第4話
山賊……。治安がしっかりしている日本に住んでいた光は勿論、会った事は無い。だが彼らがどのような集団かは分かっているつもりだ。少し詰めれば大の大人が10人は入れそうな大きさ(もっとも後ろに荷物があり、中は狭いが……)の馬車があれば、襲うだろう。
馬車の持ち主が荷車を少しでも軽くしたいのも分かる。だからといって、お客を降ろすだろうか? 光と姉弟はさっさと降ろされた。姉弟が(特に姉が)何も言わないところを見ると、この世界では当たり前の事なのだろう。
馬車から追いやられて山賊が見える方を向く。少し遠い所にある、山賊の集まりを見る。お客を降ろしてまでも逃げたがってる馬車があれば、そこにお宝があるだろうと思うのは普遍である。馬車の方へと山賊は向かっていった。
「此処からは、歩きだね……。あ! アキラお兄ちゃんも一緒に行かない?」
しばらく3人で山賊の行く手を見て、此方に来ない事に安心した時にクロエがそう提案してくれる。
他人は嫌いだし、ボロが出ないとも限らない。だけど、右も左も分からないこの世界で一人で居るよりはましだろう。……サラサ・アントワネットが居なければ。
「一人旅は寂しいと思いはじめた最近だから嬉しい提案だ。しかしサラサ・アントワネットの様な若く麗しい女性が僕のような会ってまもない男と旅するのは危険だろう」
これは当たり前の事だ。この純粋な少年はアキラと違い、人をすぐに信じられるのだろう。アキラが危険な男かも知れないのに……。(もっとも、アキラは他人が嫌いなので手を出す可能性は無いが……。)
しかしこの3人が一緒に旅をするのに一番の懸念は、サラサのブラコンである。2人旅を楽しんでるサラサにとって、アキラがその間に入るのにはプラスの用途が無いだろう。しかし、そんな事は言える筈も無く正論で逃げたのであった。
「大丈夫! アキラお兄ちゃんはそんな事はしないって信じてるから!」
「いや、そうでは無く……」
アキラはクロエの純粋な瞳に負けそうになる。このクロエの興味がアキラに向いてるこの現状では、3人一緒に行くことはほぼ決まりだろう。なら、サラサとの仲を少しでも良好な関係にした方が良いだろう。
「ふむ。サラサ・アントワネットはどう思う? 俺様が一緒だと、邪魔じゃないか?」
アキラが執った作戦はサラサの判断に任せるモノだった。しかしこれは別に投げやりになった訳では無い。
「私は邪魔だt……」
「お姉ちゃん……、お願い! 僕、アキラお兄ちゃんと一緒に旅がしたいの!」
アキラはコレを狙っていたのだった。サラサは弟以外のモノは邪魔だろうと、他人の気持ちを理解出来るという特技を持って理解していた。ならばその弟、クロエにお願いさせてみようとしたのだった。サラサが自分で、良いと言えばそれは後々の交渉道具になるだろう。
アキラの悪い癖。それは相手の気持ちが分かるゆえ、それを道具に自分に有利な展開にすること。それ自体は別に悪くないのだが、そこに自分の感情や相手への配慮に欠ける事にあった。純粋な気持ちを交渉の道具としか思わないクセである。
「しょうがない。良いわよ、クロエちゃん。ただし、その前にちゃんと自己紹介はしましょうね?」
言質は得た。これで、旅は一緒に出来る。しかし、問題が発生した。自己紹介って事は先ほどの質問もされるだろう。何て答えようか?
すいません。戦闘を引っ張った上に、自己紹介も引っ張りました。
引っ張るのが僕の悪い癖。直していきたいです。回りくどい表現も改めないといけないですね……。