 苗草の顔は、俺の思わぬ登場に歪み、必死で何かを隠そうとしているのが分かる。

 まあ、隠すも何も、渡瀬さんがそこに倒れているのは、丸見えなのだが。

「苗草先生〜。せめて、そう言うのは無実の人間が言ってくださいよ。俺が最近渡瀬先生と一緒にいたから、俺をパソコン室に送ったんですよね?」

 自分でも嫌な笑顔だという事は分かっている。

 この状況だけ見ると、俺が奴を嵌めたみたいに見えることだろう。

「パソコンに疎い奴なら時間を浪費しただろうが、俺は機械に強くてな。何なら一からパソコンを作れるレベルだ。」

 だから、パソコンを故意で壊したかどうかなんて、すぐに分かる。

 それも、実に簡単な熱暴走による故障なんて、俺を舐めているとしか思えない。

「言い逃れとかはしないでくれよ?別にあんたを学校から追い出そうとか、俺は思ってねえからよ。あんたが抵抗なく、俺の条件を飲んでくれれば問題無い。」

 俺が言葉を紡ぐ度、苗草の顔が苦渋の決断を迫られた様にひん曲がる。

 俺の顔も、奴が険しい顔をする度に卑しい笑顔を広げていく。

 手の中にあるレコーダーが、奴自身への追い打ちとなる。

 こいつに録られたと思い込んでいるこいつが興す行動は、…一つだ。

「黒部ーーーーーーーー‼」

 俺の手に向かって突進する苗草。

 通路が狭い所で出来る行動は、数少ない。

 まず、奴が踏み出した足を払い、前につんのめった奴の頭を掴んで、後頭部を床に叩きつける。

 たったそれだけの事で、苗草は白眼を剥いて倒れた後、泡を吹いて動きを完全に止めた。

「抵抗すんなっつたのに、自業自得だな。あっ、レコーダー止めとかねえと。」

 俺は手にあったレコーダーを止めて、渡瀬さんの元に行く。

 大変申し訳ないが、渡瀬さんの胸元にあるボールペンを回収させて…

「…ん、あ…れ?黒部先生、何をしてるんですか?」

 おや?何かな、このフラグは?

 いや、フラグと言っても死亡の方だが…。

「えっと、いや、あの、これは。」

 自分でもどうかと言う程の言葉出なさに、自分自身が凹む。

 まずい、このままではあらぬ誤解が!

「あ〜。また、ですか…。大丈夫ですよ、黒部先生。」

 そう言って、渡瀬先生は立ち上がる。

 おそらく蹴られたのだろう、お腹を片手で抑えながら。

「あの、大丈夫ですか、渡瀬先生?」

「ええ、流石にもう騙せませんよね。」

 いえ、最初から騙せてません。…とは言わない。

 言った所で、何が変わるでもないからな。

「ありがとうございます、黒部先生。でも、何で苗草先生は気絶してるんですか?」

 俺は若干の婉曲を加えながら説明した。

 そう、出来るだけ正確に、かつ暴力部分は交えずにだ。

「はあ、つまり、レコーダーで精神的な追い打ちをかけて、わざと突っ込ませた…と。」

「いや、別に狙った訳では…。」

「でも、レコーダーで声を録音って、嘘ですよね?ドアの所からでは声は聞こえませんし、聞こえても蹴られた鈍い音ぐらいです。」

「ええ、でも、録音はしてましたよ。それで。」

 そう言いながら、俺は渡瀬先生の胸ポケットに入っているボールペンを指差す。

「私がいつも着けているボールペン…ですか?」

「ええ、教師って大抵ペンを一本付けてますよね。それを利用させていただきました。」

 俺がしたのは、ボールペンの改造。

 前日に渡瀬先生がいつもしているボールペンと同じ物を買い、改造。

 それを、昨日懐柔した少年に何とか交換させ、タイマー式の録音機は苗草の言葉や行動を録音する。

 少年がどうやったのかは分からないが、こうして交換され、渡瀬先生のボールペンは俺が持っている。

「ボールペンの録音は一時間にしときました。俺がここに来た時点で一時間経ってますから、もうこれはほぼ、普通のボールペンです。」

 俺は渡瀬先生のボールペンをポケットから出し、渡瀬先生が持っているペンと交換する。

 後は家に帰り、テープなりなんなりに編集すれば、苗草は手も足も出なくなる。

 実に簡単だ。

「それじゃあ、俺はもう帰りますね。編集出来たら、渡瀬先生にお渡しします。」

 渡瀬先生は俺からの説明を理解するのに必死で、こちらには注意が向いていない。

 俺はその隙に、そそくさと帰らせてもらった。

 録音の編集に授業の準備と忙しくなったが、俺は特段感慨も抱かずに日々を過ごした。

 編集は予想以上に手こずり、結局ギリギリまでかかってしまった。

 CDに落とした俺は、それを渡瀬さんに渡し、教育実習を終わらせる。

 そんな未来予想図は、少し違う結末を迎えた。

 教育実習の最終日。

 その放課後に俺は渡瀬さんに呼び出され、またぞろ視聴覚室にいた。

「お待たせしました、黒部先生。」

「いえ、俺も用があったので問題無いです。」

 俺はまず、苗草の声を落としたCDを渡瀬さんに渡し、彼女の反応を待つ。

 渡瀬先生は、特に変化無く、いつもの笑顔でそれを受け取った。

「ありがとうございます。苗草先生は、あれからすっかり大人しくなって嬉しい限りです。これは、もう必要無いかもしれません。」

「だと…良いんですけど。」

 あいつが大人しいのは俺がいる内だけかもしれない。

 またぞろ、新しい先生が入ったら始めるかもしれない。

 そんな不安が残る中、彼女は俺に優しい言葉を投げる。

「大丈夫ですよ。次からは、私も全力で止めますし、無抵抗なのは辞めるつもりですから。」

 彼女は俺に近づき、耳打ちで一言呟いてくる。

 一見、何の事か分からなかったが、彼女は三回、それを繰り返して離れた。

「また、相談させて下さい。それだけでなくても、私悩みが多いですから。」

 俺の頭に容量があるのなら、彼女のその時の笑顔は半分は使っただろう。

 俺にとって忘れられないその笑顔を、彼女は刻んでいった。

 俺のこの時の気持ちを、何も理解しないまま…。

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「…ってな訳だ。」

「「「は?」」」

 黒部さんの言葉に、僕達は疑問符を浮かべる。

 それは当然だろう。

 何が、ってな訳だ、だ。

 何がどうなって教師を目指すのを辞める理由になるというのか。

「あっ?まだ分かんねえのか?…んだよ、ここまで話したっつうのに。」

「いや、だから、ここまでって言いますけど、明確な理由が良く分からないんですよ。」

 僕は黒部さんに、もう少し分かりやすくとせがんだ。

 しかし、せがんでいるのは僕一人。

 コンとコルは二人共、何やら顎に手を当てて考えている。

 やがてコルが恐る恐るという風に黒部さんに視線を戻した。

「つまり、アレ系…という事ですか?その、男と女系の。」

「まあ、その、そんな感じだ…。俺自身、子供っぽいとは思ってんだがな。」

 コンとコルはあちゃー、というリアクションをして納得している。

 え、何?分かってないの、僕だけ?

「まあ、坊主にはまだ早いって事だな。」

「いえ、早いというより、単に無関心なだけのような気も…。」

「ご主人様、どうしてこうなってしまわれたのでしょうか…。」

 三者三様の心配気な目。

 僕はこの時、絶対にいつか理解してやる、と自分に新たな宿題を課し…

「あっ!宿題、まだ終わってない!」

「はっ!ご主人、急ぎましょう。もうすぐ八時になってしまいます!」

「ご主人様、ご安心下さい!私達は、何時まででもお供しますから!」

「何か、本当に邪魔したみたいだな…。じゃあ、俺はこの辺で。」

「えっ?手伝ってくれないんですか?」

「ああ、そろそろ電話の時間でな。遅れると色々面倒いからな、あいつは。」

 黒部さんはそう言って襖を開ける。

 その顔は、『黒』ではなく、至って普通の一人の人間を思う顔をしていた。

「黒部さん。」

「ん?何だ?」

「いつでも良いんですけど、いつか会わせてくれます?その、渡瀬先生に。」

 黒部さんは、心底楽しそうな笑顔で僕達を見ながら、子供の様に言った。

「はは!良いぜ。もし、機会があったらな。」

 黒の要素を持った男は、そう言って後ろ手に襖を閉めた。

 夏の日の最後のイベント。

 黒部さんの咄は、僕の理解力の無さで、終幕を迎えた。





片府 「黒部回、終了〜。」

黒部 「おう、お疲れさん。しかし、良いのかね?こんなしょうもない話で。」

片府 「ああ、最初は烏天狗との出会いを、と思ったんですが、残念ながら書けない事情にぶち当たりまして…」

コン 「ああ、そういえば。バトルは書かないんでしたっけ。」

片府 「はい。烏天狗と会わせると、どうしてもバトル方面にしか行かなくて…。」

黒部・コン 「「(さもありなん。)」」

コル 「まあ、何はともあれ、これでスピンオフもひと段落、ですか?」

片府 「はい。次からは、バトル有りの本編に戻ります!」

コン 「じゃあ、私達の出番はちゃんと用意されてますよね?」

片府 「……。」

コン 「さ、れ、て、ま、す、よ、ね?」

片府 「おおっと、もうこんな時間ですか!では、今日はこれまでで、黒部さん、コルさんよろしく!」

黒部 「今回も、この駄作を読んでくれた読者に感謝を。」

コル 「これからの末長いお付き合いに祈りを。」

黒部・コル 「「『狐の事情の裏事情』また次回もお楽しみに!」」

コン 「あっ、ズルい!私も言いたかったです〜。」


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