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明日天気になったなら  作者: 桃 春花
第一部 龍の娘
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「本当に一人で大丈夫か? 多分長く待たせると思うのだが……」

 ハルト様が心配そうに私に訊ねる。これで何度目だろう。もしや強迫神経症かと逆に彼を心配してしまう。

「大丈夫です。待つのは平気ですから」

 私は何度も繰り返した答えをまた告げた。こちとら災害時にもおとなしく列に並ぶ日本人だ。たかだか数時間待たされるくらいがなんだというのだ。

「勝手にうろついたりしません。ここでイシュちゃんたちとおとなしく待ってますから、気にせず行ってきてください」

「うむ……」

 うなずきながらも、やっぱりハルト様は心配そうな顔をしている。そして周りに声をかけようとするのだ。

「やはり、誰か一緒に残って……」

「必要ありません。残ってもらってもすることがありません。無駄にぼーっと暇をもてあますことになるだけです。気の毒ですし、私もかえって落ち着きません」

「そ、そうか」

 いい加減イラっと来てちょっと強く言ってしまったら、ハルト様はしゅんとなった。なんなのこの人、三十半ばのおじさんがこんなコムスメに叱られて何しょげてるの。

 王様のくせに。

「別に治安の悪い場所だとか紛争地域だとかじゃないんでしょう? 女が一人でいられないような危険な場所なんですか」

「そんなことはない。ここはリヴェロ公王所有の離宮だ、滅多な者は入り込めぬ」

「でしたら、何ひとつ問題はありません。安心してのんびり待たせてもらいます。さ、あんまりぐずぐずしてちゃいけないんじゃないですか。そのリヴェロの王様が待ってらっしゃるんでしょう?」

「ああ……」

 後ろでみんなが焦れ焦れしているのが伝わってくる。お呼ばれして相手のお家の玄関先まで来て出迎えの人もいちゃったりするのに、いつまでも中へ入らずもめているんだから当然だ。突き刺さる視線が痛い。すみません私のせいでっていうか、私は何度も早よ行けと言っているんですけどね。悪いのはこのおじさんだから、私を恨まないでくれ。

「ハルト様、ティトはしっかりしてるから大丈夫ですよ。さあ、もう参りませんと」

 見かねてイリスが声をかけてくれた。さんざん渋っていたハルト様も、ようやくうなずいて歩き出す。

「では、行ってくる。何かあったら、遠慮しなくていいから誰か周りの者に声をかけなさい。私の連れだと言えば、けっして粗略にはされないから」

「はい。いってらっしゃいませ」

 護衛の騎士たちを連れてようやく離宮の中へ入って行った彼を見送り、私はどっと息をついた。

 あーやれやれ、やっと行った。ホントにもう、めんどくさいおじさんだな!

 心配してくれているのにこんなことを言ったらバチが当たりそうだが、三十分近くも同じ問答を繰り返したのだから大目に見てもらいたい。

 私は竜たちが待機している場所へ行き、植込みの縁石に腰かけた。今日もいい天気だ紫外線が怖い。こちらの季節は春なのだろうか。ブレザーを着ているとちょっと暑いくらいだから、脱いでシャツだけになる。

 お昼のちょっと前に到着した場所は、大きな川が流れる町だった。船を川に停泊させ、ハルト様は護衛を六人ほど連れて町を見下ろす丘の上の建物へ向かった。なぜか私も一緒に。

「おそらく二、三日逗留することになる。その間ずっと目を離すのは不安だ。退屈だろうが、そなたも一緒に来なさい」

 そう言われた時には、この人の中では私はどうあっても十歳なのだろうかと首をひねったものだ。しかし後でこっそりイリスが教えてくれたところによると、男所帯の中に女の子を一人残していくことが不安だったらしい。

 言われると、たしかに不安である。疑われた船員のみなさんには悪いが、はずみでどんなことが起こるかわからないからね。お互いのために予防はしておくべきだろう。

 そんなわけで、王様の離宮などという場違いもはなはだしい場所へご一緒した次第である。

 が、会談の場にまでご一緒するのはさすがに無理。何より相手に失礼だろう。こんな身元不明の遭難者を連れて行くなんて。私は建物の外で、会談が終わるまで待つことになった。

 船からここまでは竜でやってきた。そう、私はまたあの恐怖に耐えねばならなかった。五頭の竜は、庭の片隅でおとなしく固まっている。なぜ五頭かというと、護衛六人のうちトトー君だけが自分の竜を持っていなかったからだ。私とハルト様とトトー君は、それぞれ他の竜騎士に同乗させてもらった。

 竜は賢いとイリスが言っていたが、本当にお利口さんだ。つながれてもいないのに、どこにも行かず待てと言われた場所で待っている。伏せの姿勢で目を閉じて、まったりお昼寝中だ。でっかい竜が五頭も寝ていれば、奥に座る私の姿なんてほとんど隠れてしまう。平たい屋根の離宮は庭に面した部分が回廊になっていて、ちょくちょく人が通る。竜がいなかったら私はいちいち視線を気にしなければならなかっただろう。

 私は竜の間から見える景色を眺めて過ごした。

 世界遺産みたいな綺麗な建物だ。白い壁と柱を持つ洋風建築なのに、どこか懐かしさも覚える。多分扉や天井付近の装飾が、オリエンタルな雰囲気を漂わせているからだろう。

 ここはリヴェロという国だそうで、その王様と隣国の王様とが臨時首脳会談の真っ最中だ。ハルト様、偉い人っぽいとは思っていたが、まさかの王様だった。私は王様に就職の斡旋をお願いしていたのだ。もしや最強のコネゲット。

 昨日からざっと聞いた話では、この辺りの国々はみんな島国らしい。ほとんどは海上に国境線を引いているが、いちばん大きな島だけは三つの国に分かれて地上に国境線がある。三国の名前はロウシェン、リヴェロ、アルギリ。ハルト様はロウシェンの公王だ。どうでもいいけど、公王なんて称号が公式に使われていてびっくりだ。アニメで架空の称号として使われていたのは知っているが、異世界仕様なのだろうか。もしくは自動翻訳機能がバグったか?

 今いる場所はリヴェロの首都から少し離れた、ロウシェンとの国境寄りとのことだった。街を流れる大きな川は、ロウシェンの山から流れ出ている。

 無断で領空侵犯したら即スクランブルである。もちろんハルト様一行は、事前におたくの上を通りますよとリヴェロに通告していた。どうやら、そのルートとタイミングに合わせて、リヴェロの公王がやってきたらしい。待ち伏せしてお誘いをかけるだなんて、よほどの用事があるのだろうか。

 ――まあ、国のトップ同士の会談なんて、私には別世界の話だ。リアル別世界に来ても、そんな場面に関わるはずがない。身元不明の拾われっ子は外でみんなが帰ってくるのをただ待つばかりだ。

 私は頭上を見上げた。すぐ後ろの木にピンクの花が咲いている。大きな花弁を四枚持つ、ハナミズキによく似た花だった。

 軽く一時間は経過した頃、ちょっと退屈になってきた私は小さな声で歌をうたった。花の名前がそのまま題名になった歌だ。この木を見ていて思い出した。

 知らずに聞けば普通のヒット曲でしかない。が、私を含むごく一部の人間にとっては、ちょっと特別な歌でもある。とある乙女ゲームキャラのイメージにぴったりだと、一時期ネットで話題になったのだ。

 バラード調の歌をアカペラで歌う。もちろん小声で。一人で大声で歌っていたら、痛いどころか頭を心配されるだろう。

 心地よいぽかぽか陽気の中目を閉じて歌っていた私は、ふと気配を感じて目を開けた。その瞬間、ぎょっとして歌を中断してしまう。お昼寝していたはずの五頭が、なぜか首を持ち上げそろってこちらに注目していた。

「あ、あれ……? うるさかった? ごめんね」

 ほとんど呟き程度の声だったのに、気にするほど竜は耳がいいのだろうか。

 のそりとイシュちゃんが動いた。前脚を動かして、私の膝にちょいと乗せてくる。この脚に踏まれたら骨折確実。でもものすごく遠慮して、爪の先っちょだけを乗せている。ううん、本当にかしこい子。

「ん……? これはもしかして、おねだりのポーズ?」

 犬や猫がこんなしぐさをしなかったっけ。竜にも同じ解釈でいいのだろうか。

「なあに? ……あの、もしかして、歌えと言ってる?」

 こちらをガン見している竜たちのまなざしが、きらきらと期待に輝いているように見えるのは気のせいだろうか。お散歩に連れてってと訴えてくる犬のように。

 私はためしにもう一度歌ってみた。するとどうだろう、竜たちはじっと聞き入っているではないか。目を閉じてうっとりしている子までいる。

 えええ、竜って音楽好きなんだ。面白い。

 喜んでもらえるのなら、こちらとしてもいい気分である。私は声を少し大きくしてラストまで歌った。拍手はなかったけれど、アンコールをねだられた。いやわかるんだよ! もっともっとって、期待するまなざしなの!

 くそう、可愛いやつらめ。よし、もうちょっとサービスしてやるか。

 何を歌おうか、つかの間迷って頭に浮かんだものを歌い始める。人気ドラマの主題歌だ。けっこう声量のいる歌で、本家ほど朗々とは歌えないけどそこそこ上手に歌える自信はある。こう見えても歌は得意なのだ。姉弟でよくカラオケに行った。クラスメイトとは、たまにオマケで誘われる程度だったが、そういう時にも上手いと誉められたものだ。

 行きつけのカラオケボックスを思い出しながら歌っていたら、唐突に喉をせり上がってくるものが邪魔をした。止める暇もなく、引きつる音が漏れてしまった。

「……っ」

 しまった。選曲ミスった。

 もう会えない人を想い、逢いたい、あの頃に戻りたいと願う歌。今こんなのうたったら家族を思い出すに決まっているじゃないか。馬鹿だ、私。なんでこんなのうたったの。

「ふ……っく」

 不意打ちであふれた涙は、なかなか止められなかった。こんなところで泣いていたら人に見られる。早く泣き止まないと。そう思うのに、嗚咽が止まらない。

 どしたの? そんな顔をして竜たちがのぞき込んでくる。この子たちに、私が泣いているってことは理解できるのだろうか。急に歌が止まったから催促しているだけなのかな。

「……っ、ごっ、ごめんね」

 ちょっと待って。すぐ泣き止むから。こんな、人目につく場所でいつまでも泣かないから。

 私は無理やり別の歌をうたい出した。まだ泣きながらで音程狂いまくりのおかしな声しか出なかったが、それでもうたい続けた。一時的な感傷なんか、うんと楽しい歌をうたえばすぐ消える。

 今度のチョイスは日本全国のちびっ子に大人気、ロングランヒットを誇る菓子パンなヒーローだ。

 泣きながらアニメソングを歌うだなんて変なことやってるな。でもその効果はあった。私が気持ちを立て直すより早く、竜たちが顕著な反応を見せたのだ。

 さっきはじっと聞き入っていただけの竜たちが、こころなしかウキウキと動き出した。これは、もしかしてリズムを取っている? 私の涙がおさまり音程も安定してくると、竜の動きもまとまっていった。メロディに合わせて一斉に首を右へ左へと振っている。まるでメトロノームだ。何これ可愛い。

 ちょっ、待って。でっかい竜が歌に合わせて首を振ってるんだよ。ものすごく可愛くないか。

 これは萌える。私だけじゃなく誰もが萌える光景だ。ビジュアル爬虫類系だろうと関係ない。歌に合わせてリズムを取る竜だなんて、動画に撮ってネットに投稿したら全世界が萌えるって!

 いやんもう、どうしよう可愛すぎる。

 今この瞬間まで、それなりに可愛いと思いつつも竜に癒されることはないだろうと思っていた。強面で、ふかふかモフモフもしていない巨大生物に癒しは求めていなかった。しかし撤回する。癒される。この光景、超癒される。

 涙なんてどこかへすっ飛んだ。私は夢中で歌った。歌い終えたら次はロック調のかっこいいアニソンを。竜たちどうするかと思ったら、さらにノリノリでダンスを披露してくれるじゃないですか。くうぅっ、わかってるなお前ら!

 もう完全にリサイタル状態だ。すっかり盛り上がって私は声を張り上げる。ああ、向こうの廊下を通りがかった人達が、なんじゃあれはと足を止めているな。さぞ呆れられているだろうが構わなかった。そんなんどうでもいい。目の前の萌えに比べたら些末な問題だ。この可愛いドラゴンダンスにあんたたちも萌えてしまえ!

 歌ってうたって歌いまくり、この日から私は竜が大好きになった。




 ハルト様の言葉どおり、ロウシェンの一行は離宮に宿泊することになった。

 いくつかの部屋が提供され、各自に振り分けられる。ハルト様と私は一人部屋、騎士たちは三人部屋×2だ。私がいなければ二人部屋×3になれただろうに、申しわけない。

「やはり、カーメル殿はエランドの動向を気にしておられたな」

「間違いなく、探りを入れるのが今回の目的でしょうね。うちがエランドと手を組んだらリヴェロとしては面白くないでしょうし」

「面白くないどころではない。はっきり危機感を抱いているだろう。しかし、私としてはエランドよりもこのシーリース三国でしっかり同盟を組み、エランドに対抗したいのだが」

「でも今のとこエランドも友好的な態度ではあるんですよね……あんまり露骨に警戒してみせると、文句つける口実与えちゃうんじゃないですか……」

「そこが難しいところだな」

 リビング的な部屋に集まって、ハルト様とイリス、トトー君が難しい話をしている。他の騎士は少し離れて控えている。ちょっと違和感。この構図からして、トトー君も偉い立場なのだろうか。一番年少で竜も持っていないのに、どういうことだ。

 私は彼らのそばに座っていたが、話には加わっていない。加わりようがない。エランドっていうのは多分国の名前なんだろうが、どこにあるのか、ロウシェンやリヴェロとどういう関係なのか、さっぱりだ。お茶をいただきながらBGMとして聞き流すしかない。そもそもこんな話、部外者の私が聞いていていいんだろうか。

 私は窓の外を見た。まだ空は明るい。晩ご飯までには時間があるから、しばらくミーティングは続くだろう。私はカップをテーブルに下ろし、そっと立ち上がった。

「ん? どうした、チトセ」

 ハルト様が気づいて訊ねてきた。びっくりなことに、ちゃんとチを発音できている。他の人はどうやっても言えなかったのに、この人だけは何度か言い直しているうちに正しい発音をマスターした。やればできるんじゃないか。イリスたちにも見習ってほしい。

「少しお散歩してきたいんですけど、部屋から出ない方がいいでしょうか」

 誰も何も言わないけれど、どう考えても場違いな空間に割り込んでいるのが気づまりだった。そもそも私は船に置いておけないからというだけの理由で連れてこられたのだ。こんなふうに、仲間内の話し合いの場に同席させてもらえる立場ではない。コイツ邪魔だよなーって思われているんじゃないかと気になってしかたない。

「いや、近くだけならかまわぬが。誰か供を……」

「いえ一人で大丈夫です。よそさまのお宅を勝手にうろつき回ったりしませんから。ちょっと外で風に当たりたいだけなんで、おかまいなく」

 またハルト様の心配性が勃発しかけたのを押しとどめる。空気読んで席をはずそうとしているのに、そっちもちょっとは空気読んでくれ。

 気がかりそうなハルト様にさっさと背を向けて、私は部屋を出た。かまわないと言質は得たのだ、遠慮はしなかった。ここで遠慮したら、確実に他の人の迷惑になる。

 一人になって、ほっとした。って、これ着いた時と同じ展開。何回繰り返すんだ。

 ハルト様って、王様なだけあってちょっと浮世離れした雰囲気だ。世間一般的な感覚は持ち合わせていないのかも。私みたいな庶民以下の居候に立派な騎士をお供させようだなんて、普通考えないと思うんだけどな。

 それとも、一人でチョロチョロさせておいたら何やらかすかわからないという方向の心配なんだろうか。

 私は少しだけ部屋を離れて廊下を歩いた。二階の廊下も回廊になっていて風が吹き抜ける構造だ。バルコニーみたいにちょっと張り出した場所があったので、そこに腰かけて風景を眺めた。異国情緒漂う街が眼下に広がっている。

 ここから海は見えなかった。さっき話に出てきたエランドという国は、海の向こうの国なんだろう。きな臭い雰囲気を感じたが、そういう関係になるということは距離は近いのかな。

 こうして見ていると、とても穏やかで平和な風景に思えるのに、戦争とかあったりするのだろうか。嫌だな、巻き込まれたら私なんてあっという間に死んでしまいそうだ。

 ぼーっとしていた私は近づいてくる足音と気配に気づかなかった。声をかけられて、初めてそこに人がいることを知る。振り向いた先にいたのは、知らない人だった。

「こんにちは」

 ごく平凡な言葉をかけてきた人は、およそ平凡とは程遠い姿をしていた。

「こんにちは」

 私も平凡に挨拶を返す。お愛想笑いと会釈をおまけして。

 内心ではドン引きしながら。

「ハルト殿が連れて来られた子ですね。お名前をうかがっても?」

 ちょっと低めで落ち着いたトーンの、柔らかな声。ハルト様とはまた違った優しげな口調だ。性別を感じさせない、中性的な雰囲気を漂わせていた。

 見た目が中性的というわけではなく男性であるのは明らかなのだが、男くささをまったく感じないのだ。男が苦手な私にとって付き合いやすいタイプと言うべきなのだが、残念ながらとてもそうは思えない。むしろ全力で回避したい相手だった。

「……佐野千歳です」

「サノ・チトセ? 珍しいお名前ですね」

 なんと一発で正しく発音された。そこだけは好感が持てたけれど、やはり関わり合いたくないと思ってしまう。

 あのかっこよくてイケメンなイリスが普通に思えてしまいそうなくらい、目の前に立つ人は美しかった。

 うつくしい、としか言いようがない。この美貌にイケメンなんて表現はふさわしくない。本当にこれ人間なの人形なんじゃないのと思いたくなるくらい、どこもかしこも完璧に整っていた。顔だけじゃなく指先まで綺麗だ。すらりと背も高い。神様は本当に不公平。なんでこんなに恵まれすぎた人間を生み出すのだろう。

 続く言葉で、私はさらに神のえこ贔屓を知らされた。

「わたくしはカーメル・カーム・アズ・リヴェラスです。先ほどの会談ではお会いできませんでしたが、ここで会えてうれしいですよ。今宵の晩餐には、ぜひ君もいらしてくださいね」

 やたらと長い名前の最初の部分だけ、知っていた。ハルト様たちの会話に出てきた名前だ。しかもこの台詞、彼の正体を悟るには十分すぎる。

 よもや私が対面することはあるまいと高をくくっていた相手、リヴェロ公王その人だった。

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