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第一話 コンの記憶とその思考

この作品はスピンオフです。

もしこの作品を気に入ってくれたならぜひ本編も読んでいただけると幸いです。

また、これは不定期更新になりますのでご了承下さいますようよろしくお願い致します。

人に仕える事を苦に思う人間もいるでしょう。

人を助ける事を疎む人もいるでしょう。

その理由を良く考えてみると理解出来なくはないはずです。

人に仕えた事がある人は仕える事に生き甲斐を感じると言いますが…しかし、本当なのでしょうかねえ?

疑問と解答

その関係はとても曖昧なのだと思います。

曖昧で不明確で、本当にイコールで結ばれるのか、そんな事を考えてしまいます。

例えば国語。国語は幾つかの解答があります。文章を抜き出すのも、自分で文を書いていくのも、幾つかイコールが存在してどれかが書ければそれで良い。

曖昧過ぎて少し笑えてきそうです。

反論で数学ならどうだ?と言う人がいますが…数学だって変わらないでしょう。

証明問題がそれの良い例。

だって、その解答に行くには何個か方法を提示すれば良い。

その方法もイコールが幾つか存在してしまっています。

何か数学者とか国語教師とかを敵に回しそうですね…そろそろやめておきましょう。

最初に戻りましょう。

人に仕えた事がある人程、仕える仕事に生き甲斐を感じるのでしょうか?

今回は性格が変わる少年では無く、その刀の一本、このコンがお話をしましょう。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

どうもこんにちは、コンです。

お初にお目にかかる人もいるでしょうから自己紹介から始めさせて頂きます。

名前はコン、年齢は秘密、好きな食べ物は油揚げ…と行きたい所ですが、残念ながら魚が好物ですね。まあ、油揚げも好きですが。

あっ!一番大事な事を忘れていました。

属性、ロリと…妖怪。

いや、嘘じゃないですよ⁈これでも狐の妖怪なんですよ⁈

ふう、まあ良いです。

「コン、朝からぼーっとして、どうかんしたんですか?早くしないと置いて行きますよ?」

目の前にいる髪型がツインテールである以外私と見分けがつかないコイツも妖怪。

名前はコルと言います。

あっ!因みに私はショートです。そこの所あしからず。

「待って下さい。ご主人、今行きます。」

私とコルは一人の少年に仕えている。

少年の目的を達成するという名目で…

「はあはあ、お待たせ…しました。」

「コン、いつも言っていますが、もう少しゆとりと言う物を持てないんですか?」

ぐっ!姉妹みたいな物ですが、これでは私が手に掛かる妹みたいじゃないですか!

何か悔しいです…。私の方が先に誕生したのに…。

「コン、どうしたんですか?またぼーっとしていますよ?」

「わかってる!あまり私を虐めるな!」

「いや、虐めてはいませんが…」

「コン、コル。僕の話、聞いてる?」

おっと、ご主人が何か御用の様だ。

「何ですか?ご主人。」

「何でしたっけ?ご主人様。」

聞いてくれてなかったと言ってショックを受けるご主人。いやいや、私は忘れた訳ではありません。聞いていなかっただけです。

あれ?結局、聞いてなかったって事なのかな?

「だから、今日はちょっと忙しくて買い物が出来ないからお留守番して、買い物して欲しいんだけど?」

「そんな!ご主人、もしご主人の命が狙われでもしたらどうするんですか⁉」

「そうです!ご主人様にもしもの事があってからでは遅いんですよ⁉」

こういう時、私とコルの意見は驚く程一致する。ある意味、当たり前と言えてしまうのが私達の存在だ。

妖怪ではなく、コンとコルとしての…存在。

それはご主人がいる事によって確立されていると言っても過言では無い。

だから、私達の言葉に嘘は無い。

「冷蔵庫の中はまだありますし、今日でなくとも良いのではないでしょうか?ご主人。」

「いや、実はあの中…ほとんどが消費期限切れてるの…。」

「何で消費期限切れの物をまだ冷蔵庫に入れているんですか⁉ご主人様らしくない。」

「分かってはいたんだけど、なかなか…ね。最近ちょっと忙しかったから。」

さっきから忙しい忙しいと、何か最近にイベント等はあっただろうか?

「だから、お願いします。どうかお留守番して買い物を!」

コルと目で会話して検討する。

私は別に構わないと思う。しかし、何故かコルは何か未練がある様になかなか納得しようとしなかった。

「(どうした?コル。何かあるのか?)」

「(いや、何かというか、今日はというか…)」

よくわからないがコルは今日、ご主人と学校にどうしても行きたいらしい。

しかし、ご主人もこれは譲らないとでも言う様な顔でこちらを見ている。

はてさて、よくわからないけどここは…

「分かりました。ご主人、何を買うか教えて頂けますか?あとお金もお願いします。」

ご主人の意見を尊重する事にした。

後ろからはコルの殺気を感じるが気にしない、気にしない。気にしたらその分怖いから。

「では、ご主人。今日も良い一日をお過ごしください。」

「どうか、御無事で…」

私はご主人からメモと私達専用の財布を受け取り、再び自宅であるアパートへと戻る。

コルはだいぶ不服そうだったけど…

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

私はコルと共に自宅近くのスーパーへと来ていた。

あれから一度アパートに戻ったのだが、コルが膨れたままなので、気分転換を兼ねてお昼を買いに来たのです。

「コル?何か今日はあるの?ご主人もコルも変だよ?」

ご主人がいないので素の状態で話をする。昼間に素になったのはいつ以来だろうか?

「覚えていないんですか?今日の事。」

はて?私も関係がある日なのか。

しかし、残念ながら全く思い出せない。 

「本当に覚えていないんですね。本当に私達が同じなのか疑いたくなります。」

同じ…出自が同じ。

あっ!そうか。

「ご主人と会ってから今日で四年なんだ〜。そうかそうか、それでコルは今日ご主人に帰るのが遅くならないように学校に付いて行こうとした訳か。」

いや、この場合は憑いていく、の方が正しいのかな?

「そう言う事ですよ。それなのにコンがご主人様の頼みを聞いてしまうから。」

「まあまあ、でもご主人もそんな素振りは見せなかったよね?」

地雷を踏んだ。何となくそう思った。

そして、的中した。

「ええ、ええそうですよ。ご主人も完全に忘れてしまっているに決まっています。去年はちゃんと祝ってくれたのに、受験が近くなった所為で完全に忘れていますよ〜だ。」

コルが鬱になった。

この状態になるとなかなか回復しない。

私がケンカを長引かせる様に、コルは鬱が始まるとそれが長引く。酷い時は一日中鬱に入っていて食事を摂ろうともしなかった。

全く、これも出自の所為なのだろうか。

「ほら、コル。早く移動しないと他のお客さんの迷惑になる。」

何でご主人がいない時は私が姉でコルが妹なのか、やはり一度じっくり考えた方が良いな。

カートを押してスーパーでレジを打っているおばちゃんにオマケで値引きしてもらい、アパートへと戻る私達。

その間もコルはグチグチとご主人に対して愚痴をこぼしていた。

午後四時半位の事、本来夜型の私達がお昼寝から起きたら、隣で寝ていたコルがいなくなっていた。

「トイレ…かな?」

まあ、何であれそろそろ買い物に行かなくてはならない。トイレにいるなら一声かけてから私だけで行けばいい。

そう思い、トイレへと足を運ぶ。

しかし、私は勘違いしていた。

今回のコルはただ鬱になっているだけ…そう思ってしまったのが、私の間違い。

コルは私に何も言わず、一人で何処かへと姿を消していた。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「コルが家出した⁈」

ご主人に電話をしてコルがいなくなった事を伝える。しかし、記念の事は言えなかったので何だかおかしな説明になってしまった。

「いつから居なくなったか分かるか?」

「詳しい事は分かりません。目が覚めてみたら書き置きも無く…申し訳ありません。」

「いや。しかし、コルの行く充てなんてそんなにあるとは思えないけど。最悪放浪されているのが一番困るな。」

確かに、ただの人間なら子供の一人や二人位、簡単に見つけて保護できるだろう。しかし、コルは妖怪でしかも幻覚や幻術を巧みに操る妖怪だ。

下手に警察などに見つかると騒ぎまで起こりかねない。絶対に私達が見つけなければならないという条件がついてしまった。

「コン、何か心当たりは無いか?情けないけど、僕は心当たりが見つからない。」

コルが行きそうなところ。

スーパー?いや、あそこはもう既に今日行っている。そんな無用心な事をコルはしないだろう。

なら何処だ?私達は基本的にご主人に行動範囲が依存している。だから私とご主人、両方が知っている場所にしか行かないはずだ。

次に考えるのは理由。

何故コルは今日、居なくなった?

それは、ご主人と出会えた記念日だから。

…と言う事は、考えられるのは…

「ご主人、今から私、コルを探してきます。ご主人はなるべく早く帰ってきて美味しいご飯を作ってください。」

「分かったのか?なら僕も!」

「いえ、ご主人は行けません。というか、ご主人はご自分に行く事を禁じています。故に思い当たらなかった。否、思い当たりたくなかった。」

「まさか!」

「そう言う訳です。大丈夫ですよ。ご主人が別に忘れていなかったのは、私が知っていますから。」

「何だ。もしかして、僕の頼みを受けてくれたのって、最初から知っていたから?」

「まさか。さっき思い出しただけですよ。」

最後にそう言って電話を切る。

「さてと、手の掛かる妹を迎えに行きますか。」

そう言って私はご主人と初めて出会った…長篠 華蓮の家へと噛みしめる様に歩いて行った。


結論を言わせて貰うなら、コルは案の定そこにいた。

「コル、何をしているのかな?」

「コン、よく分かりましたね。お昼まで忘れていたあなたが。」

「伊達に同じ出自じゃないという事だね。」

うんうん、とでも言う様に大きく首を縦に振る。

「同じ…出自ですか。」

「まだナイーブになってるの?ご主人ももう帰ってくるよ?」

「ご主人様はこの女の子の為に生きているんですよね。」

「…生きているって言うのは、少し違うと思うけど。」

「いいえ。同じです。あの女の子の苦しみを犯人に与える。そう言っていたのも忘れましたか?」

忘れるはずが無い。あの少年の苦しみは私達が一番知っている。

「ごめんなさい。言い過ぎました。」

「ううん。別に良いよ。」

帰ろうと言って手をコルへと伸ばす。

コルは今度は何も言わずにそっと握り返してきた。

私達二人は結局の所同じなのだ。

性格が違っても、好みが違っても、もし仮に見た目が違かったとしても…

その根っこは、根幹は全く変わらず同じなのだ。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

アパートへと帰ると玄関の前でご主人が立っていた。

まるで娘を怒る父親の様に怒る姿を見て、流石のコルも反省したらしい。

何処か諦める様な、それでいて嬉しそうな顔をして泣いていた。

そしてお待ちかね…

「それでは、第四回の邂逅記念日祝いを始めさせて頂きます。」

「よっ!ご主人。」

「ご主人様、頑張って下さ〜い。」

「あはは。たった三人しか参加者は居ないし、頑張るも何もないよ。」

「ご主人、ご主人!早くプレゼント交換しましょう。」

「おいおい、まだ料理も食べてないのに…って何でコルも箱を持っているのかな?僕の話はスルー確定なの?」

何か言っているご主人を置いといて、勝手にラジカセから適当な曲をかけてプレゼントを横へと渡していく。

三分程無言でプレゼントを渡し続け、曲が途切れた時に手の中にあった箱はそれぞれ…ご主人が私のを、コルがご主人のを、私がコルのを持っていた。

「ご主人。ご主人のはこっちです。」

「えっ?でもそうするとコンのが無くなっちゃうよ?これは元々コンのだし。」

「ああ、ご安心を。さあ、皆さん箱をお開け下さい。」

私の掛け声で二人が箱を開け始める。

ご主人はまず、コルの箱を開け、中にあったペンダントを見つめる。

「すごい。狐のペンダント?コル、よく買えたね?」

「ご主人様から頂いたお小遣いを貯めただけです。私は何処かの狐と違って計画的ですからね。」

ぐっ!何故こちらを見る⁈

「さて、ではご主人様のを開けさせて頂きます。」

そう言ってコルは小さい包み紙を丁寧に取り、箱を開ける。

中には、懐かしい髪留めが入っていた。

「ご主人、これって。」

「どちらに当たっても良い様にって思うとどうしてもそれしか思い浮かばなくて。」

そう言いながら少し照れ臭そうな顔をするご主人。

「ご主人様、これって他の方にも差し上げた事がございますか?」

「えっと、一度だけね。」

やっぱり、その髪留めか。

「そうですか、一度だけですか。」

「えっ?いや、あの、別にコルが二番目とかそう言う訳じゃないよ?ただ出会う順番が違っただけで!」

何か勘違いしているのか、ご主人が全力で釈明している。

「良いんですよ。ご主人様、ありがとうございます。」

コルは髪留めを大切そうに胸の前で握る。

どうやら、ご主人があの女の子の為だけで生きている訳では無いと言う事が分かってくれたようだ。

「そう言えば、コンは何を買ったんだ?」

「ふふっ。ご主人、開けてみて下さい。」

自信たっぷりな私に言われてご主人が袋を開封する。

「ははは!面白い事をするね。コン。」

袋の中には、手作りのご主人人形、私とコルの手作り人形がそれぞれ入っていた。

「コン、あなた、いつの間にこんな物を作っていたんですか?」

「何処かのねぼすけ狐が寝た後にだよ。」

さっきのお返しとばかりにコルに皮肉を返して若干悦に入る。

「しかし、本当に似てるな。少しデフォルトが変わっているけど、逆に可愛らしくなっている。」

「ふふっ!ご主人は知らなかったでしょうけど、私は手先が器用なんですよ?」

ああ、そういえばこんな事もあった気がする。

まあ、それは今の私には関係無い。

だって、それは……私の出自の問題だから。

「そうだったんだ。初めて知ったよ。それにしても、二人共本当にありがとう。」

私達はその日沢山…笑いあった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

この日の事を思い出す度に、私はいつも思うのだ。

人に仕えた事がある人程、仕える仕事に生き甲斐を感じると言われています。

しかし、私はこう思う。

仕えた事がある人程、仕える仕事に生き甲斐を感じる訳では無い。

仕えたい、そう思うからこそ、生き甲斐になるのだと。

私が、私達がそうである様に。



コン「スピンオフだ〜‼」

片府「お疲れ様でした〜。いや〜、カッコ良かったですよ〜。」

コン「でしょでしょ?」

コル「何故?」

片府・コン「「はい?」」

コル「何故私ではなくコンなのですか〜‼」

コン「ヤバイ!コルが怒った‼」

片府「そんな!どうするんですか⁈」

コン「こうなれば仕方無い…。」

片府「コンさん…。」

コン「片府さん、犠牲になって?」

片府「コンさ〜ん‼」

コン「コル、こっちだよ〜。」

コル「キャーーーーーーーーー」

片府「いや、やめ…コルさん。落ち着い…て。ギャーーーーーーー」

コン「と言う訳で、狐の事情の裏事情 スピンオフ。主人公が毎回変わって頑張るんで、よろしくお願いします!」

片府「コン…さん。たす…け…て。」

コン「ご愁傷様です。」(合掌)


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