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題6話


 馬車でアキラが目を覚ましたのは早朝。時間帯は多分、アキラの元居た世界とは違うのであろう。馬車を追い出された後に、休憩したのが太陽の傾き加減で考えるに10時位。もっともこの世界に時間という縛りは大体でしか存在しないが。


 そして現在。太陽が真上で輝いてる事から、昼飯時だろう。急ぐ旅でも無いという事と、旅慣れしてないアキラにクロエが気を遣った事、それから川のほとりを未だに歩いてる事。それだけの材料を持って、ゆっくりと昼飯を食べる事になった。




「アキラお兄ちゃん。この乾物、美味しいんだよー!」


「どれどれ……。ふむ、ホントだな。実に旨みが染みている。それに肉もしっかりしている」



「うんうん! こっちも美味しいんだよー!」


「ふむふむ、まぁ焦る事は無いぞ。ほぉ、こっちも良い味が出ているな」




 クロエはアキラの横に引っ付いて、食材(乾物ばかりだが)の説明をする。アキラがどれを食べようか迷ってるのをみたクロエが勝手にしている事である。この弟君はずっとこうやって、アキラにべったりとくっついている。



「それにしても、こんなに素直に話すのは久しぶりだ」



 クロエが水を汲みに少しアキラから離れた時、そう言葉を零す。手に持つ乾物に目を落としながら思考する。アキラは素直なクロエに自身の特徴であるひねくれた事を言えないでいた。別にひねくれた事を言いたい訳では無いのだが、素直すぎる自分が気持ち悪いのだ。そしてひねくれた事を言ってた自分がホントに自分だったのか? そんな疑問すら持ちつつあった。




 ひねくれた事を言わないのは、下手な事を言ってこの姉弟と亀裂を生みたくないから。アキラが本調子ならひねくれた事の1つや1つ言えるのだが、今は精神的にも体力的にも疲労が溜まってるので頭が回らないのである。



「アキラお兄ちゃん、大丈夫?」



 元の世界には存在しなかっただろう怖い顔の干物を見下ろしていたら、異世界に居るという現実を改めて感じていた。きっと今自分は暗い顔をしているのだろう。クロエに心配を掛けてしまっている。


 見知らぬ世界に飛ばされ、信じられるのは自分自身のみ。最も、元の世界でも信じられるのは自分だけだったが。それでも過ごしてきた環境には慣れがあるから、対応の方法はある程度あった。しかし世界が違えば、その世界のルールや文化がある。その情報が無い今、やはり信用出来るのは自分の身一つだろう。



「あぁ、大丈夫だ。心配掛けてすまない」



 無理な笑顔になってるだろう。クロエはそんな自分に気付きながらも、「そっかー!」と笑顔で答えてくれる。クロエは出来た子だ。姉の育て方が良いのだろう。




 自分の特徴の1つのひねくれという性格が、確立出来ない。それはアキラにとって苦痛以外の何でも無い。そのせいか、それともクロエの性格が今まで見た事が無い程良い子だからか。ともかく、アキラは過ごした時間が僅かながらのクロエを全面的に信用しつつあった。







 さて、一緒に旅をしているのはアキラとクロエだけでは無い。クロエの姉であるサラサも居る。……のだが、先程の休憩以来空気になっている。というのも愛しの弟クロエは先刻から自称田舎人の、正直言うと怪しい男アキラに付きっ切りだからだ。



「アキラお兄ちゃん、水汲んできたから一緒に飲もう?」



「あぁ、ありがとう。それにしても力持ちだな、クロエは」



 クロエは汲んできた水をアキラに渡し、飲むように薦めていた。今朝出会ったばかりとは思えない程、仲が良い。



 クロエとサラサが住んでたのも実は田舎で、クロエは他人と触れる機会が余り無かったし、村を出てから初めて会ったのがアキラであった。しかしサラサに好奇心旺盛に育てられたクロエは、アキラに興味を持つのは当然。そしてクロエの素直さでアキラとの距離感を詰めていた。



「この干物、美味しいなー」



 サラサは2人の近くに居るのだが、遠くに感じる。2人で仲良く話しており、サラサはそう独り言を洩らすだけであった。アキラと会った馬車の前に3日程、徒歩で旅をしていた時はクロエはサラサにべったりで、ブラコンであるサラサには幸せであった。


 なのに、なのにだ。アキラが来てからと言うもの、クロエが構ってくれない事に不満が募る。



「クロエちゃん、私に水はー?」



「あ、お姉ちゃん! はい、これどうぞ」



 サラサがクロエに話し掛ければ、クロエはしっかりと反応して笑顔で答えてくれる。だが直ぐにアキラとお話しを再開する。別にそれが寂しくてだったり、クロエを取られているからでは無いが、サラサはアキラに疑いを持っていた。

 2人が仲が良いのは一重にアキラの人間が出来てるから。クロエの自分に素直な、悪く言ってしまえば自分勝手な行動を許せるからだろう。しかしそれこそが、サラサが怪しいと思うところである。



 サラサは馬車に乗った時から、先客であるアキラを観察していた。これはクロエに被害が出ない為で、サラサはアキラ以外の人物も観察する様にしていた。



 さて、クロエは自分を田舎出身で物事を知らないと言っていた。確かに目を覚まして直ぐに馬車のユニコーンを見て驚いていた。ユニコーンは王都に行く馬車にしか使われないから、頭が動かない時に見てびっくりするのは分かる。

 干物を良く知らないのも、「山から降りてきたから海のモノは分からないがとりあえず保存食に買った」という説明も頷ける。



 確かに知識は無い。だがその言葉の端に教養を感じるのだ。一人称こそ俺様と下品だが、その振る舞いに気品を感じる。表現も多様性に優れている。振る舞いによってその尊大な言葉遣いも、位の高い人間であるかの様に思えてくる。

 本当に田舎の人間なのだろうか? 何処かの箱入り息子とかでは無いのか? もしそうならどうして、一人で旅をしてるのか。厄介事を抱えてるなら、一緒に旅をする事になった自分達にも降りかからないか。



「まぁ、クロエちゃんが気に入ってるなら仕方ないか。でも……、」



 クロエは素直で良い子なのだが、意外と頑固であり、一度決めた事を突き通すのだ。そんなクロエちゃんが懐いてしまったのだから、どんな事があっても彼と王都まで向かう事になるのだろう。



「セキグチさん。貴方は本当に田舎から来たのですか?」



 セキグチはアキラのファミリーネームだ。一緒に旅することはクロエちゃんが決めたのなら仕方無い。だからといってアキラの存在を曖昧にしておく程、サラサは甘い女では無かった。厄介事に巻き込まれた時に、アキラがどの様な存在か理解出来てれば対応出来るかも知れない。

 サラサは挑発的な口調と視線を、その言葉と共にアキラに投げ掛ける。



「あぁ、本当だ。と言っても、田舎の町の更に外れに家を構えてたから、普通の田舎人より知識に疎いんだがな」



「僕と一緒だね! でも僕は、サラサお姉ちゃんに色々教えて貰ったから一杯知識があるんだよー!」



 アキラは用意してた嘘をつく。クロエがそれに続くように年相応(元居た世界で言えば小学6年生位)

に自慢をするのは微笑ましかった。

 幾ら田舎に住んでると言っても、知識が無さ過ぎるのは可笑しいだろうから何時か突っ込まれるだろうとは思っていた。故に、嘘はそれ用の嘘は考えていた。こんなに早く聞かれるとは思って無かったが。



 最も、サラサにとってそんな事はどうでも良かった。サラサが心配なのは、アキラが何処かの没落貴族の子供では無いか。それとも本当に田舎出身だとしても、厄介な使命を抱えていないか等だ。前半ではその栄光を取り戻そうと、無理をしてこっちにまで被害が出ないか。後半の使命も、サラサ達の旅路の邪魔になるものでは無いか。



「ふーん。まぁ、それならいいわ。よーし、じゃあクロエちゃん! 出発する前に、髪を結いなおすからおいでー」


「はーい! アキラお兄ちゃん、ちょっと待っててねー」



 サラサはアキラから視線を外して、クロエに移す。そして自分の膝を叩く。クロエはそれに答えて、サラサの膝に座って髪を結って貰う。改めて、姉弟の仲の良さをアキラは感じ取った。



 アキラに疲れが溜まってなかったなら、サラサの懸念を想定出来てただろう。元居た世界では幼少から学べられた教養。明らかに文化の低いこの世界では、教育が義務化されてるとは思えない事に。実際そうである。

 しかしサラサはアキラの態度から、サラサが疑ってる事を気付きながらもはぐらかしている。そう取ったのだった。そしてこれ以上聞いても実を結ばないと思い、一時的に諦めたのだった。それのついでに、クロエをアキラから取り返したりしてみたのだった。




「さて、行きましょう! っ!! しまったわ。山賊がこっちに来たわね」



 クロエの髪を一度解く。綺麗にクシで梳いてからまたポニーテールで結びなおし、クロエの質感を十分に堪能してから出発する準備を完了させた。



 アキラはこの世界に慣れてないからか、遠くは気にしない。クロエはアキラに夢中だしまだ若く周りに注意する癖が付いていない。この3人の中ではサラサが周りに注意を払わなければならない事を自身で理解してた。しかしクロエを久しぶり(2時間くらい)に堪能出来た事もあり、注意を怠ってしまった。



 その結果、山賊が直ぐ近くにまで来てるのに気付け無かった。この距離なら向こうも気付いてるだろう。山賊には言葉は通じない。戦うしか無いだろう。アキラを戦力として考える訳にはいかないだろう。武器を持ってないのだから。サラサは最悪、クロエさえ助かれば良いだろうと覚悟を決める。




 果たしてアキラは初めて、人間の殺し合いを経験するのである。山賊の数は20は居るであろう。よく物語では一騎当千の活躍を見せる英雄が居るが、アキラは人間が人間相手にそんな孤軍奮闘は出来ない事を知っている。アキラは自分の立たされてる窮地をしっかりと理解していた。



 今まで字の文でしか話を進めてなかったので、テンポ悪かったですよね……。

 執筆する為の技術を纏めたノートを改めて見たら、悪い例の一つとしてありました(笑)



 という訳でセリフを交えて書いてみたのですが、どうですかね? まぁ、下手だとしても1ページ1ページ進化していこうと思ってますので! どうか最後まで付き合って下さい!!




 区切りの短さをもうちょっと長くしたいのと、セリフを交えた文章にすると文字数がどうしても多くなってしまいます。

 それにもう1つの連載してる小説の魔法少女もあるので、週2,3の投稿になりそうです。



 ……、ってあんまり変わらない? まぁその内、執筆速度もある程度上がると思うので、もっと更新出来る様になるかも知れません。



 では次回は、戦闘シーンに入ります。前回は戦闘シーン詐欺をしてしまいました。すいません。今回は戦闘シーンに絶対入ります。絶対。

(主人公のひねくれを出せるかも!)

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