10
予定ではすぐにエンエンナへ帰るはずだった一行は、その後しばらくチェンバにとどまった。
病人が出たからだ。
今回は、さんざん周りから心配された私がぴんぴんしていて、ハルト様が熱を出してしまった。
公王が寝込んだものだから、みんな大騒ぎだった。幸い軽い風邪で、こじらせることもなくすぐに治ってやれやれだ。
大したことにならなかったからこそ言える話だが、悪くない数日間だった。イリスとトトー君はゆっくり休養を取れたし、アークさんやレイ君は休みを取って実家へ帰り、家族と会ってくることができた。ユユ姫は看病と称してずっとハルト様のそばにいられ、割とみんな楽しんでいたと思う。約一名、ウィルスと戦っていた人を除いては。
私? もちろんハルト様のお見舞いになんて行きませんでしたよ。愛する人のお世話ができて張り切っているユユ姫のお邪魔になりたくないし、せっかくウィルスを回避できたのにそばに近寄ったら感染っちゃうからね。抵抗力のなさには自信がありますから。
と、主張するまでもなく周りが近づけまいとしたので、ユユ姫を通じてお見舞いの言葉だけ届けてもらった。
そうしていつかのような秋晴れの今日、すっかり回復したハルト様と、なぜか一緒に街へ出かけている私だった。
「せっかく来たのだから、買い物くらいして帰ろう。欲しい物があれば何でも言いなさい」
普通の市民みたいな服装をしたハルト様は、妙にご機嫌で私の手を引いていた。
この、手をつないで歩くっていうのも、正直恥ずかしいんだけどな。嫌なわけじゃない。そうじゃないけれど、普通に考えて高校生にもなって父親とお手てつないでおでかけってないだろう。
例によって、はた目には小学生に見えているんだろうが……小学生だって、高学年にもなれば親と手をつないだりしないんじゃないのかな。
甘ったれた子供だと周りの人に思われていないかな。いや私とハルト様は血縁には見えないだろうから、ハルト様が危ない人と思われていたりして。
周りの視線が気になる。いまのところ、通行人が特にこちらへ注目してくることはない。
――そう、誰も驚かない。注目しない。自分たちの王様が目の前を歩いていると、気づかない。
私とハルト様以外に、同行者はいなかった。途中までは馬車で来たが、アークさんには笑顔で「いってらっしゃいませ」と送り出された。
アリですか、これ……。
「まず、もっとあたたかい服が必要だな。冬服の支度もせねばならぬから、布地を見ようか」
通りに並ぶ商店をハルト様はうきうきと見回す。ひょっとして王様、お忍びに浮かれてらっしゃいます?
「手っ取り早く服を手に入れるなら、古着屋さんに行けばいいんじゃないでしょうか」
「そういうことを考えずとも……そなたは結構おしゃれ好きだろう。自分の好みで服を仕立てたくはないのか?」
まあ、そうだけど。
「急ぐ必要はなかろう。ああ、上着だけはすぐ必要かな……あそこで見てみるか」
目をつけた店へハルト様は私を連れて行った。手芸用品店とブティックが合体したような店だった。ショーウィンドウに、可愛らしいケープが飾られている。
「いらっしゃいませ」
「この子に上着がほしいのだがな、合いそうなものを出してくれるか」
美人で上品なマダムに迎えられ、ハルト様が注文を出す。マダムはすぐに心得て、何着かコートやケープを出してきた。
基本オーダーメイドが主流のこの世界でも、既製服がないわけじゃないんだな。でもきっと一品もの。手作りだもんね。
襟に毛皮のついたコートとか、色とりどりの模様編みで作られたケープとか、次々身体に当てられる。ハルト様は女性服についてはよくわからないようで、どれもいいんじゃないかという反応だった。
たしかに、品質はどれも上等だし、デザインも悪くない。でも今一つぴんとこないな。
そもそもこれらは、もっと本格的に寒くなってから着るものだろう。今着るには、ちょっとごつすぎる。
私はショーウィンドウのディスプレイを見た。
「あのケープを、見せてもらってもいいですか?」
お願いするとマダムはすぐにケープを取ってきてくれた。オフホワイトの柔らかく軽やかな毛織物で、今の時期にちょうどいい。腰丈なのでミニスカートにもぴったりだ。
「ああ、いいですね。よくお似合いです」
私と同じ感想を持ったらしく、マダムはこれまでよりも熱心に誉めてくれた。
裾に入った小さな花の刺繍が可愛らしい。私はハルト様を振り返った。
「これがいいです」
にこにことハルト様はうなずいた。
「そうか、ではそれにしよう。そのまま着て行くだろう?」
「はい」
もしかしなくても子供服なんじゃないかという点については、深く考えまい。ちょうどいいサイズだし多分似合っていそうだし、気に入ったからいいのだ。
新しい服のための布地も選んで、最後お会計の時にはちょっとひやひやした。
王様、ちゃんとお金持ってるんでしょうね? まさかよきにはからえと出て行ったりしないですよね?
そんな私の心配はまったくの杞憂で、ハルト様は懐から財布を取り出した。普通に支払いをしているのを見て、お金の使い方もわかっているんだなと安堵する。世間知らずのお殿様ではなかったようだ。財布が見るからにピカピカの新品だったことには、ノーコメントでスルーする。
「次は何がよいかな」
片手に買ったばかりの荷物、もう片方はまた私の手を引いて、ハルト様は辺りの店を物色する。
「やはり装飾品かな。ここには腕のよい職人が多いから、洒落た飾りが買えるぞ。そなたに似合う宝石は何だろうな」
お値段をたしかめるのも怖い店に入ろうとするものだから、私はハルト様の手を引いて立ち止まらせた。
「それより、休憩したいです。歩き疲れました」
「もうか? まだそんなに歩いておらぬぞ」
「疲れました」
「そ、そうか」
自分が病み上がりだってことを忘れてやしないかな、この王様は。
私は四辻の角にある店を指差した。外へテーブルや椅子が出されている。カフェのような雰囲気だ。
「あそこで一服しましょう」
「ああ、そうだな。そなたの好きな菓子がありそうだ。行こうか」
私が希望を出せば、ハルト様はいそいそとそれに従う。なんだか今日は、やけに甘くないですか。いつもはお菓子ばっかり食べるなってうるさいのに。
せっかくいいお天気なので外のテーブルにつき、ウェイトレスのお姉さんに来てもらう。ご注文はと聞かれて、ハルト様は笑顔のまま軽く固まった。
「……うん?」
「……何になさいますか?」
お姉さん、ちょっと不審げながらも訊きなおしてくれる。でも客はまた、
「なに――とは?」
「…………」
私はため息をつきたいのをこらえ、口を出した。
「ハ――お、とうさま。ほしいものを選ばないと」
「選ぶのか? こちらが?」
きょとんと目を丸くされた。ああっ、こんなところでお殿様が!
「そうです。ほら、ここにメニューがあるでしょう。この中から、ほしいものを選ぶんです。ちなみに私はリッカ茶と木の実のケーキをお願いします」
「あ、で、では、私もリッカ茶を」
「かしこまりました」
メニューを回収してお姉さんが奥へ戻っていく。絶対怪しまれたな、あれは。すみません、別に変な人じゃないんです。ただの王様なんです。
運ばれてきたお茶に口をつけて、ハルト様は子供みたいに目を輝かせていた。
「おもしろいな。自分でほしいものを選べるとは。ずいぶんたくさん種類があったようだが」
「そうですね、お茶の品ぞろえが豊富なお店ですね」
「慣れているようだが、以前にもこうした店に入ったのか?」
「こちらでは初めてです。私の国にもお店はたくさんありましたから……こういうところは、同じなんですね」
「……そうか」
ハルト様のテンションが、少しだけ降下する。いや、しんみりしたくて言ったわけではない。ちょっと懐かしい気持ちになったのはたしかだが、寂しくなったわけじゃない。
私は話題を変えることにした。
「それにしても、なんで今日は私とおでかけなんですか?」
「なぜと言って……だから、帰る前に買い物でもと思ってな」
「それはうれしいんですけど、でもどうせならユユ姫とデートなさればよろしいのに」
ハルト様は飲みかけていたお茶を変なところに入れて、むせ込んだ。
「な……っ、いや、それは別に」
「別にじゃないです。せっかくお仕事休んで時間が取れたんですから、婚約者と過ごすべきでしょう」
「それは、よいのだ。ユユにはちゃんと話をしてある」
「全然よくないです。ほっとかれる婚約者の身にもなってください」
それでなくても、今回は私のせいですっかりハルト様を独占する形になってしまい、ユユ姫には申しわけない限りなのに。
婚約したばかりの女性にしてみれば、婚約者が他の女の子のことばかりかまっているのは大変不満に思うところだろう。ユユ姫は事情をわかってくれて文句を言ったりしないけれど、まったく何も気にしていないはずはない。
いくら看病でつきっきりになったとはいえ、もっと普通にふたりでラブラブしたいだろう。出かける時間があるなら、娘より婚約者を優先するべきだ。
「今からでも遅くないです。城に戻ってユユ姫と出直しませんか」
ハルト様はハンカチで口元をぬぐった。むせても上品なのは、さすがである。
「気を回さずともよい。今日のことは、ユユが勧めたのだから」
「え?」
「公王という立場を離れ、そなたとふたりで、ただの親子として出かけて来いと――あれが、お膳立てをしてくれたのだ。だから心配しなくて大丈夫だ」
「…………」
ユユ姫……どんだけ優しいの。自分だってハルト様とおでかけしたいだろうに。
「仲直りというか、仕切り直しの意味を込めてだな――それに、なんだかんだ言って結局そなたは何も買おうとしなかったから、私が買ってやれと。金子を用意したのはユユだが」
「……お土産、買って帰りましょうか」
私の提案に、ハルト様はうれしそうに微笑んでうなずいた。
「そうだな、後でよいものを探そう。ユユの好みは難しいぞ。目が肥えているからな。生半可なものでは気に入ってくれぬ」
「ハルト様がご自分で選ばれたものなら、きっと喜んでくれますよ」
カエル土偶じゃなければね。
「そうか? いや、ユユは昔ヌイグルミが好きでな。だから会うたびにヌイグルミを持っていってやったら、ある時怒られたのだ。いつまでも子供扱いするなと」
それは多分、一人の女性として意識してほしくて言ったんじゃないのかな。
そういう意識を持った今、婚約者へのお土産として選んだのであれば、たとえヌイグルミでも喜ぶと思う。
ちなみにあのブゥブゥ人形は部屋に置いてきた。持ち歩くものとは思えないし、乙女の持ち物としてかなり微妙だし。
贈り主の気持ちはうれしかったし、大事にするつもりだ。でもそれはそれとして、おしゃれ心も大事にしたい。
あやうく破壊されかけたセンスは、死守せねば。
木の実のケーキはおいしかった。すぐに食べてしまって、非常に物足りない気分になる。果物のタルトも魅力的だったんだよね。今日のハルト様なら、もう一個食べたいって言っても許してくれるかな?
そーっとおうかがいを立てると、苦笑とともに許可が出る。ウェイトレスさんに追加オーダーをお願いして待っていると、派手な衣装を着たピエロのような人が近づいてきた。
「チェンバへようこそ。街の見どころをご紹介しております。ぜひお買い物、観光の参考になさってください」
たくさん書き込みがされた街の地図をテーブルに差し出す。もちろん印刷物なんかじゃない、手書きの一品ものだ。
「……何なさってるんですか」
私はピエロを見上げる。真っ白に塗ったお化粧で顔色はわからなくなっているが、痩せこけた頬のラインはごまかせない。
「私はただの観光推進委員でございます。お勧めの店や土産物などをご紹介しております」
いでたちだけはしっかり決めているくせに、口調は相変わらず抑揚がなくて感情をうかがわせない。
なにか言ってやってくれとハルト様を見たら、テイクアウト用のお菓子に気を取られていた。私が美味しそうに食べるから、ユユ姫にも買ってあげるつもりなのだろう。
……いいけどね。
「ちなみにただ今の時刻、この辺りの店が特売品を出しております。掘り出し物もございますので、覗きにいかれるとよろしいでしょう」
地図の一角を示し、ピエロあらため観光推進委員は立ち去っていった。通りがかった街の子供にじゃれつかれ、ポケットから駄菓子を取り出して与えていた。
神官の時といい、もしやコスプレ趣味か? 半死人みたいな顔をして、あれで意外とお茶目さんか。
ハルト様が寝込んでいる間、オリグさんとは話す機会があった。彼は部下と連絡を取り合いデュペック侯の追跡調査をしながら、領主館に滞在していた。
「陛下のことはお責めになりませんように。今回の計画を考えたのは、私です」
わざと情報を流し、私を囮にしたことについて、彼は説明した。
「龍の加護について、陛下からは口止めをされておりました。それをお話したのは私の独断です。実を申しますと、あなたが動揺して陛下に反発することも予想しておりました」
淡々と、ぬけぬけと言われて、私は呆気にとられた。
「デュペック侯は心理戦が得意です。たくみに揺さぶりをかけて相手を味方に引き入れたり、強迫して言いなりにさせたりします。このネタをつかめば、かならずあなたを獲得するために動くと考えました」
「……もし、私が彼の側についていたら、どうするつもりだったんですか」
「どうとも」
ちら、とも表情を変えず、オリグさんは答えた。
「あなたをエランドに渡すわけにはいきませんから、デュペック侯ともども捕縛していたでしょうな」
「つまり私は、試されていたわけですね」
「さようですな。もっとも寝返るか否かではなく、あなたがどこまで状況を読めるかについてですが」
悪びれないというのはこういうことかと、静かな顔を見つめる。こうも堂々と言われると、腹を立てるのも馬鹿らしくなる。
「寝返るとは思っていなかったんですか」
「可能性は限りなく低いと判断しました」
「その根拠は?」
「初対面の相手には警戒心を抱き、関わりたがらないあなたの性格です。知らない相手と会って話をするのは精神的に多大な負担であり、面倒がって極力逃げようとする。会ったこともないエランドの皇帝に与することを選ぶのは、まずないと考えました」
「…………」
さすが参謀室長は、私の性格まで詳細に把握しているようだ。
私は呆れと感心、半々に息をついた。
「で、試験の結果は?」
「上々です。本気で参謀室に引き抜きたいですな」
引き抜くも何も私はどこにも所属していない。まだ勉強中の子供だ。将来参謀室に就職したくなったならよろしくと言って、現時点でのスカウトは辞退した。
彼の元で働くのは結構面白そうではあるけれど、私にはまだまだ学ぶべきことがある。社会人になれるレベルには至っていない。
囮にされたことについては、それほど腹が立たなかったので不問にした。ハルト様とのすれ違いは、彼のせいじゃなく私の考え方や行動に問題があったのだから。
でもちょっとでも私に申しわけないと思っているのなら、今後もいろいろ相談に乗ってくれるとありがたい。情報通だから、知りたいことがあったら参謀室を訪ねるのがよさそうだ。
そう持ちかけると、オリグさんはいつでも来てくださいと言って私に参謀官見習いの肩書をくれた。それ、公式資格なんですかね?
「ほほう、ずいぶん詳しく書いてあるな。この『若い女性に人気の店上位十店舗』というのがおもしろそうだ。ここなら、よい土産が見つかるかな? そなたの気に入るものも見つかりそうだ」
ハルト様は観光推進委員が置いていった地図を興味深げに見ていた。女性向けの店を十か所も回る気か。まあこの浮世離れした人なら平気かな。
でも彼らは大変だろうな。
私はさり気なく視線を巡らせる。少し離れた店の前、向こうの街路樹の陰、建物と建物の間――普段とは違う身なりに扮した誰かさんたちが、通行人を装って主君のお忍びを見守っている。
帽子から目立つ赤毛がはみ出している程度のトトー君はいいとして、イリスは街の女の子たちに逆ナンされて護衛どころじゃない状態だ。ああいう派手な外見の男は尾行には向かないよね。いちばん上手に風景に溶け込んでいるのはアークさんだな。さすが地元民。
彼にも一度声をかけられたっけ。
「以前、私が申し上げたことを覚えておいででしょうか。陛下のこととは関係なく、あなた個人に敬意を払います、と」
問われて私は記憶をたどった。そういえば、前にそんなこともあったっけ。
「あれは本当です。今もその気持ちは変わりません」
「なぜですか? 人から敬意を払ってもらえるようなことは、何もしていませんが」
アークさんは大人の余裕で私の質問に笑った。
「公王の娘として迎えられれば、たいがいは有頂天になるものです。贅沢のできる身分を手に入れた、権力を手に入れた――と。しかしあなたは、自分はあくまでも一庶民だと言い張り、驕ることをしない。陛下のお力を利用することもない。誰にでも丁寧な態度を取り、世話になった相手には律儀に礼をする」
「普通に、当たり前のことばかりですが」
「その当たり前を、どんな立場になっても忘れずにいることは案外難しいものですよ。人は環境に慣れますから」
そう言われてもな。働きもしない居候が、どうやったら驕れるのだろう。
「今回のことでも、陛下と仲たがいをなさったのがあなたらしいと思いました。普通、内心で不満を抱いても、公王相手にそれを正直に表して気まずくなることなどできません。不興を買うことを恐れるものです。結局、あなたは陛下を王としてではなく、ただの父親としか見てらっしゃらない。我々には考えられない話です。それを自然にしてらっしゃるのが、すごいですよ」
それは、私が王族だの貴族だのといった身分社会に対して、なじみがないからだ。
理屈ではわかっていても、感覚的に身分というものを実感できない。現代日本人はみんな同じだろう。
――なのに、アークさんは笑う。
「親子なら、時にはけんかくらいするものです。けんかもできない関係の方が問題だ。ちゃんと仲直りもできたのだから、あなたと陛下は立派に親子ですよ」
「そういうアークさんの方はどうなんです? 実家に帰って、お父さんとお話くらいしたんですか」
ちょっとだけ反撃してみせれば、アークさんは肩をすくめた。
「話はほとんど。でも一緒に飲みましたよ」
「無言で?」
「いや、私が一方的にしゃべってました。親父は黙って聞いて、私の酒がなくなったら注いでくれましたよ」
「けっこう仲良しだったんじゃ」
「たぶんね」
なんとなく、アークさんのお父さんの方に親近感を覚えた私だった。
うちのお父様はといえば、地図を手に私をせかす。
「チトセ、食べ終わったなら早く行こう。この時間限定特売品というものにも興味がある」
「タイムセールですね。私もそういうのは好きです。いいものをいかに安く買うかが腕の見せ所です」
「そういうものか」
「安く買えたらその分たくさん買えるでしょう。お言葉に甘えていろいろおねだりしますよ。今日は荷物持ち要員もいますからね」
「うむ。好きなだけ買いなさい」
私は笑顔で席を立った。見守りだけで終われると思うなよ。筋肉自慢が三人もいるんだから、遠慮なく買い物しまくろうじゃないか。
私たちが歩き出せば、護衛も後を追ってくる。約一名はいまだしつこく女の子にまとわりつかれている。
私は振り返り、目が合ったイリスに思いきりアカンベをしてやった。
***** 終 *****