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「それにしてもどうしてこいつらが美羽をさらったりした訳?」御子が誰にともなく聞いた。
「それは私の責任です」沖が答えた。
「私が美羽ちゃんを巻き込んでしまった」
「違う、おじさんのせいじゃない」美羽が沖の言葉をさえぎった。しかし沖は続ける。
「私はその男に娘を引き殺された恨みから見境のない行動をとりました。それが無ければ美羽ちゃんを危険な目にあわせる事はなかった。本当に申し訳ありませんでした」
「じゃ、こいつが沖さんの娘を殺した犯人か。ハルオ、沖さんのロープを切ってあげて。今のうちに思いっきり殴っておけばいいわ」
そう言いながら礼似は男の胸ぐらをグイッとつかむ。しかし沖は
「いえ……もういいんです。何をしても娘はもう帰ってこない。こいつには法がきちんと罪を償わせるでしょう。むしろ今の俺には自分の無謀さの方が恥ずかしい。……反省しています」
沖は御子に向かって頭を下げた。
御子はやっと事情が呑み込めたばかりで、まだ少し唖然としていた。
頭を上げた時に美羽と目があった沖は
「ほら、君を守ってくれる人たちに、君はまだまだ出会えそうだろう?」と聞いた。
ホテルにパトカーが止まり、警官達が入って行くと、ホテルの中は大騒ぎとなった。
野次馬達が取り囲む中男二人は連行され、襲われた美羽と沖、それにハルオと礼似が事情を説明するため、パトカーで警察に向かって行く。
一人取り残された御子は仕方なく、こてつを連れて真柴組へと帰って行った。
ところが帰って見ると由美が玄関口に立っている。
「まあ、こてつ! 外にいたのね。良かった」ホッとした表情だ。
「すいません。こてつ君を連れ回してしまって」御子が頭を下げるが
「いえ、それはかまいませんが。あら? 美羽ちゃんは?」
「ちょっと用が出来て、家に戻っています」と、小さなウソをつく。
今日は事情を聞かれた後は、いくら何でも家に帰されるだろうから、あながち嘘でもないだろうと思いながら。
「それより中に入って下さればいいのに。今お茶を出しますから」と、御子は進めるが
「いえ、今日はもうこてつを連れて帰りますわ。それより、あなたが真柴さんのご養女になられた御子さんね。今度ご結婚されるとか、おめでとうございます」と、逆に頭を下げられてしまう。
「ありがとうございます。立ち話も何ですから、上がって下さいませんか?」
「いえ、本当にお気づかいなく。あの……中にどなたかご病気の方でもいらっしゃるのかしら?」
「は?」
「いいえ、違うならいいんです。お気になさらないでください。行きましょう、こてつ」
何故か由美はそそくさと去って行く。その理由はすぐに解った。
「あおん、あおん、あおおおおおお~ん」奥から奇妙な犬の(?)鳴き真似が聞こえる。誰かが本当にこてつのつもりで鳴いているらしい。
御子が頭を抱えたのは言うまでもない。